弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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(別添「楽曲リスト」及び「楽曲リスト(追録)」は添付省略)
主文
1被告は,札幌市i区南j条西k丁目l「C」において,別添「楽曲リスト」及び
「楽曲リスト(追録)」に記載の音楽著作物を,オーディオ装置(プレーヤー,携
帯音楽プレーヤー,アンプ,スピーカー等の再生装置)を操作して録音物を再生5
する方法により利用してはならない。
2被告は,原告に対し,3万1104円及びこれに対する平成29年8月10日
から支払済みまで,年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は被告の負担とする。
4この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。10
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
原告は,音楽著作権等管理事業者であるところ,被告が,理容所として経営す15
る「C」(以下「本件店舗」という。)において,平成26年5月以降,背景音
楽(BGM)として,携帯音楽プレーヤー,アンプ,スピーカー等のオーディオ
装置(以下これらの装置を「再生装置」という。)を利用して,原告が著作権を
管理する楽曲を再生し,原告の管理する著作権(著作権法22条1項の演奏権)
を侵害したとして,被告に対し,①原告が著作権を管理すると主張する別添「楽20
曲リスト」及び「楽曲リスト(追録)」に記載の楽曲(以下,原告が著作権を管
理する楽曲を「原告の管理楽曲」といい,原告が自らの管理楽曲であると主張す
る別添「楽曲リスト」及び「楽曲リスト(追録)」に記載の楽曲を「本件各楽曲」
という。)につき,本件店舗において再生装置を用いて利用することの差止め,
並びに②主位的に不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に不当利得に基25
づく返還請求として,平成26年5月から平成29年6月30日までの原告の管
理楽曲である楽曲を背景音楽(BGM)として利用したことの使用料相当額であ
る3万1104円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成29年8
月10日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を
求めた。
1前提事実等(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に5
認定できる事実)
当事者等
ア原告は,著作権等管理事業法に基づき,文化庁長官の登録を受けた音楽著
作権等管理事業者であり,著作権者から著作権ないしその支分権(演奏権,
録音権,上演権等)の信託を受けてこれを管理し,音楽利用者に音楽著作物10
の利用を許諾してその対価を徴収し,これを国内外の著作権者に分配するこ
とを主たる目的とする一般社団法人である。
原告は,外国の著作物についても,我が国が締結した著作権条約に加盟す
る諸外国の著作権仲介団体との間で相互管理契約を締結することにより,あ
るいは,外国の音楽出版者との間でサブパブリッシング契約を締結した日本15
の音楽出版者から信託を受けることにより,著作権の管理を行っている。
イ被告は,平成17年6月28日,札幌市i区南j条西k丁目lに広さ33
㎡の理容所である本件店舗を開店し,現在,本件店舗において,理容の業務
を行っている(甲5,6の2)。
事実経過等20
ア被告は,平成17年6月28日に本件店舗を開店して以降,本件店舗の営
業時間中に,本件店舗のBGMとして,再生装置を用いて楽曲を再生してい
た(甲5,6の2)。
イ原告は,平成27年6月10日,札幌簡易裁判所に対し,被告を相手方と
する民事調停の申立てを行い,被告が本件店舗のBGMとして原告の管理楽25
曲を利用したことについての使用料相当額の支払及び原告の管理楽曲を本
件店舗のBGMとして再生することの差止めを求め,同年7月14日に第1
回の調停期日が開かれたものの,同日,調停不成立により終了した(以下「本
件調停」という。甲9,11)。
ウ原告の従業員は,平成29年3月24日,同月29日,同年4月25日,
同月27日,同年5月29日,同年6月1日,同月28日,同月29日に,5
それぞれ本件店舗に来店し,原告の従業員であること等を秘して,被告から
髪のカット等を受けるとともに,本件店舗で再生されているBGMの楽曲に
ついて実態調査を実施したところ(以下,これらの原告の従業員が行った実
態調査を併せて,「本件各実態調査」という。),同年3月29日に行った際の
BGMとして再生されていた楽曲に,原告の管理楽曲が含まれていることが10
判明した(なお,同日以外の本件各実態調査の際にBGMとして利用されて
いた楽曲に,原告の管理楽曲が含まれていたか否かは,当事者間に争いがあ
る。甲6の1~8)。
2争点
本件各楽曲が原告の管理楽曲であるか(以下「争点1」という。)15
被告が本件店舗で原告の管理楽曲を再生していたか(以下「争点2」という。)
被告の故意又は過失(以下「争点3」という。)
原告の損害又は損失の額(以下「争点4」という。)
3争点に対する当事者の主張
争点1(本件各楽曲が原告の管理楽曲であるか)について20
(原告の主張)
本件各楽曲は,原告の管理楽曲から,社交飲食店等において多く利用されて
いる楽曲(別添「楽曲リスト」),並びに本件店舗において実際に利用された楽
曲及び今後利用される可能性が高い楽曲(別添「楽曲リスト(追録)」)を,そ
れぞれ原告の作品データベースから抽出し,リスト化したものであり,全て原25
告の管理楽曲である。
(被告の主張)
ア本件各楽曲が,原告の管理楽曲であることは,否認する。
イ本件各楽曲の一部について,Eのウェブサイト(以下「第三者サイト」と
いう。)上では,著作権行使の対象とはならない旨を表すマーク(パブリック
ドメイン又はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのマーク。以下「本件5
マーク」という。)が付されている。また,本件各楽曲の一部の楽曲がアップ
ロードされてインターネットで全世界に配布されているにもかかわらず,数
年間にわたり著作権管理団体から差止めを受けていないことなどからする
と,本件各楽曲が原告の管理楽曲であることは疑わしい。
争点2(被告が本件店舗で原告の管理楽曲を再生していたか)について10
(原告の主張)
ア原告が,本件各実態調査の際に,本件店舗のBGMとして再生されていた
楽曲の著作権について調査したところ,曲目が判明した全319曲のうち,
275曲が原告の管理楽曲であり,平成29年3月29日以外の実態調査の
際にも,原告の管理楽曲が多数利用されていた。15
イ被告は,平成26年5月22日,原告が店舗における音楽の利用状況の
調査を委託している株式会社F(現在の商号は,「G株式会社」である。)
の電話オペレーターに対し,1930年代から1940年代の音楽を利用
している旨を述べている。被告が,本件店舗でBGMとして利用していた
楽曲は,主にジャズであったと考えられるところ,本件各実態調査の際に20
被告がBGMとして再生していた楽曲のうち,1930年代及び1940
年代のジャズの楽曲が245曲あったが,うち208曲が,原告の管理楽
曲であった。
また,被告は,平成27年2月24日,原告の従業員に対し,Hの楽曲
を利用している旨を述べ,同年4月22日,原告の従業員が本件店舗に訪25
問した際に,本件店舗のBGMとしてIの楽曲を再生しており,同年6月
21日付けで,本件調停における答弁書にJの楽曲を利用している旨を記
載して,札幌簡易裁判所に提出している。しかし,H,I又はJが,アー
ティスト名又は著作者として登録されている全楽曲のうち,90%以上が
原告の管理楽曲である。
以上によれば,被告は,平成26年5月以降,本件店舗のBGMとして,5
一貫して原告の管理楽曲を利用していたというべきである。
(被告の主張)
ア被告が,原告の従業員による2回目の実態調査の日である平成29年3月
29日に原告の管理楽曲をBGMとして利用していたことは認めるが,これ
は,店舗用の再生装置をパソコン上で操作していたため,私物の再生装置を10
使用していたことに基づくものである。
同日以外の本件各実態調査時に,被告が本件店舗のBGMとして再生して
いた楽曲に原告の管理楽曲が含まれていたことは否認する。被告は,著作権
の消滅した楽曲を選定して,本件店舗のBGMとして利用しており,原告の
管理楽曲を利用したことはない。15
イ被告は,本件店舗で再生するための楽曲を,第三者サイト等の自由に楽曲
をダウンロードできるサイトからダウンロードしていたこと,第三者サイト
には,著作権が消滅したことを表す本件マークが付されていることなどから
すれば,被告が本件店舗のBGMとして利用していた楽曲は,原告の管理楽
曲ではない。20
争点3(被告の故意又は過失)について
(原告の主張)
ア原告は,平成26年5月22日以降,被告に対して,原告の管理楽曲を利
用していること及び使用料相当額の支払を求め,利用許諾契約の締結を求め
ていたにもかかわらず,被告は,本件店舗のBGMとして,原告の管理楽曲25
を利用し続けていたのであるから,被告には,故意又は過失が認められると
いうべきである。
イ被告は,原告に対し,本件店舗のBGMとして利用している楽曲について,
著作権の管理状況等の説明を求めたにもかかわらず,原告が何の説明もしな
かったと主張するが,原告は,被告から本件店舗のBGMとして再生してい
る楽曲の著作権者について説明を求められた際,ほとんどが原告の管理楽曲5
である旨を繰り返し説明している。
(被告の主張)
ア争う。
イ被告は,原告に対し,本件店舗のBGMとして利用している楽曲の著作権
の管理状況等の説明を求めて話し合いに応じる意思を伝えているにもかか10
わらず,原告からは何の説明もなかった。また,被告は,本件調停の期日で,
本件店舗のBGMとして利用している楽曲のリスト及び再生装置を持参し,
原告の管理楽曲であるか否かの確認を求めたにもかかわらず,原告はこれら
の楽曲が原告の管理楽曲であること等の調査をせず,原告の管理楽曲が含ま
れている旨の説明をしなかった。15
このように被告は,本件店舗のBGMとして利用していた楽曲の著作権の
管理状況について,原告に説明を求めるなどしているにもかかわらず,原告
からは何の説明もなかったのであるから,仮に本件店舗のBGMとして利用
していた楽曲に原告の管理楽曲が含まれていたとしても,被告に過失はない。
争点4(原告の損害又は損失の額)について20
(原告の主張)
本件店舗で原告の管理楽曲をBGMとして利用する際に必要な使用料は,平
成28年4月30日まで適用される使用料規程(以下「旧規程」という。)によ
ると,年額6000円であり,平成28年5月1日以降に適用される使用料規
程(以下「新規程」という。)によると,月額1200円である(なお,新規程25
の年額使用料は,無許諾利用者に対しては適用されないため,本件で新規程の
年額使用料を基に使用料相当額を算定するのは相当でない。)。
したがって,原告は,被告が,平成26年5月から平成29年6月30日ま
での間,本件店舗のBGMとして原告の管理楽曲を利用していたことにより,
以下のとおり,合計3万1104円の損害又は損失を被ったというべきである。
ア平成26年5月から平成28年4月30日までの2年間5
6000円(旧規程の年額使用料)×2年×1.08(消費税相当額)
=1万2960円
イ平成28年5月1日から平成29年6月30日までの14か月
1200円(新規程の月額使用料)×14か月×1.08(消費税相当額)
=1万8144円10
(被告の主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1争点1(本件各楽曲が原告の管理楽曲であるか)についての判断
原告は,本件各楽曲について,原告の管理楽曲の作品データベースから,社15
交場や飲食店等において日常的に反復継続して利用されている主要な楽曲(別
添楽曲リスト),並びに被告が本件店舗のBGMとして利用した原告の管理楽
曲及びこれを基に他に利用される可能性が高い管理楽曲を抽出したもの(別添
楽曲リスト(追録))であると主張し,原告の北海道支部の支部長であるK(K
の陳述書である甲7,13及び証人Kを併せて「K証言」という。)は,これ20
に沿う証言をしている。
原告が著作権等管理事業法に基づいて文化庁長官の登録を受けた音楽著作
権等管理事業者であることなどからすると,本件各楽曲を抽出したという原告
の管理楽曲の作品データベースは,一般的に信用性が高いと考えられるのであ
って,具体的にその信用性を疑わせるような事情が存在しない限り,同データ25
ベースから抽出された本件各楽曲は,原告の管理楽曲であると認められるとい
うべきである。
この点,被告は,本件各楽曲の一部の楽曲について,第三者サイト上で著作
権が消滅したことを表す本件マークが付されていることを理由に,本件各楽曲
が原告の管理楽曲であることを争っている。そこで,以下,第三者サイトにお
ける本件マークの信用性について検討する。5
ア第三者サイトは,米国の非営利団体が,音楽等のデータを蓄積し,世界中
の人がこれを利用できるようにすることを目的に作成されたデジタルライ
ブラリであるところ,同サイトには,「当サイトのコレクションに投稿され
ている素材の著作権に関して,厳格な保証を与えることはできません。」,
「著作権その他の知的所有権に関するコレクション・ページについて,投稿10
されている情報を保証することはできません。」との記載や,「適切な状況
において自由裁量により,他者の著作権又はその他の知的所有権の侵害が疑
われるコンテンツを削除,又はコンテンツへのアクセスを遮断することがで
きます。」との記載がある(甲19)。すなわち,第三者サイト上に本件マ
ークが付されているとしても,同サイトを運営する非営利団体が,著作権が15
消滅し,いわゆるパブリックドメインに属するものであることを,厳密に保
証するものではない。
イまた,第三者サイトは,アカウント登録を行えば誰でも楽曲をアップロー
ドすることができ,その際にアップロードした者が本件マークを付する旨の
選択を行えば,楽曲に本件マークが付されることとなるものであるから(甲20
19),本件マークは,当該楽曲の著作権の消滅の有無を確認することなし
に,付される可能性があるものである。
ウさらに,我が国の著作権は,著作者が死亡した日の属する年の翌年から起
算して50年を経過するまでの間存続するとされるが(著作権法51条2項,
57条),我が国が太平洋戦争中に連合国民の著作権を保護しなかったこと25
に対する代償措置として,連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律
により,いわゆる戦時加算が定められており,戦争当時に米国民が有してい
た著作権については,その保護期間が3794日(約10年5か月)延長さ
れることから,著作者の死亡から50年が経過した楽曲であっても,我が国
においては,著作権の保護期間はなお満了していない場合があることになる。
被告は,本件各楽曲の一部に,第三者サイト上で本件マークが付されている5
ものがあるとして,本件各楽曲には原告が著作権の管理を委託されていない楽
曲が含まれており,信用できないと主張するが,上記検討したところによれば,
むしろ被告の主張に理由がないといわざるを得ず,本件各楽曲は,原告の管理
楽曲であると認めるのが相当である。
2争点2及び争点3について10
認定事実
前記前提事実,証拠(K証言及び被告本人並びに掲記の証拠。)及び弁論の
全趣旨によれば,以下の事実を認定することができる。
ア被告の本件店舗における楽曲の再生状況
被告は,平成17年6月28日に本件店舗を開店して営業を開始して以降,15
主にジャズの楽曲を,本件店舗のBGMとして再生していた。被告は,本件
店舗のBGMとして利用する楽曲を,第三者サイト等のウェブサイトから楽
曲をダウンロードして店舗用の携帯音楽プレーヤーに取り込み,これをアン
プに接続することで再生していた。
原告は,遅くとも平成26年5月時点では,「L」の名称で,原告のウェ20
ブサイト上に原告の管理楽曲の作品データベースを公開していたが,被告は,
本件店舗のBGMとして利用する楽曲の著作権について,同ウェブサイトを
利用して調査したことはなく,ダウンロード元のウェブサイト上でダウンロ
ードする楽曲に本件マークが付されているか否かを確認する程度しかしな
かった(甲6の1~8)。25
イ事実経過等
原告から,店舗における音楽の利用状況の確認業務の委託を受けた株式
会社Fが,平成26年5月22日,本件店舗に電話をかけたところ,被告
は,著作権が消滅している1930年代から1940年代の音楽を利用し
ているため,原告との間での利用許諾契約等の手続は必要ない旨を述べた
(甲17)。5
平成27年2月24日,原告の従業員が本件店舗に電話をして,利用状
況を聴取して利用許諾契約の締結を求めたところ,被告は,Hの楽曲を繰
り返し流している旨を述べ,原告の従業員が,被告に対し,Hの楽曲が原
告の管理楽曲である旨を伝え,原告の管理楽曲を利用するための利用許諾
契約を締結することを求めたところ,被告は,今後は著作権の消滅してい10
る楽曲のみを利用する旨を述べ,利用許諾契約の締結を拒否した(甲17)。
平成27年4月22日,原告の従業員が本件店舗を訪問した際に,本件
店舗のBGMとしてIの楽曲が再生されていたため,被告に対し,Iの楽
曲のほとんどは,原告の管理楽曲である旨を説明し,原告の管理楽曲を利
用するための利用許諾契約の締結を求めたが,被告は,著作権が消滅して15
いる古い曲もあるなどとして,これを拒否した(甲17)。
原告は,平成27年5月15日,被告に対し,本件店舗で原告の管理楽
曲をBGMとして利用しているとして,平成26年6月から平成27年5
月までの間,無許諾で原告の管理楽曲を利用した使用料相当額の支払と,
原告の管理楽曲の利用許諾契約の締結を求める書面を送付したが,被告は,20
これに応じなかった(甲8の1)。
原告は,平成27年6月10日,被告に対し,平成26年6月から平成
27年5月までの使用料相当額の支払及び本件店舗で原告の管理楽曲を
BGMとして利用しないことを求めて,本件調停を申し立てた。被告は,
同月23日,札幌簡易裁判所に対し,本件店舗においては,Jなどの著作25
権の切れた楽曲を利用しているなどとして,原告の申立てについて一切応
じるつもりがなく,一銭たりとも支払に応じられない旨を記載した答弁書
を提出し,同年7月14日,本件調停は,第1回期日で不成立終了となっ
た(甲9~11)。
原告は,平成29年3月16日,同年5月8日及び同年6月15日,被
告に対し,被告が原告の管理楽曲を本件店舗のBGMとして利用している5
として,無許諾で原告の管理楽曲を利用した使用料相当額の支払と原告の
管理楽曲の利用許諾契約の締結を求める書面を送付したが,被告はこれに
応じなかった(甲8の1,2,甲12)。
a原告の従業員は,平成29年3月24日,同月29日,同年4月25
日,同月27日,同年5月29日,同年6月1日,同月28日及び同月10
29日,本件店舗に来店し,本件各実態調査を実施した(甲6の1~8)。
b被告は,平成29年3月29日の原告による実態調査の際,店舗用の
再生装置ではなく,私物の再生装置を用いて,主にロックンロールの楽
曲をBGMとして再生していたが,同日を除く本件各実態調査の際には,
店舗用の再生装置を用いて,主にジャズの楽曲をBGMとして再生して15
いた(甲6の1~8)。
争点2(被告が本件店舗で原告の管理楽曲を再生したか)についての判断
ア原告は,a)の際に,本件店舗のBGMとして
再生されていた楽曲には,原告の管理楽曲が含まれていたと主張し,本件各
実態調査の際に被告がBGMとして再生していた楽曲の中で,曲目の判明し20
たもののうち,86.2%が原告の管理楽曲であったとのK作成に係る報告
書を提出している(甲17)。
上記の調査結果は,本件店舗のBGMとして再生されていた楽曲を原告の
作品データベースと対照させることで,原告の管理楽曲であるか否かを判断
したものと解されるところ,原告の作品データベースが信用できるものであ25
ることは前記1のとおりであるから,本件各実態調査の際にBGMとして利
用されていた楽曲には,原告の管理楽曲が含まれていたことが認められる。
イまた,被告は,平成26年5月22日,株式会社Fの電話オペレーターに
対し,1930年代から1940年代の音楽を利用している旨を説明してい
るところ,本件各実態調査の際に再生されていた楽曲の中で
曲目の判明した全319曲のうち,1930年代及び1940年代の楽曲は5
245曲であり,うち原告の管理楽曲は,208曲に及んでいたことが認め
られる(甲17,K証言)。
また,被告は,平成27年2月24日,原告の従業員に対し,本件店舗の
BGMとしてHの楽曲を利用している旨を述べ,同年4月2
4日には,本件店舗のBGMとしてIの楽曲を再生し,同年10
6月23日には,札幌簡易裁判所に対し,本件調停において,Jなどの楽曲
を利用している旨を)ところ,
H,I及びJが,アーティスト名又は著作者名として登録されている全楽曲
661曲のうち,610曲が原告の管理楽曲であると認められる(甲17,
K証言)。15
さらに,被告は,本件店舗でBGMとして再生する楽曲を,第三者サイト
等のウェブサイトからダウンロードしていたところ,第三者サイトに本件マ
ークが付されているからといって,原告の管理楽曲に当たらないといえない
ことは前記1のとおりであるから,被告は,継続的に原告の管理楽曲を,本
件店舗でBGMとして再生していたものと認めるのが相当である。20
ウ我が国においては,昭和9年改正の旧著作権法30条1項8号において,
レコード等の適法な複製物を用いた演奏は,出所を明示すれば,著作権侵害
にならない旨が定められ,昭和45年の著作権法改正の際にも,著作権法附
則14条が置かれ,適法に録音された音楽の著作物の演奏の再生については,
放送や,音楽を鑑賞させる営業等を除き,当分の間,旧著作権法30条1項25
8号は効力を有するとされたため,長年にわたり,一般的な店舗等で,適法
に取得したレコードやCDをBGMとして再生することは,著作権侵害には
当たらないとされてきた。
しかしながら,国際的な著作権保護のための条約との整合性の観点から,
平成11年の著作権法改正の際に,著作権法附則14条が廃止されたため
(平成12年1月1日施行),以後,この問題は,公表された著作物は,営5
利を目的とせず,かつ,聴衆又は観衆から料金を受けない場合には,公に演
奏等することができるとする現行著作権法38条1項により規律されるこ
とになり,同項にいう営利目的には,楽曲の再生により利用者の満足度を高
めるなど,間接的に事業を促進する場合も含まれると解されるから,平成1
2年以降,店舗のBGMとして楽曲を再生する等の行為は,著作者の許諾が10
なければ,著作者が専有する演奏権(著作権法22条1項)の侵害に当たる
こととなった(なお,特別な再生装置によらず,通常の家庭用受信装置を用
いてラジオ等の放送をそのまま伝達する場合には,同法38条3項後段によ
り,店舗におけるBGM利用であっても,著作権侵害とはならない。)。
エしたがって,平成26年5月以降,被告が,理容業を営む本件店舗のBG15
Mとして,原告の許諾を得ずに原告の管理楽曲を再生したことは,原告が管
理する著作権を侵害したことになる。
争点3(被告の故意又は過失)についての判断
ア上記1のとおり,第三者サイトにアップロードされている楽曲が,著作権
行使の対象でないことの明確な保証はなく,第三者サイトにもその旨明記さ20
れているにもかかわらず,被告は,原告のウェブサイト等によって本件店舗
のBGMとして利用する楽曲の著作権について調査しないまま,
本件店舗のBGMとして,原告の管理楽曲を利用したのであるから,被告に
は,平成26年5月以降,原告の管理する著作権を侵害したことについて,
過失があるというべきである。25
イ被告は,被告が利用していた楽曲の著作権の管理状況等について,原告に
説明を求めたにもかかわらず,原告から何の説明もなかったとして,被告に
は過失がない旨を主張するが,前記
張を認めることは困難というべきであるし,店舗で楽曲をBGMとして再生
する以上,自ら権利関係については調査をしなければならないのであって,
仮に原告の説明に不十分な点があったとしても,被告は過失を免れるもので5
はない。
3争点4(原告の損害又は損失の額)についての判断
原告の使用料規程の定め
原告は,原告の管理する著作物の利用に関して使用料規程を定め,これを著
作権等管理事業法13条1項に基づいて文化庁長官に届け出ており,かかる原10
告の使用料規程には,店舗におけるBGMの利用に関し,以下のとおりの定め
がある。
ア店舗におけるBGMの利用に関し,平成28年4月30日まで適用される
使用料規程(旧規程)では,面積が500㎡までの店舗等で,年額使用料が
イ店舗におけるBGMとしての楽曲の利用に関し,平成28年5月1日まで
適用される使用料括的利用許諾契約を結ぶ
場合の使用料として,面積が500㎡までの店舗等で,年額使用料が600
使用料として,面積が500㎡まで
の店舗等で,月額使用料が1200円とされている(甲4,第2章第12節20
1)。
原告の損害
ア前記被告は,平成26年5月以降,原告の管理楽曲を本件
店舗のBGMとして利用していたことが認められるところ,被告が,原告の
管理楽曲を本件店舗のBGMとして利用するためには,原告との間で利用許25
諾契約を締結し,原告に対して所定の使用料を支払う必要がある。そして,
原告の定めた使用料規程は,著作権等管理事業法13条1項に基づいて文化
庁長官に届けられたものであることなどに照らすと,相当な金額を定めたも
のと認められるから,被告が,本件店舗において,平成26年5月以降,原
告の管理楽曲を許諾なくBGMとして利用していたことにより,原告は,使
用料規程に定める使用料相当の損害を負ったというべきである。5
イそして,本件店舗は,前記前提事実のとおり,33㎡の広さの店舗である
から,被告が,原告の管理楽曲を本件店舗のBGMとして再生したことによ
って原告が被った使用料相当損害金の額は,平成26年5月から平成28年
4月30日までについては,旧規程に基づき,1万2960円(6000円
×2年×1.08(消費税相当額))と認められ,平成28年5月1日から10
平成29年6月30日までについては,新規程に基づき,1万8144円(1
200円(月額使用料)×14か月×1.08)と認められる(なお,新規
程には,年額使用料の定めがあるが,これは年間の包括的利用許諾契約を結
ぶ場合にのみ適用されるものであり,本件で,原告が被った損害について,
新規程における年額使用料を適用するのは相当でない。)。15
4結論
前記2,被告は,平成26年5月以降,本件店舗において,
再生装置を用いて原告の管理楽曲をBGMとして利用し,原告の管理する著作権
を侵害していたことが認められ,被告が,原告との間で利用許諾契約を締結する
ことを拒否し,使用料相当額の支払の求めにも応じないことからすると,今後も,20
再生装置を用いることにより,本件店舗のBGMとして本件各楽曲を再生し,原
告の著作権を侵害するおそれはあると認められる。したがって,被告に対し,本
件店舗で再生装置を使用することによって,本件各楽曲を利用することの差止め
を求める原告の請求は,理由がある。
また,上原告の管理楽曲を本件25
店舗のBGMとして再生していたことには過失が認められ,これにより,上記3
のとおり,原告に合計3万1104円の損害を与えたと認められるから,被告に
対し,不法行為に基づき,3万1104円及びこれに対する訴状送達の日の翌日
である平成29年8月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
の支払を求める原告の請求も,理由がある。
第4結論5
以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容し,訴訟費用
の負担について民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官谷有恒
裁判官向井宣人
裁判官川口寧

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