弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
被告人を懲役1年に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理       由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成15年4月3日午前11時ころ,神戸市a区b丁目c番d号e所
在のブランド品輸入販売店Aにおいて,同店店長B管理に係る香水等3点在中ポー
チ1個(価格1万8000円相当)を盗んだ。
(証拠)括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。
省略
(事実認定の補足説明)
 弁護人は,被告人には,本件ポーチを盗む意図まではなく,窃盗の故意がない旨
主張し,被告人もそれに沿う供述をする。すなわち,被告人は,捜査段階及び公判
段階を通じて,「陳列された本件ポーチの中身に興味が湧き,本件ポーチを手に取
ったところ,地下から店長が駆け上がってきて,「こらっ。」などと大声で怒鳴ら
れたことから,恐怖の余りとっさに店外に飛びだしたものである。」旨供述してい
る。
 一方,これに対し,被告人の店内での行動を防犯カメラを通じて観察し,被告人
を現行犯人逮捕した本件店舗の店長であるBは,「私はC(被告人)がポーチを取
り出すのを見て無言で店を飛び出しており,店内で待てこらなどとは言ってませ
ん。」,「私は,13年程同じような商売をしており,客がたとえ鞄の中に商品を
入れたとしても,客が店内にいる時は泥棒扱いはしません。あくまでも,店外にお
金を払わずに出た時に声を掛けるのです。」,「店の外に出てから,『泥棒や止め
てくれ,誰か捕まえてくれ。』と言ってます。」などと供述している。
 そこで,検討するに,前記Bの「客がたとえ鞄の中に商品を入れたとしても,客
が店内にいる時は泥棒扱いはしません。あくまでも,店外にお金を払わずに出た時
に声を掛けるのです。」との供述内容については,商売を長年してきた経営者とし
てのこれまでの経験に即した自然かつ合理的な供述であって,信用性が高い。ま
た,本件当時,本件店舗の地下1階におり,事件直前に被告人と声を交わしていた
アルバイト従業員のDは,本件直後のこととして,「それから,10分後ぐらい
に,店長から,携帯電話で,『ガラス前の陳列棚に飾っている商品で盗られた物を
見てくれ。』,『犯人を捕まえたから,しばらくの間店番をお願いします。』と言
われたことで,私は,この時初めて,あの訪ねて来た男が店の商品を万引きしたの
だと事情がわかったので
す。」旨供述しており,店内で店長であるBが大声で,「待て,こらっ。」などと
言い,被告人を追いかけて行ったのであれば,当然,それを聞いていたDも,被告
人が万引きか何かをしでかしたから,店長が追いかけて行ったものであると認識で
きているはずであるのに,前記のような供述をしていることは,前記Dも,店内で
前記Bが大声で,「待て,こらっ。」などと言ったのを聞いていないということに
なり,前記Bの供述を裏付けているといえる。
 さらに,関係各証拠によれば,被告人は,誰もいない店舗1階において,左手で
店舗出入口ドアを店内の方に引いて開け,左手を添えて入口ドアを開けたままの状
態にしながら,体をかがめ,右手を伸ばすという無理な姿勢で本件ポーチを取り,
本件ポーチを取った後,何ら躊躇することなく,直ちに店外に出て行っていること
が認められ,あたかも逃走の準備をしながら,本件ポーチを手に取ったということ
ができること,また,被告人は,店外に出てから,Bから,「泥棒や。誰か捕まえ
てくれ。」などと言われながら,追いかけられ,相当の距離を逃走していること,
Bに取り押さえられた直後,「すいません。許してください。お金は払います。」
などと述べていることが認められるが,これらは,窃盗の犯意が無かったとする被
告人の前記供述内容
とは相容れない態度であり,逆に,窃盗の犯意のあった者の行動ということができ
る。
 以上からすれば,Bの前記供述は信用することができ,逆に,被告人の前記供述
は信用することができない。
 したがって,被告人が,本件ポーチの窃盗の犯意があったことに合理的な疑いを
容れない。
 よって,弁護人の主張は理由がない。
(法令の適用)
罰       条  刑法235条
未決勾留日数の算入  刑法21条
刑の執行猶予  刑法25条1項
訴訟費用の負担  刑事訴訟法181条1項本文
(量刑の理由)
 本件は,被告人がブランド品輸入販売店において,陳列中の香水等3点在中のポ
ーチ1個を盗んだという事案である。被告人において,その犯意を否認しているた
め,その詳細な動機は明らかではないが,いずれにしても,窃盗に及んだその動機
に酌量の余地はない。被害品は,被告人が逃走中に投棄したため,もう商品とはな
らないのであって,被害金額は少額とはいえず,被害者の処罰感情も厳しいとこ
ろ,被告人は,これまで何ら被害弁償や慰謝の措置を講じていない。とすれば,被
告人の刑事責任は決して小さくはない。
 他方,被告人は,窃盗の犯意そのものは否定しつつも,今では,自己の軽率な行
動を反省し,被害弁償の意思も有していること,前科が見あたらず,未だ若年であ
ること,これまでにもそれなりに稼働してきていること,本件によって,約3か月
間身柄を拘束されたことなどの事情も認められる。
 そこで,これら被告人に有利・不利な事情を総合考慮した結果,被告人に対して
は,主文の刑に処してその刑事責任を明らかにした上,その刑の執行を猶予するの
が相当であると判断した。
 よって,主文のとおりの判決をする。
(求刑・懲役1年6月)
平成15年7月8日
神戸地方裁判所第12刑事係乙
裁 判 官  川 上    宏

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