弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用及び参加によつて生じた訴訟費用は控訴人らの負担とする。
○ 事実
控訴人ら訴訟代理人は、「原判決中被控訴人らに関する部分を取り消す。当番補助
参加人荒川区に対し、被控訴人A、同B、同C及び同Dは各自金九五五五万八七四
五円及びこれに対する昭和五三年六月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による
金員を、被控訴人コロナ工業株式会社は金三七六万〇六八〇円及びこれに対する昭
和五三年六月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、被控訴人Eは金
四三万九三二〇円及びこれに対する昭和五三年六月三〇日から支払ずみまで年五分
の割合による金員を各支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とす
る。」との判決を求め、被控訴人ら訴訟代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方及び当審補助参加人の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は、次に付
加するほか、原判決事実摘示(ただし、原判決八枚目表六行目「Aらは」の次に
「各自」を加える。)と同一であるから、これを引用する。
(控訴人ら訴訟代理人の陳述)
一 監査請求の期間について
仮に本件監査請求について一部期間徒過の廉があるとしても、本件監査請求に先立
ち、控訴人らにおいて当番補助参加人荒川区に対し、本件売買契約の内容を知るべ
く、契約書及び安田信託作成の鑑定書の閲覧を求めたところ、区は右各書類の閲覧
はもとより、その内容すら明らかにすることを拒否した。したがつて、右期間徒過
の点については、地方自治法二四二条二項ただし書にいう「正当な理由」がある。
二 契約締結及び公金支出の違法について
昭和五一年九月三日に売買代金の九七パーセント相当額を被控訴人コロナらに支払
つたことは、所有権移転登記時に売買代金額の三分の二(約六七パーセント)を、
引渡時に三分の一を支払うという通例の場合に比し、被控訴人コロナらに著るしく
有利な支払方法であり、被控訴人Aらに裁量の範囲を逸脱した違法があることは明
らかである。しかして、右支払は区において年八・六パーセントの金利を負担する
資金をもつてなされたものであるから、前記支払代金のうち、通例の場合をこえる
部分に相当する金額に対する支払日から引渡時期(昭和五二年三月三一日)までの
間の金利相当額は、被控訴人Aらが通例の支払方法をとつておれば、支払の必要が
なかつたものであるから、少なくとも右金額について区が損害を蒙つたことは明ら
かである。
三 不当利得について
本件売買契約によれば、本件土地の所有権は契約締結と同時に区に移転する。そう
とすれば、本件土地の使用は区の普通財産管理に関する規則等により、有償貸付が
原則となるところ、被控訴人コロナらは、かかる手続を経ることなく、引渡時期ま
で本件土地を利用していたのであるから、少なくとも右期間内の貸付料相当額の支
払を免れた限度において利得をえている。
(被控訴人ら訴訟代理人及び被控訴人Cの陳述)
控訴人らの右一から三までの主張事実はすべて争う。
○ 理由
当裁判所も、控訴人らの被控訴人Aらに対する昭和五一年九月三日の公金支出に関
する損害賠償請求に係る訴えは不適法であるから、これを却下し、控訴人らの同被
控訴人らに対するその余の請求及び被控訴人コロナらに対する請求は理由がないか
ら、いずれもこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加する
ほか、原判決理由説示(ただし、原判決四八枚目裏七行目「二四・五メートル」を
「二四・五五メートル」と五〇枚目裏一一行目「一八号証」を「第一八号証」と各
訂正する。)と同一であるから、これを引用する。
一 控訴人らの前示一の主張について
成立に争いのない甲第三号証、原本の存在及び成立につき争いのない甲第二五ない
し第二七号証によれば、本件土地のうち被控訴人E所有分については昭和五一年八
月二〇日に、同コロナ所有分については同年九月二日に、本件売買契約にもとづい
て荒川区のために所有権移転登記が経由され、右登記によつて荒川区の所有権取得
が公示されているところであり、また、本件売買契約及びこれにもとづく本件土地
の所有権取得について、同年八月三〇日、一〇月四日及び一〇月五日に開かれた荒
川区総務委員会において質疑及び説明等が重ねられたことが認められるから、仮に
控訴人ら主張の閲覧等の拒否があつたとしても、これをもつて地方自治法二四二条
二項ただし書にいう「正当な理由があるとき」に該るとすることはできない。控訴
人らの右主張は理由がない。
二 控訴人らの右二の主張について
昭和五一年九月三日の公金支出に関する損害賠償請求に係る訴えを不適法として却
下すべきものであることは前判示のとおりであるから、
さらに控訴人らの右主張について判断の要をみない。
三 控訴人らの右三の主張について
被控訴人コロナらが本件土地の引渡期日である昭和五二年三月三一日まで本件土地
を駐車場として使用していたことは当事者間に争いがない。
しかし、被控訴人コロナらによる本件土地の右使用収益の対価として、駐車場使用
料二四〇万円及び倉庫使用料一〇万円合計二五〇万円(被控訴人コロナにつき二二
三万八四八一円、同Eにつき二六万一五一九円)を荒川区に帰属させて、右二五〇
万円相当額を本件土地の代金額から差し引いていることは引用に係る原判決の理由
説示のとおりであり、さらに被控訴人コロナが本件土地を右のとおり使用収益する
ことにより右金額を超える利得をしたことを認めるに足る証拠はないから控訴人ら
の右主張もまた採用することができない。
よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴
訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条一項
本文、九四条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 中川幹郎 梅田晴亮 上野 精)

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