弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、被上告人らの勝訴部分につき第一審判決を取り消す。
     右部分につき被上告人らの請求をいずれも棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。
         理    由
 昭和三九年(オ)第五二三号事件上告代理人東里秀の上告理由について。
 論旨は、訴外D工業株式会社の債務のため自己所有の不動産を譲渡担保に供した
にすぎないEは物上保証人とはいえず、また右債務の時効消滅によつて直接利益を
受ける者とはいえないとして、Eの承継人たる昭和三九年(オ)第五二三号事件上
告人A1外四名(以下上告人A1らと略称する)のした右債務の消滅時効の援用を
認めなかつた原判決には、民法一四五条の解釈適用を誤つた違法があるという。
 時効は当事者でなければこれを援用しえないことは、民法一四五条の規定により
明らかであるが、右規定の趣旨は、消滅時効についていえば、時効を援用しうる者
を権利の時効消滅により直接利益を受ける者に限定したものと解されるところ、他
人の債務のために自己の所有物件につき質権または抵当権を設定したいわゆる物上
保証人も被担保債権の消滅によつて直接利益を受ける者というを妨げないから、同
条にいう当事者にあたるものと解するのが相当であり、これと見解を異にする大審
院判例(明治四三年一月二五日大審院判決・民録一六輯二二頁)は変更すべきもの
である。そして、原審(引用の第一審判決を含む。以下同じ。)の確定したところ
によれば、上告人A1らの先代Eは、訴外D工業株式会社のFに対して負担する合
計三二〇万円弁済期日昭和三〇年一二月末日の貸金債務のためFに対してその所有
の本性土地建物をいわゆる弱い譲渡担保に供していたところ、右訴外会社は弁済期
日を経過しても右債務を弁済しなかつたが、本件土地建物については、右譲渡担保
契約締結後FおよびつづいてEが死亡したためいまだにFへの所有権移転登記手続
がなされていないというのである。右事実関係のもとでは、Eは、他人の債務のた
めその所有不動産を担保に供した者であつて、被担保債権の消滅によつて利益を受
けるものである点において、物上保証人となんら異るものではないから、同様に当
事者として被担保債権の消滅時効を援用しうるものと解するのが相当である。しか
らば、上告人A1らもまた、Eの承継人として右被担保債権の消滅時効を援用しう
るものというべきである。したがつて、上告人A1らに消滅時効の援用権なしとし
て前記債務の消滅時効完成の抗弁を排斥した原判決には、民法一四五条の解釈適用
を誤つた違法があるものといわざるを得ない。そして、原審の確定した事実関係の
もとにおいては、前記訴外会社のFに対する債務は商事債務であり、前記弁済期日
から五年を経過した昭和三五年一二月末日までの間時効中断のあつたことの主張立
証のない本件においては、同日の終了とともに消滅時効が完成したことが明らかで
ある。もつとも被上告人らは、原審において、右訴外会社の承継人たるG建築工芸
株式会社が昭和三六年六月一五日被上告人らに対して本件貸金債務を承認し、もつ
て事項の利益を放棄したと抗争しているが、時効の利益の放棄の効果は相対的であ
り、被担保債権の消滅時効完成の利益を債務者が放棄しても、その効果は物上保証
人ないし本件のように右債権につき自己の所有物件を譲渡担保に供した者に影響を
及ぼすものではないから、被上告人らの右抗弁も、上告人A1らの消滅時効完成の
主張を妨げる理由にはならない。したがつて、被上告人らは前記消滅時効の完成と
ともに本件土地建物に対する譲渡担保権を失い、本件土地建物の所有権は当然に上
告人A1らに復帰したものというべきであるから、いまだ譲渡担保契約が存続して
いるとして、右契約に基づき本件土地建物の所有権が被上告人らに復帰することを
前提とする被上告人らの本件土地建物所有権移転登記手続および本件建物明渡の各
請求はいずれも理由がないものといわなければならない。しからば、本件被担保債
権の消滅時効が完成した旨の上告人A1らの抗弁を排斥して被上告人らの右請求を
認容した第一審料決およびこれを是認した原判決には、民法一四五条の解釈適用を
誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は
理由があるものというべく、原判決および第一審判決は、この点において破棄、取
消を免れない。しかして、右請求については、叙上の事実関係に照らしてその理由
のないことが明らかであるから、請求を棄却すべきものである。
 昭和三九年(オ)第五二四号事件上告人兼上告代理人A2の上告理由について。
 被上告人らの昭和三九年(オ)第五二四号事件上告人A2および同A3(以下上
告人A2らと略称する)に対する本訴請求は、要するに、本件土地建物の所有権に
基づいて上告人A2らに対して本件土地建物になされた抵当権設定登記等の抹消登
記手続を求めるものであるところ、原判決(引用の第一審判決)の確定したところ
によれば、上告人A1らの先代Eは訴外D工業株式会社のFに対して負担する原判
示債務につきその所有の本件土地建物をいわゆる弱い譲渡担保に供していたという
のであり、しかして、右債務につき消滅時効が完成し右譲渡担保契約が消滅して本
件土地建物の所有権が上告人A1らに復帰したものと認めるべきことは、上告人A
1らの上告代理人東里秀の上告理由に対する判断に説示したとおりである。右のよ
うに被上告人らにおいてすでに本件土地建物の所有権を有しないことが明らかであ
る以上、いまだ譲渡担保契約が存続するものとして、被上告人らにおいて本件土地
建物の所有権を有することを前提とする被上告人らの請求を認容した第一審判決お
よびこれを是認した原判決は、いずれも違法であり、右違法は判決に影響を及ぼす
ことが明らかであるから、原判決および第一審判決は、この点において破棄、取消
を免れない。しかして、叙上の事実関係のもとでは前記のとおり右請求はその理由
のないことが明らかであるから、これを棄却すべきものである。
 よって、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条、九三条に
従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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