弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由第一点について
 しかしながら原審挙示の証拠によれば原判示のような認定もできないことはない。
論旨にいう、上告人が材木に全然経験のない青年であるということや上告人が本件
材木の引渡を受けるまでこれを監視する方法がないということからは、必ずしも上
告人が本件山林を買受けるに当りその数量の存在を前提としたものと認めなければ
ならないものでもないし、また右の売買代金を定めるに際して当事者間に一石当り
の単価を基準として交渉がなされたということも、それは単に代金を定める標準と
するためにすぎないといえないこともないから、その事実から直ちに本件山林の売
買において所定数量の存在を契約の要素としたものということはできない。
 要するに原審は、当事者双方山を検分しその山に存在する松材全部として契約し
たので数量の過不足は全く問題にしない趣旨の契約と認定したのであり、山林など
の売買においては、そういう契約も全く無いとは言えないから、原審の認定を以て
直ちに実験則に反するものとすることは出来ない。そして原審挙示の証拠によれば
原審のしたような認定もできないことはないので、結局論旨は原審が確定した事実
の認定を非難するものに過ぎす、上告適法の理由とならない。
 上告理由第二点について
 一定数量のものを目的とした売買において当事者間に数量の過不足について苦情
をいわないという話合があつた場合においてもその過不足には取引の通念上自ら限
度があるということは論旨のいうとおりである。しかし本件売買に関し原審が証拠
により認定したところは、本件山林は被上告人が松だけでも二万才以上あると告げ
られて他より買受けたものであり、これを上告人に売渡すに当つては仲介人を介し
て上告人に対し、自分は老年で一々材木の受渡に立会うことは困難であるから、量
の過不足はいわず松林合計一万八千才あるものとして売買したいとの意向を伝え、
その後上告人と被上告人とは本件山林を実地に検分し、上告人も被上告人の右意向
を諒承してこれを買受けたというのであつて、これによると本件売買における当事
者の意思は実地に検分した当該山林に満足してこれを売買すことにあつたのであり
その数量が果して何才あるかということは単に価格算定の基準とするの外これを問
題にしなかつたものと認められないこともなく、従つて本件売買は一定数量の材木
を目的としたものでないといえないこともないから、本件材木の数量が現実には一
万八千才の約半分しかなかつたからといつて、これに対し今更とかくの言を弄する
ことはできないとした原判決には、何等証拠の趣旨ひいて契約の趣旨を誤解した違
法はなく論旨は理由がない。
 上告理由第三点及び追加上告理由第二点について、
 しかしながら上告人が原審で主張したところは、単に売買物件が契約数量の半分
にも足らぬに拘らずその代金全額を請求するのは信義誠実の原則に反するものとい
うのであつて、右の数量の不足について被上告人は故意に黙秘したという事実を主
張しているのでないから、原審がこの点につき釈明を求めることなく、またこれに
つき審理判断をしなかったのは当然である。そして物件が契約数量の半分しかなか
つたとしても、前段説示の契約の趣旨からいって、直ちに右契約及びこれに基く残
代金請求を信義誠実に反するものとも言えないことは、原判決の判示するとおりで
ある。(なお前記第一点に対する説示参照)。論旨はすべて採用の限りでない。
 上告理由第四点について、
 しかしながら原判決の主文にいう松材千才とは本件売買物件の一部である松材千
才を指すものであることはその理由により明白であるから、原判決の主文に松材を
特定する表示がない事実は未だ原判決を破棄する理由となり得ない。また原判決が
上告人に対し松材千才と引換に金二万五千四百円の支払を命じたのは、本件売買に
おいて材木の引渡と代金の支払とは同時履行の関係にあり、従つてその一部である
松材千才と残代金二万五千四百円とも同時履行の関係にあると認めたがためである
こと判文上明らかである。従つて、原判決には何等所論のような違法はなく、論旨
は理由がない。
 追加上告理由第一点について、
 原判決は第一審における被上告人本人の供述を採用し、被上告人は本件売買の目
的である松材の伐採、搬出費用として金一万八千円を支出したと認定した。しかし
右の供述によつては右の費用が果して松材のみに関するものであるかどうかは必ず
しもしかと明確とは認め難く、これを論旨指摘の各証拠と綜合すれば寧ろ論旨のい
うとおり右費用の中には松材以外の雑木の伐採、搬出費用をも含むと認めるのを妥
当とし。原判決はこの点において採証の法則に違反したものと認められる。しかし
この事実は本件に関しては単に間接的のものに止まり、右の違法は未だ原判決の結
論に影響を与えるものといい難い。従つて本論旨もまた採用に値しない。
 以上のとおり本件上告は理由がないから民訴第四〇一条第九五条第八九条を適用
し主文のとおり判決する。
 右は裁判官全員の一致した意見である。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛