弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人本人の上告趣意一について。
 所論は、出入国管理令六〇条、七一条は、旅券法一三条一項五号の規定と相まつ
て憲法二二条二項、三一条に違反すると主張するが、旅券法一三条一項五号および
出入国管理令六〇条、七一条がいずれも憲法二二条二項、三一条に違反しないこと
は、当裁判所大法廷の判決(前者につき昭和二九年(オ)第八九八号同三三年九月
一〇日判決、後者につき昭和三四年(あ)第一六七八号同三七年一一月二八日判決)
の趣旨に徴し明らかであるから、所論は採ることを得ない。
 同二について。
 所論は、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 なお、本件起訴状記載の公訴事実は「被告人は、昭和二八年八月下旬頃より昭和
二九年八月下旬頃までの間に有効な旅券に出国の証印を受けないで、本邦より本邦
外の地域である中国に出国したものである」というのであつて、犯罪の日時を表示
するに一年余の期間内とし、場所を単に本邦よりとし、その方法につき具体的な表
示をしていないことは、所論のとおりである。しかし、刑訴二五六条三項は、裁判
所に対し審判の対象を限定するとともに、被告人に対し防禦の範囲を示すことを目
的とする趣旨であり、犯罪の日時、場所及び方法は、犯罪の種類、性質等の如何に
よりこれを詳らかにすることができない特殊事情がある場合には、右の法の目的を
害さないかぎりの幅のある表示をしても、その一事のみを以て罪となるべき事実を
特定しない違法があるというべきでないことは、前掲昭和三四年(あ)第一六七八
号事件判決の示すところである。
 これを本件についてみるのに、検察官は、本件第一審公判において、証拠により
証明すべき事実として、(一)被告人は昭和三四年一二月一五日オランダ船A号で
中国から本邦に帰国した事実、(二)被告人は同二八年八月頃まで今治市に居住し
ていたが、その後所在不明となり、少なくとも同月下旬頃から一年以内に中国に密
出国した事実、(四)被告人は出国に際し旅券の交付を受けず、従つて、旅券に出
国の証印を受けていなかつた事実を陳述し、これによれば、検察官は、被告人が昭
和二八年八月頃まで、本邦に居住していたが、その後所在不明となつてから日時は
詳らかでないが、少なくとも同月下旬頃から一年以内に、中国に向けて不法に出国
し、引き続いて本邦外にあり、同三四年一二月一五日前記オランダ船で帰国したも
のであるとして、右不法出国の事実を起訴したものとみるべきである。そして、本
件密出国のように、本邦をひそかに出国してわが国と未だ国交を回復せず、外交関
係を維持していない国に赴いた場合は、その出国の具体的顛末について、これを確
認することが極めて困難であつて、まさに上述の特殊事情のある場合に当るものと
いうべく、たとえその出国の日時、場所及び方法を詳しく具体的に表示しなくても、
起訴状及び右検察官の第一審公判における陳述によつて本件公訴が裁判所に対し審
判を求めようとする対象は、おのずから明らかであり、被告人の防御の範囲もおの
ずから限定されているというべきであるから、被告人の防禦に実質的の障碍を与え
るおそれはない。それゆえ、所論は採ることを得ない。
 同三について。
 所論は、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 なお、刑訴二五五条一項前段にいう犯人が国外にいる場合は、捜査官において、
犯罪の発生またはその犯人を知ると否とを問わず、犯人の国外にいる期間、公訴時
効の進行を停止するものと解すべきことは、当裁判所の判例(昭和三五年(あ)第
七三五号同三七年九月一八日第三小法廷判決)の示すところであるから、これと異
なる見解を前提として、本件につき公訴の時効が完成したとする所論は、採ること
を得ない。
 また、記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は、論旨二に関する裁判官奥野健一の補足意見があるほか、裁判官全員
一致の意見によるものである。
 裁判官奥野健一の補足意見は、本判決に引用された昭和三四年(あ)第一六七八
号事件判決に附記したところと同趣旨である。
  昭和三八年一月二五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介

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