弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告をいずれも棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人沢田喜道、同草野治彦の上告趣旨について
 第一点は事実誤認の主張、第二点は量刑不当の主張に過ぎず、いずれも上告適法
の理由にならない。
 被告人Bの弁護人内水主一の上告趣意について
 所論は法令解釈の非難に過ぎず、上告適法の理由にならない(使用済の印紙であ
つても、財物であつて盗罪の目的となりうることは大審院判例〔明治四四年八月一
五日判決、録一七巻一四八八頁、昭和四年七月四日判決、集八巻三八六頁〕の存す
るところであつて、当裁判所においても右見解を変更するの要を認めない)。
 被告人Cの弁護人原田茂の上告趣意について
 所論は量刑不当の主張に過ぎず、上告適法の理由にならない。
 被告人Dの弁護人柳田貞吉、同塚崎直義の上告趣意第一点について
 被告人Dの行為に対し、印紙犯罪処罰法を適用しているのは、所論の如く、第一
審判決第五(三)の〔ロ〕b同(三)の〔ニ〕c及び同(三)の〔ニ〕dのⅠⅡの
事実であるが、その中に需要者割当証明書の存しないことは、判文上明らかである。
されば、右割当証明書に印紙犯罪処罰法を適用したのは憲法三一条に反するとの論
旨(一)の主張は、その前提を欠くものといわなければならない。次に、取引高税
印紙の点であるが、同印紙が印紙犯罪処罰法にいわゆる印紙であることは、昭和二
九年(あ)第一五二三号、同三〇年二月三日当裁判所第一小法廷決定の判示すると
ころである。なるほど取引高税法は既に廃止されたことは所論のとおりであるが、
昭和二三年法律第一四二号「印紙をもつてする歳入金納付に関する法律」附則二項
(本項は昭和二四年法律第四三号により設けられ、同年五月一日より施行)によれ
ば、当分の間収入印紙に代えて取引高税印紙をもつて租税その他の国の歳入金を納
付することができると定められており、右附則は取引高税法の廃止後も行われてい
るものである。従つて、取引高税印紙は今もなお有効に存するのであるから、取引
高税法の廃止により印紙犯罪に対する刑も当然廃止されたものとする論旨(二)の
主張も亦その理由がない。
 同第二点について
 論旨の理由のないことは、右第一点について説明したところによつておのずから
明らかである。
 同第三点について
 論旨の理由のないことは、弁護人内水主一の上告趣意に対する説明のとおりであ
る。
 同第四点は事実誤認の主張、同第五点は量刑不当の主張に過ぎず、いずれも上告
適法の理由にならない。
 また記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条三八六条一項三号により主文のとおり決定する。
 この決定は、裁判官全員一致の意見である。
   昭和三〇年八月九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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