弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人竹中一太郎の上告理由について。
 記録によれば、上告人が本訴において請求原因として主張したところは、次のよ
うな事実関係であると認められる。上告人は、昭和三八年一二月三日、訴外有限会
社Dよりブルドーザーの修理の依頼を受け、その主クラツチ、オーバーホールほか
合計五一万四〇〇〇円相当の修理をして、同月一〇日これを訴外会社に引き渡した
が、右ブルドーザーは被上告人の所有であり、上告人の修理により右代金相当の価
値の増大をきたしたものであるから、被上告人は上告人の財産および労務により右
相当の利得を受け、上告人は右相当の損失を受けたものである。もつとも、上告人
は訴外会社に対し修理代金債権を有したが、同会社は修理後二カ月余にして倒産し、
現在無資産であるから、回収の見込みは皆無である。右ブルドーザーは、同年一一
月二〇日頃訴外会社において被上告人より賃借したものであるが、昭和三九年二月
中旬より下旬にかけて被上告人がこれを訴外会社より引き揚げたうえ、同年五月、
代金一七〇万円(金利を含み一九〇万円余)で他に売却したもので、上告人の修理
により被上告人の受けた利得は、売却代金の一部としてなお現存している。よつて、
上告人は被上告人に対し、五一万四〇〇〇円およびこれに対する遅延損害金の支払
を求める、というのである。
 右請求原因の大要は、一審における訴状陳述以来、上告人の主張するところであ
つて、前記修理代金債権の回収不能により上告人に損失を生じたとする主張は、本
件記録中に発見しえないところである。
 しかるに、原判決の引用する一審判決事実摘示が、あたかも右回収不能により上
告人に損失を生じたとするごとくいうのは、上告人の訴旨の誤解に出たものという
べきである(もつとも、その記載は必ずしも明確でなく、原審口頭弁論における上
告人の陳述が一審判決事実摘示のとおりなされたとしても、これにより上告人の従
前の主張が改められたものとするのは相当でない)。
 そこで、右のごとき上告人の本訴請求の当否につき按ずるに、原判決引用の一審
判決の認定するところによれば、上告人のした修理は本件ブルドーザーの自然損耗
に対するもので、被上告人はその所有者として右修理により利得を受けており、ま
た、右修理は訴外会社の依頼によるもので、上告人は同会社に対し五一万四〇〇〇
円の修理代金債権を取得したが、同会社は修理後間もなく倒産して、右債権の回収
はきわめて困難な状態となつたというのである。
 これによると、本件ブルドーザーの修理は、一面において、上告人にこれに要し
た財産および労務の提供に相当する損失を生ぜしめ、他面において、被上告人に右
に相当する利得を生ぜしめたもので、上告人の損失と被上告人の利得との間に直接
の因果関係ありとすることができるのであつて、本件において、上告人のした給付
(修理)を受領した者が被上告人でなく訴外会社であることは、右の損失および利
得の間に直接の因果関係を認めることの妨げとなるものではない。ただ、右の修理
は訴外会社の依頼によるものであり、したがつて、上告人は訴外会社に対して修理
代金債権を取得するから、右修理により被上告人の受ける利得はいちおう訴外会社
の財産に由来することとなり、上告人は被上告人に対し右利得の返還請求権を有し
ないのを原則とする(自然損耗に対する修理の場合を含めて、その代金を訴外会社
において負担する旨の特約があるときは、同会社も被上告人に対して不当利得返還
請求権を有しない)が、訴外会社の無資力のため、右修理代金債権の全部または一
部が無価値であるときは、その限度において、被上告人の受けた利得は上告人の財
産および労務に由来したものということができ、上告人は、右修理(損失)により
被上告人の受けた利得を、訴外会社に対する代金債権が無価値である限度において、
不当利得として、被上告人に返還を請求することができるものと解するのが相当で
ある(修理費用を訴外会社において負担する旨の特約が同会社と被上告人との間に
存したとしても、上告人から被上告人に対する不当利得返還請求の妨げとなるもの
ではない)。
 しかるに原判決は、上告人の右の訴旨を誤解し、また右の法理の適用を誤つたも
ので、審理不尽、理由不備の違法を免れず、論旨は理由あるに帰し、原判決を破棄
すべきであるが、本件において上告人の訴外会社に対する債権が実質的にいかなる
限度で価値を有するか、原審の確定しないところであるので、この点につきさらに
審理させるため、本件を原審に差し戻すべきものとする。
 よつて、民訴法四〇七条一項により、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決す
る。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   田       誠
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛