弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成30年(わ)第681号
主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,当時居住していた部屋の上の階にある名古屋市a区b町c丁目d番地
e号のA方から騒音がしていると思い込んで腹を立て,平成30年4月23日午後
8時16分頃,同室内において,居住していたB(当時10歳)が掛布団の中に潜り
込んだところ,持っていたハンマーでその掛布団の上から同人の後頭部を殴る暴行
を加え,よって,同人に安静加療約2週間を要する後頭部打撲・挫創の傷害を負わせ
たものである。
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法204条に該当するので,所定刑中懲役刑を選択し,その
所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状により同法25条1項を適
用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
被告人は,10歳の子供である被害者が全くの無抵抗であるのに,布団の上からと
はいえその後頭部を約260グラムという相当の重量のある金属製のハンマーの先
端で殴打しており,態様は危険で凶悪である。酒の影響からか被告人の記憶には混乱
がみられるが,信用性に争いのない被害者の供述から,被害者は,自宅に上がってき
た被告人から逃れるため掛布団の中に潜り込んで隠れた後,周囲を確認しようと掛
布団から顔のみを出し,その際直近に立つ被告人からハンマーで殴りかかられ,とっ
さに頭に掛布団を被った直後に被害を受けたと認められる。掛布団からのぞかせた
被害者の姿勢等から,ハンマーがその頭部付近に当たる可能性を被告人が理解して
犯行に及んだことは明らかである。現に生じた傷害結果も軽くはないが,掛布団を被
るという被害者のとっさの行動がなければより重大な結果が生じる危険性も高かっ
たというべきである。突如理由も分からないまま被害を受けた精神的衝撃なども軽
視できない。被告人は,他の部屋の住人の話から,以前から悩まされていた騒音の原
因が被害者方にあると思い込んで犯行に及んだが,酒の影響もあったとはいえ,話合
いも全くせず,しかも相手が子供と知りながら,いきなりハンマーで殴りかかる理由
としておよそ正当化できるものではない。
このように,本件は傷害の事案の中でも相応に悪質というべきである。被告人が罪
を認めて反省し,二度と被害者やその家族に接触しないことを誓約し,100万円の
被害弁償をし,被害者及びその親権者が被告人の寛大な処分を求めていることや,被
告人にこれまで前科前歴がないことなどを考慮しても,被告人に対し,罰金刑ではな
く懲役刑を科すのが相当であるが,これらの事情に照らし,その刑期を主文のとおり
定めた上,執行猶予を付し社会内で更生する機会を与えるのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役2年)
平成30年7月11日
名古屋地方裁判所刑事第5部
裁判官西山志帆

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