弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人甲斐・の上告理由第一点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審
の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用するこ
とができない。
 同第二点について
 原審が適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 上告人が福岡市内に開設したD営業所(以下「本件営業所」という。)は、道路
舗装工事に関する限り、本店とは独自に請負契約を締結しこれを履行する権限を有
しており、かつ、「支店に準ずる営業所」として届け出て建設業の許可を受けてい
たことからすると、支店としての実質を備えていたものであり、その主任者たるこ
とを示す営業所長なる名称を付した使用人のEは、商法四二条一項により、本件営
業所の支配人と同一の権限を有していたものとみなされるところ、右熊野の依頼に
基づき本件営業所に所長代理の肩書で常駐し、主として官公庁が発注する道路舗装
工事について入札事務、営業所長名義による請負契約の締結、工事代金の回収など
本件営業所長の権限に属する業務に従事していた訴外Fが、本件営業所の取引先で
あり、自ら経営の実権を握つていた訴外G株式会社(以下「G」という。)の資金
繰り等のため、G振出の約束手形を取引先に割り引かせて資金を作る目的のもとに、
Gに振り出させた本件手形に、入札参加書類等を作成するため任意の使用を任せら
れていた本件営業所長印等を冒用して「A株式会社D営業所所長E」名義の本件裏
書を偽造したうえ、自己名義の第二裏書をした本件手形を訴外H株式会社(以下「
H」という。)に割引のため交付したところ、Hが更に被上告人に割引を依頼し、
本件裏書が真正なものと信じた被上告人代表者は、本件手形の交付を受けるのと引
換えに、割引金一八五万円をH代表者に交付した。
 そして、原審は、右事実関係のもとにおいて、上告人の内部規程上は本件営業所
長に手形行為の権限が与えられていなかつたとはいえ、手形の振出、裏書等の手形
行為は、一般的な取引手段として、本件営業所の営業の範囲内の行為と解されるう
え、Fは、本件営業所に所長代理の肩書で常駐し本件営業所長の権限に属する業務
を行つており、工事代金の回収等のための約束手形の授受をもその職務としていた
ものであり、本件裏書に使用された営業所長印等をFが使用することは極めて容易
な状況であつたことからすると、Fが本件営業所長印等を冒用して行つた本件裏書
の偽造行為は、その行為の外形から客観的に観察すると同人の職務の範囲内の行為
というべきであり、民法七一五条にいう「事業ノ執行ニ付キ」なされたものと認め
るのが相当であり、被上告人において本件裏書が偽造のものであることを知らなか
つたことにつき重大な過失があるとは認められないから、被上告人は、Fの使用者
である上告人に対して同条に基づく損害賠償請求権を取得したものというべきであ
つて、仮にH代表者に右裏書が偽造のものであることにつき悪意又は重過失があつ
たとしても、被上告人の上告人に対する損害賠償請求権になんらの影響を及ぼすも
のではない、と判断しているのであつて、右判断は正当として是認することができ
る(最高裁昭和四四年(オ)第四〇五号同四五年二月二六日第一小法廷判決・民集
二四巻二号一〇九頁参照)。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することがで
きない。
 同第三点について
 対価を支払つて偽造手形を取得した手形所持人は、その出捐と手形偽造行為との
間に相当因果関係が認められる限り、手形偽造者又は民法七一五条の規定によりそ
の使用者に対し、その出捐額を通常の損害として、直ちに損害賠償請求権を行使す
ることができ、右手形所持人が手形上の前者に対し手形法上遡求権を有することは
なんら右損害発生の障害となるものではなく、遡求権の行使によつて手形金の支払
を受けたときは、右損害賠償請求権がその限度で消滅することになるにすぎないも
のと解するのが相当である(前記第一小法廷判決参照)。これと同旨の原審の判断
は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第四点について
 差戻前の上告審判決は、被上告人において本件裏書の相手方であると主張するH
が右偽造について悪意である等の差戻前の原審が確定した事実関係のもとにおいて
は、商法四二条若しくは四三条の適用又は民法一一〇条の類推適用による手形裏書
人としての担保責任に基づく被上告人の主位的請求は棄却を免れないことが明らか
であるとして、差戻前の原判決を破棄したうえ、主位的請求に対する被上告人の控
訴を棄却し、差戻前の原審が審理判断していなかつた予備的請求に対する控訴につ
いて審理させるため、本件を原審に差し戻したものであつて、右差戻判決の趣旨に
従い本件予備的請求について審理判断した原判決に所論の違法はない。論旨は、差
戻前の上告審判決を正解せず、独自の見解に立つて原判決を論難するものにすぎず、
採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    長   島       敦

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