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平成14年(行ケ)第634号 審決取消請求事件
平成15年7月15日判決言渡、平成15年7月8日口頭弁論終結
       判    決
    原   告     ロレアル
    訴訟代理人弁理士  志賀正武、高橋詔男、渡辺隆、村山靖彦、実広信哉
    被   告     特許庁長官 今井康夫 
    指定代理人     門前浩一、一色由美子、大元修二、林栄二
 主    文
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
   この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定め
る。
 事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 特許庁が平成11年審判第18644号事件について平成14年8月12日にし
た審決を取り消す、との判決。
第2 事案の概要
 1 特許庁における手続の経緯
 原告は、名称を「化粧品を適用するためのブラシおよびそのようなブラシを備え
たメークアップデバイス」とする発明につき、平成9年11月7日に特許出願(優
先権主張1996年11月13日、フランス国)をしたが、拒絶査定を受けた(平
成11年8月25日に謄本送達)ので、平成11年11月18日、手続補正書を提
出するとともに、拒絶査定に対する不服審判を請求した(平成11年審判第186
44号)。特許庁は、同請求について、平成14年8月12日、「本件審判の請求
は成り立たない。」との審決をし、その謄本を同年8月28日に原告に送達した。
なお、出訴期間として90日が付加された。
 2 特許請求の範囲の記載(平成11年11月18日付け手続補正書による補正
後のもの。以下、請求項1の発明を「本願発明」という。)
【請求項1】
「主軸(X-X)を画成する竿部と;
 第1端部および第2端部を有するとともに、前記第1端部が前記竿部に対して固
定されたコア(122;222;322)と;
 該コア内に径方向に挿入されるとともに、端部がブラシの包絡表面(125;2
25;325)を画成する荒毛と;
を具備するブラシであって、
 前記包絡表面は、第1端部および第2端部を有し、
 前記コアは、曲線(C1;C2;C3)を規定しており、
 前記ブラシの前記包絡表面(125;225;325)は、その長さ方向の少な
くとも一部にわたって、前記コアがなす前記曲線が位置している平面に対して平行
な最大長さをなす軸(Z-Z)方向において、長尺形状をなす横断面(115c;
215c;315c)を有していることを特徴とするブラシ。」
(請求項2以下の記載省略) 
 3 審決の理由
 (1) 骨子
 本願の請求項1に係る発明は、本願出願前頒布された刊行物1(特開平8-33
518号公報、甲3の1)及び刊行物2(実願昭56-185565号(実開昭5
8-88912号)のマイクロフィルム、甲3の2)に記載された発明(以下それ
ぞれを「引用発明1」、「引用発明2」という。)に基づいて当業者が容易に発明
をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受ける
ことができない。
 (2) 審決の理由における対比判断
【一致点と相違点】 本願発明と引用発明1とを対比すると、後者における「ハン
ドルt」は前者における「竿部」に、「芯体2」は「コア(122;222;32
2)」に、「放射状に植毛される毛4」は「径方向に挿入される荒毛」に、また、
「面8」は「包絡表面(125;225;325)」に、それぞれ、その機能、構
造からみて対応するから、両者は、
「主軸を画成する竿部と;
 第1端部および第2端部を有するとともに、前記第1端部が前記竿部に対して固
定されたコアと;
 該コア内に径方向に挿入されるとともに、端部がブラシの包絡表面を画成する荒
毛と;を具備するブラシであって、
 前記包絡表面は、第1端部および第2端部を有し、
 前記ブラシの前記包絡表面は、その長さ方向の少なくとも一部にわたって、長尺
形状をなす横断面を有していることを特徴とするブラシ。」である点で一致し、次
の点で相違している。
 (A) コアの形状に関して、前者においては、コアが曲線を規定しているのに対
し、後者においては、直線を規定している点。
 (B) ブラシの包絡表面の横断面に関して、前者においては、コアがなす曲線が位
置している平面に対して平行な最大長さをなす軸方向において長尺形状をなすよう
にしているのに対し、後者においては、コアが直線を規定していることからコアが
なす直線が位置する平面を特定できず、長尺形状をなす方向について特定がなされ
ていない点。
【相違点についての判断】
 まず、相違点(A)についてみる。引用発明1のブラシにおいても、刊行物2に記
載されるような不便(判決注:「しかしながら、・・・塗布棒が直線形状のものが
使用されている為に、利腕が右の使用者の場合、鏡に対面した右目の睫に塗布する
場合は支障なく塗布できるが、左目の睫に塗布する場合に於いて、右目の場合のよ
うに睫に平行に塗布部で塗布しようとすると塗布棒が鼻に接触してしまい、容易に
は塗布できずに塗布部を目に対して傾斜させ塗布棒を鼻から遠ざけ、即ち塗布先端
部付近での塗布を行う事となり、更には不慣れな左手で塗布しなければならない不
便があった。」(甲3の2の明細書1頁12行~2頁3行)を指す。)が生じるこ
とは、当業者ならば容易に予測し得ることであるから、引用発明1における直線状
のコアを、引用発明2に従った曲線を規定するものとして、すなわち、コアを湾曲
させて、上記不便を解消することは、当業者ならば容易に想到し得ることというべ
きである。
 次に、相違点(B)についてみる。
 本願発明において、「コアがなす曲線が位置している平面に対して平行な最大長
さをなす軸方向において長尺形状をなす」とは、「ブラシが偏平とされている面内
においてコアが曲げられている」(審判請求書3頁14行)こと、すなわち、コア
をブラシの偏平方向の軸線が通る面に沿って曲げることを指しているものと認めら
れるところ、
 刊行物1には、
「図7のブラシは、長手方向の領域を選択し、面8c・8c’の内の1つおよびそ
の角部だけでなく細長い領域15を利用することにより確実にメーキャップを変化
させることができる。」(段落【0029】)、「上記全ての実施例では、ブラシ
に形成されブラシの面を境界付けている符号9・10で示されるような角部や、符
号15・15d・15d’・19で示される隆起部は、それらの幅寸法(幅寸法=
芯体の軸線に直交する方向の寸法)が2mmより大きくなるように削り取られなけ
ればならない。」(段落【0042】)、「符号8・8a・・・8dで示されるよ
うな平面あるいは凹面よりなる面は、凸面としてもよいことは明らかである。とき
には、隆起部に配置されている毛だけがまつ毛の分離を促進する処理を実施す
る。」(段落【0043】)と記載され、細長い領域部分ないし隆起部は、まつ毛
の分離促進に不可欠であることが示されているから、引用発明1のブラシ(図11
及び図12参照)のコアを湾曲させる場合において、細長い領域部分を形成する面
部分、すなわち、平行面8g、8g’と交差する面部分によって、まつ毛の分離促
進作用を維持するため、コアをブラシの偏平方向の軸線が通る面に沿って曲げるこ
とは、当業者ならば容易に想到し得ることというべきである。
 なお、審判請求人は、審判請求書において、本願発明により、「湾曲内側面にお
けるまつ毛の引き延ばし効果や、湾曲内側面の荒毛が高密度であることによってカ
ールを助長する効果、湾曲外側面において櫛すきを容易に行えるという効果や、さ
らに、湾曲外側面の荒毛が高密度(願書に最初に添付された明細書の段落【001
1】の記載からすると、「低密度」の誤記と認められる。)であることによる押拡
げが容易であるという効果、といった多岐にわたる機能を発揮することができる」
と主張しているが、かかる効果ないし機能は、ブラシの湾曲それ自体により奏され
るものと認められ、すでに引用発明2が有しているものにすぎないから、当業者が
予測できない格別のものということはできない。
第3 原告主張の取消事由
 1 相違点(A)についての判断の誤り(取消事由1)
 (1) 本願発明においてコアを湾曲させるのは、審決の指摘するような引用発明2
において解決課題とされている不便(「塗布棒が直線形状のものが使用されている
為に・・・左目の睫に塗布する場合に於いて、・・・睫に平行に塗布部で塗布しよ
うとすると塗布棒が鼻に接触してしまい、容易には塗布できず・・・塗布部先端部
付近での塗布を行う事となり、更には不慣れな左手で塗布しなければならない不
便」。甲3の2の明細書1頁12行~2頁3行)を解消するためではない。
 本願発明は、引用発明2においては認識されていなかった課題であるところの、
①ブラシとまつ毛との間の間隔を調整しなければならないという取扱の不便さ
②目のコーナー部に関してまぶたや鼻の側部上に化粧品をこぼすことなくメークア
ップ製品を適用することの困難性
③まつ毛どうしをあまり分離させることなくまつ毛に対してコーティングしてしま
 うという問題
を解決課題としてなされた発明である。換言すれば、本願発明は、引用発明2を従
来技術とし、この従来技術の技術課題を解決するためになされた発明なのである。
 (2) 一方、引用発明1(甲3の1)は、ブラシの面を境界付けている隆起部ある
いは角部の形状に関する課題認識を有するのみであり、本願発明の前記解決課題の
認識は皆無である。
 (3) 引用発明1、2の課題は上記のようなものであるから、本願発明と解決課題
を異にする引用発明1と引用発明2とを組み合わせる動機付けがそもそも存在しな
い。引用発明1における直線状のコアを、引用発明2に従った曲線を規定するもの
として、すなわち、コアを湾曲させて、上記不便を解消することは当業者ならば容
易に想到し得るとの審決の判断は、誤りである。
 2 相違点(B)についての判断の誤り(取消事由2)
 (1) 審決は、相違点(B)につき、「細長い領域部分ないし隆起部は、まつ毛の
分離促進に不可欠であることが示されているから、引用発明1のブラシ(図11及
び図12参照)のコアを湾曲させる場合において、細長い領域部分を形成する面部
分、すなわち、平行面8g、8g’と交差する面部分によって、まつ毛の分離促進
作用を維持するため、コアをブラシの偏平方向の軸線が通る面に沿って曲げること
は、当業者ならば容易に想到し得ることと言うべきである。」(審決書5頁9行~
14行)と判断するが、誤りである。
 (2) ブラシのコアをZ-Z方向以外、例えば別紙【参考図3】のY-Y方向の軸
線が通る面に沿って曲げた場合にも、他の軸に沿って曲げた場合にも、細長い領域
部分を形成する面部分B、Cが依然として残る。
 すなわち、引用発明1の細長い領域ないし隆起部は、いずれの方向にコアを湾曲
させても、細長い領域ないし隆起部は依然として残存し、曲げ方向の違いによって
隆起部等が消滅することはない。よって、曲げ方向がいずれであっても、まつ毛の
分離促進作用を維持することができる。
 審決では、当業者であれば「細長い領域部分ないし隆起部」によるまつ毛の分離
促進作用を維持するため、コアをブラシの偏平方向の軸線が通る面(【参考図3】
のZ-Z方向)に沿って曲げるであろうと認定している。しかし、コアをブラシの
偏平方向の軸線が通る面(【参考図3】のZ-Z方向)に沿って曲げなければ、
「細長い領域部分ないし隆起部」が存在せず、まつ毛の分離促進作用を奏し得な
い、換言すれば、そのように曲げたときにのみ、「細長い領域部分ないし隆起部」
が存在し、かつ、分離促進作用を奏するのであれば格別、前述のとおり、どの方向
に曲げても「細長い領域部分ないし隆起部」は存在し、かつ、分離促進作用はどの
方向に曲げても奏し得るのであるから、審決における認定には論理的飛躍がある。
 3 作用効果の相違についての評価の誤り(取消事由3)
 (1) 本願発明の効果は、「第1櫛状部、すなわちブラシの凹面側は、まつ毛の外
形に対して非常に近似した形状である。さらに、長くて非常にフレキシブルな荒毛
を備えており、これら荒毛は収束している。したがって、まぶたの幅全体に沿って
まつ毛に対して係合することができ、まつ毛を引き伸ばしたりカールさせたりする
ことができる。この櫛状部が荒毛を高密度で有していることにより、まつ毛のカー
ルが助長される。反対側面の第2櫛状部は、密度が小さく、荒毛どうしがより分散
している。したがって、第2櫛状部は、まつ毛の櫛すきをより容易に行うことがで
き、製品を長さ全体にわたって押し広げることができる。2つの櫛状部は、ブラシ
の側面と比較すると狭い。したがって、2つの棒状部は、まつ毛内にうまく入り込
んで、まつ毛の長さ全体にわたってまつ毛を分離させることができる。」(甲2の
1の【0011】)というものである。
 これに対し、審決は、湾曲内側面におけるまつ毛の引き延ばし効果や、湾曲内側
面の荒毛が高密度であることによってカールを助長する効果、湾曲外側面において
櫛すきを容易に行えるという効果や、さらに、湾曲外側面の荒毛が低密度であるこ
とによる押拡げが容易であるという効果ないし機能は、ブラシの湾曲それ自体によ
り奏されるものと認められ、すでに引用発明2が有しているものにすぎないから、
当業者が予測できない格別のものということはできない(審決書5頁21行~24
行)と判断するが、誤りである。
 (2) 別紙【参考図4】に示すブラシを、本願発明の1つの実施例である【参考図
5】(本願公開公報、甲2の1の図9)のようにコアを曲げることにより、ブラシ
の凹面側である第1の櫛状部において、包絡表面を形成する荒毛の先端は凹面の中
心方向を向くことになる。そのために、荒毛のコア近傍の密度よりも荒毛の先端部
側の密度の方が高くなる。また、ブラシの凸面側である第2の櫛状部において、包
絡表面を形成する荒毛の先端は凹面の外方向を向くことになり、荒毛のコア近傍の
密度よりも荒毛の先端部側の密度の方が低くなる。つまり、【参考図5】における
荒毛の密度は凹面側と凸面側とでは異なるのである。荒毛の長尺方向の長さが長け
れば長いほど内側の密度はより高く、外側の密度はより低くなることが助長され
る。
 これにより、本願発明では、刊行物2に示す円柱のブラシのコアを湾曲させた場
合に比べ、第1の櫛状部の荒毛の密度を最大限高めたブラシを得ることができる。
すなわち、この第1の櫛状部を使用することにより、まつ毛のカールを助長すると
ともに密度の高い荒毛にマスカラ等の製品を大量に保持することができ、そのため
に、マスカラをまつ毛に大量に移すことができ、マスカラのまつ毛への付着作用を
高めることができる。
 また、引用発明2の円柱のブラシのコアを湾曲させた場合に比べ、第2の櫛状部
の荒毛の密度を最大限低くしたブラシを得ることができる。このブラシの第2の櫛
状部を使うことにより、まばらな荒毛の続き作用によってまつ毛の分離度をいっそ
う高めることができ、まつ毛の櫛すきをより容易に行うことができるだけでなく、
マスカラ等の製品を長さ全体に渡って押し広げ、目をよりはっきりとさせることが
できる。
 以上のとおり、本願発明の作用効果は、そもそもブラシの断面が長尺状の形状を
有しない引用発明2からは得られない特有の効果であって、引用発明2の作用効果
とは対比の対象とすらなり得ないものである。
 (3) さらに、加えて、引用発明2における課題、すなわち、目のコーナー部に関
して、まぶたや鼻の側部上に化粧品をこぼしてしまうという課題を、本願発明は、
ブラシのコアがなす曲線が位置している平面に対して平行な最大長さをなす軸方向
において、長尺形状をなす横断面を有すること、すなわち、【参考図5】における
Y-Y軸方向の幅である2つのフェース間の距離が、Z-Z軸方向のブラシの幅よ
りも短いことにより解決している。本願発明のこの特有の構成により、本願発明
は、目のコーナー部周辺に製品を付着させることなくコーナー部内をうまくスリッ
プすることができるようになるのである。すなわち、【参考図5】からも分かるよ
うに、2つの櫛状部がブラシの側面(Y-Y方向の面)と比較すると狭く、引用発
明2のように、円筒状ではないことから、まつ毛にのみ必要な荒毛だけが接近し、
本来必要でない部分の荒毛がまぶたなどの皮膚表面に接触しにくいのである。
 審決は、本願発明のこの作用効果についても看過し、本願発明特有の構成による
この作用効果も何ら評価していない。
第4 被告の反論の骨子
 1 取消事由1(相違点(A)についての判断の誤り)に対して
 原告は、本願発明は刊行物2に記載されたもの(引用発明2)と異なる解決課題
を有する旨を主張するが、このような主張は、審決の判断における動機付けが誤っ
ていることの理由たり得ない。仮に、本願発明が刊行物1、2に記載されていない
種々の課題を解決することを目的とするものであるとしても、刊行物2に記載され
ている課題に基づいて、コアを湾曲させること、すなわち、相違点(A)に係る構成を
着想することは、当業者ならば容易になし得たことである。
 原告は、本願発明においてコアを湾曲させることは、引用発明2の解決課題であ
る「上記不便」を解消するためではない、と主張するが、引用発明2の解決課題で
ある不便は、塗布棒であるブラシがブラシ軸方向に直線形状の塗布面を有するもの
であれば、普遍的に発生する「不便」であることは明らかである。そして、刊行物
1(甲3の1)の図11及び図12に記載された発明(引用発明1)も塗布棒であ
るブラシがブラシ軸方向に直線形状の塗布面を有するものであるから、「上記不
便」が生じるものであることは明らかである。したがって、審決では、この不便を
解消するために、ブラシを湾曲させようとすること、すなわち、相違点(A)は、当
業者が容易になし得ると判断したのであり、この判断に誤りはない。原告は、本願
発明の課題を各種あげているが、本願発明がこれらの課題を解決するものであると
しても、刊行物1に記載の発明に「上記不便」が存在する以上、相違点(A)に係る構
成は、刊行物2の示唆に従って当業者が容易に想到し得るものである。
 また、原告は、本願発明とそれぞれ解決課題を異にする刊行物1と刊行物2とを
組み合わせる動機付け自体がそもそも存在しないと主張するが、相違点(A)について
の動機付けは刊行物2に存在している。したがって、審決に判断の誤りはない。
 2 取消事由2(相違点(B)についての判断の誤り)に対して
 刊行物1の第11図に記載されたブラシを、刊行物2の教示に従い湾曲させるこ
とを想定すると、【参考図3】におけるY方向、Z方向以外の方向に湾曲させた場
合には面及び隆起部の曲面が複雑になり使用に不便をきたすから、Y方向及びZ方
向以外の方向に湾曲させることは通常想定し難い。そうすると、本願発明は、刊行
物1に記載のものを湾曲させるに際し、Y方向、Z方向という2つの選択肢の中か
らZ方向という1つを選んだものにすぎない。その際、まつ毛に接する凹面側と凸
面側として、凹面及び凸面の面積が相対的に小さい方を選ぶこと、すなわち凹面及
び凸面を細長い領域部分又は隆起部となるようにZ方向を選択することは、マスカ
ラ作業に繊細さが必要とされる以上、当業者が容易に想到し得るから、審決に論理
的飛躍はない。
 3 取消事由3(作用効果の相違についての評価の誤り)に対して
 ブラシを湾曲させた場合に、そのカーブの外側において毛の密度が低くなり、逆
に内側において毛の密度が高くなることは自明のことであり、刊行物2記載のブラ
シにおいても本件発明と同様、湾曲した凹面で密度が最大になり、凸面で密度が最
小となるから、作用効果も同様であるはずである。また、本願発明について「Y方
向の巾が狭いためまぶた等にあたりにくくなる」と原告が主張する効果について
は、上記湾曲の方向としてZ方向を選択したことにより当然奏される効果である。
第5 当裁判所の判断
 当裁判所も審決と同様に、本願発明は引用発明1及び2に基づいて当業者が容易
に発明をすることができたものと判断する。理由は、以下のとおりである。
 1 刊行物2(甲3の2)には、マスカラ塗布具における塗布棒(ブラシ)が直
線状であることによる不便が記載され、この不便を解消するために塗布棒(ブラ
シ)を湾曲させることが記載されているのであるから、刊行物1に記載された「ま
つ毛にマスカラを施したり、髪の毛に染色を施す際に使用されるブラシ」(甲3の
1、【0001】)のブラシにおいても、ブラシが直線状であることによる不便を
解消することを目的として、ブラシの芯体(コア)を湾曲させてブラシを湾曲した
形状とすることは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。
 そして、刊行物1(甲3の1)に示されるブラシの上下両面に平坦面を平行に形
成した扁平形状のブラシ(図11、別紙【参考図2】参照)の芯体(コア)を湾曲
させる場合に、その湾曲方向として、最も自然に想定されるのは、別紙【参考図
3】におけるY方向又はZ方向であると考えられるから、上記ブラシのコアをブラ
シの扁平方向の軸線が通る面に沿って同図のZ方向に湾曲させることは、ごく自然
な選択の一つとして、当業者が何らの困難なくなし得ることである。
 なお、刊行物1に図11として図示されたブラシを上記のとおり湾曲させたもの
が本願発明の構成となることは明らかである。 
 2 原告は、本願発明においてコアを湾曲させる目的は、刊行物2においてコア
を湾曲させている目的と異なると主張するが、原告の主張は、本願発明(甲2の
1、2)と刊行物2(甲3の2)の関係部分を対比検討すれば、失当であること明
らかであり、仮に、原告の主張どおり、湾曲させる目的が異なるとしても、刊行物
1のブラシのコアを湾曲させることが当業者にとって想到容易であることは前示の
とおりであり、また、その湾曲の方向をブラシの扁平方向の軸線が通る面に沿った
もの(【参考図3】におけるZ方向)とすることが当業者に容易であることは前示
のとおりである。
 そして、上記のように湾曲させた場合のブラシの形状が客観的に本願発明の構成
と同一のものとなる以上、その効果が本願発明と同一であることも明らかである。
 原告は、本願発明の独特の作用効果を主張するが、それらは扁平形状のブラシ
(刊行物1の図11)が有する効果とブラシを湾曲させたこと(刊行物2)による
効果との組合せという以上のものではなく、何ら格別のもとのは認められない。
 3 したがって、原告の主張はいずれも採用することができない。
第6 結論
 以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がないから、本訴請求は棄却
されるべきである。
 東京高等裁判所第18民事部
     裁判長裁判官   塚  原  朋  一
 裁判官   古  城  春  実
        裁判官   田  中  昌  利
(別紙)
参考図
 

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