弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決並びに第一審判決を破棄する。
     被告人を懲役五月に処する。
     被告人に対し第一審において生じた未決勾留日数中四〇日を右本刑に算
入する。
     被告人に対し二年間右刑の執行を猶予する。
     訴訟費用中第一審において生じた証人A(昭和三三年一〇月二九日の公
判に出頭した分)、同Bおよび同Cに支給した分は、被告人と第一審相被告人D、
同Eとの負担とし、証人F、同Gおよび同Hに支給した分は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人小中公毅、同伊藤清の各上告趣意は、事実誤認の主張であり、同吉江知養
の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張であつてすべて、刑訴四〇五条の上告理
由に当らない。
 しかし、職権をもつて調査すると、本件は、被告人が中心となり又は被告人が首
謀者若しくは卒先者となつて、共謀又は相互に意思を通じてなされたものではなく
(すなわち、少くとも第一審の相被告人Eは、被告人よりも先に犯行の場所に居た
ものである)、被告人の所為は、右E、同Dその他氏名不詳者十数名の者と共にな
された刑法二〇七条にいわゆる同時傷害事件であること、被害者Iの受けた傷害中
肋骨骨折の重傷は、むしろ被告人ら以外の者の行動にも基因される疑が濃厚である
こと、被告人らは別に被害者に対して何ら恨みがあつたわけではなく、いわゆる軽
卒盲動に過ぎなかつたこと、すでに示談が成立し被害者においても特に処罰を望ん
でいないこと、その他記録に現われた被告人の経歴、性格、社会的地位、犯罪後の
状況、第一審相被告人らに言い渡された刑とのつりあい等を参酌すると被告人に対
する刑の量定(就中被告人に対して刑の執行を猶予しなかつたこと)甚しく不当で
あつて、刑訴四一一条二号により原判決を破棄しなければ、著しく正義に反するも
のと認める。
 よつて、同条号により原判決並びに第一審判決を破棄し、同四一三条但書により、
被告事件について更に判決をすると、被告人の所為は、刑法二〇七条、二〇四条に
該当するから、所定刑中懲役刑を選択し、被告人を懲役五月に処し、同法二一条に
則り第一審における未決勾留日数中四〇日を右本刑に算入し、情状刑の執行を猶予
するを相当とするから、同法二五条に則り二年間右刑の執行を猶予し、刑訴一八一
条により第一審において生じた訴訟費用中主文第五項記載の分は、同項のとおり負
担さすべきものとし、裁判官の全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 羽中田金一公判出席
  昭和三七年五月一七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

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