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平成28年12月20日判決言渡
平成27年(行ウ)第525号納付通知処分取消等請求事件
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1処分行政庁が平成27年3月31日付けで原告に対してした納付(納入)通
知処分を取り消す。
2処分行政庁が平成27年4月16日付けで原告に対してした納付(納入)催
告処分を取り消す。
第2事案の概要
本件は,処分行政庁が,有限会社マナ企画(以下「マナ企画」という。)が
滞納した法人事業税及び法人都民税につき,原告に対して地方税法11条の8
所定の第二次納税義務があるとして納付通知及び催告をしたところ,原告がこ
れらの取消しを求める事案である。
1関係法令等の定め
本件に関係する法令等の定めは,別紙1「関係法令等の定め」に記載のとお
りである(なお,同別紙において定義した略語は,本文においても用いること
とする。)。
2前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
(1)当事者等
マナ企画は,土木建築工事の請負,設計,施工及び監理を行う特例有限会
社であったが,平成24年10月17日,東京地方裁判所から破産手続開始
決定を受け,平成25年1月18日,破産廃止決定を受けた。
原告は,マナ企画の取締役であった者である。
(2)マナ企画に対する滞納処分
処分行政庁及びその委任を受けた中央都税事務所長は,マナ企画の法人事
業税及び法人都民税を徴収するために,以下の滞納処分を実施した。
ア平成23年9月12日付け23中税徴差第1248号
(ア)大阪府羽曳野市α×番○の土地及び同所同番の区分建物(いずれも
マナ企画所有)の差押え
(イ)平成24年11月20日に公売を実施し,同月27日に配当をした。
イ平成23年9月12日付け23中税徴差第1249号
(ア)大阪府羽曳野市α×番○,同所×番○及び同所×番○の土地(いず
れもマナ企画の持分20分の1)の差押え
(イ)平成24年11月20日に公売を実施し,同月27日に配当をした。
ウ平成23年9月12日付け23中税徴差第1250号
(ア)登録番号「○」の自動車(マナ企画所有)の差押え
(イ)マナ企画から上記自動車の滞納処分費と見積価格を上回る金額の納
付があったため,平成24年5月7日に差押えを解除した。
エ平成24年3月19日付け23主徴機差第3377号
(ア)大阪府羽曳野市α×番○の区分建物に係る賃料債権(債権者マナ企
画)の差押え
(イ)平成24年3月26日,4月24日,5月25日,6月26日,7
月26日,8月24日,9月24日及び10月29日に差し押さえた債
権を取り立てて,配当をした。
(3)マナ企画の滞納金
マナ企画は,平成25年1月18日の破産廃止決定時,以下のとおりの被
告に対する滞納金があった。
①平成16年11月1日から平成17年10月31日までの事業年度(以
下「平成17年10月期」といい,他の事業年度についても同様に表記す
る。)に係る法人事業税の確定延滞金
(法定納期限平成18年1月4日)32万0800円
②平成17年10月期に係る法人都民税の確定延滞金
(法定納期限平成18年1月4日)22万1400円
③平成18年10月期に係る法人事業税の確定延滞金
(法定納期限平成19年1月4日)58万6700円
④平成18年10月期に係る法人都民税の確定延滞金
(法定納期限平成19年1月4日)43万1900円
⑤平成19年10月期に係る法人事業税の確定延滞金
(法定納期限平成20年1月4日)102万9900円
⑥平成19年10月期に係る法人都民税の確定延滞金
(法定納期限平成20年1月4日)124万1800円
⑦平成20年10月期に係る法人事業税
(法定納期限平成21年1月5日)334万8299円
⑧上記⑦の未確定延滞金
⑨平成20年10月期に係る法人都民税
(法定納期限平成21年1月5日)523万3600円
⑩上記⑨の未確定延滞金
⑪平成21年10月期に係る法人事業税・特別税
(法定納期限平成22年1月4日)958万4900円
⑫上記⑪に対する未確定延滞金
⑬平成21年10月期に係る法人都民税
(法定納期限平成22年1月4日)589万2800円
⑭上記⑬に対する未確定延滞金
(4)原告に対する納付通知
処分行政庁は,平成27年3月31日付けで,原告に対し,上記(3)①ない
し⑩の各滞納金(以下,それぞれ「本件滞納金①」などといい,併せて「本
件各滞納金」という。)について,地方税法11条の8の第二次納税義務を負
うことになったとして,同年4月14日までに本件各滞納金(ただし,52
45万1750円を限度とする。)を納付(納入)することを求める旨通知し
た(以下,この通知を「本件納付通知」という。)。本件納付通知に係る通知
書(以下「本件通知書」という。)には,「納税義務を課する根拠規定」とし
て「地方税法第11条の8」という記載がある(甲2)。
(5)原告に対する納付催告
処分行政庁は,平成27年4月16日付けで,原告に対し,本件各滞納金
(ただし,5245万1750円を限度とする。)を納付(納入)することを
求める旨催告した(以下,この催告を「本件納付催告」といい,本件納付通
知と併せて,「本件各処分」という。また,本件納付催告に係る通知書を「本
件催告書」といい,本件通知書と併せて「本件各書面」という。)。
(6)原告の異議申立ての経緯
ア原告は,平成27年4月13日,処分行政庁に対し,本件納付通知の取
消しを求める旨の異議申立てをした。
イ原告は,平成27年4月23日,処分行政庁に対し,本件納付催告の取
消しを求める旨の異議申立てをした。
ウ処分行政庁は,平成27年8月12日,上記ア及びイの各異議申立てを
棄却する旨の決定をし,その頃,原告に通知した。
(7)本件訴えの提起
原告は,平成27年8月28日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
3争点
(1)本件各処分が,行政手続法14条1項本文所定の理由の提示を欠くものと
して違法であるか否か。
(2)本件各処分が,地方税法11条の8所定の要件を満たし適法であるか否か。
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(理由提示に係る違法性の有無)について
(被告の主張)
ア理由提示の要否
(ア)憲法94条の規定等により,地方団体に自主財政権に基づく自治課
税権が認められていることからして,地方税法は地方団体がその課税権
を行使し得る範囲を定める標準法ないし枠法にすぎず,地方団体が住民
に対して地方税の賦課徴収を行うためには,条例にその根拠を有さなけ
ればならない。
被告は,都税の賦課徴収を行うために,都税条例を制定しているが,
地方税法において処分の要件等が完結的に記載され,地方団体の選択の
余地がない事項の全てについてまで,都税条例に個別の規定を置くこと
は困難であることから,都税条例1条において「法令その他に別の定め
があるものの外」と規定し,これを媒介として地方税法に定めのある事
項を都税条例のうちに取り込むことにより,地方税法に定めのある事項
についても,条例を根拠とする処分とすることを可能とした。
本件各処分は,都税条例1条を根拠として,地方税法11条の8をそ
のまま適用するものとしてされた,都税条例に基づく処分行政庁の処分
であって,行政手続法(第2章から第6章まで)の適用が除外される「地
方公共団体の機関がする処分(その根拠が条例又は規則に置かれている
ものに限る。)」(同法3条3項)に該当する。したがって,本件各処分に
理由の提示は不要である。
第二次納税義務者に対する納付の通知等の具体的な方法については,
都税条例の下位規則である都税条例施行規則40条の3に定められてい
るところ,本件各処分は同規則に従った方式においてされており,この
ことからみても,本件各処分は都税条例を根拠とする処分である。
(イ)平成23年法律第115号により地方税法18条の4が一部改正さ
れたのは(以下,この一部改正を「本件改正」という。),国(総務大臣)
が行う処分についてのみ,理由提示に関する行政手続法8条及び14条
を適用することとしたのであり,地方自治体が行う処分に関する手続に
ついては,もとより,行政手続法ではなく各地方自治体の行政手続条例
により規定されるものであって,本件改正後も,国税の取扱いを踏まえ
た各地方自治体の判断に委ねられているものである。
イ憲法31条違反の有無
制定法に特段の定めがないときは,憲法上,侵害処分であっても理由提
示が必要ということはなく,都税条例12条の2第1項が憲法31条に反
することはない。
ウ本件通知書の記載
本件通知書における根拠規定の記載は,住民に対する地方税の賦課徴収
が都税条例1条を根拠とすることを当然の前提として,同条に基づき適用
される具体的な地方税法の該当規定を示すことにより,納税者にとって簡
明な表現を意図したものにすぎない。上記記載は,誤りを含むものではな
く,不服申立て等の機会に関する教示も別途適切に記載されている。
エ理由提示の有無
行政手続法14条1項が書面により行政処分の理由を示さなければな
らないとしているのは,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意
を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜
を与える趣旨である。この点,第二次納税義務に係る納付告知等の処分は,
主たる納税義務が具体的に確定しており,かつ,当該処分の名宛人と主た
る納税者との間に特別な関係があることを前提としてされるものである
以上,主たる納税義務の成立につき課税庁の恣意が介在する余地が存在し
ないばかりか,当該処分に係る書面において適用される条文の記載さえあ
れば,当該処分の名宛人が第二次納税義務者として主たる納税義務の履行
責任を負う原因となった具体的な事実関係たる課税理由についても,当該
処分の名宛人自ら理解できるはずであり,同人による不服の申立てにつき
支障が生じることもなく,行政手続法14条1項の趣旨を損なうものでは
ない。
したがって,原告に適用される規定が「地方税法第11条の8」である
ことを明記した本件各書面は,行政手続法14条1項の趣旨を損なうもの
ではなく,本件各処分に理由提示の点における違法はない。
(原告の主張)
ア理由提示の要否
(ア)地方税法2条によれば,地方税の賦課徴収の根拠は,地方税法であ
って税条例ではない。このことは,同法3条1項が,「地方団体は,その
地方税の(中略)賦課徴収について定をするには,当該地方団体の条例
によらなければならない。」としており,「賦課徴収をするには」として
いないことからも明らかである。
(イ)国税において国税通則法や国税徴収法が総則的な根拠法令となるの
と同様,地方税法は,各地方団体の条例の総則的法令であり,その規定
を適用する場合には,条例ではなく,地方税法によらなければならない。
主たる納税義務と第二次納税義務は,法律上別個の租税債務であり,
租税法律主義(憲法84条)の帰結として,別個の根拠規定により発生
するものである以上,主たる納税義務が都税条例に規定されていたとし
ても,その第二次納税義務が主たる納税義務と同じように都税条例を根
拠として発生するということはなく,本件の第二次納税義務は地方税法
11条の8を根拠に発生するものである。
また,都税条例1条は,都税条例に規定がないものについては,法令
の定めによる旨規定しており,都税条例には第二次納税義務に関する実
体要件の定めも効果についての定めもなく,第二次納税義務の規定がな
く,地方税法の定めに従わなければならない。「法令その他に別の定があ
るものの外」との規定は,文理解釈として,単純に法令その他に別に定
めがあるということをいうにすぎず,それ以上の意味を有するものでは
ない。地方税法は枠法にすぎず,処分の根拠は条例にあるとするいわゆ
る枠法説は,通常の賦課徴収の場合には妥当しても,地方税法の規定が
通則的規定として直接的に適用される場合には当てはまらず,都税条例
1条が法令の規定を条例に取り込む趣旨の規定であるということはでき
ない。
行政手続法3条3項にいう「その根拠となる規定が条例又は規則に置
かれている」か否かについて,条例が制定されて初めて当該処分権限を
行使し得るものか否かというテストにより判断すると,上記のとおり,
地方税法2条及び3条1項によれば,賦課徴収の根拠は飽くまでも同法
であり,第二次納税義務のように同法に完結的な定めがあって,別途条
例の制定を要しないものについては,条例を制定しなくても処分権限を
行使し得る。
(ウ)都税条例施行規則40条の3は,「法11条1項の規定による第二次
納税義務者に対する納付または納入の告知は,納付(納入)通知書によ
り,同法同条2項の規定による第二次納税義務者に対する納付または納
入の督促は,納付(納入)催告書による。」と規定し,地方税法11条1
項及び2項のみを根拠規定とし,都税条例を根拠規定としておらず,規
則を作成した被告自身が第二次納税義務の根拠法令は地方税法11条1
項及び2項であると考えているのである。
(エ)本件改正における立法者意思は,地方団体が地方税に関して行う処
分については,全地方団体に同様の対応を義務付けないというものであ
ると解されるが,行政手続法が適用されるか否かは処分の主体で判断さ
れるわけではなく,同法3条3項は,地方公共団体の機関が行う処分や
地方公共団体の機関に対する届出のうち,その根拠規定が条例又は規則
に置かれているものに限って,同法の適用を除外している。本件改正に
おいては立法者が,枠法説に対する浅い理解を前提に,およそ地方団体
が地方税に関して行う処分については,条例に根拠規定があると考え,
法律にのみ根拠が置かれているものがあることは想定していなかったも
のと解される。
また,地方税法1条6号は,納税通知書について,納税者が納付すべ
き地方税の賦課の根拠となった法律及び当該地方団体の条例の規定を記
載するものとしており,地方税法自体が地方税法の各条文が直接適用さ
れる場合があることを想定している。
イ憲法31条違反の有無
国税においては,税務調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め
るべく,その不利益処分に理由の提示を要するところ(国税通則法74条
の14第1項),その趣旨は地方税にも当てはまるものであり,理由の提示
を不要とする都税条例12条の2第1項は憲法31条に反する。
ウ本件通知書の記載
仮に,都税条例の規定が本件各処分の根拠となるなら,本件各書面に都
税条例1条を併記すべきであったところ,本件各書面には根拠規定として
都税条例が示されず,地方税法11条の8のみが示されており,いわば誤
った教示と評価すべきである。信頼の原則により,行政庁が誤った教示を
して被処分者がその誤った教示に従った場合,救済されるのであり(行政
不服審査法(平成26年法律第68号による改正前のもの)18条,19
条),本件でも,理由提示を必要とする地方税法だけが根拠規定として示さ
れていた以上,原告は,当然理由提示が必要とされる処分であると信頼す
るのであり,かかる信頼を保護する観点から理由提示が必要である。
エ理由提示の有無
理由提示の程度としては,適用条文を当該処分の書面に記載するだけで,
事実関係が具体的に記載されていない場合には不十分で,違法であるとこ
ろ,本件各書面には事実関係が具体的に示されていないから,本件各処分
は行政手続法14条1項に反し違法である。
(2)争点(2)(本件各処分の適法性)について
(被告の主張)
別紙2「本件各処分の根拠」記載のとおり(なお,同別紙において定義し
た略語は,本文においても用いることとする。)。
(原告の主張)
ア別紙2「本件各処分の根拠」の1(1)ないし(4)記載の各事実は認める。
原告に金銭を振り込んだり,現金を渡したりしたのは,訴外Z1,訴外
Z2,訴外Z3及び訴外Z4であって,マナ企画ではない。実際,訴外Z
1らは報酬を得て原告に現金を渡すこともあったのであり,かかる事実は,
訴外Z1らの意思に基づき原告に金銭を渡していたことを示すものである。
課税要件明確主義から,地方税法11条の8の「滞納者」の概念を「滞納
者」以外の者に拡大することは認められない。原告について別紙2「本件
各処分の根拠」の1記載の要件は認められない。
イ別紙2「本件各処分の根拠」の2ないし4記載の各要件該当性は積極的
には争わない。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(理由提示に係る違法性の有無)
(1)地方税賦課徴収の根拠
地方税法は,地方団体が同法の定めるところによって,地方税を賦課徴収
することができる旨を定める(同法2条)とともに,地方団体が「その地方
税の税目,課税客体,課税標準,税率その他賦課徴収について定をするには,
当該地方団体の条例によらなければならない」(同法3条1項)と定めており,
地方公共団体が自主財政権に基づく自治課税権を有していると解されること
(憲法94条)に鑑みても,地方税の賦課徴収の直接の根拠は,地方団体の
条例にあると解すべきであり,地方税法は地方団体がその課税権を行使し得
る範囲を定める標準法ないし枠法であると解される。なお,地方税法2条は,
地方団体が地方税を賦課徴収する権能を付与したものであるが,このことを
もって地方税の賦課徴収の根拠が地方税法であるということはできず,この
点の原告の主張は採用できない。
(2)地方税法11条の8の第二次納税義務について
ア地方税法11条の8が規定する無償又は著しい低額の譲受人等の第二次
納税義務については,その賦課徴収の要件及び手続が同法に明確に規定さ
れており,地方団体に選択的判断を許容しておらず,条例において地方税
法と異なる定めを置くことも許容していないと解される。もっとも,上記
(1)のとおり,地方税の賦課徴収の直接の根拠は,地方団体の条例にあると
解されることからすれば,このように地方税法に明確な規定がある場合で
あっても,条例に規定されることにより住民に適用されるものであって,
都税条例1条が,都税及びその賦課徴収については,法令その他に別に定
があるものの外,この条例の定めるところによる旨規定するのは,地方税
法11条の8を含めた同法の規定を都税条例に取り込む趣旨であると解す
るのが相当である。なお,同条は,各地方税に共通する項目について定め
た通則的規定であるが,通則的規定であることから,当該処分の根拠規定
が地方税法に置かれているということにはならない。
イ上記アで述べたところからすれば,都税条例1条は,都税及びその賦課
徴収については,飽くまでも同条を介することにより,都税条例に定める
もののほか,地方税法の定めるところによるものとするという趣旨に解さ
れ,原告が主張するように,都税条例に要件や効果の定めがない事項につ
いては,都税条例1条を介することなく地方税法の規定が直接に適用され
るという趣旨に解することはできない。
(3)行政手続法14条1項本文適用の有無
ア行政手続法3条3項は,地方公共団体の機関がする処分(その根拠とな
る規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)については,同法第2
章から第6章までの規定(同法14条もこれに含まれる。)を適用しない旨
を定めるところ,これは,地方自治の尊重という観点から同法の適用除外
を認め,地方公共団体の行政手続の規律の在り方を各地方公共団体の自主
的な判断に委ねたものと解される(同法46条参照)。そして,同法の適用
除外が,処分の根拠規定が条例又は規則に置かれているものに限るとされ
たのは,処分の根拠規定が法律に置かれている場合には,その手続につい
ては行政手続法の規律に従うべきということができるためと解される。
イ本件各処分は,法人都民税及び法人事業税に係る第二次納税義務の納付
通知及び納付催告であるところ,上記(1)及び(2)で述べたところからすれ
ば,その根拠規定は,条例に置かれているというべきである。
原告が指摘するように,無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義
務の要件は,都税条例に具体的に規定されているわけではなく,地方税法
11条の8に定めるところに従うことになるものの,それは都税条例1条
を介したものであるし,本件各処分の根拠規定が地方税法11条の8であ
ると考えることは,地方団体がその課税権を行使し得る範囲を定める標準
法ないし枠法であるという地方税法の性格と相容れないというべきであ
る。
地方税の賦課徴収の直接の根拠が地方団体の条例にあると解される以
上,地方税に係る第二次納税義務の賦課徴収は,条例が制定されて初めて
行うことができるというべきである。この点の原告の主張を採用すること
はできない。
ウこの点,行政手続法の適用除外を定めた地方税法18条の4第1項は,
適用除外の対象となる規定から行政手続法8条及び14条を除外すると
ころ,地方税法18条の4第1項は,同法上予定されている総務大臣が行
う処分について,行政手続法8条及び14条が適用されることを明らかに
したものであって,地方団体が行う地方税に関する処分について,行政手
続法8条及び14条が適用されるとするものとは解されない。
上記のとおり,地方税法18条の4第1項が,適用除外の対象となる規
定から行政手続法8条及び14条を除外したのは,本件改正によるもので
あるところ,平成22年12月16日付けの平成23年度税制改正大綱に
おいては,「地方税に関する総務大臣が行う処分に関する手続については,
国税の見直しと併せて所要の措置を講じます。」,「地方税に関する地方自
治体が行う処分に関する手続については,全地方自治体に同様の対応を一
律に義務付けるのではな」いとされており(乙10),「地方税法,同法施
行令,同法施行規則の改正等について」と題する総務大臣の通知(平成2
3年12月2日付け総税企第156号・各都道府県知事等宛て)において
も,「総務大臣が地方税に関する法律に基づき行う不利益処分又は申請に
より求められた許認可等を拒否する処分について,行政手続法の規定に基
づき理由を示すこととした(法18の4)。」とされており(乙11),上
記の説示を裏付けるものといえる。
エところで,地方税法1条6号は,納税通知書を「納税者が納付すべき地
方税について,その賦課の根拠となった法律及び当該地方団体の条例の規
定(中略)を記載した文書で当該地方団体が作成するものをいう。」とす
るところ,本件通知書には「納税義務を課する根拠規定」として「地方税
法第11条の8」という記載があるものの,都税条例1条の記載はない(前
提事実(4))。
しかし,納税通知書は,納税者に対して,納付すべき地方税の内容を知
らせるともに,不服申立ての便宜を図るものであり,その趣旨目的からす
ると,第二次納税義務の賦課についていえば,その要件及び手続を具体的
に定める地方税法の規定のみを記載し,一般的に地方税法の規定を取り込
む旨を規定する都税条例1条を記載しないことが不合理なものとはいえ
ず,このことをもって,行政手続法3条3項との関係において,第二次納
税義務の賦課徴収の根拠となる規定が条例に置かれていないということ
はできない。
オまた,都税条例施行規則40条の3は,「法11条1項の規定による第
二次納税義務者に対する納付または納入の告知は,納付(納入)通知書に
より,同法同条2項の規定による第二次納税義務者に対する納付または納
入の督促は,納付(納入)催告書による。」と規定し,都税条例1条への
言及はないものの,これも,納付(納入)通知書及び催告書に係る具体的
な規定が地方税法11条1項及び2項であるために,上記のような規定の
仕方になっていると考えられ,このことをもって,行政手続法3条3項と
の関係において,第二次納税義務の賦課徴収の根拠となる規定が条例に置
かれていないということはできない。
(4)憲法31条等との関係について
ア都税条例12条の2第1項は,都税条例に基づく処分その他公権力の行
使に当たる行為については,東京都行政手続条例第2章及び第3章の規定
(同条例14条もこれに含まれる。)を適用しない旨定める。
行政手続については,それが刑事手続ではないとの理由のみで,その全
てが当然に憲法31条による保障の枠外にあると判断することは相当で
はないが,同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても,行政処分の
相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分に
より制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達
成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決定されるべ
きものであって,常に必ずそのような機会を与えることを必要とするもの
ではないと解すべきである(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年
7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁参照)。
都税条例に基づく処分その他公権力の行使に当たる行為は,極めて大量
かつ回帰的に行われるものであり,理由提示に係る事務負担は少なくな
く,これにより制限を受ける納税者の財産上の利益は,事後的な回復が可
能であることにも照らすと,都税条例に基づく処分その他公権力の行使に
当たる行為について理由を提示することが憲法上要請されているという
ことはできず,都税条例12条の2第1項が憲法31条に反するというこ
とはできない。
イこれに対し,平成23年法律第114号による改正後の国税通則法74
条の14第1項は,国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力
の行使に当たる行為については,行政手続法8条及び14条の規定が適用
される旨定めるが,これと同時にされた地方税法18条の4に係る本件改
正は,上記(3)ウのとおりであって,地方団体の税条例においても,国税
通則法と同様に,税条例に基づく処分その他公権力の行使に当たる行為に
ついて理由の提示を必要とする旨を定めることが望ましいとはいえても,
これを不要とすることが地方税法に反するとはいえない。
(5)本件通知書の記載について
前提事実(4)のとおり,本件通知書には,本件納付通知の根拠規定として地
方税法11条の8と記載され,都税条例1条は記載されていないが,このこ
とをもって,処分行政庁が原告に対し本件納付通知が理由提示を必要とする
処分であると信頼させたなどと評価することはできない。この点に関する原
告の主張は,前提を欠き採用できない。
(6)小括
以上のとおりであって,本件各処分は,行政手続法3条3項にいう地方公
共団体の機関がする処分であり,その根拠となる規定が条例又は規則に置か
れているものであると解され,同法14条1項本文は適用されないから,本
件各処分がこれに反し違法であるということはできず,また,憲法31条や
地方税法に違反するものでもない。
2争点(2)(本件各処分の適法性)について
(1)別紙2「本件各処分の根拠」の1(1)ないし(4)記載の各事実について当事
者間に争いがない。
訴外Z1は,マナ企画の脱税に協力したことに対する報酬として,同1(1)
アの振込みに伴い,合計84万3545円の金員を取得し(乙5〔このうち
の検乙5,検甲26〕),訴外Z2も,同様に,同1(2)アの振込みに伴い,合
計219万8360円の金員を取得したこと(乙5〔このうちの検乙5,検
甲25〕)が認められるが,証拠(乙5〔このうちの検乙5,検甲25,26〕,
乙6)によれば,同1(1)イ及び(2)イの金員については,マナ企画が,訴外
Z1及び訴外Z2を介して,原告に対して,無償で譲渡したと認められる。
訴外Z3及び訴外Z4名義口座を使った資金の移転は,原告が,これらの
口座の通帳及びキャッシュカードを管理し,マナ企画及び原告が同1(3)及び
(4)のとおり行ったものである。
したがって,本件各無償譲渡行為は,地方税法11条の8にいう滞納者で
あるマナ企画が行った無償又は著しく低い額の対価による譲渡に当たるとい
うべきである。
(2)前提事実(2),(3)に加え,証拠(乙6)及び弁論の全趣旨によれば,別紙
2「本件各処分の根拠」の2ないし4記載のとおりと認められる。
(3)したがって,本件各処分はいずれも適法である。
第4結論
以上のとおり,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すること
として,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官林俊之
裁判官梶浦義嗣
裁判官高橋心平
別紙1
関係法令等の定め
第1地方税法及び地方税法施行令
1地方税法1条(用語)
(1)1項
この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めると
ころによる。
1ないし5号〔略〕
6号納税通知書納税者が納付すべき地方税について,その賦課の根拠と
なった法律及び当該地方団体の条例の規定,納税者の住所及び氏名,課
税標準額,税率,税額,納期,各納期における納付額,納付の場所並び
に納期限までに税金を納付しなかった場合において執られるべき措置及
び賦課に不服がある場合における救済の方法を記載した文書で当該地方
団体が作成するものをいう。
7ないし13号〔略〕
14号地方団体の徴収金地方税並びにその督促手数料,延滞金,過少申
告加算金,不申告加算金,重加算金及び滞納処分費をいう。
(2)2及び3項〔略〕
2地方税法2条(地方団体の課税権)
地方団体は,この法律の定めるところによって,地方税を賦課徴収すること
ができる。
3地方税法3条(地方税の賦課徴収に関する規定の形式)
(1)1項
地方団体は,その地方税の税目,課税客体,課税標準,税率その他賦課徴
収について定をするには,当該地方団体の条例によらなければならない。
(2)2項〔略〕
4地方税法11条(第二次納税義務の通則)
(1)1項
地方団体の長は,納税者又は特別徴収義務者の地方団体の徴収金を次条か
ら11条の9まで又は12条の2第2項若しくは第3項の規定により第二次
納税義務を有する者(以下「第二次納税義務者」という。)から徴収しようと
するときは,その者に対し,納付又は納入すべき金額,納付又は納入の期限
及び納付又は納入の場所その他必要な事項を記載した納付又は納入の通知書
により告知しなければならない。
(2)2項
第二次納税義務者が地方団体の徴収金を前項の納付又は納入の期限までに
完納しないときは,地方団体の長は,13条の2の規定により繰上徴収をす
る場合を除き,その期限後20日以内に納付又は納入の催告書を発して督促
しなければならない。
(3)3項ないし5項〔略〕
5地方税法11条の8(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)
滞納者の地方団体の徴収金につき滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に
不足すると認められる場合において,その不足すると認められることが,当該
地方団体の徴収金の法定納期限の1年前の日以後に滞納者がその財産につき
行った,政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的で
する譲渡を除く。),債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると
認められるときは,これらの処分により権利を取得し,又は義務を免かれた者
は,これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分
の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは,これらの処分によ
り受けた利益の限度)において,当該滞納に係る地方団体の徴収金の第二次納
税義務を負う。
6地方税法18条の4(行政手続法の適用除外)
(1)1項
行政手続法3条又は4条1項に定めるもののほか,地方税に関する法令の
規定による処分その他公権力の行使に当たる行為については,同法第2章(8
条を除く。)及び第3章(14条を除く。)の規定は,適用しない。
(2)2項〔略〕
7地方税法施行令6条(無償又は著しい低額の譲渡等の範囲)
法11条の8に規定する政令で定める処分は,国及び法人税法2条5号の公
共法人以外の者に対する処分で無償又は著しく低い額の対価によるものとす
る。
第2行政手続法
13条(適用除外)
(1)1及び2項〔略〕
(2)3項
1項各号及び前項各号に掲げるもののほか,地方公共団体の機関がする処
分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行
政指導,地方公共団体の機関に対する届出(前条7号の通知の根拠となる規
定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が
命令等を定める行為については,次章(注・第2章)から第6章までの規定
は,適用しない。
214条(不利益処分の理由の提示。同条は第3章に置かれている。)
(1)1項
行政庁は,不利益処分をする場合には,その名あて人に対し,同時に,当
該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし,当該理由を示さない
で処分をすべき差し迫った必要がある場合は,この限りでない。
(2)2項〔略〕
(3)3項
不利益処分を書面でするときは,前2項の理由は,書面により示さなけれ
ばならない。
第3東京都都税条例(昭和25年東京都条例第56号,乙1。以下「都税条例」
という)及び東京都都税条例施行規則(昭和25年東京都規則第126号,乙
2。以下「都税条例施行規則」という。)
1都税条例1条(課税の根拠)
東京都都税(以下「都税」という。)及びその賦課徴収については,法令その
他に別に定があるものの外,この条例の定めるところによる。
2都税条例12条の2(東京都行政手続条例の適用除外)
(1)1項
東京都行政手続条例3条又は4条に定めるもののほか,この条例に基づく
処分その他公権力の行使に当たる行為については,同条例第2章及び第3章
の規定は,適用しない。
(2)2項〔略〕
3都税条例施行規則40条の3(第二次納税義務者に対する納付の通知等)
法11条1項の規定による第二次納税義務者に対する納付または納入の告知
は,納付(納入)通知書により,同法同条2項の規定による第二次納税義務者に
対する納付または納入の督促は,納付(納入)催告書による。
第4東京都行政手続条例(平成6年東京都条例第142号,乙3)14条(不利
益処分の理由の提示。同条は第3章に置かれている。)
11項
行政庁は,不利益処分をする場合には,その名あて人に対し,同時に,当該
不利益処分の理由を示さなければならない。ただし,当該理由を示さないで処
分をすべき差し迫った必要がある場合は,この限りでない。
22項〔略〕
33項
不利益処分を書面でするときは,前2項の理由は,書面により示さなければ
ならない。
以上
別紙2
本件各処分の根拠
1納税者がその財産につき無償又は著しく低い額の対価による譲渡,債務の免除
その他第三者に利益を与える処分を行ったこと
地方税法11条の8の定める無償譲渡等による財産の処分は,必ずしも贈与,
売買,債務免除,財産分与等特定の行為類型に属することを必要とせず,これら
各種の約因を帯有する行為であっても,それによって第三者に異常な利益を与え
るものであれば足りるものと解されているところ,マナ企画は,取引の実体がな
いままに,虚偽の請求書に対する架空の外注工事費等の支払として,原告の知人
である以下の他人名義の口座に合計1億1349万7635円を振り込み,少な
くとも,そのうち合計5245万1750円を手渡し又は口座振込の方法により
原告に取得させることにより,何らの対価なく同社の資金を移転させ,原告に不
当な利益を得させようとしたものであって,マナ企画から原告に対して,その財
産につき無償譲渡等の財産の処分が行われたといえる。
(1)訴外Z1名義口座経由について
アマナ企画から訴外Z1名義口座への振込み
マナ企画から,訴外Z1名義口座(三井住友銀行Z5支店)に対して,訴
外Z1が原告からの依頼に基づき作成した虚偽の請求書に対する支払として,
以下の資金が振り込まれた。
平成20年4月3日334万1765円
同年7月23日191万0265円
同月24日309万1515円
小計834万3545円
イ訴外Z1から原告への現金の手渡し
訴外Z1は,上記ア記載の振込みを受けて,以下の資金を引き出し,原告
に手渡した(なお,上記資金の移動の具体的な日時は不明だが,訴外Z1名
義の口座から平成20年4月7日に300万円,同年7月25日に450万
円が引き出されている。)。
平成20年4月3日振込分300万0000円
同年7月23日振込分180万0000円
同月24日振込分270万0000円
小計750万0000円
(2)訴外Z2名義口座経由について
アマナ企画から訴外Z2名義口座への振込み
マナ企画から,訴外Z2名義口座(みずほ銀行Z6支店)に対して,訴外
Z2が原告からの依頼を受けて作成した虚偽の請求書に対する支払として,
以下の資金が振り込まれた。
平成19年4月11日524万9265円
同年8月3日329万2065円
同月7日773万7765円
平成20年3月28日707万1015円
小計2335万0110円
イ訴外Z2名義口座から原告名義口座への振込み
訴外Z2は,上記ア記載の振込みを受けて,以下の資金を原告名義口座(ゆ
うちょ銀行)に対して振り込んだ。
平成19年4月24日475万0000円
同年8月7日300万0000円
同月8日703万0000円
平成20年3月31日637万1750円
小計2115万1750円
(3)訴外Z3名義口座経由について
アマナ企画から訴外Z3名義口座への振込み
マナ企画から,訴外Z3名義口座(三菱東京UFJ銀行Z7支店)に対し
て,原告が作成した「Z8」名義による虚偽の請求書に対する支払として,
以下の資金が振り込まれた。
平成19年7月20日186万9265円
同年8月15日306万1590円
同年9月7日520万3765円
同年10月23日299万2290円
平成20年3月19日695万8665円
同年7月24日410万0265円
同月31日158万4765円
同年8月25日312万1440円
同年10月17日176万2215円
同年12月8日293万9265円
同月17日650万9265円
平成21年7月24日222万5265円
小計4232万8055円
イ訴外Z3名義口座からの原告名義口座への振込み
原告は,上記ア記載の振込みがされた訴外Z3名義口座の通帳及びキャッ
シュカードを管理しており,以下の資金を,自ら原告名義口座(さわやか信
用金庫Z9支店)に対して振り込んだ。
平成19年7月30日100万0000円
同年8月16日100万0000円
同月20日100万0000円
同年9月13日100万0000円
同月14日100万0000円
同年10月2日100万0000円
同月30日100万0000円
同年11月1日100万0000円
平成20年3月24日200万0000円
同月26日100万0000円
同月31日100万0000円
小計1200万0000円
(4)訴外Z4口座経由について
アマナ企画から訴外Z4名義口座への振込み
マナ企画から,訴外Z4名義口座(三井住友銀行Z10支店)に対して,
原告が作成した「ユー工房」名義による虚偽の請求書に対する支払として,
以下の資金が振り込まれた。
平成18年12月19日185万9265円
平成19年7月20日280万3815円
同年8月3日414万6135円
同年9月11日476万0490円
同年10月29日257万3865円
平成20年3月21日648万7215円
同年7月24日252万4265円
同月31日101万2515円
同年8月25日220万2270円
同年10月17日170万0265円
同年12月8日363万2265円
同月9日419万9265円
平成21年7月27日157万4265円
小計3947万5895円
イ訴外Z4名義口座からの原告名義口座への振込み
原告は,上記ア記載の振込みがされた訴外Z4名義口座の通帳及びキャッ
シュカードを管理しており,以下の資金を,自ら原告名義口座(さわやか信
用金庫Z9支店)に対して振り込んだ。
平成18年12月21日100万0000円
平成19年7月30日100万0000円
同年8月3日80万0000円
同月6日100万0000円
同月7日100万0000円
同年9月14日100万0000円
同年10月2日100万0000円
平成20年3月24日200万0000円
同月26日200万0000円
同月31日100万0000円
小計1180万0000円
2上記1の処分が徴収金の法定納期限の1年前の日以後にされたものであること
(1)平成21年10月期に係る法人二税の滞納金(本件滞納金⑪ないし⑭)
マナ企画の平成21年10月期に係る法人事業税及び法人都民税(以下,併
せて「法人二税」という。)の法定納期限は平成22年1月4日であり,その
1年前の日は平成21年1月4日である。
これに対し,上記1(1)ないし(4)の行為(以下「本件各無償譲渡行為」とい
う。)のうち,同日以後にされた事実は確認できなかったため,当該都税に係
る滞納金については,徴収金の法定納期限の1年前の日以後にされたものであ
るという要件を満たさない。
(2)平成20年10月期に係る法人二税の滞納金(本件滞納金⑦ないし⑩)
マナ企画の平成20年10月期に係る法人二税の法定納期限は平成21年
1月5日であり,その1年前の日は平成20年1月5日である。
これに対し,本件各無償譲渡行為として,合計2287万1750円の資産
が,同日以降に処分されており,当該都税に係る滞納金については,同額を限
度として,徴収金の法定納期限の1年前の日以後にされたものであるという要
件を満たす。
(3)平成19年10月期に係る法人二税の滞納金(本件滞納金⑤及び⑥)
マナ企画の平成19年10月期に係る法人二税の法定納期限は平成20年
1月4日であり,その1年前の日は平成19年1月4日である。
これに対し,本件各無償譲渡行為として,合計5145万1750円の資産
が,同日以降に処分されており,当該都税に係る滞納金については,同額を限
度として,徴収金の法定納期限の1年前の日以後にされたものであるという要
件を満たす。
(4)平成18年10月期に係る法人二税の滞納金(本件滞納金③及び④)
マナ企画の平成18年10月期に係る法人二税の法定納期限は平成19年
1月4日であり,その1年前の日は平成18年1月4日である。
これに対し,本件各無償譲渡行為として,合計5245万1750円の資産
が,同日以降に処分されており,当該都税に係る滞納金については,同額を限
度として,徴収金の法定納期限の1年前の日以後にされたものであるという要
件を満たす。
(5)平成17年10月期に係る法人二税の滞納金(本件滞納金①及び②)
マナ企画の平成17年10月期に係る法人二税の法定納期限は平成18年
1月4日であり,その1年前の日は平成17年1月4日である。
これに対し,本件各無償譲渡行為として,合計5245万1750円の資産
が,同日以降に処分されており,当該都税に係る滞納金については,同額を限
度として,徴収金の法定納期限の1年前の日以後にされたものであるという要
件を満たす。
3納税者の滞納徴収金につき滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に不足する
と認められること
前提事実(2)のとおり,処分行政庁及び中央都税事務所長が,マナ企画に係る
都税等の滞納金を徴収するため,同社に属する不動産,自動車及び賃料債権に対
して滞納処分を行っても,滞納金全額に充当することはできなかった上に,同社
については,破産手続が開始され,さらに,破産手続費用不足を理由に同手続が
廃止されている。
したがって,マナ企画の本件各滞納金につき滞納処分をしてもなおその徴収す
べき額に不足すると認められる。
4上記3の徴収不足が上記1の処分に基因すると認められること(その処分がな
かったならば,現在の徴収不足が生じなかったと認められること)
本件各無償譲渡行為により,マナ企画から原告に対して,他人名義の口座を経
由して少なくとも5245万1750円もの資金を流出させなければ,マナ企画
は,同資金を納税原資として都税等の滞納金に納付でき,徴収不足が生じなかっ
た。
5小括
以上のとおり,原告は,マナ企画の本件各滞納金につき地方税法11条の8の
定める各要件を満たしている。
以上

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