弁護士法人ITJ法律事務所

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      主   文
被告人を懲役3年6月に処する。
未決勾留日数中270日をその刑に算入する。
本件公訴事実中,被告人が,法定の除外事由がないのに,平成14年4月
11日ころから同月20日までの間,兵庫県下若しくはその周辺地域において,フ
エニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤若干量を自己の体内に摂取
し,もって,覚せい剤を使用したとの点については,被告人は無罪。
      理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 みだりに,平成14年1月5日ころ,神戸市東灘区A町a丁目b番c号Bハ
イムd号の自宅において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩類若干
量を所持し,
第2公安委員会の運転免許を受けないで,同年3月21日午前10時40分こ
ろ,同区C町e丁目f番g号付近道路において,普通貨物自動車(軽四)を運転
し,
第3 前記第2の日時ころ,業務として前記普通貨物自動車(軽四)を運転し,前
記第2の場所先の信号機により交通整理の行われている交差点を東方面から西方面
に向かい時速約40キロメートルで進行するに当たり,同交差点の対面する信号機
の信号表示に留意し,これに従って進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを
怠り,同信号表示が赤色の灯火信号を表示しているのを看過して漫然前記速度で進
行した過失により,折から右方道路から信号表示に従って同交差点内に進入してき
たD(当時51歳)運転の普通乗用自動車(タクシー)に気付かず,自車前部を前
記D運転車両左側前部に衝突させ,よって,同人に全治約5日間を要する左手擦過
傷兼打撲,顔面打撲兼擦過傷等の傷害を負わせ,
第4 前記第3の日時場所において,前記第3の交通事故を起こしたのに,その事
故発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報
告せず,
第5 公安委員会の運転免許を受けないで,同年4月20日午後2時26分ころ,
同区C町h丁目i番j号付近道路において,普通乗用自動車を運転し
たものである。
(証拠の標目)
 省略
(累犯前科)
 被告人は,平成11年4月26日E地方裁判所で有印私文書偽造,同行使,詐
欺,詐欺未遂,恐喝罪により懲役3年に処せられ,平成13年12月10日その刑
の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書によっ
て認める。
(法令の適用)
1 罰条 
判示第1の所為 覚せい剤取締法41条の2第1項
判示第2及び第5の各所為 
いずれも平成13年法律第51号による改正前の道路交通法118条1項1
号,64条
判示第3の所為 刑法211条1項前段
判示第4の所為 道路交通法119条1項10号,72条1項後段
2 刑種の選択
判示第2ないし第5の罪につき懲役刑選択
3 累犯加重
刑法56条1項,57条
4併合罪加重
刑法45条前段,47条本文,10条により最も重い判示第1の罪の刑に同法
14条の制限内で法定の加重
5 未決勾留日数の算入
刑法21条(なお,覚せい剤自己使用の事実は,無罪であるところ,同事実に
関する勾留は,有罪部分の審理にも利用されたものであるから,その未決勾留日数
についても,刑期への算入は可能であると解する。)
6訴訟費用の不負担
刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
本件は,被告人が,(1)覚せい剤を所持し,(2)無免許で,普通貨物自動車(軽
四)を運転し,(3)その際,赤信号を看過して交差点内に進行した過失により,自車
を信号表示に従って同交差点内に進入してきた普通乗用自動車に衝突させ,同車の
運転者に全治約5日間を要する傷害を負わせ,(4)この交通事故を起こしたのに,報
告義務を怠り,また,(5)無免許で,普通乗用自動車を運転した,という覚せい剤取
締法違反1件,道路交通法違反3件及び業務上過失傷害罪1件の事案である。この
各犯行の罪質,動機,態様及び被告人の多数の前科関係等,殊に,覚せい剤取締法
違反の犯行については,その動機に酌むべきものは何らないこと,無免許運転の各
犯行については,運転の必要性や緊急性が認められない上,被告人には無免許運転
の常習性も認められるこ
と,業務上過失傷害の犯行については,赤信号を看過して交差点に進入したもので
あって,その過失の程度は大きく,しかも,一方的なものであること,報告義務違
反の犯行については,いうまでもなく卑劣であること,加えて,被告人は,これま
で前記累犯前科を含む懲役前科9犯と罰金前科2犯を有し,これらの前科は覚せい
剤取締法違反を含むものが3犯,業務上過失傷害を含むものが2犯,道路交通法違
反を含むものが5犯にも上っている上,被告人は,前記累犯前科の刑につき仮出獄
期間満了による刑執行終了後わずかひと月もたたないうちに判示第1の覚せい剤所
持の犯行に及び,さらに,数ヶ月のうちに判示第2ないし第5の犯行にも及んだも
ので,被告人の覚せい剤に対する依存性ないし親和性は根強く,交通法規に関する
ものを含めその規範
意識も薄いとみられること,以上を併せ考えると,本件の犯情は悪く,被告人の刑
事責任は重いといわなければならない。
そうすると,被告人が本件各犯行を反省し,今後覚せい剤とは縁を切り,また,
運転免許を取得する旨述べていること,判示第3の犯行について,幸い被害者の怪
我の程度が軽傷ですみ,また,被告人が破損した自動車の修理代の一部として2万
円を弁償していること,その他弁護人が主張する被告人のために酌むべき諸事情を
十分考慮しても,主文程度の刑はやむを得ないものと思料する。
(覚せい剤の自己使用の事実について無罪とした理由)
1 本件公訴事実中,覚せい剤の自己使用に関する公訴事実は,「被告人は,法定
の除外事由がないのに,平成14年4月11日ころから同月20日までの間,兵庫
県下若しくはその周辺地域において,フエニルメチルアミノプロパンの塩類を含有
する覚せい剤若干量を自己の体内に摂取し,もって,覚せい剤を使用した。」とい
うものである。
2 まず,捜索差押調書(甲12号証)及び鑑定書(甲14号証)等によれば,平
成14年4月20日午後11時24分から午後11時35分までに被告人からいわ
ゆる強制採尿により差し押さえた尿を,鑑定に付したところ,被告人の尿から覚せ
い剤フエニルメチルアミノプロパンが検出されたことが認められるのであって,こ
れに覚せい剤の尿中排泄期間や,被告人の供述調書等から認められる被告人の行動
範囲等を併せ総合すると,被告人が,この公訴事実記載の日時・場所において,覚
せい剤を自己の体内に摂取したと認めることができる。
しかしながら,本件においては,被告人が一貫して自己使用の事実を否認して
いるのみならず,当時被告人方に居候をしていたWが,当公判廷において,平成1
4年4月17日の夜,被告人方において,被告人が便所に入った間に,被告人の湯
飲みの麦茶に覚せい剤約0.03グラムを混ぜ,それを被告人に飲ませた旨証言
(以下「W証言」という。)していることに照らすと,被告人の尿から覚せい剤が
検出されたことをもって,直ちにこの覚せい剤の摂取が,被告人の意思によるもの
と推認することはできないのであって,本件では,このW証言の信用性を否定でき
るかが問題となる。
3 W証言による被告人に覚せい剤を飲ませた際の状況について
W証言による被告人に覚せい剤を飲ませた際の状況は,以下のとおりであり,
これは検察官からの反対尋問によっても,その趣旨に異なるところはない。多少,
長くなるものの当該部分を要約することなく,そのまま記載する。
「弁護人
本年4月20日に証人が警察に捕まるまでの間に,証人が被告人に覚せい剤を,
お茶かコーヒーかどっちか分かりませんけどね,とにかく,何かそういう飲物に混
ぜて飲ませたというようなことがありましたか,どうですか。
ありました。
何に混ぜて飲ました。
お茶ですね,麦茶。
それは,いつごろ,どこでですか。
私が自分自身の覚せい剤で逮捕された事件ですけど,これ4月の17日,
これは間違いないことであって,自分が使用したのは。それで,自分がうっかりX
さんに飲ませたというのは19日と勘違いして言ったんですけど,実際よく考えて
みると,17日,自分が使用した日に。
そのことは,また後から聞きますけどね,4月の17日ごろということですね。
はい。
昼ですか,夜ですか。
夜です。
場所はX被告人の家ですか。
ええ,家ですね。
あなたが覚せい剤を入手した,その覚せい剤ですよ,問題の覚せい剤を入手した
日は,今年の4月17日に間違いありませんか。
間違いないです。
そのうちの一部を自分が使用して。
はい。
その残りの中からX被告人に覚せい剤飲ませたと,そういうことですね。
はい。
そのときの,飲ましたときのいきさつを,もう少し具体的に話してくれますか。
はい。というのは,自分が入手したのは,大阪拘置所に面会に行って,そ
れが夕方の4時ころでした。
4月17日ですか。
17日です。で,大阪拘置所で面会をして,拘置所を出て,その駐車場
で,今終わったとXさんに電話したわけですね。で,今から帰るからということを
言ったんですけど,そのときにXさんが,安定剤,病院でもらってる,安定剤とか
睡眠薬がないけど,私に知らんかと言ってくるんで,どういうことやと言うと,X
さんのいわく,自分がどっかへ持っていったん違うかというようなことを言われ
て,で,それはそんなことないと,なんでそんなこと自分を信用できへんねんと。
もうかなり酔っ払ってたみたいで,そのときね。夕方の4時か5時前ですけど。
夕方から酔っ払っておったんですか。
と思うんですけどね。電話の何か応対でそうな感じに聞こえましたから。
それで,たまたまその駐車場で自分が見知った人間がいて,その人間とちょっと話
ししてて,覚せい剤ただで自分がもろうたわけですね,少し。それで,それを持っ
てXさんの家へ帰って,着いたのが6時半か7時ごろやったと思います。着いてす
ぐに自分が,もうそのときはビールの空き缶が半ダース買うてあったうちの4本か
5本飲んでたと思うんですけどね。で,かなり酔っ払ってて,うっとうしい,自分
が酒飲まんので,酔っぱらい,うっとしいのかなわんですからね。とにかく帰って
すぐ自分は便所で1回注射して,その残りを,注射器は,もう,すぐ捨てて,胸の
ポケットへ入れて,紙にくるんで持ってたんですね。それで部屋に入ってXさんと
話ししてたんですけど
,その薬の話とか,先ほど話した,その安定剤とかなくなってるとか,そういう話
とか,酔っ払ってうだうだしつこくからんでくるんでね,自分の経験上,アルコー
ル,お酒飲んでて,で,覚せい剤打った経験もありますし,大概アルコールのほう
が覚めますんでね,ここでちょっとXさんが便所へ入ったすきに,テーブルへ置い
てあったコップに残りを入れて,で,麦茶入れて溶かして,で,これでも飲んで,
自分にしたら悪気はなかったんですけどね,酒でも冷ましてくれたらと思って。
X被告人が便所に入った間に。
はい,そうです。
湯飲みですか。
湯飲みに。
被告人の湯飲みに。
はい。
お茶も入っておったんですか。
いやいや,お茶はペットボトルがテーブルにあったんでね。
ペットボトルのお茶を入れて。
はい。
それに覚せい剤を。
ちょっと混ぜてね。
混ぜた。
はい。
どれぐらい覚せい剤混ぜたか覚えていますか。
自分が打ったと同様,警察の見本みたいな,サンプルみたいなんがあるん
ですけどね。それを見ると,約0.03グラムと言われましたけど。
それなら,湯飲みにペットボトルからお茶を入れて,その0.03グラムの,警
察で見本を見せてもらうと,まあ0.03グラムじゃないかということで,それぐ
らいを混ぜて入れたと。
はい。
それから。
それで,別にもう効き目いうか,なかったですけど,とにかく,もう。
それ以前に,それを,Xさん,便所から出てきて。
出てきて,もう,自分にしたら何も言わんと,酔い冷ましの水みたいな感
じで,これでも飲んで酔い冷ましいないう感じで飲ましたわけです。
Xさんは。
もう一気に。
飲んでおった。
はい。
それで,効き目なかったいうのは。
で,もうかなり酔っ払ってたし,そのまま寝ようかいうことで,自分も安
定剤飲んで,Xさんも睡眠薬多分飲んだと思いますけどね,そのとき。それでもう
2人とも寝ましたから。
寝たのは何時ぐらいですか。
8時か9時前には,もう寝ましたね。
もう一度聞きますが,なんで覚せい剤なんか飲ましたんですか。
だから,何度も言うように,悪気という,飲まして何かをしてやろうとか
そういうんじゃなくて,ただ自分としたら,酒飲んで酔っぱらいのからんでくるの
がかなわんので,これで酒でも冷ましてくれたらと思って。まさかこんなことにな
るとは思ってませんでしたんでね。
そうすると,X被告人は,そのお茶を飲むときには,覚せい剤が混ざっとるいう
ようなことは。
もちろん知りません。
全然知らなかったわけですか。
はい。」  
以上のとおりである。
4 そこで,このW証言の信用性について検討する。
(1) まず,このW証言は,前記3に記載したとおり,かなり具体的で詳細なもの
である上,被告人に覚せい剤の効果が現れず,被告人がこれに気づかなかったとす
る点など,釈然としない点はあるものの,これについては,覚せい剤の量が必ずし
も多くなく,かつ,飲用による摂取であり,また,摂取時被告人が酔っぱらってお
り,さらに睡眠薬を飲んだ可能性もあることからすると不合理というほどのもので
はなく,他にW証言を不合理と断じるほどの点も見出せない。
(2) 次に,Wは,被告人に覚せい剤を飲ませた日が平成14年4月17日(以
下,日付はすべて平成14年のもの。)である点について,W自身が,覚せい剤を
入手して,これを自己使用した日との関係で説明し,Wがこのときの覚せい剤の自
己使用等によって懲役3年の実刑判決を受けていることからすると,この日の特定
については相応に根拠を有するものということができ,また,この日にWが被告人
に使用しうる覚せい剤を所持していたことについても裏付けがあるといえる。
(3) また,W証言の内容は,被告人の公判段階に至って,突如として出てきたも
のではなく,被告人が捜査段階にあるころから,Wが,Wと被告人の共通の知人で
あるFを通じて勾留中の被告人に伝えたり,捜査官に対し自ら供述し,その内容は
供述調書にも記載されていたものであって,その内容も一貫したものであると認め
られる。
なお,検察官は,Wは,被告人の捜査段階においては,被告人に覚せい剤を
飲ませたのは,4月19日であるとしていたのに,当公判廷においては,その日を
17日であると変遷させている点をもって,W証言は一貫しておらず,信用できな
いと主張する。
しかしながら,この日の変遷の点について,Wは,最初に勘違いをして4月
19日と言った後,被告人の捜査段階でも17日が正しいことに気づいていたが,
日にちは重要な問題でないと思っていたことや,捜査官の対応に不満があったこと
からそのままにしておいた旨証言しているところ,変遷の理由として格別不自然と
はいえない上,本件において19日としたままでは都合が悪いため,17日と変遷
させざるを得なかったといった事情(例えば,W又は被告人が,19日は被告人方
にいないことが分かったなどといったもの。)も見出せないことからすると,この
日の変遷をもって,W証言の信用性を否定することはできない。
(4) さらに,Wが,虚偽の供述や証言までして,被告人をかばう理由は,これを
見出すことができない。すなわち,Wは,被告人と新潟刑務所で知り合い,同刑務
所から出所後,2月ころ(被告人の供述では1月下旬ころ)から4月20日まで,
被告人方に居候させてもらっていたものであって,その点では被告人に世話になっ
ていた者であることは否定できない。しかしながら,Wが,被告人の尿から覚せい
剤が出たのであればそれは自分が被告人に飲ませたことが原因である旨,自ら捜査
官に供述をした時期は,被告人の捜査段階であると同時に,W自身がカード詐欺や
覚せい剤の自己使用の嫌疑で取調べを受けていた時期でもあり,しかも,Wは覚せ
い剤取締法違反罪の前科でこれまで何回も服役していることからすると,Wがこの
ような供述すること
は,被告人の刑事責任を免れさせる代わりに,W自身が被告人に対する覚せい剤使
用の事実でも起訴されて,一層重い刑期を務めなければならないことに結びつきか
ねないのであって,こうしたWの立場,利害状況等に照らすと,Wが,あえて虚偽
の供述や証言までして被告人をかばう理由はこれを見出すことができない。
(5) 加えて,被告人は,尿から覚せい剤が検出された理由について,当初は,W
証言に沿う内容の供述をしていなかったが,その後,Wから被告人への伝言を頼ま
れた前記Fから,5月1日の面会の際,Wが覚せい剤を被告人の知らない間に飲ま
せた旨聞いたことから,尿から覚せい剤が検出された理由が分かった旨供述するに
至っているのであって,こうした被告人の供述の経過に照らすと,Wが,かねてか
ら被告人といわゆる口裏合わせをしていたとも考えがたい。
(6) なお,証人Gの証言及び鑑定書(甲14号証)等によると,覚せい剤が体内
に入ると,1日2日は大体10マイクログラムパーミリリッター以上の非常に高濃
度の覚せい剤が出てくるが,3日目以降になると急激に濃度が低くなってくるとこ
ろ,被告人の尿中から検出された覚せい剤の濃度はおよそ7マイクログラムパーミ
リリッターで,この濃度は,覚せい剤の摂取が4月19日であるとするなら少ない
のではないかと思われ,4月19日か18日かと言われれば18日の方が説明しや
すいことが認められる。そして,W証言は,Wが被告人に覚せい剤を飲ませたのが
4月17日の夜であるとしているところ,覚せい剤の尿中排泄期間については個体
差等が存することを考慮すると,W証言による使用日時と被告人の尿中の覚せい剤
の濃度とは格別矛盾
するものとも思われない。 
以上の検討に照らすと,W証言の信用性は,これをたやすく否定することは
できないものといわざるを得ない。
5 その他の若干の検討
検察官は,①被告人が任意の採尿を拒否したこと,②ポリグラフ検査におい
て,「逮捕される2日ぐらい前(裁判所注,4月18日に当たる)」「自分の家
で」「注射する」との各質問に特異反応を示したこと,③被告人の腕には,病院で
の点滴や注射によるものと確認されたもの以外の注射痕があること,④毛髪鑑定に
よって,被告人が覚せい剤の常習者であるといえることなどを,被告人が自らの意
思で覚せい剤を使用したことの論拠として主張する。
しかしながら,①任意の採尿を拒否したからといって,そのことから被告人の
故意を推認することは相当ではなく,また,②ポリグラフ検査の証明力については
未だ議論の余地が大きく,これを有罪認定の有力な根拠とするには慎重であるべき
である上,被告人の弁解を虚偽と判断する方向の証拠としても,前記のW証言と対
比した場合には,さほどの証明力を有するものとはいえない。また,③病院での点
滴や注射によるものと確認されたもの以外の注射痕については,それが間違いなく
注射痕であるといえるかは明瞭ではなく,その時期もこの公訴事実の期間内のもの
とは特定しえず,④毛髪鑑定により被告人が覚せい剤の常習者であるといえても,
これもこの公訴事実記載の期間内の覚せい剤使用を推認するものとしては十分とは
いえない以上,こう
した注射痕や毛髪鑑定の結果をもって,被告人が自らの意思で覚せい剤を使用した
ものと推認することはできない。
6 結局,W証言の信用性を否定しえず,他に被告人が覚せい剤を自己の意思によ
って使用したことを認めるに足る証拠がない以上,被告人が覚せい剤を自己の意思
によらずに使用した疑いを払拭することはできないから,覚せい剤の自己使用の公
訴事実については犯罪の証明がないことに帰着する。
よって,刑訴法336条により,覚せい剤の自己使用の公訴事実については,
被告人に対し,無罪の判決をする。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役6年)
 平成15年7月8日
神戸地方裁判所第14刑事係乙
裁判官  浦島高広

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