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平成17年(ヘ)第238号公示催告申立事件
決    定
主    文
1別紙目録記載の証券にかかる本件公示催告の申立てを却下する。
2本件手続費用は申立人の負担とする。
理    由
第1 申立て
申立人は,平成17年7月27日,別紙目録記載の証券について公示催告のうえ除権
決定を求めるとの申立てをした。申立ての理由は,申立人は別紙目録記載の証券(以
下本件証券という)の喪失当時における所持人(保管者)であるが,下記の事由により
本件証券を喪失し,現在に至るも発見できない。よって公示催告の申立てをし,本件
証券につき無効を宣言する除権決定を求めるというものである。

1喪失年月日2005年4月29日頃から同年5月6日までの間
2喪失場所東京都千代田区神田錦町○○ビル
○○株式会社航空貨物事業部
3喪失事由紛失
第2当裁判所の判断
1まず,本件証券が非訟事件手続法(以下非訟法という)第4編公示催告事件に規
定する公示催告・除権決定の対象となる有価証券であるかにつき検討する。
公示催告手続の対象となるのは,法律により公示催告手続によって無効とするこ
とができると定められている有価証券であり(非訟法156条),その根拠規定となる
民法施行法57条が定める証券又はこれを準用する証券に限られる。
一件記録によれば,本件証券は,海上物品運送契約に基づく運送品の受取りを
証明し,かつ,その引渡請求権を表章する有価証券で,国際海上物品運送法によ
る船荷証券であると認められる。同法上の船荷証券は,同法10条により商法573
条から575条,584条,770条から775条が準用されているので,民法施行法57
条に該当する証券であると認められる。そうすると滅失・喪失の場合,公示催告・除
権決定手続によって証券の無効宣言を求めることができるものである。
2次に管轄について検討する。
(1)非訟法157条1項前段には,有価証券無効宣言公示催告の申立ては,その有
価証券に表示されている義務履行地を管轄する簡易裁判所が管轄する,と定め
られている。内国で流通する商法767条から776条に規定する船荷証券にあっ
ては,義務履行地は,証券上の権利たる運送品の引渡請求権が行使されるべき
陸揚港(商法769条7号)がそれであり,証券を喪失した場合の公示催告の申立て
は,陸揚港の所在地を管轄する簡易裁判所が管轄権を有すると解される。
(2)ところで,本件証券には陸揚港が台湾キールンと表示されている。
これにつき申立人は,本件証券上の陸揚港は台湾キールンとされているが,
本件証券は東京港区に本店を有する日本法人により発行され,荷送人を介して
荷受人に引き渡されるところ,荷受人に引き渡す以前に申立人が東京の事務所
内で紛失したものであって,陸揚港である台湾において本件証券が転々流通し,
証券上の権利が行使される可能性は低い。したがって義務履行地が証券に表示
されていないとき(非訟法157条1項後段)に準じて,発行人の普通裁判籍を有す
る地の裁判所(旧「公示催告手続ニ関スル法律」779条1項後段。非訟法の改正
により廃止)である当庁に管轄権がある旨主張する。
(3) 本件証券は有価証券の発生及びその流通が国内に止まらず外国との交渉を
有するいわゆる渉外的有価証券である。かかる渉外的関係を有する有価証券が
喪失又は滅失した場合に,喪失者の保護のためにとられるべき救済の方法は,
どこの国の法に準拠すべきかがまず問題になる。
渉外的有価証券が喪失・滅失した場合,そこに表章されている権利を行使する
ためには,公示催告・除権決定を受けるべきか,或いは他の方法によるべきかは
その権利行使の,従ってそれに対応する義務履行の方法,態様の問題とも密接
に関係する。その準拠法によれば公示催告・除権決定のような国家機関が関与
する手続によって救済が行われることになっているときには,何国の機関にその
管轄権があるかを決定しなければならない。
  本件運送契約に関する準拠法に関しては,一件記録中の資料にある証券の裏面
約款と同内容の約款によれば,第4条に,本件証券に含まれる契約については
原則として日本法に準拠し,運送人に対する訴訟は東京地方裁判所に提起する
旨の定めがある。しかし,証券を喪失・滅失した場合の公示催告手続は,対象と
なった権利の存否・帰属等を実体的に確定する訴訟手続ではなく,権利関係の
安定をはかるために一定の法律状態を形成する手続であり,その性質は国家機
関が関与する非訟事件である。
渉外的有価証券に関する証券の無効宣言のための公示催告手続の裁判管轄
権の決定については,国際民事訴訟法(国際非訟事件手続法)の観点から考え
る必要がある。
(4)有価証券が喪失・滅失した場合における権利の行使について,必要な手続が公
示催告・除権決定のような方法によるべきことになっている場合,その手続につ
いて,いずれの国の裁判所に管轄権が認められるべきか。これは国際民事訴訟
法ないし国際手続法上の問題であるが,これについては国際慣習法も国際条約
上の法則も確立されておらず,各国の国内法に委ねられている。わが国にはこれ
に関する成文規定はなく,条理によって決するほかない。そこで,どのような関係
のある国で手続を行うことが,公示催告・除権決定という制度の趣旨に照らして,
適正,公平,能率的であるか等を考えて,決定すべきことになろう。これについて
は,証券上の権利の行使の方法・態様,権利の行使さるべき地すなわち履行地
と密接な関係があり,利害関係人の関心や便宜,除権決定の実効性の確保等々
を考えると,義務履行地のある国で手続が行われることが最も妥当である。そう
すると,義務履行地の属する国以外の国では,この手続を行うことはできず,管
轄権がないものと考えるべきである。
(5)公示催告・除権決定の手続の管轄権を義務履行地を基準として定めることは,
わが国でも採用されているが(旧民訴法・旧公示法779条,現非訟法157条),こ
の規定を直ちに国際的関係に類推することには,やや問題がある(国内民事訴
訟法の規定と国際的な管轄権の決定の問題)。しかし仮に非訟法157条の規定を
類推するとしても,本件の場合証券に表示されている履行地=陸揚港が日本に
ないので,わが国において公示催告・除権決定の手続をすべき法的根拠がない
ことになる。
尤も,わが国の昭和34年から37年頃の船荷証券に対する除権判決の中に
は,日本の会社が日本で発行した外国を陸揚港とする船荷証券について日本法
によって失権を認めたとみられる事例がいくつか見受けられるが,いずれもその
理由は明らかでない。これらの先例は,旧民訴法779条に掲げる裁判籍が日本
国内にあるときは,国際的な意味においてもわが国の管轄権を認めるべきである
とし,しかも陸揚港が日本にない場合を証書に履行地を表示しない場合と同視し
て,発行人の普通裁判籍が日本にあるときにはわが国の管轄権を認めるという
ことであろうか。申立人の主張も同様の趣旨と解されるが,しかしこのような立場
は妥当でなく,当裁判所はこの考えは採用しない。
社債券に関してであるが,大審院昭和6年7月25日民4部決定(公示催告申
立却下ノ決定ニ対スル抗告事件民集10巻603頁)は,ニューヨ-ク市又はロンドン
市を履行地と表示した日本会社の社債券の無効宣言のためになす公示催告手
続について,日本の裁判管轄権を否定している。
義務履行地である外国に公示催告・除権決定の制度がないときはこの手続が
とれず,喪失者の保護に欠けるおそれがある(前掲大審院決定事件上告理由参
照)としても,当該履行地国には相当の救済制度が存するものと思われ,そのこ
とを以て直ちにわが国の管轄権を肯定する理由にはならない。
因みに,手形・小切手については,喪失・盗難の場合の手続に関する準拠法
があり,その場合の手続は支払地の属する国の法律に依る旨定められている
(手形法94条,小切手法80条8号)。支払地が外国であるときはその国の法律
に依るので,日本の裁判所には管轄権がないとされることも,参考になろう。
結局,本件においては,義務履行地は陸揚港キールン(台湾)であり,このよう
に義務履行地が日本にない場合は,わが国に裁判管轄権はないものと解すべき
である。
3 以上の次第で,本件申立てについては,公示催告開始決定の前提たる裁判管轄権
がわが国にはないと解されるので,その余の申立人の適格性ほかについて判断する
までもなく,申立ては不適法と認められる。よって,本件申立てを却下することとし(非
訟法143条1項,2項),主文のとおり決定する。
平成17年10月20日
東京簡易裁判所民事第8室
裁判官島田充子
(別紙)目    録
船荷証券(英文)
船荷証券番号TWP0000-000
荷送人  ○○電機株式会社
荷受人○○バンクの指図人
船積港日本国横浜
陸揚港台湾キールン
船舶名○○号
航海番号16S17
運送品の種類・重量・容積○○ブランド・ケーブルコネクタ
74,030ピース,665.00㎏,5.269?
荷造の個数板紙製パレット6個
発行者○○株式会社
発行地日本国東京
発行日2005年4月26日
発行通数3通

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