弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人田中喜一の上告趣意(イ)について、
 昭和二三年政令第二〇一号違反の罪が成立するためには、必ずしも業務の運営能
率を阻害するという具体的結果が現実に発生することを必要とするものではなく、
争議手段としてなされた行為が、その性質上通常国又は地方公共団体の業務の運営
能率を阻害する危険性あるものであれば足りることは、当裁判所の判例とするとこ
ろである。(昭和二四年(れ)第六八五号同二八年四月八日言渡大法廷判決中弁護
人福田力之助の上告趣意第四点に対する判断参照)そして原判決摘示の被告人等の
所為は、このような危険性あるものであること論を俟たないし、右原判決摘示の事
実はその挙示の証拠で十分認められるから原判決は、証拠によらずして事実を認定
したという違法はない。
 同(ロ)について、
 又原審公判調書によれば、原審裁判所は所論司法警察官作成の各聴取書謄本につ
いては、刑訴応急措置法一二条により被告人等の弁護人の請求に基きその供述者た
るB、C、Dを夫々証人として公判廷において訊問し、被告人等に同証人等を訊問
する機会を与えているのであるから、原判決が所論各聴取書を証拠としたからとい
つて、憲法第三七条二項に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするとこ
ろである(昭和二三年(れ)第八三三号同二四年五月一八日大法廷判決集三巻六号
七八九頁)から、論旨は理由がない。
 被告人等弁護人土田光保上告趣意第一点及び第二点について、
 所論昭和二〇年勅令第五四二号は、日本国憲法にかゝわりなく同憲法施行後も憲
法外において法的効力を有すること従つて右勅令に基き発せられた本件政令第二〇
一号が同様法的効力を有することは当裁判所の判例とするところである。(前記昭
和二四年(れ)第六八五号大法廷判決中弁護人森長英三郎の上告趣意第二点並びに
同小沢茂の上告趣意第一点に対する各判断参照)そして右勅令並びに右政令が憲法
にかゝわりなく法的効力を有する以上、右勅令並びにこれに基く本件政令は、所論
昭和二二年法律第七二号一条によつて、その効力に消長を来たすことはないから論
旨は理由がない。
 同第三点及び第四点について、
 所論連合国最高司令官の書簡は、右司令官の要求を表示したものであること、及
び被告人等の如きいわゆる現業官庁従業員が、本件政令第二〇一号にいう公務員に
含まれること、並びに、臨時応急的性格を有する本件政令が、とりあえず現業官庁
従業員の団体交渉権争議行為の禁止だけを規定し、国家公務員法の全面的改正につ
いては別途の措置を講ずることとしたからといつて、本件政令が所論書簡を曲解し、
若しくはこれに便乗した違法のないことも亦当裁判所の判例とするところである。
(前記昭和二四年(れ)第六八五号大法廷判決中弁護人森長英三郎の上告趣意第三
点に対する判断参照)
 同第五点について、
 本件政令第二〇一号は憲法二八条に違反するものでないこと、亦当裁判所の判例
とするところであつて(前記昭和二四年(れ)第六八五号大法廷判決中弁護人森長
英三郎の上告趣意第四点に対する判断参照)論旨は理由がない。
 同第六点について、
 原判決挙示の証拠により認め得る原判決摘示の事実によれば、被告人等は、本件
政令が制定公布され、公務員の団体交渉権及び同盟罷業権が剥奪されるや、右政令
は憲法並びにポツダム宣言に違反する無効のものであると主張し、政府の国家公務
員法改正の企図に対し、反対闘争を展開し、公務員の団体交渉権及び同盟罷業権を
獲得擁護せんため、E組合F支部G協議会青年部員大会を開催し、右闘争の手段と
して職場を離脱せんことを協議共謀し、夫々原判決判示の如く職場を離脱したとい
うのであるから、被告人等の行為が本件政令第二〇一号二条一項にいわゆる争議手
段にあたること、論をまたない。又、本件政令第二〇一号二条一項が同項に該当す
るいわゆる職場離脱を禁止したからといつて右政令が憲法一八条に違反するもので
ないことも当裁判所の判例とするところである(前記昭和二四年(れ)第六八五号
大法廷判決中弁護人森長英三郎上告趣意第五点に対する判断参照)
 同第七点について、
 論旨の理由のないことは、弁護人田中喜一の上告趣意(イ)について判断を示し
たとおりである。
 よつて刑訴施行法二条、旧刑訴法四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官栗山茂の弁護人土田光保上告趣意第一点並びに第五点に関する
意見を除き裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官栗山茂の意見は前記昭和二四年(れ)第六八五号大法廷判決記載のとおり
である。
 裁判長裁判官塚崎直義は退官につき本件合議に干与しない。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二八年五月二九日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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