弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岡林辰雄、同中田直人の上告理由第一点について。
 所論は、要するに、旧訴訟(東京地方裁判所昭和二七年(ワ)第四九八六号、東
京高等裁判所昭和二九年(ネ)第一四四七号および最高裁判所昭和三〇年(オ)第
八六一号各土地建物明渡請求事件)において、被上告人らは、甲一号証および同二
号証が偽造である旨主張していたのであるから、これらが偽造であることを事由と
する本件再審の訴は、民訴法四二〇条一項但書によつて許されないと解すべきであ
り、これを許容した原判決には同条項の解釈適用を誤つた違法がある、というもの
である。
 しかしながら、民訴法四二〇条一項六号および七号に該当する事由が再審事由と
して主張されている場合、同条一項但書によつて再審の訴が許されないのは、旧訴
訟における上訴により、右再審の事由のみならず、同条二項の再審の訴の適法要件
が主張され、もしくは、かかる要件の存在することを知りながら主張されなかつた
場合に限られるものと解するのが相当である。そして、原審の確定したところによ
れば、本件旧訴訟における上訴により、被上告人らは、甲一号証および同二号証が
偽造であり、旧訴訟第二審証人Dの証言(第一回)が虚偽である旨主張していたが、
上告人が甲一号証および同二号証を偽造したものであることならびに証人Dの右証
言が虚偽であることにつき、民訴法四二〇条二項の要件を具備するに至つたのは、
旧訴訟上告審の上告棄却の判決の言渡後であるというのであり、右認定判断は論旨
第二点について判示するとおり正当であるから、甲一号証および同二号証の偽造な
らびに証人Dの右証言が虚偽であることを事由とする本件再審の訴は、同条一項但
書によつて不適法となるものではない。これと同趣旨の原判決は正当として是認す
ることができる。所論引用の判例は本件と事案を異にして適切でない。原判決に所
論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第二点について。
 所論は、上告人の甲一号証および同二号証の偽造行為に対する不起訴処分の有無、
不起訴処分があつたとすれば、証拠欠缺外の事由に基づくものであるかどうかの諸
点について、被上告人らが主張・立証しなかつたにもかかわらず、右甲号各証の偽
造行為につき、民訴法四二〇条二項後段の要件が存在する旨判断した原判決には弁
論主義に反する違法があり、また、原判決には右の諸点につき具体的に審理判断し
なかつた審理不尽による理由不備ないし理由そごの違法がある、というものである。
 按ずるに、本件甲一号証および同二号証の私文書偽造とこれを行使して犯された
本件公正証書原本不実記載・同行使の各所為は、いわゆる牽連犯であつて科刑上一
罪の関係にあると解すべきである。そして、かかる牽連犯において、目的行為たる
公正証書原本不実記載・同行使の各罪につき起訴があつた場合には、検察官は、そ
の手段行為たる私文書偽造(同行使)の罪につき訴因の追加をなしうるが、かかる
訴因の追加がなされなかつたとしても、私文書偽造(同行使)の罪が犯されたこと
を前提に公正証書原本不実記載・同行使の各罪につき有罪の判決がなされてこれが
確定し、この確定判決の既判力が私文書偽造の罪に及び、この罪につき公訴の提起
をなしえなくなつたときは、私文書偽造行為につき民訴法四二〇条二項後段所定の
証拠欠缺外の理由により有罪の確定判決をうること能わざるときに当たると解する
のが相当である。したがつて、本件において、上告人の甲一号証および同二号証の
偽造行為を前提とする上告人に対する本件公正証書原本不実記載・同行使の各罪に
つき有罪の判決が確定したときは、甲一号証および同二号証の偽造につき民訴法四
二〇条二項後段の要件が充足されたものというべきであり、これと同趣旨の原判決
は正当として是認することができる。そして、本件記録に徴すれば、原審における
被上告人らの主張には、右の趣旨の主張も含まれていると解しうるから、原判決に
は所論弁論主義違背の違法も存しない。原判決に所論の違法は認められない。論旨
は、独自の見解に立脚して、原判決の違法をいうものであつて、採用することがで
きない。
 同第三点について。
 所論は、原判決には民訴法四二四条所定の再審期間の起算点の解釈適用を誤つた
違法がある、という。
 思うに、牽連犯において、目的行為がその手段行為についての時効期間の満了前
に実行されたときは、両者の公訴時効は不可分的に最も重い刑を標準に最終行為の
時より起算すべきものと解するのが相当である(大審院判決大正一二年一二月五日
刑集二巻一二号九二二頁、大審院判決昭和七年一一月二八日刑集一一巻下一七三六
頁。)。
 本件において、原審の確定した事実および本件記録上明らかな事実によれば、上
告人が甲一号証および同二号証の各私文書を偽造したのは昭和二六年一一月中であ
るが、甲一号証の偽造罪についての公訴時効は、これを用いて公正証書原本不実記
載・同行使の各罪が犯された同年一二月六日から起算すべきであり、甲二号証の偽
造罪についての公訴時効は、これを用いて右各罪が犯された同月四日から起算すべ
きものである。そして、上告人に対して、右各公正証書原本不実記載・同行使の各
罪につき公訴が提起されたのが、この各罪の公訴時効期間内である昭和三一年一二
月三日であるから、甲一号証および同二号証の各偽造の罪についても公訴時効は完
成しなかつたものと解すべきである。そして、前段説示のとおり、甲一号証および
同二号証の偽造行為につき民訴法四二〇条二項後段の要件が充足されたのは、上告
人に対し、右各公正証書原本不実記載・同行使の各罪について有罪判決が確定した
昭和三八年一二月一六日(原判決に一五日とあるのは、一六日の誤記と認める。)
であり、原審の確定するところによれば、被上告人が右有罪判決の確定を知つたの
は同月二〇日頃であるというのであるから、それから三〇日以内である昭和三九年
一月一六日に提起された本件再審の訴は、民訴法四二四条一項所定の不変期間経過
前に提起されたものというべきである。
 また、記録によれば、本件再審の訴における取消の対象とされている旧訴訟の第
二審判決が確定したのは昭和三二年七月一九日であるから、本件再審の訴は、それ
から五年以上を経過した後に提起されたことが明らかである。しかしながら、民訴
法四二四条四項にいう「再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキ」とは、同法四二
〇条一項八号の場合に限定されるべきではなく、同条一項六号および七号の場合で
あつても、これらにつき同条二項の要件が判決確定後に充足されたときをも含むと
解するのが相当である。けだし、文理上右のように解することに支障はなく、また、
右のように解さなければ、判決確定から五年以上経過した後、はじめて、刑事の有
罪判決が確定するような場合には、再審の訴を事実上否定することとなり、再審の
訴を提起しようとする者にとつて著しく酷な結果となるからである。なお、最高裁
昭和二九年二月一一日第一小法廷判決民集八巻二号四四〇頁は、上告論旨と対比す
れば、民訴法四二四条三項および四項所定の期間の起算点は、当事者の再審事由の
知・不知のいかん、その時期によつて異ならないことを判示したにとどまり、その
余の部分は傍論にすぎず、前記のような解釈をとることを否定する判例とは解しえ
ない。
 本件において、既に述べたとおり、甲一号証および同二号証の各偽造ならびに証
人Dの前記証言が虚偽であることにつき、同法四二〇条二項の要件が充足されたの
は昭和三八年一二月一六日であるから、本件再審の訴は同法四二四条三項、四項所
定の期間経過前に提起されたものと認められる。
 以上の諸点につき、右と同旨の見解に基づき、本件再審の訴を適法とした原審の
判断は、正当として是認することができる。所論引用の判例は本件と事案を異にし
て適切でない。原判決に所論の違法は認められない。論旨は、右と異なる見解に立
脚して、原判決の違法をいうものであつて、採用することができない。
 同第四点について。
 旧訴訟の第二審における証人Dの証言(第一回)が虚偽であつたことは、民訴法
四二〇条一項七号、二項前段に該当し、再審の事由となる旨の原審の判断は正当と
して是認することができる。また、旧訴訟第二審判決の事実認定において、Dの右
証言は、旧訴訟第一審証人Eの証言および旧訴訟第二審証人Fの証言よりも重要で
あつたことは記録上窺いうるから、Dの右証言につき再審事由を肯定し、Eおよび
Fの右各証言につき事由を否定したとしても、理由そごないし理由不備の違法があ
るとはいえない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第五点について。
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認する
ことができ、右認定判断の過程に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、
原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用す
ることができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝

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