弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人三名の弁護人山下卯吉、同懸樋正雄の上告趣意について。
 論旨Aは、事実誤認の主張であり、同Bは、判例違反をいうけれども論旨引用の
判例は事案を異にし本件に適切でなく、同Cは、違憲をいうけれども所論は原判示
にそわない事実を前提とするものであつて何れも刑訴四〇五条の上告理由に当らな
い。
 被告人Dの弁護人中村光三名義の上告趣意について。
 論旨第一点は判例違反を主張するが、原判決は何等論旨引用の(A)判例と相反
する判断を示しておらず、又、論旨引用の(B)判例に違反するとの所論は、原判
示にそわない事実を前提とするものであるから、右所論は何れも適法な上告理由と
ならない。又所論は憲法二二条、一四条違反をいうが、原判決において被告人がい
わゆる興信所を営むことを職業とする者であるが故に被告人に不利益に第一審の有
罪判決を是認したものであることは原判文その他記録上これを窺うことができない
から所論は前提を欠き適法な上告理由とならない。
 論旨第二点は憲法三八条違反をいうが、所論の被告人供述調書が捜査官の強要に
よるものであることを疑うべき資料は記録上認められないから、所論は前提を欠き
上告適法の理由とならない。又、所論は憲法三七条一、二項違反、憲法三一条違反
をいうが、なるほど公判手続の更新手続を規定した刑訴規則二一三条の二は更新前
の公判期日における被告人以外の者の供述を録取した書面については、職権でこれ
を証拠書類として取り調べなければならないとし、且つ、その証拠調は相当と認め
る方法で行うことができるとしているけれども、元来被告人は刑事訴訟法により公
判手続の更新前に証人に対する審問の機会を充分与えられているのであるから、そ
の証人の供述を録取した調書を証拠としても、憲法三七条二項に違反しないことは、
当裁判所大法廷判決(昭和二四年(れ)第七三一号同二五年三月一五日判決、刑集
四巻三号三五五頁)の趣旨に徴し明らかであるから、所論の公判手続の更新に関す
る手続規定が憲法三七条二項に違反するとの論旨は理由がない。そして本件第一審
における公判手続の更新は、右刑訴法の規定に従つて行われたこと記録上明らかで
あるから、この点に関する憲法三一条、三七条一項違反の所論は前提を欠き適法な
上告理由とならない。
 論旨第三点は、憲法三六条違反をいうけれども、実質は量刑不当の主張であつて
刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Eの弁護人坂田豊喜、同小田泰三の上告趣意について。
 論旨第一点は、事実誤認の主張であり、同第二点は、量刑不当の主張であつて何
れも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Fの弁護人秋山邦夫の上告趣意について。
 所論は、憲法三七条一項違反をいうけれども、実質は量刑不当の主張であつて刑
訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三八年二月一九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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