弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士坂千秋の上告理由は添附の別紙記載のとおりである。
 論旨は、原判決は公職選挙法及び地方自治法中の住所に関する規定の解釈適用を
誤つていると主張し、また、その理由に齟齬があると主張するのである。
 しかし、原判決は諸般の事実を認定した上で被上告人の住所は本件選挙当時a村
内にあるものと判示しているのであつて、その説明によれば、所論のように法律の
解釈適用を誤つているということはできない。論旨は、原判決が過去の事実をとら
えて、選挙時現在の住所を認定したのは違法であると主張するようであるが、原判
決は、その理由中に過去の事実も経過的事実として認定しているけれども、そのた
めに被上告人の現在の住所をa村にあるものと認定した趣旨とは解することができ
ない。被上告人が本件選挙当時に、a村にある自宅表二間を使用して起居していた
事実、D金庫E出張所長であつた事実、村内に相当の不動産を所有し、小面積なが
ら農地を自作していた事実、同村で村民税を賦課されまた部落の夫役日当を負担し
ていた事実、住民登録も徳山市に移していなかつた事実等に基いて被上告人の住所
がa村内にあつたものと認定しているのであつて、同人がかつて同村の農業会長で
あり、村長であつた等の過去の事実を根拠として住所を認定しているのではない。
被上告人が徳山市内に家屋を購入し妻子を居住せしめている事実は、所論のように
原判決の認めるところであるが、その目的が子女の就職、教育等のためであること
が認められる以上、被上告人本人の住所まで同所にあるものと認定しなければなら
ないことはない。また、被上告人の起臥する日数がa村よりも徳山市の方が多いと
いう事実も、必ずしも、a村に住所があると認定するについて妨げとなるものでは
ない。その他論旨中原判決の認定しない事実に基く主張は採用する限りではなく、
また、被上告人が同村内にある妻の実家に時々宿泊していた事実は、同人の住所が
同人宅にあるとの認定と矛盾するものではなく、原判決に所論のような理由齟齬は
ない。
 以上説明のとおり本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴四〇
一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    本   村   善 太 郎
 裁判官小林俊三は出張につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    島           保

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