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平成17年6月23日判決言渡 
本訴 平成17年(少コ)第746号損害賠償請求事件(通常移行)
反訴 平成17年(ハ)第7920号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成17年6月9日
          主         文
1 本訴被告(反訴原告)は,本訴原告(反訴被告)に対し,31万0983円を支払え。
2 反訴被告(本訴原告)は,反訴原告(本訴被告)に対し,1万2629円及びこれに
対する平成17年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 本訴原告(反訴被告)のその余の請求を棄却する。
4 反訴原告(本訴被告)のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,本訴反訴ともに,これを10分し,その7を本訴被告(反訴原告)の負
担とし,その3を本訴原告(反訴被告)の負担とする。
6 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請   求
(本訴)
本訴被告(反訴原告)は,本訴原告(反訴被告)に対し,58万9826円を支払え。
(反訴)
反訴被告(本訴原告)は,反訴原告(本訴被告)に対し,96万1677円及び,これ
に対する平成17年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,本訴原告(反訴被告)Aと本訴被告(反訴原告)Bとの間のけんかにより,
双方が怪我をし,それぞれが相手方に対して不法行為に基づく損害賠償請求をして
いる事案である。
AのBに対する請求(本訴)は次のとおりである。
(1)病院通院費(治療費)    3万8726円
(2)弁護士相談費          6300円
(3)休業損害2ヶ月分     54万4800円
合計 58万9826円
  BのAに対する請求(反訴)は次のとおりである。
(1)休業損害45日分     82万3437円
(2)精神的損害        10万0000円
(3)医療費等          1万6020円
(4)内容証明代           1220円
(5)血塗れの衣類代       2万1000円
合計 96万1677円
1 争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実等
Aは,平成17年1月24日午後10時30分ころ,都営C線D駅近辺の牛丼屋E店で
夕食をとるために,同店のレジ前に並んで順番待ちをしていた。Aの前には4人くらい
の客が並んでいた。そこへ,Bが入ってきて,列の後ろに並ばないでいきなりレジのと
ころまで行って店員と言い争っているうちにその矛先がAの方に向かい,Aに対し「何
を見てんだ」「表へ出ろ」と言ったので,Aは黙ってBと一緒に同店の外の歩道に出た。
Bは相当酔っていた。
店の外に出たら,BがいきなりAに対し,右手で殴りかかったが空振りになった。そ
れに対してAが左右の手で2発,Bの顔面を殴り返した。その後,両者の揉み合いと
なったが,左肩に激痛と痺れを感じたAがその場にうずくまったところ,BはAの顔面を
更に殴った。
そして,同店店員(あるいは客)が2人の間に割って入り,Aを同店内に連れて行き
入口のドアを閉めた。激昂したBは同店の自動ドアのガラスを割り,器物損壊の疑い
で,連絡を受けて駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。
この殴り合い等で,Aは全治約2ヶ月の左肩関節脱臼の傷害を,Bは全治約10日
間の顔面打撲傷,口腔内挫傷の傷害を負った。
なお,事件当時,Aは27歳で,事件前後にそれまで勤めていた警備会社を退職し
ているが,退職が本件事件によるものであることを認めるに足りる証拠はない。また,
事件当時,Bは32歳で,失業中であった。
2 争点
(1)本件けんかにより双方が受けた損害(傷害)についての賠償額の算定
(2)本件けんかについての双方の過失割合
第3 当裁判所の判断
1 双方の損害の賠償額の算定
Aの左肩関節脱臼は,Bの暴行により生じた傷害であり,Aはその治療費として3万
8726円を支払っている(甲2の1ないし4)。この金額は当然に損害額に計上される。
Aの支払った弁護士の相談料費用6300円は,債権取立費用の性質を有し損害額算
定の際に考慮することはできない。Aの主張する2ヶ月分の休業損害54万4800円
の根拠は明確でない。そこで,平成15年度賃金センサス25歳から29歳までの男子
労働者の平均年収400万2300円の8割の320万1840円を基礎とし,左肩関節脱
臼で丸々2ヶ月の間完全就労不能になるとは考えられないので,実働日数年300日
で日割計算をし1ヶ月半(実働38日分として)分の賃金相当額40万5536円を休業
損害の額とする。Aの損害額は合計で44万4262円となる。
Bの顔面打撲傷,口腔内挫傷は,Aの暴行によるものであり,その治療費等として
Bは1万6020円を出費している(乙7の2,乙7の4ないし7)。この金額は損害額とし
て計算される。内容証明代1220円は損害額には入らず,血塗れの衣類代2万100
0円については認めるに足りる証拠がない。Bの主張する45日分の休業損害82万3
437円というのは,頭痛や左半身の痺れという症状を根拠とするものであろうが,そ
うした症状とAの2発の殴打行為との事実的因果関係の存在を認めるに足りる証拠
がない。全治約10日の顔面打撲傷等の傷害なので,休業損害としては,平成15年
度賃金センサス30歳から34歳までの男子労働者の平均年収488万9900円の8
割の391万1920円を基礎としてAの場合と同様の日割計算をして2日分の2万60
78円とするのが相当である。精神的損害10万円については,本件けんかの経緯等
に鑑みB側の損害として認めることはできない。Bの損害額は合計で4万2098円と
なる。
2 けんかの過失割合
けんかの過失割合は,けんかになった事情,双方の行為の態様,損害の程度によ
って判断されるが,酒に酔ったBが何の落ち度もないAに因縁をつけ,そしてAがBの
挑発に乗ってしまったというけんかの経緯や双方の怪我の程度等を考慮すると,本件
けんかの過失割合としては,Aが3割,Bが7割とするのが相当である。
3 結論
AのBに対する請求は,44万4262円の7割に相当する31万0983円を請求する
限度で理由がある。
BのAに対する請求は,4万2098円の3割に相当する1万2629円及びこれに対
する遅延損害金を請求する限度で理由がある。
東京簡易裁判所少額訴訟5係
裁 判 官 篠  田  隆  夫

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