弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人高橋義次同古家幸吉共同の控訴趣意は別紙記載のとおりであつて、要する
に、本件の起訴状には被告人の貸金業等の取締に関する法律第五条違反の事実とし
て「被告人は法定の除外事由なく且大蔵大臣に所定の届出をしないで昭和二十四年
十二月二十九日頃より昭和二十五年五月三日頃迄の間八回に亘り東京都港区a町b
番地自宅に於てA外六名に対し合計九十四万円を月五分乃至一割二分の利息を得て
貸付け以て貸金業を営んだものである」と記載されてあるが、右の記載では数個の
行為の中の唯の一回の行為すら日時、金額等によつて具体的に明らかにされていな
いし、また右のような具体性を欠く記載では犯罪構成要件の一たる行為の営業性が
具体的に明示されたものともいい難いから、結局本件記訴状は罪となるべき事実を
特定して訴因を明示したものとはいえず無効なものであるのに、原判決がこれに基
き有罪の言渡をしたのは不法に公訴を受理したものにほかならない、というのであ
る。
 そこで、当裁判所のこれに対する判断を示すのに、まず本件で問題となつている
貸金業等の取締に関する法律第五条違反の罪の構成要件は「貸金業者でないのに貸
金業を行つた」ということである。そして、その「貸金業」とは、何らの名義をも
つてするを問わず、金銭の貸付又は貸借の媒介をする行為を業として行うものをい
う(同法第二条第一項)とされているのであるから、この罪の実体は個々の貸付又
は媒介の行為だといわなければならない。しかしながら、ここに注意を要するの
は、右の罪が講学上集合犯と呼ばれるものの一種で、その行為が数個あつても構成
要件の性質上それらの行為は包括して一罪をなすにすぎないということである。い
いかえれば、この場合、たとえ行為は数個であつても、それが起訴されるときには
合してたゞ一個の訴因をなすということである。ところで、刑事訴訟法第二百五十
六条第三項は、「訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪と
なるべき事実を特定してこれをしなければならない。」と規定している。従つて、
てきる限り具体的な事実の表示によつて訴因を他の訴因とまぎれることのないよう
に特定することが起訴状の記載方法として要求されていることはいうまでもない。
しかし、これを本件にあてはめてみると、前述のように被告人の行つたといわれる
数個の行為は、そのそれぞれが各別の訴因を構成するものではなく、合して<要旨>
一の訴因をなすのであるから、起訴状の記載としては、これらが全体として他の事
実と混同することのないように特定されていなければならないと同時に、こ
の程度において特定されていれば足りるとすべきであつて、論旨のいうように一罪
の一部をなすにすぎないその個々の行為の少くとも一をさらに具体的に特定しなけ
ればならないというようなことは根拠を欠く議論だといわなければならない。そし
て、本件の起訴状は、一罪をなす数行為の行われた期間をその始期及び終期をもつ
て具体的に特定し、なおその回数・場所・相手方の一人の氏名及び合計人数・貸付
合計金額・利息の大要等をも表示しているのであるから、少くともその訴因全体に
ついてはこれを他と識別しうる程度に特定がなされたものと認めることができる。
なるほど被告入側の防禦の立場からいえば、さらにその内容をなす個々の行為がよ
り具体的に明示されていた方が便宜であるから、検察官としてはその点までも起訴
状に記載した方が親切だとはいえるであろう。しかし、本件起訴状の記載の程度を
もつてしても刑事訴訟法第二百五十六条第三項の要求は満たしていると解しなけれ
ばならないので、これをもつて本件起訴状が違法のものであり無効であるとはいえ
ない。のみならず、検察官は原審第二回公判期日において証拠調手続に先だち個個
の貸付行為の内容を被告人及び弁護人の面前で釈明しているのであるから、被告人
側として実質的に防禦に支障を来したともいえないのである。従つてこの点に関す
る論旨は採用することができない。
 次に、本件の罪の構成要件が貸付等の行為を業として行つたということ、いいか
えればその「業として」ということが構成要件の一部をなすことは所論のとおりで
ある。また、起訴状に記載せらるべき訴因が単に構成要件上の法的概念をそのまま
敷き写しにするというようなものではなく、本来事案の記載でなければならぬこと
も論旨のいうとおりであろう。これをここで問題となつている「業として」という
概念についていうと、「業として」とは「反覆継続の意思をもつて」ということで
あるから、起訴状にかような文言が明示されていれば恐らく問題のなかつたところ
である。ところが、本件起訴状にはかような記載はない。しかし、そこには被告人
が短期間内に八回にわたり七名の者に対してそれぞれ月五分ないし一割五分の利息
を得て金員を貸し付けたことが記載さわているのであつて、この記載自体と、その
末尾の「以て貸金業を営んだものである。」との文言とを併せて読めば、被告人が
反覆継続の意思をもつて金銭の貸付をしたという趣旨が間接に表示されていると認
めることができる。そして、かくのごとき間接の表示方法をもつてしても、いやし
くもその趣旨が通常人に理解せられうるものである限り、起訴状の記載として不適
法であるとはいえないから、行為が業としてなされたことに関してその記載が不備
であるとする所論もまたこれを採ることができない。
 以上説明したとおり、本件控訴趣意は結局理由がないので、刑事訴訟法第三百九
十六条に従い本件控訴を棄却することとし主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 大塚今比吉 判事 山田要冶 判事 中野次雄)

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