弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
(一) 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。
(二) 当審における訴訟費用は、これを二分し、その一を控訴人(附帯被控訴
人)の、その一を被控訴人(附帯控訴人)の各負担とする。
○ 事実
一 控訴人・附帯被控訴人(以下、単に「控訴人」という。)は、控訴の趣旨とし
て、「(一)原判決を取消す。(二)被控訴人は、東京都港区に対し、金一四万五
一三九円を支払え。(三)訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」
との判決を求め、附帯控訴に対して控訴棄却の判決を求めた。
被控訴人・附帯控訴人(以下、単に「被控訴人」という。)訴訟代理人は、控訴に
対して控訴棄却の判決を求め、附帯控訴の趣旨として、「(一)原判決中被控訴人
敗訴の部分を取消す。(二)控訴人の請求を棄却する。(三)訴訟費用は、第一、
二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
二 当事者双方の事実上の主張は、原判決事実摘示記載のとおりであるから、これ
を引用する。
三 証拠関係は、原判決事実欄第三及び当審記録中書証目録記載のとおりであるか
ら、これを引用する。
○ 理由
一 当裁判所もまた、東京都港区による本件電話料金名下の支出金につき、被控訴
人は同区に対して金五万三八五〇円を賠償すべきであるが、その余の支出金額の賠
償義務まではないと判断するものであつて、その理由は原判決理由記載のとおりで
あるから、これを引用する。
ただし、次のように附加する。
1 特別区の区長、助役、収入役及び教育長がその職務を遂行するために私宅の私
設電話を使用した場合の電話料金は、区にとつて地方自治法第二三二条第一項にい
うその事務を処理するために必要な経費に該当し、私設電話である関係から、もし
その職員が電信電話公社に料金を支払う場合には、その料金は、区のために立替え
支払うものであるということができる、そうすると、当該職員による支払に先立ち
区がその料金額を当該職員に支払い又は当該職員に代つて直接に電信電話公社に支
払つても、その支出金は地方自治法第二〇四条の二にいう「給与その他の給付」を
職員に支給したことにはならず、その支出については、法律又は条例の定めを要す
るものではないと解される。
2 地方自治法第二四二条の二第一項第四号による当該職員に対する損害賠償請求
の訴えについては、当該公金の支出等が違法又は不当であることの立証責任は請求
者(原告)が負うと解すべきである。したがつて、本件においては、本件電話料金
中通話料の支出が違法であるというには、これが職務のための通話に係るものでな
いことを控訴人において積極的に証明することを要するところ、本件における港区
の助役、収入役及び教育長らの職務上の通話に係る度数料が既に認定した全度数料
の半数には到底達しないとか、達しないとすればどの程度のものであるかについて
は、原審における控訴人本人の供述のほかこれに沿う資料がなく、右供述も客観的
裏付けを欠き措信しがたいのであるから、既に認定した全度数料の半額を超えて更
に港区に損害があつたとすることはできない。
二 以上のとおりであるから、控訴人の本訴請求は、被控訴人に対して東京都港区
への金五万三八五〇円の支払を命ずる限度で理由があり、これを認容すべきである
が、その余は失当としてこれを棄却すべきである。よつて、これと同趣旨に出た原
判決は正当であつて、本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないから、これらを
棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第九二条を適用し
て、主文のとおり判決する。
(裁判官 田尾桃二 内田恒久 藤浦照生)

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