弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
1 被告が原告に対し昭和四三年八月三一日付でしたEの昭和四〇年八月一日から
昭和四一年七月三一日までの事業年度の法人税の再更正及び無申告加算税賦課決定
のうち、法人税の課税標準一三九万五二六四円をこえる部分は無効であることを確
認する。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担と
する。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告が原告に対し昭和四三年八月三一日付でしたEの昭和四〇年八月一日から
昭和四一年七月三一日までの事業年度の法人税の再更正及び無申告加算税賦課決定
は無効であることを確認する。
2 被告が原告に対し昭和四三年八月三一日付でしたEの昭和四一年八月一日から
昭和四二年七月三一日までの事業年度の法人税の再更正及び過少申告加算税賦課決
定は無効であることを確認する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決
二 被告
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決
第二 原告の請求原因
一 本件処分の経緯等について
原告は、スチール家具等の製造販売を業とする株式会社であつて、昭和四三年一月
一三日Eを吸収合併したものである。
Eは、昭和四〇年八月一日から昭和四一年七月三一日までの事業年度(以下「昭和
四〇年度」という。)及び昭和四一年八月一日から昭和四二年七月三一日までの事
業年度(以下「昭和四一年度」という。)の法人税について、青色申告書によりそ
れぞれ別表記載のとおり確定申告をしたところ、被告は、昭和四三年五月二八日E
の昭和四〇年度以降の事業年度について青色申告の承認を取り消したうえ、Eを吸
収合併した原告に対し、同年八月三一日、右各年度の法人税について別表記載のと
おり再更正(以下それぞれ「昭和四〇年度更正」「昭和四一年度更正」といい、こ
れを合わせて「本件各更正」という。)及び昭和四〇年度につき無申告加算税の賦
課決定を、昭和四一年度につき過少申告加算税の賦課決定(以下「本件各決定」と
いう。)をした。
二 本件各更正の無効事由
しかしながら、昭和四〇年度更正には1ないし4の、昭和四一年度更正には1及び
2に掲げる重大かつ明白な瑕疵があるから、いずれも無効であり、したがつて、本
件各更正を前提としてされた本件各決定も無効である。
1 更正の理由附記の欠缺について
被告は、昭和四九年九月六日被告のした前記青色申告の承認の取消処分を取り消し
た(以下「本件取消処分」という。)ので、Eは本件係争各年度について青色申告
により確定申告をした者ということになる。しかして、青色申告書に係る法人税の
課税標準の更正をする場合には、その更正通知書に更正の理由を附記しなければな
らないところ(法人税法第一三〇条第二項)、本件各更正に係る更正通知書には、
いずれも更正の理由が附記されていないから、本件各更正に無効である。
2 所得の帰属の誤認について
被告は、昭和四〇年度において後記3の(一)記載の債務免除に係る金額の他に三
五一万七七三九円を、昭和四一年度において一七六万七一四〇円をそれぞれEの所
得と認定して本件各更正をした。
しかしながら、Eは昭和四〇年一月下旬頃倒産し、本件係争各年度においては任意
整理を続行中であつて、実質的な営業活動を行つておらず、当時営業活動の主体は
Eを吸収合併する以前の株式会社Fすなわち原告であつたのであり、Eには右の如
き所得は生じていない。したがつて、被告の認定に係る右各所得は、原告の所得に
帰属するというべく、本件各更正のうち右各所得をEの所得と認定してされた部分
に、所得の帰属を誤つており無効である。
3 債務免除に係る金額について
(一) 債務免除に係る金額を益金と誤認した点について
訴外メーコー工業株式会社(以下「メーコー工業」という。)は、昭和四〇年一二
月一五日Eに対し同社がメーコー工業に対し負担している債務三五九六万五二〇七
円のうち二五九六万五二〇七円について債務免除をした(以下「本件債務免除」と
いう。)ところ、被告は、本件債務免除に係る金額をEの昭和四〇年度の益金とし
て所得金額を計算し、昭和四〇年度更正をした。
しかしながら、本件債務免除は、同年一月下旬倒産したEの資産負債の整理の一環
として、同社の負債の減少、欠損金の填補のために、メーコー工場を含むEの債権
者集会の協議によつてされたものであり、その行為の実体は欠損填補のための資本
減少に準ずるものであつて、法人税法第二二条第二項にいう「資本等取引」に該当
するから、本件債務免除に係る金額のうちEの欠損金に充当された部分は同年度の
益金とはならないというべきである。このことは、企業会計原則が資本補填を目的
とする債務免除益をもつて資本剰余金とし、利益剰余金としていないことからみて
も明らかである。
ところで、Eの昭和三九年八月一日から昭和四〇年七月三一日までの事業年度(以
下「昭和三九年度」という。)においては、前事業年度における控除未済欠損金一
二〇七万三二四九円が繰り越されており、更に当期欠損金一六〇一万四四三三円が
生じ、本件債務免除当時右合計二八〇八万七六八二円の欠損金があつたから、本件
債務免除に係る二五九六万五二〇七円は、全額右欠損金に充当すべきものである。
したがつて、昭和四〇年度更正のうち本件債務免除に係る金額を所得の計算上益金
としてした部分は無効である。
(二) 法人税法第五九条に規定する欠損金の損金算入を懈怠した点について
昭和四〇年度更正のうち、法人税法第五九条、同法施行令第一一七条、第一一八条
(昭和四三年政令第九六号による改正前のもの。以下同じ。)の各規定に基づく欠
損金の損金算入をしないでした部分は無効である。
すなわち、前記のとおり、Eが倒産し、その資産整理のためメーコー工業を含む債
権者集会がもたれ、その協議の結果、メーコー工業は昭和四〇年一二月一五日Eに
対し本件債務免除をした。しかして、右債権者集会によるEの資産整理は、法人税
法施行令第一一七条第四号にいう「前三号に掲げる事実に準ずる事実」に該当し、
また、本件債務免除に係る債権は、Eが整理を開始した以前の原因に基づき発生し
たものである。前記のとおり、Eは、昭和三九年度において合計二八〇八万七六八
二円の欠損金を有するところ、Eには同法施行令第一一八条各号の規定に基づき控
除されるべき金額はなく、したがつて、被告は両法第五九条の規定により、Eの昭
和四〇年度の所得金額の計算上、右欠損金額のうち本件債務免除に係る金額に相当
する金額を損金に算入すべきであるのに、これをしていない。
もつとも、Eは、昭和四〇年度の確定申告書に同法第五九条第二項所定の書類の添
付をしていなかつたけれども、当初、錯誤により、本件債務免除はEが残債務の弁
済を完了した時点で効力を生ずると考えていたのであり、また、被告は、Eが被告
に提出した法人事業税概況説明書及び被告係官の同社に対する実地調査により、同
社が当時倒産し、任意整理を続行中であつて、本件債務免除が右整理の一環として
されたものであることを知悉していたのであるから、確定申告書に前記書類の添付
がなかつたとしても、同条第三項の「その記載又は書類の添付がなかつたことにつ
いてやむを得ない事情がある」と認められる場合に当たり、被告は同条第一項を適
用すべきであつた。
(三) 公平課税の原則等に違反する点について
被告は、本件債務免除がEの資産整理に伴つてされたものであることを知悉しなが
ら、Eの青色申告の承認を取り消したうえ、あえて、本件債務免除に係る金額をE
の所得として昭和四〇年度更正をしたものであつて、これは、会社債権者の犠牲に
おいて会社の欠損金を填補し、会社の更正をはかろうとしたら、かえつて会社が課
税されることになるという不当な結果を招く処分であり、公平課税・公平負担の原
則に反しているばかりでなく、信義誠実の原則に反し、権利の濫用である。したが
つて、昭和四〇年度更正のうち、本件債務免除に係る金額を所得の計算上益金とし
てした部分は、無効である。
4 法人税法第五七条に規定する繰越欠損金の損金算入を懈怠した点について
昭和四〇年度更正のうち、法人税法第五七条(昭和四三年法律第二二号による改正
前のもの。以下同じ。)の規定に基づく繰越欠損金の損金算入をしないでした部分
は無効である。
すなわち、前記のとおり、Eは、昭和三九年度において、前事業年度の控除未済欠
損金一二〇七万三二四九円、当期欠損金一六〇一万四四三三円を有していたのであ
るが、右各欠損金の生じた昭和三九年度及びその前事業年度において青色申告書で
ある確定申告書を提出しており、また、本件取消処分により、昭和四〇年度におい
ても青色申告の承認を受けていたものとして、青色申告書である確定申告書を提出
していたことになる。したがつて、被告は、法人税法第五七条の規定により、Eの
昭和四〇年度の所得金額の計算上右各欠損金額合計二八〇八万七六八二円に相当す
る金額を損金に算入すべきであるのに、これをしていない。
三 よつて、本件各更正及び本件各決定の無効確認を求める。
第三 請求の原因に対する被告の認否及び主張
一 請求の原因に対する被告の認否
請求原因一の事実は認める。
請求原因二の1の事実のうち、被告が原告主張の日に本件取消処分をしたこと、本
件各更正に係る更正通知書に理由の附記がないことは認めるが、その余の点は争
う。
同二の2の事実のうち、被告が本件係争各年度において原告主張の各金額をEの所
得と認定して本件各更正をしたことは認めるが、その余の点は否認する。
同二の3の(一)の事実のうち、メーコー工業がEに対し本件債務免除をしたこ
と、被告が、Eの昭和四〇年度の所得金額の計算上本件債務免除に係る金額を益金
として昭和四〇年度更正をしたこと、昭和三九年度においてEに原告主張の欠損金
が存したことは認めるが、その余の点は争う。
同3の(二)の事実のうち、メーコー工業がEに対し本件債務免除をしたこと、E
は昭和三九年度において原告主張の欠損金を有していたこと、Eの確定申告書に法
人税法第五九条第二項の書類の添付のないこと、被告は昭和四〇年度更正におい
て、本件債務免除に係る金額を損金に算入していないことは認めるが、その余の点
は争う。
同3の(三)の事実のうち、本件債務免除が資産整理に伴つてされたことは知らな
い。その余の点は争う。
同二の4の事実のうち、Eは昭和三九年度において原告主張の欠損金を有していた
こと、昭和三九年度及びその前事業年度において青色申告書である確定申告書を提
出していたこと、被告は昭和四〇年度更正において繰越欠損金の損金算入をしてい
ないことは認めるが、その余の点は争う。
二 被告の主張
1 請求原因二1について
本件各更正に係る更正通知書に更正の理由附記がないからといつて、本件各更正に
重大かつ明白な瑕疵があるということはできず、右のような瑕疵は、せいぜい取消
事由になるにすぎない。
2 請求原因二2について
被告がEの本件係争各年度の所得と認定した前記各所得は、被告係官の行つたEに
対する調査に際し同社が提出した収支明細表により算出されたものである。また、
合併前の原告が被告に提出した昭和四一年八月一日から昭和四二年七月三一日まで
の事業年度の確定申告書に添付された貸借対照表には、借方貸付金一〇〇万円、貸
方資本金一〇〇万円と記載されているのみで、営業活動が行われている場合通常生
ずる売掛金・買掛金の記載は一切なく、損益計算書も添付されていない。そればか
りでなく同申告書一表備考欄には「営業活動なし」と記載されている。これに対
し、Eの本件係争各年度の各確定申告書には、貸借対照表及び損益計算書の添付が
あり、右貸借対照表には売掛金・買掛金の記載があり、損益計算書には売上金の計
上がされている。
以上の事実によつてみれば、本件係争各年度において、Eが営業活動を行い、前記
各所得を生じたことは明らかである。
3 請求原因二3の(一)について
企業会計の理論では、企業自体の稼得利益とそれ以外の贈与等の実体的資本の増減
による利益とを駿別し、後者によるものを広く資本取引によるものとして当該事業
年度の収益とみない立場をとつているが、これに対し、法人税法は、資本取引の概
念を資本主と企業間の取引にのみ限定している(同法第二二条第四項(昭和四二年
法律第二一号による改正前のもの。以下同じ。))のであつて、本件債務免除が法
人税法第二二条第二項及び第四項の解釈上資本取引によるものでないことは明らか
であり、Eの所得金額の計算上これを益金としてされた昭和四〇年度更正に瑕疵は
ない。
4 請求原因二4について
被告が法人税法第五七条を適用して繰越欠損金の損金算入をしなかつたのは、昭和
四〇年度更正時において、Eは前記のとおり青色承認を取り消されており、白色申
告者であつたからである。したがつて、後になつて原告が、本件取消処分の結果青
色申告の承認を受けている者と同様の地位に復帰したことになつても、右更正にそ
の処分の成立の当初から外形上、客観的に重大かつ明白な瑕疵があつたということ
はできない(最高裁昭和三六年三月七日判決・民集一五巻三号三八一頁参照)か
ら、昭和四〇年度更正が同条による繰越欠損金の損金算入がされていないという点
で瑕疵を帯びることになつても、右瑕疵は重大かつ明白な瑕疵ということはできな
い。
第四 証拠関係(省略)
○ 理由
一、請求原因一の事実(本件各処分の経緯等)は、当事者間に争いがない。
二、そこで、本件各処分に原告主張の無効事由が存するか否かについて判断する。
1 理由附記の欠如について
被告が昭和四九年九月六日本件取消処分をしたこと、本件各更正に係る更正通知書
に更正の理由が附記されていないことは、当事者間に争いがない。
ところで、法人税法第一三〇条第二項によれば、税務署長は青色申告書に係る法人
税の課税標準等について更正をする場合には、その更正通知書に更正の理由を附記
しなければならないとされているところ、Eは、本件取消処分がされたことによ
り、本件係争各年度においては、青色申告の承認を受けた者として青色申告書によ
り確定申告をしていたことになるから、本件各更正は、更正通知書に更正の理由附
記を欠く瑕疵があるといわなければならない。
しかしながら、更正通知書に更正の理由附記を欠いても、かかる瑕疵は、処分を無
効ならしめる重大な瑕疵ということはできず、単に取消事由となるにすぎないとい
うべきである。したがつて、原告の右主張は理由がない。
2 所得の帰属の誤認の有無について
被告が、昭和四〇年度においては本件債務免除に係る金額の他に三五一万七七三九
円を、昭和四一年度においては一七六万七一四〇円をそれぞれEの所得と認定して
本件各更正をしたことは、当事者間に争いがない。
原告は、Eは昭和四〇年一月下旬頃倒産し、本件係争各年度においては実質的な営
業活動は行つておらず、営業活動の主体は原告であつたから、被告の更正に係る右
各所得は原告に帰属するものであつて、Eに帰属するものではないと主張する。
証人A、同Bは原告の主張にそう供述をしており、成立に争いのない甲イ第八号証
の五、六、八、証人Aの証言により真正に成立したと認める甲イ第八号証の一、
二、七、九、一〇には原告の主張にそう記載がみられるけれども、これらの証拠
は、次に認定する事実に照らし、とうてい採用することができない。すなわち、成
立に争いのない甲イ第一号証の一、二、第三号証、第四号証の一ないし四、第五号
証、第六号証の一ないし三、乙第四号証の一ないし六、第五号証の一ないし五、第
六号証の一、二に証人A、同B、同C、同Dの各証言を合わせると、Eは、取引先
の倒産により資金繰りが悪化し、昭和四〇年二月倒産したが、直ちに原告が設立さ
れたこと、原告とEとは営業目的を同じくし、本店を同一場所に置き、実質上同一
人が経営する同族会社で、原告は、いわゆるEの第二会社であつたこと、したがつ
てE倒産後の営業の主体がEであるか原告であるかは必ずしも判然としていなかつ
たこと、Eは、被告に対し、昭和四一年一〇月一一日昭和四〇年度の確定申告書
(甲イ第三号証)を、昭和四二年九月三〇日昭和四一年度の確定申告書(乙第四号
証の一、二)をそれぞれ提出しているが、右各申告書には各年度の貸借対照表(乙
第四号証の四)及び損益計算書(乙第四号証の五)が添付されており、右各貸借対
照表には売掛金及び買掛金が計上され、右各損益計算書には売上金額や売上原価が
計上されていること、他方、原告が被告に最初に確定申告書を提出したのは、昭和
四一年八月一日から昭和四二年七月三一日までの事業年度についてであるが、同確
定申告書(乙第六号証の一)備考欄には「当期営業活動なし」と明記され、かつ添
付の貸借対照表(同号証の二)には、借方に貸付金一〇〇万円、貸方に資本金一〇
〇万円がそれぞれ計上されているのみで、売掛金及び買掛金の記載はなく、損益計
算書は添付されていないこと、被告の更正に係る前記各所得金額は、被告が昭和四
二年一二月からEに対し行つた法人税調査に際し、Eから提出された収支明細表等
に基、ついて算出したものであること。
以上の事実が認められるから、Eが営業活動をしていなかつたということはできな
い。
もつとも、前認定の確定申告書が被告に対し提出された経緯について、証人A、同
Bは、被告係官が法人税調査のため臨店した際に、E及び原告の経理責任者であつ
たAに対し、原告の所得に関し、E名義でも原告名義でもどちらでも都合のよい方
で確定申告をしてもらえばよいという示唆があつたので、当時多額の欠損金をかか
えていたE名義で申告をするのが有利であると考え、E名義を便宜的に使用して申
告したものであるという趣旨の供述をしているけれども、右各供述部分は、被告係
官によつてEに対する臨店調査が開始された昭和四二年一二月以前に、既にEから
確定申告がされている事実に照らし採用できない。
他に原告主張事実を肯認するに足る証拠はないから、本件各更正のうち、被告が前
記各所得をEの所得と認定してした部分に、原告主張の瑕疵はないといわなければ
ならない。
3 債務免除に係る金額について
(一) 債務免除に係る金額の益金性の有無について
メーコー工業が昭和四〇年一二月一五日Eに対し本件債務免除をしたこと、被告が
Eの昭和四〇年度の所得金額の計算上本件債務免除に係る金額を益金として昭和四
〇年度更正をしたことは、当事者間に争いがない。
原告は、本件債務免除はEの負債の減少、欠損金の填補のため債権者集会の協議を
経てされたもので、資本の減少に準ずるものであるから、本件債務免除に係る金額
はEの昭和四〇年度所得金額の計算上益金に計上すべきでないと主張する。
しかしながら、債務免除は、その動機ないし目的のいかんを問わず、法人税法第二
二条第四項にいう資本等の金額の増加又は減少を生ずる取引に該当しないことは、
明らかであるというべきである。
また、一般に公正妥当と認められる会計処理の規準を要約したものと考えられる企
業会計原則は、企業本来の活動に基づく利益以外の財産の増加は、これを広く資本
とみる立場から、資本補填を目的とする債務免除益を資本剰余金に区分しているけ
れども、元来、法人税法においてはこのような資本剰余金は資本等の金額に含まれ
ない(同法第二条第一六号、第一七号)のであるから、債務免除が同法第二二条第
四項の「資本等取引」に当たることはない。
したがつて、本件債務免除に係る金額は、Eの昭和四〇年度の収益として所得金額
の計算上益金に計上するのが相当であるから、この点に関する原告の主張は理由が
ない。
(二) 公平課税の原則等違反の点について
原告は、被告が昭和四〇年度更正において、本件債務免除に係る金額を益金に計上
したことをもつて公平課税の原則等に反すると主張するけれども、独自の見解であ
つて、とうてい採用することはできない。
4 繰越欠損金の損金算入について
原告は、被告のした昭和四〇年度更正には、法人税法第五七条に基づく繰越欠損金
の損金算入がされておらず、したがつて、右更正のうち、原告の同年度の所得金額
から同条に基づく繰越欠損金額を控除した金額をこえる部分は無効であると主張す
る。
Eの昭和三九年度において、前事業年度の控除未済欠損金一二〇七万三二四九円、
当期欠損金一六〇一万四四三三円の各欠損金が存したこと、Eは右各欠損金の生じ
た事業年度である昭和三九年度及びその前事業年度について青色申告書である確定
申告書を提出していることは、当事者間に争いがない。
また、被告が昭和四九年九月六日本件取消処分をしたことは前記のとおりであるか
ら、原告は昭和四〇年度についても青色申告の承認を受けたものとして、被告に対
し、青色申告書である確定申告書を提出していたことになるというべきである。
そうすると、前記各欠損金合計二八〇八万七六八二円に相当する金額は、法人税法
第五七条第一項の規定によりEの昭和四〇年度の所得金額の計算上損金の額に算入
しなければならないものというべきところ、被告が、昭和四〇年度においてEは青
色申告者でなかつたことを理由に、右繰越欠損金の損金算入を認めなかつたことは
当事者間に争いがない。したがつて、昭和四〇年度更正のうち、原告の同年度の所
得金額から右各欠損金合計額を控除した一三九万五二六四円をこえる部分は、所得
金額を過大に認定した瑕疵があるというべきであり、しかも、右瑕疵は重大である
と解するのが相当である。
ところで、青色申告の承認が取り消されたことを前提として更正が行われ、その後
右青色申告の承認の取消しに堰疵があるとして課税庁が右処分を取り消したため、
更正に重大な瑕疵が生じた場合において、その瑕疵が明白かどうかは、更正に瑕疵
が生じた時点、すなわち青色申告の承認の取消しが取り消された時点において判断
するのが相当である。けだし、この場合において、更正の瑕疵は後発的に生じたも
のであるから、更正時においてその瑕疵が明白であつたかどうかを論ずることは意
味のないことであるし、また、もし、被告の主張するように、瑕疵の明白性は常に
処分時を基準に判断するものとすると、右のような場合においては、瑕疵の明白性
は常に否定され、かくては、更正に対する取消訴訟の出訴期間経過後において青色
申告の承認の取消しの取消処分が行われ、その結果更正が重大な瑕疵を帯びること
となつても、被処分者は救済を受けえないという不当な結果を招来するからであ
る。被告の引用する判例は、事業を異にするものであるから、本件には適切でな
い。
これを本件についてみると、前掲甲イ第三号証、第五号証によれば、Eが被告に提
出した昭和三九年度及び昭和四〇年度の各確定申告書添付の明細書には前記欠損金
の記載がされていることが認められ、昭和三九年度及びその前事業年度についてE
が青色申告書である確定申告書を提出していたことは当事者間に争いがないから、
本件取消処分の存在によりEが昭和四〇年度においても青色申告書である確定申告
書を提出したこととなれば、法人税法第五七条の規定により前記欠損金の損金算入
を認めなければならない案件であることは、あえて課税庁の認定判断をまつまでも
なく、何びとにも客観的に明らかであつたといわなければならない。
そうすると、昭和四〇年度更正のうち、課税標準一三九万五二六四円をこえる部分
は無効であり、したがつて、右更正に附随してされた無申告加算税賦課決定のうち
右更正の無効部分に対応する部分も無効である。
5 そして、昭和四〇年度更正及び無申告加算税賦課決定のうち、右判示の無効部
分を除くその余の部分については、原告の請求原因二3の(二)の点について判断
するまでもなく、原告主張の瑕疵は存在しないというべきであり、昭和四一年度更
正及び過少申告加算税賦課決定に原告主張の瑕疵が存在しないことは、既に判示し
たところから明らかである。
三 以上によれば、原告の本件請求は、昭和四〇年度更正及び無申告加算税賦課決
定のうち、法人税の課税標準一三九万五二六四円をこえる部分の無効確認を求める
限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却すること
とし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条を適用して主文のとお
り判決する。
(裁判官 杉山克彦 時岡 泰 青柳 馨)
(別表省略)

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