弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告は、昭和四四年五月一日取下により終了したものである。
         理    由
 被告人は、その詐欺被告事件について、昭和四三年一二月二五日東京高等裁判所
がした判決に対して、同四四年一月八日上告を申立て、次いで同年五月一日上告を
取下げたものであるが、別紙上告取下撤回申立書記載の理由により、上告取下の撤
回をするというのである。
 そのいうところは、示談や債務調停等の話合いが一部の被害者との間でしかでき
ないと思つて上告を取下げたところ、他の被害者との間でも話合いができそうなの
で、上告審議を続けてほしいというのである。
 しかし、仮に所論のような錯誤があつたとしても、その錯誤が被告人の責に帰す
ることのできない事由に基づくものとは認められないから、右取下を無効というこ
とはできない。また、本件上告は、右取下によつてすでに終了しているのであるか
ら、もはや取下の撤回は認められない。
 以上の次第で、被告人が昭和四四年五月一日にした上告取下は有効であり、本件
上告は、右取下により終了したものであるが、被告人が上告取下の撤回をするとい
うので、決定をもつてその趣旨を明らかにしたわけである。
  昭和四四年五月三一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一

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