弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
一 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は
第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴
棄却の判決を求めた。
二 当事者双方の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は、次のように付加するほ
かは原判決の事実摘示(原判決二枚目表一行目から三枚目裏四行目までと同一であ
るから、これを引用する(ただし、原判決二枚目表三行目の「日本人」を「日本人
(内地籍の日本国民。以下同じ。)」に、三行目から四行目にかけての「(A)」
を「(以下「A」という。)」に、五行目から六行目にかけての「旧国籍法(明治
三二年法律第六六号)」を「旧国籍法(明治三二年法律第六六号。以下同じ。)」
に、七行目、一〇行目及び裏二行目の「取得した」をいずれも「取得し、内地籍に
在る者としての法的地位を取得した」に、裏三行目の「台湾人」を「台湾人(台湾
籍の日本国民。以下同じ。)」に改め、三枚目表一行目の「生来的日本人」の次に
「、すなわち、出生により内地籍の日本国民となつた者」を加える。)。
(被控訴代理人)
1 控訴人の後記当番における主張は争う。旧国籍法四条の規定は、血統主義を貫
くと無国籍者が発生する場合があることから、これを防止する趣旨で設けられた規
定である。そして、学説の説くところによつても、母子関係は分娩によつて当然に
生ずるのであるから、「父母カ共ニ知レサル」場合の典型的なものは棄児の場合で
あるというのであつて、決して棄児の場合に限られるものではない。棄児の場合に
限られると解するときは、無国籍者の発生を防止するという本来の立法趣旨が没却
されることになつて相当でない。
仮に「父母カ共ニ知レサル」場合を棄児の場合に限ると解するとしても、右の立法
趣旨から、国籍法上の棄児とは、「国籍の帰属をめぐつて、その者から両親ないし
は出生地を知る手掛かりを得ることのできない子」又は「父母が事実上判明しない
子ないしは法的にいかなる親子関係も確定していない子」等と解され、一般的な棄
児とは異なつた定義づけがなされているのである。被控訴人は、第一次的には、
B、A間の子として神戸市において出生したのであるから旧国籍法一条により日本
国籍を取得し、第二次的には、仮にBの子ではないとしても、日本人たるAから出
生したものとして、同法三条により日本国籍を取得し、また第三次的には、Aの子
でもないとすれば、父母が共に知れず、かつ、日本において出生したから、同法四
条により日本国籍を取得したと主張するものであつて、右第三次的主張は、被控訴
人が前述の棄児のいずれの定義にも該当するとの趣旨を含むものである。
2 甲第一四ないし第二七号証(第一四号証、第二四ないし第二七号証は写)を提
出(第二二号証はCを撮影した写真であり、第二三号証はDを撮影した写真であつ
て、いずれも昭和五七年六月に撮影したものである。)。
当番で提出された乙号各証の成立(乙第一二ないし第一四号証については原本の存
在及び成立)は認める。
(控訴代理人)
1 (一)旧国籍法四条は、「日本ニ於テ生マレタル子ノ父母カ共ニ知レサルトキ
又ハ国籍ヲ有セサルトキハ其子ハ日本人トス」と規定して、生地主義に基づく国籍
取得規定を置いている。右の規定は、現行国籍法二条四号と全く同趣旨のものであ
るが、生来的な国籍の取得について血統主義を原則としている我が国が、その例外
としての生地主義による規定をも併せ有しているのは、血統主義を貫くことによつ
て生ずる欠陥を補うという意図から出たものにほかならない。すなわち、血統主義
を厳格に貫くと、父母が共に知れないとき、あるいは父母が共にいずれの国の国籍
をも保有していないような場合には、日本においてその父母から生まれた子は無国
籍者とならざるを得ないこととなるため、多くの立法例と同様に、無国籍者の発生
を可及的に防止するという観点から生地主義を採用したものなのである。
このように、血統主義を採用している我が国が生地主義に基づく規定を置いている
のは、あくまでも血統主義を補完するためにすぎないのであるから、当然のことな
がら、旧国籍法四条の解釈に当たつては、厳格解釈の立場が採られなければならな
い。そうでないと、我が国が本則として採用している血統主義の立場と相いれない
結果を招来する結果となつてしまうからである。したがつて、同条にいう父母が共
に知れないときというのは、事実上だれが父母であるかが判明しない場合、すなわ
ち、いわゆる棄児の場合に限るものと解すべきである。
かくして、同条前段の、「日本ニ於テ生マレタル子ノ父母カ共ニ知レサルトキ」と
の規定が具体的に適用されるのは、棄児の場合に限られることになるのであり、多
くの学説も、同条前段の適用があるのは棄児の場合に限られるとした上で、棄児と
は「国籍の帰属をめぐつて、その者から両親ないし出生地を知る手掛かりを得るこ
とのできない子」とか、更には、「父母の事実上判明しない場合で右の規定の適用
が考えられる典型的なものは棄児の場合である。」と説いているのであつて、この
点は、現行国籍法案を審議した昭和二五年四月一五日の参議院法務委員会における
政府委員の国籍法二条四号についての説明が、棄児のみに対する適用を当然の前提
としているという立法の沿革によつても明らかに裏付けられているのである。
(二) ところで、日本国籍の取得は戸籍への登載をもつて具体化されるものであ
るところ、戸籍法は、棄児が生地主義に基づく規定によつて日本国籍を取得するも
のであることから、棄児の戸籍を編製するため、特別の規定を置いでいる。
すなわち、棄児が発見された場合、発見者又は発見の申告を受けた警察官は、市町
村長に申し出ることとされ、市町村長は、氏名をつけ、本籍を定める等により棄児
の戸籍を編製することとなつている(戸籍法五七条、昭和二二年法律第二二四号に
よる改正前の戸籍法(大正三年法律第二六号。以下「旧戸籍法」という。)七八
条)のであり、これは、本来の出生届出義務者(戸籍法五二条、旧戸籍法七二条)
である父母等が判明せず、その手掛かりもないことから、市町村長が法律上特別の
届出義務者とされ、生地主義に基づく規定によつて日本国籍を取得した棄児につい
て戸籍が編製される手続的保証を与えているのであつて、正しく生地主義に基づく
規定(国籍法二条四号前段、旧国籍法四条前段)が棄児にのみ適用されるとする法
解釈をよく裏付けるものというべきである。
(三) 結局、国籍取得についての生地主義の規定及びそれを受けた棄児に関する
戸籍法規を総合的に解釈すれば、旧国籍法四条前段の「父母カ共ニ知レサルトキ」
とは、出生子について通常予想されている届出期間(旧戸籍法六九条一項参照)な
いしはその直近の時期において、旧戸籍法七二条の規定により出生届出の義務を有
する者、例えば父・母・同居者(事実上の生父)等の存在が、関係者に全く不明で
あり、かつ、その手掛かりも得られない場合であると解すべきである。
(四) ところで、本件では、仮に原判決が認定するように、「昭和三年夏ころ神
戸市内においてEのもとに生後間もなく引き取られたことは明らかである」として
も、これは全く棄児とは認め得ない状況であつたといわねばならない。すなわち、
その当時、もらい受けた関係者は、出生届出義務を有する父、母、戸主、同居者あ
るいは分娩に立ち会つた医師等(旧戸籍法七二条)を知り、ないしは知り得た立場
に在つたに違いないことが、社会通念上当然というべきだからである。
2 乙第一ないし第一四号証(第一二ないし第一四号証は写)を提出。
甲第二二、第二三号証が被控訴人主張のような写真であることは認める。当審で提
出されたその余の甲号各証の成立(第一四号証、第二四ないし第二七号証について
は原本の存在及び成立)は認める。
○ 理由
一 当裁判所は、被控訴人の本訴請求を認容すべきであると判断するものであつ
て、その理由は、次に改め、加えるほかは原判決の理由説示と同一であるから、こ
れを引用する。
1 原判決五枚目裏二行目の「病院から」から一〇行目の「できないし」までを
「Fが子供ができないため神戸市内の病院を回つて治療を受けていたことから、A
と被控訴人のことを知り、生後四〇日目くらいの被控訴人を病院から引き取つた旨
のEの供述記載部分がある。しかし、両名の各供述記載部分の間には、被控訴人の
存在を知る端緒について食い違いがあつて不自然な感を免れない上に、被控訴人と
の密接な関係を考慮すると、Fの右供述記載部分に全面的な信をおくことは危険で
あると考えられるし」に、六枚目表四行目の「記載部分は前掲」を「記載部分も、
成立に争いのない」に改め、九行目の「第八号証」の前に「原本の存在及び成立に
争いのない」を加え、七枚目表一一行目の「現在も」を「最近まで」に改め、七枚
目裏九行目の次に「当審における証拠調べの結果を併せて本件に現れた全証拠を検
討しても、Aと被控訴人との間の母子関係を認めるには足りないものといわざるを
得ない。」を加え、八枚目表七行目の「日本」を「日本(内地)」に改める。
二 控訴人は、当審において、旧国籍法四条前段の「日本ニ於テ生マレタル子ノ父
母カ共ニ知レサルトキ」との規定が適用されるのは、出生子について通常予想され
ている届出期間ないしその直近の時期において、旧戸籍法七二条の規定により出生
の届出をする義務を有する者の存在が関係者に全く不明であり、かつ、その手掛か
りも得られない棄児の場合に限られると主張するので、この点について判断する。
旧国籍法は、生来的な国籍の取得について、血統主義を原則としながら、父母が共
に知れないとき、又は国籍を有しないときに限り、補充的に生地主義を採用してい
る。すなわち、旧国籍法四条は、日本において生まれた場合において、父母が共に
知れないとき、又は国籍を有しないときはその子を日本人とする旨規定するが、こ
れは血統主義を厳格に貫くときは、右のような子は無国籍者となつてしまうことか
ら、できる限り無国籍者の発生を防止するため、血統主義の例外として生地主義を
採用したものにほかならない。ところで、旧国籍法四条の規定を同法一条ないし三
条の各規定を対比して統一的に解釈すれば、同法四条前段の「父母力共二知レサル
トキ」とは、子との間に法律上の親子関係の存在する父及び母が共に知れない場合
をいうものと解するのを相当とするところ、母とその非嫡出子との間の親子関係は
原則として分娩の事実により当然発生すると解すべきであるから、結局右規定の適
用を受けるのは、事実上の父及び子を分娩した母がいずれも判明しない場合並びに
事実上の父は判明しているが、これと子との間に法律上の父子関係が存在せず、か
つ、生母が判明しない場合であると解するのが相当である。そして、実際上の問題
として、その大多数を占めるのは右の前者の場合であり、その中でも主として控訴
人の主張するような意味における棄児の場合がこれに該当するものと考えられる。
しかしながら、右規定の適用を受けるのが右の棄児に限られると解するときは、無
国籍者の発生を可及的に防止しようとする前記同条の法意に反する結果を招くこと
になつて相当ではなく、右規定をそのように限定的に解釈すべき理由はない。
控訴人は、旧戸籍法七八条が、棄児が発見された場合の棄児発見の申出の手続を定
め、棄児の戸籍を編成するための特別の規定を置いていることをもつて、これは棄
児が生地主義に基づく規定により日本国籍を取得するものであることから、その戸
籍編成について手続的保証を与えたものというべきであり、生地主義に基づく旧国
籍法四条前段の規定が棄児にのみ適用されるものであるとの法解釈を裏付けるもの
であると主張する。しかし、右主張は採用することができない。すなわち、旧国籍
法四条前段の規定により生来的に日本国籍を取得した子は、父母が日本人であるこ
とによつて日本国籍を取得するものではないから、父母の本籍を取得することがで
きず、本籍を有しない日本人となり、旧戸籍法一六〇条の規定により区裁判所の許
可を得て就籍の届出をすることによつてはじめて戸籍簿に登載されることになるの
であるが、乳幼児である棄児の段階で発見された子については、日本の地理的条件
から考えて、日本で生まれたことが明らかであるから、あえて区裁判所の判断を経
るまでもなく、市町村長において戸籍登載をしても差し支えないと考えられる。旧
戸籍法七八条の規定は、この趣旨から棄児についての戸籍登載の手続を定めたもの
にすぎないのであつて、旧国籍法四条前段の規定の適用を受ける者が控訴人の主張
するような棄児に限られるとの前提に立つものと解することはできない。
三 よつて、当裁判所の右の判断と結論を同じくする原判決は正当であつて、本件
控訴は理由がないから、行政事件訴訟法七条、民訴法三八四条によりこれを棄却す
ることとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を
適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 貞家克己 近藤浩武 渡邊 等)
(原裁判等の表示)
○ 主文
原告が日本国籍を有することを確認する。
訴訟費用は被告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文同旨
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 原告主張の請求原因
1 (一)原告は、いずれも日本人であるB、A夫婦の第五子として、昭和三年七
月一八日兵庫県神戸市において出生したが、父が日本人であるから旧国籍法(明治
三二年法律第六六号)一条により、日本国籍を取得した。
(二) 仮に原告がBの子ではないとしても、原告は父が明らかでなくかつ日本人
たる母から出生した者として、同法三条により日本国籍を取得した。
(三) また原告がAの子でもないとすれば、原告は父母がともに知れずかつ日本
において出生した者にあたるから、同法四条により日本国籍を取得した。
2 しかるに、原告は、当時台湾人であつたE、F夫婦に生後間もなく引き取ら
れ、同人らの実子(庶子)として昭和三年九月台湾戸籍に入籍されたため、現在で
は日本国籍を喪失したものとして扱われている。
3 よつて原告が日本国籍を有することの確認を求める。
二 請求原因に対する被告の答弁
1 請求原因事実のうち、B、Aがともに日本人の夫婦であつたこと、原告が台湾
人E、F間の庶子として台湾戸籍に入籍されたことは認めるが、その余の事実は不
知、原告が生来的日本人であるとの主張は争う。
2 戸籍に登載された事項は真実存在するものと推定されるべきであつて、原告
は、Eとの父子関係が否定されない以上は、前記の台湾戸籍に留まることになるか
ら、昭和二七年四月二八日の日本国との平和条約の発効により日本国籍を喪失した
ものとされるのである。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 B、Aかともに日本人の夫婦であつたこと及び原告が台湾人E、F間の庶子と
して台湾戸籍に入籍されたことは、いずれも当事者間に争いがない。
右事実並びにいずれも成立に争いのない甲第一、第四号証(原本の存在についても
争いがない。)、第六号証の五、六、第七号証、証人Gの証言によりいずれも成立
を認める甲第一二、第一三号証の各一部、原告本人尋問の結果(一部)及び弁論の
全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
E(帰化後の氏名H)は、大正年間から神戸市において手広く貿易商を営んでいた
台湾人であり、妻のIを台湾に残し、大正一一年ころからはのちに妾として入籍し
たFとも結婚してともに同市内に居住していたものであるが、婦人関係が激しく、
第五夫人まで作り、Iとの間には三名の養子を迎えていた。そのため結婚後数年を
経ても子のできなかつたFは、子のない寂しさと自らの妾としての地位を維持、強
化する必要とから、他より子をもらいうけてこれを自らの子として養育することを
考えていたが、昭和三年夏ころ、神戸市内において生後間もない原告を第三者から
もらい受けることに決め、Eの了解も得たうえで、生後一か月位のころ原告を引き
取り、Eにおいて姓名もJと命名のうえ、E・F間の同年九月一八日生れの庶子と
して台湾において届出を了した結果、原告はEの台湾戸籍に入籍し、原告は右両名
の実子として養育されるところとなつた。
以上の事実を認めることができる。Fが誰から原告をもらい受けたかについては後
記認定のとおりこれを認めるに足る的確な証拠はなく、原告は台湾戸籍の記載にか
かわらずFの実子でないことが明らかであり、また前掲甲第六号証の五、六、第一
二、第一三号証によればEと原告との間に血縁上の父子関係のなかつたことが認め
られるから、Eの前記庶子出生届は無効であつて、認知届出の効力は生じなかつた
から、原告について台湾戸籍に入籍すべき事由は存在しなかつたものというべきで
ある。
二 そこで、すすんで原告が生来的に日本国籍を取得していたか否かを判断する。
まず原告の主張する順序に従い、原告がB又はAの子であるかを検討する。
前掲第六号証の五、六、第一二号証には、Aが子を育てられないため他へあげたい
と新聞広告をし、それをみたFが原告をAからもらつて来た旨のFの供述記載、前
掲甲第一三号証には原告はAとBとの間の子であり、病院から引き取つてきた旨の
Eの供述記載部分がある。しかし成立に争いのない甲第六号証の二ないし四、七、
第八号証(原本の存在についても争いがない。)によれば、Bは三原市等の造船所
に単身赴任していた幹部社員であり、Aは神戸市内において洋装店を営んでいて四
人の子を育てていたものであつて、経済的に余裕がないわけではなく、原告の養育
が困難な生活状況にあつたとは認められないから、Aが新聞広告をしてまで自己の
子を里子に出すというようなことはにわかに首肯することができないし、甲第一三
号証によれば、Eは自己と原告との血縁上の父子関係を否定し、原告は第三者から
もらい受けた子であることを認めていることはうかがえるものの、原告がAの子で
ある旨の前記供述記載部分は、高齢にあるEが列席者の誘導により供述した疑いが
強く、右各供述記載部分は前掲甲第六号証の四、七と対比してにわかに措信するこ
とができない。したがつて、Fが原告を第三者からもらい受けるについてAが何ら
かの介在をしていたかどうかはともかく、前掲の証拠から直ちに原告がAの実子で
あると認定することは困難である。
前掲甲第六号証の四、七及び第八号証によれば、Aはその三男Dを出生して二、三
年後さらに妊娠したが、体調不全を理由に堕胎した経験があることが認められる
が、右の時期も明確でなく、Aの堕胎により原告が出生しこれが間もなくEに引き
取られたと考えることも単なる推測の域を出ないものである。のみならず、前掲甲
第六号証の四及び七によれば、Aは堕胎した子の生死は知らない旨供述し、原告が
自らの子であることについては頑強に否定していて、原告を他人に引き渡したこと
すら否認する態度にでているのも明らかであつて、Aの供述は全般に事実を殊更隠
蔽する態度に出ているとの印象を拭えないとはいえ、前記供述部分のみを措信して
原告がAの実子であると認定することは困難である。
また、原告本人尋問の結果中には、A自身が原告に対し健康を害して堕胎したが原
告が生きていたので里子に出したと語つた旨、あるいは原告がAのもとに下宿して
いたころBやその娘Kから原告がB夫婦の子であるかのように暗示されたことがあ
るとの各供述部分があるが、これらはいずれも措信しがたく、また、原告がFの義
弟であるLから原告の実親はAであることを聞かされた事実も、Aの供述を無視し
てAと原告との自然的血縁関係を直ちに肯認する資料とならないことは明らかであ
る。
さらに原告本人尋問の結果により認めうる、Aは少年時代の原告に下宿を提供し、
また戦後の来日のたびに原告を自己のアパートに止宿させ、現在も原告の妻ともど
もその所有の貸室に居住させていること、原告の日本人名を命名したり、原告のた
めに少なからぬ借金の返済にもあたつたことがあることなどの諸事情も、Aと原告
の何らかの密接な関係を示すものではあつても、これをもつて直ちにAが原告を分
娩したと推認することができないのは前同様である。
結局、血液型の鑑定等、自然科学的知見の結果をも合わせて参酌することのできな
い本件では、以上認定の諸事実を全て考慮しても、Aと原告との間の親子関係を肯
定するには飛躍があるというべきである。
三 右の次第で、本件では原告がAから出生した事実はこれを認めるに足りる証拠
はないことに帰し、したがつて、Aとの婚姻関係に基づきBの子とする推定も成り
立たず、他に原告がBの子であるとする事情も全くないので、原告がB又はAの子
であるとの原告の主張は理由がないことになる。
しかしながら、前認定のとおり、原告が昭和三年夏ころ神戸市内においてEのもと
に生後間もなく引き取られたことは明らかであり、そのころ日本で出生したことは
優に推認されるから、原告は旧国籍法四条にいう父母ともに知れないが日本で出生
した者に該当し、同条により昭和三年出生とともに日本国籍を取得したというべき
である。
そして、原告が台湾戸籍に入籍すべき事由の存在しなかつたことは前記認定のとお
りであるから、原告は、日本国と中華民国との間の平和条約によつても日本国籍を
喪失していないというべきであり、他に日本国籍の喪失事由について主張、立証の
ない以上、現に日本国籍を有しているものと認めるのが相当である。したがつて、
原告のこの点に関する主張は理由がある。
四 よつて、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につ
き行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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