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平成13年(行ケ)第440号 特許取消決定取消請求事件(平成14年3月11
日口頭弁論終結)
          判           決
       原      告    トヨタ自動車株式会社
   原      告    大豊工業株式会社
   両名訴訟代理人弁護士  上   谷       清
       同           宇   井   正   一
       同           笹   本       摂
       同      弁理士  島   田   哲   郎
       同           山   口   修   之
       被      告    特許庁長官 及 川 耕 造
       指定代理人       長   屋   陽 二 郎
       同           船   越   巧   子
       同           大   野   克   人
       同           宮   川   久   成
          主           文
 特許庁が異議2000-73168号事件について平成13年8月2
0日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は原告らの負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告ら
   主文と同旨
 2 被告
   原告らの請求を棄却する。
   訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告らは、名称を「内燃機関用すべり軸受」とする特許第3009766
号発明(平成3年8月9日国内優先権主張、同年10月29日特許出願、平成11
年12月3日設定登録。以下、この特許を「本件特許」といい、本件特許に係る発
明を「本件発明」という。)の特許権者である。
    本件特許につき特許異議の申立てがされ、異議2000-73168号事
件として特許庁に係属したところ、原告らは、平成13年2月13日、願書に添付
した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲及び発明の詳細な説
明の各記載を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。
    特許庁は、同特許異議事件について審理した上、同年8月20日、「訂正
を認める。特許第3009766号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。」と
の決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年9月5日、原告らに
送達された。
 (2) 原告らは、本件決定の取消しを求める本件訴えを提起した後、同年12月
5日、本件明細書の記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、
同請求を訂正2001-39220号事件として審理した上、平成14年2月1
日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし、その謄本
は、同月14日、原告らに送達された。
 2 特許請求の範囲の記載
 (1) 設定登録時の特許請求の範囲の記載
   【請求項1】すべり軸受内周面上にほぼ円周方向の溝を形成した内燃機関用
すべり軸受であって、
    溝がなくならない面圧下で利用され、溝の深さを4.5μm以下とし、溝
の深さに対する溝の幅の比を40を超え300以下とした、ことを特徴とするすべ
り軸受。
   【請求項2】内燃機関のクランク軸用のすべり軸受であることを特徴とする
請求項1に記載のすべり軸受。
   【請求項3】溝の深さに対する溝の幅の比を42以上267以下としたこと
を特徴とする請求項2に記載のすべり軸受。
   【請求項4】溝の上に12乃至20μmのオーバーレイ層が積層されている
ことを特徴とする請求項4に記載のすべり軸受。
 (2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、本件訂正請求に
係る訂正は、上記(1)の請求項1及び2を削除し、同請求項3及び4をそれぞれ新た
に請求項1及び2とするとともに、その各記載を下記のとおり訂正するというもの
である。)
   【請求項1】すべり軸受内周面上にほぼ円周方向の溝を形成した内燃機関の
クランク軸用すべり軸受であって、
    溝がなくならない面圧下で利用され、溝の深さを4.5μm以下とし、溝
の深さに対する溝の幅の比を43以上100以下とした、ことを特徴とするすべり
軸受。
   【請求項2】溝の上に12乃至20μmのオーバーレイ層が積層されている
ことを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
 (3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、本件訂正審決に
係る訂正は、上記(1)の請求項1及び2を削除し、同請求項3及び4をそれぞれ新た
に請求項1及び2とするとともに、その各記載を下記のとおり訂正するというもの
である。(1)との相違部分を下線で示す。)
   【請求項1】すべり軸受内周面上にほぼ円周方向の溝を形成した内燃機関の
クランク軸用すべり軸受であって、
    溝がなくならない面圧下で利用され、溝の深さを3.0μm未満とし、溝
の深さに対する溝の幅の比を43以上100以下としたことを特徴とするすべり軸
受。
   【請求項2】溝の上に12乃至20μmのオーバーレイ層が積層されている
ことを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
 3 本件決定の理由
   本件決定は、本件訂正請求に係る訂正を認め、本件発明の要旨を同訂正後の
特許請求の範囲の記載(上記2(2))のとおり認定した上、訂正後の請求項1及び2
に係る発明は、実願昭61-149345号(実開昭63-53922号、甲第8
号証)のマイクロフィルム記載の発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容
易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特
許を受けることができず、本件特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願
に対してされたものであるので、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第
116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴
う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条2項の規定により、取り
消されるべきものとした。
第3 当事者の主張
 1 原告ら
   本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲
の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は、本件訂正審決の確定により特許
請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため、誤りに帰したことに
なる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから、本件決
定は違法として取り消されるべきである。
 2 被告
   本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
   本件決定が本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の
記載(上記第2の2(2))のとおり認定したこと、他方、本件訂正審決の確定により
特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争い
がないところ、この訂正により本件発明についての特許請求の範囲が減縮されたこ
とは明らかである。
   そうすると、本件決定が本件発明の要旨を上記のとおり認定したことは、結
果的に誤りであったことに帰し、この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは
明らかであるから、本件決定は、瑕疵があるものとして取消しを免れない。
   よって、原告らの請求は理由があるから認容し、訴訟費用は、原告らの申立
て等本件訴訟の経過にかんがみ、原告らに負担させることとして、主文のとおり判
決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠   原   勝   美
    裁判官 長   沢   幸   男
    裁判官 宮   坂   昌   利

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