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平成17年(ワ)第7366号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成18年2月20日
判決
原告株式会社ファニー
原告コスモフアニー株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士稲元富保
同補佐人弁理士大澤敬
被告有限会社アルタック
被告A
被告ら訴訟代理人弁護士山田克巳
同山田勝重
同山田博重
同補佐人弁理士山田智重
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告有限会社アルタックは,別紙イ号物件説明書及びロ号物件説明書記載の
日本髪かつらを製造し,譲渡し,貸渡し,譲渡の申出をし,貸渡しの申出をし
てはならない。
2被告有限会社アルタックは,前項記載の各日本髪かつらを廃棄せよ。
3被告有限会社アルタックは,別紙営業秘密目録記載の原告らの営業上の情報
を使用してはならない。
4被告有限会社アルタックは,前項記載の原告らの営業上の情報を廃棄せよ。
5被告有限会社アルタックは,原告株式会社ファニーに対し,金3200万円
及びこれに対する平成17年10月1日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
6被告有限会社アルタックは,原告コスモフアニー株式会社に対し,金800
万円及びこれに対する平成17年10月1日から支払済みまで年5分の割合に
よる金員を支払え。
7被告Aは,原告株式会社ファニーに対し,金400万円及びこれに対する平
成17年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,
1日本髪かつらとそれに装着する中差し及び笄ユニットについての特許権を有
する原告株式会社ファニー以下原告ファニーというが被告有限会社(「」。),
アルタック以下被告アルタックというに対し別紙イ号物件説明書及(「」。),
びロ号物件説明書記載の各製品(以下,各製品を併せて「被告製品」といい,
各個別の製品について,同説明書の記載に従い「イ号物件「ロ号物件」とい」,
うを製造し貸渡しする同被告の行為が同原告の有する特許権を侵害する。),,
として,特許法100条1項に基づく被告製品の製造,貸渡し等の差止め,同
条2項に基づく同製品の廃棄,民法709条に基づく損害賠償金2000万円
及びこれに対する弁済期経過後の平成17年10月1日から支払済みに至るま
で民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,
2原告ファニーと原告コスモフアニー株式会社(以下「原告コスモフアニー」
というが被告アルタックに対し同被告において①原告らの営業上の信。),,,
用を害する営業誹謗行為不正競争防止法2条1項14号及び②原告らの元(),
(「」従業員らから別紙営業秘密目録記載の原告らの営業秘密以下本件営業秘密
というの不正開示を受けそれを利用する行為同法2条1項8号を行っ。),()
たとして,同法3条1項に基づく同営業秘密の使用の差止め,同条2項に基づ
く同営業秘密の廃棄,同法4条に基づく損害賠償(原告ファニーについて12
00万円,原告コスモフアニーについて800万円)及びこれらに対する弁済
期経過後の平成17年10月1日から支払済みに至るまで民法所定年5分の割
合による遅延損害金の支払を求め,
,(「」。),,3原告ファニーが被告A以下被告Aというに対し同被告において
本件営業秘密のうち,同原告に係る営業秘密を持ち出した営業秘密不正開示行
為(不正競争防止法2条1項7号)を行ったとして,同法4条に基づく損害賠
償金400万円及びこれに対する弁済期経過後の平成17年10月1日から支
払済みに至るまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
ている事案である。
1前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠を末尾に記載する)。
(1)当事者
原告ファニーは,日本髪かつらの製造,レンタル,リース及び販売等を,
原告コスモフアニーは,日本髪かつらのレンタル,リース及び販売等を,そ
れぞれ業とする会社である。
被告アルタックは,日本髪かつらの製造,レンタル,リース及び販売等を
業とする会社であり,被告Aは,原告ファニーの元従業員として,原告ファ
ニー在籍当時は生産部門の責任者,原告コスモフアニーに出向中は同社の取
締役であった者であり,現在,被告アルタックの従業員である。
(2)原告ファニーの特許権
,(「」,原告ファニーは以下の特許権を有している以下本件特許権といい
特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本件発明」という。。)
特許番号第2053754号
発明の名称日本髪かつらとそれに装着する中差し及び笄ユニット
出願年月日平成4年8月11日
登録年月日平成8年5月23日
特許請求の範囲
請求項1「台金に前髪,びん,髱,髷を取付けてなる日本髪かつらにお
いて,前記髷を支える根掛の前側に前記台金に固定された中差し係止部材
を設けたことを特徴とする日本髪かつら」。
(3)本件発明の構成要件の分説
本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A台金に前髪,びん,髱,髷を取付けてなる日本髪かつらにおいて,
B前記髷を支える根掛の前側に前記台金に固定された中差し係止部材を設
けた
Cことを特徴とする日本髪かつら。
(4)被告アルタックの行為
ア被告アルタックは,平成16年10月ころから,イ号物件を製造し,貸
し渡し及び貸渡しの申出をしている。
イ被告アルタックは,平成17年2月ころから,ロ号物件を製造し,貸し
渡し及び貸渡しの申出をしている。
(5)被告製品の構成及び作用効果
アイ号物件
a1台金17に前髪1,びん2,髱4,髷3を取付けてなる日本髪かつ
らにおいて,
b1台金17に固定された前記髷3を支える根掛15の前側に,台金に
固定された支持金具19を設け,この支持金具19にピン21及びワ
イヤ22で中差しを係止する中差し係止部材20を固定した
c1ことを特徴とする日本髪かつら
イロ号物件
a2台金17に前髪1,びん2,髱4,髷3を取付けてなる日本髪かつ
らにおいて,
b2台金17に固定された前記髷3を支える根掛15の前側に,ワイヤ
22で根掛15に固定するとともに,取付部20bを髷パット14に
差し込んで固定した,中差しを係止する中差し係止部材20を設けた
c2ことを特徴とする日本髪かつら
(6)構成要件の充足性
被告製品は,いずれも,本件発明の構成要件A及びCを充足する。
(7)無効審判の経緯
被告アルタックは,平成17年6月21日,本件特許権について,特許庁
に対し,特許無効審判を請求した(無効2005-80188号)ところ,
,()平成17年12月19日本件特許権のすべての請求項請求項1ないし8
に係る発明についての特許を無効とする旨の審決がなされた(乙47,以下
「本件無効審決」という。。)
2争点
(1)被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか構成要件Bの充足性争,()(
点1。)
(2)本件発明に係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである
といえるか。
ア本件発明は,新規性を欠くか(争点2。)
イ本件発明は,進歩性を欠くか(争点3。)
(3)本件特許権侵害による原告ファニーの損害額はいくらか(争点4。)
(4)被告アルタックは,不正競争防止法2条1項14号,同項8号の行為を行
ったか(争点5。)
(5)被告アルタックの不正競争行為による原告らの損害額はいくらか(争点
6。)
(6)被告Aは,不正競争防止法2条1項7号の行為を行ったか(争点7。)
()。(7)被告Aの不正競争行為による原告ファニーの損害額はいくらか争点8
3争点についての当事者の主張
(1)争点1(被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか-構成要件Bの充
足性)について
(原告ファニーの主張)
アイ号物件
(),アイ号物件の構成要件b1と本件発明の構成要件Bとを対比すると
両者は同一である。
イ号物件において中差し係止部材は直接台金に固定されていな,,「」
いが,本件発明の構成要件Bも「中差し係止部材が『直接』台金に固定
されている」とまでは限定していないし,このことは,本件特許権に係
る明細書以下本件明細書というにおける発明の詳細な説明の記(「」。)
載(0021】ないし【0024)及び図1からも明らかである。【】
(イ)イ号物件は,本件発明と同一の作用効果が得られる。
(ウ)したがって,イ号物件は,本件発明の技術的範囲に属する。
イロ号物件
(),アロ号物件の構成要件b2と本件発明の構成要件Bとを対比すると
両者は同一である。
被告アルタックは,ロ号物件では中差し係止部材20が台金に一切固
定されておらず,本件発明の構成要件B「前記台金に固定された中差し
係止部材を設けた」を充足しないと主張する。
しかし,ロ号物件において,中差し係止部材20は,単にワイヤ22
,()で根掛15に取り付けられているのではなくその一部取付部20b
を台金17に固定されている髷パット14に差し込んで固定していると
ころ,根掛及び髷は台金に固定された部材であって,中差し係止部材2
0は,台金17に固定されているということができる。本件発明の構成
要件Bも「中差し係止部材が『直接』台金に固定されている」とまでは
限定していないから,同構成要件を充足することは明らかである。
(イ)ロ号物件は,本件発明と同一の作用効果が得られる。
(ウ)したがって,ロ号物件は,本件発明の技術的範囲に属する。
(被告アルタックの反論)
アイ号物件
(ア)イ号物件と本件発明の対比
イ号物件の構成は台金17に固定された前記髷3を支える根掛15,「
の前側に,台金に固定された支持金具19を設け,この支持金具19に
ピン21及びワイヤ22で中差しを係止する中差し係止部材20を固定
した」であり,本件発明の構成要件Bのように「前記台金に固定された
中差し係止部材を設けた」構成にはなっていない。
(イ)イ号物件と同様の構造に係るかつらの出願前の公知事実
後記(2)争点2中の被告アルタックの主張ア記載のとおり原告ら(),
において,イ号物件と同様の構成を備えた日本髪かつらを,本件特許権
の出願日(平成4年8月11日)以前に,製造し,販売あるいは貸渡し
していたことは明らかである。
そうすると,仮に,原告ファニーが主張するように,イ号物件と同様
の構造に係る日本髪かつら,すなわち,間接的に台金に中差し係止部材
を固定させる構成の日本髪かつらが,本件発明の技術的範囲に属すると
すると,原告ファニー自ら本件特許権の出願前から本件発明を公知にし
たこととなり,本件発明全体が無効になる。
したがって,本件発明が無効となることを避けるべく,イ号物件の中
差し係止部材の設置は,構成要件Bの「台金に固定」することに含まれ
ないと解すべきである。
イロ号物件
(ア)ロ号物件と本件発明の対比
ロ号物件の構成は台金17に固定された前記髷3を支える根掛15,「
の前側に,ワイヤ22で根掛15に固定するとともに,中差しを係止す
る中差し係止部材」であり,本件発明の構成要件Bのように「前記台金
に固定された中差し係止部材」に該当しないことは明白である。
(イ)ロ号物件と同様の構造に係るかつらの出願前の公知事実
後記(2)争点2中の被告アルタックの主張のイ記載のとおり原告(),
らにおいて,ロ号物件と同様の構成を備えた日本髪かつらを,本件特許
権の出願日(平成4年8月11日)以前に,製造し,販売あるいは貸渡
ししていたことは明らかである。
そうすると,仮に,原告ファニーの主張するように,ロ号物件の構成
b2に係る,もっぱら根掛に対して支持させるタイプの中差し係止部材
や笄止め具を用いて形成される日本髪かつらが,本件発明の技術的範囲
に属するとすると,本件特許権の出願前から存在した中差し係止部材や
笄止め具,本件明細書に従来例として挙げられた笄止め具を装着した日
本髪かつらまで本件特許権の技術的範囲に属することとなり,不合理で
ある。
したがって,このような不合理を避けるべく,ロ号物件の中差し係止
部材の設置は,構成要件Bの「台金に固定」することに含まれないと解
すべきである。
(2)争点2(本件発明は,新規性を欠くか)について
(被告アルタックの主張)
アイ号物件と同様の構造に係る日本髪かつらの出願前の公知事実
,,以下の証拠からすればイ号物件と同様の構成を備えた日本髪かつらを
(),,本件特許権の出願日平成4年8月11日以前に原告らが自ら製造し
販売あるいは貸渡ししていたことが明らかである。
(ア)原告ファニーから仕入れた日本髪かつらを勤務先会社からもらい
受けて,昭和56年10月当時に販売・レンタルをしていた者の作成し
た証明書(乙6)中の写真には,イ号物件の各構成を備えた日本髪かつ
らが示されている。
(イ)平成3年7月に発行された雑誌(乙8)には,原告らの工場内な
どにおいて,イ号物件の構成を備えた日本髪かつらが示されている(乙
9。)
(ウ)原告コスモフアニーから,原告ファニーが製造したかつらを購入
した人形製作会社の代表者が作成した陳述書(乙25)の写真には,平
成2年に購入した日本髪かつらとして,イ号物件の各構成を備えた日本
髪かつらが示されている。
(エ)従前原告らの社員であった者で,被告らとは関係の薄い者が作成
した陳述書(乙10ないし16,26ないし28)には,原告らがイ
号物件と同じ構造の日本髪かつらを本件特許権の出願前に製造し,レン
タルしていた事実が記載されている。
(オ)原告ファニーから日本髪かつらのレンタルを受け,実際に花嫁の
髪づくりの作業に従事していた美容師の陳述書(乙17ないし19,2
9ないし31)にも,本件特許権の出願前に,原告らがレンタルしたイ
号物件と同様の日本髪かつらを用いて,花嫁の髪づくりを行っていたこ
とが記載されている。
カ乙41の写真資料には原告ファニー自身によって1986年昭(),(
和61年)8月25日に製造され,販売されていた日本髪かつらが示さ
れており,これはイ号物件と同様の構成である。
また,原告コスモフアニーからかつらを入手して使用していた者の陳
述書(乙42,43)には,遅くとも昭和62年8月に,乙41に係る
日本髪かつら及び同様の日本髪かつらが原告コスモフアニーによって販
売ないしレンタルされていた事実が記載されている。
イロ号物件と同様の構造に係る日本髪かつらの出願前の公知事実
以下の証拠からすれば,ロ号物件の構成b2と同様の構成を備えた中差
し係止部材や笄止め具は,本件特許権の出願日(平成4年8月11日)以
前から公然知られるところであったことが明らかである。
(ア)本件明細書では,従来技術として,中差し係止部材13aを備え
た笄止め13と称される部材が紹介されている。
(イ)本件特許権の出願前に製造・販売された笄止め具は,中差しを挿
通状態で係止可能とする中差し係止部材と,この中差し係止部材を根掛
に装着・固定するためロ号物件の構成に対応する帯状体,挿通ピンを備
えている乙20またこの笄止め具については実用新案登録出願()。,,
も行われている(乙21。)
(ウ)乙23,24の証明書には,本件特許権の出願前の平成3年4月
より,被告アルタックがロ号物件で使用しているものと略同じタイプの
中差し係止部材が継続的に販売されていた事実が記載されている。
(エ)本件特許権の出願前に販売されていた雑誌「美容技術平成元
年9月号」には,乙23,24の証明書に示される中差し係止部材の日
本髪かつらへの取付方法が掲載されている。
(オ)本件特許権の出願前に頒布された雑誌「美容技術」1974年1
0月号における「結い上げのいらない夢の日本髪」と題する記事には,
ロ号物件と全く同じ構造のかつらが図と文章により紹介されており,こ
の記事の提供者は,原告ファニーである(乙35,36。)
(原告ファニーの反論)
アイ号物件と同様の構造に係る日本髪かつらの出願前の公知事実
イ号物件と同じ構造の日本髪かつらが,本件特許権出願前から公然知ら
れていたものであるとの被告アルタックの主張は,以下に述べるとおり失
当である。
(ア)乙6の作成日は,2005年3月11日であり,乙7の日付も平
成17年3月8日であって,乙6に添付された写真の日本髪かつらが
本件特許権出願前のものであることを特定できる客観的な証拠は,何ら
提出されていない。
また,乙6の陳述者で,被告アルタックに日本髪かつらを譲渡したと
いう者は,被告アルタックと共同でかつらのレンタルを行っている有限
会社の代表者であり甲22乙7被告アルタックとは強い利害関係(,),
を有している者である。このような利害関係を有する者から譲渡された
,。という被告アルタック所有の日本髪かつらの信用性は極めて疑わしい
(イ)乙8に掲載されている日本髪かつらについては,本件発明に係る
構成要件のすべてを客観的に示すものではなく,イ号物件と同じ日本髪
かつらであるとは認められない。
(ウ)a乙9ないし19,乙26ないし32の各陳述書は,いずれも予
め作成された書面の空白部分に,名前と日時が記入されただけのもの
であり,しかも,添付されている別紙図面なるものは,原告ファニー
が提出したイ号物件説明書そのものであって,原告らが製造レンタル
等していた日本髪かつらではない。
bまたこれらの各陳述書においては中差し係止部材を支持金具を,,「
介して台金に支持させるタイプのかつら」という極めて抽象的な特定
がなされ,このような抽象的なかつらが各陳述書に記載のころからレ
ンタル等されていたと陳述されているだけであり,日本髪かつらに関
する具体的な事実を特定する陳述がなされていない。
c乙10の陳述者は,被告アルタック従業員の配偶者であり,乙27
,。の陳述者は被告アルタックの従業員でもある被告Aの配偶者である
「」,このような者をなるべく被告らと無関係な人と主張すること自体
被告らの不利な部分を隠そうとする対応を示すもので,被告らの主張
は信用できない。
d乙13の陳述者,乙11の陳述者は,それぞれ平成17年3月13
日に原告ファニーの嘱託社員から裁判に協力しないように電話連絡を
受けたという趣旨の陳述書を作成している(乙33,34。)
しかし,原告ファニーが乙13,乙11の提出を受けたのは,同月
23日であり,これら陳述書作成者が被告アルタックに協力しようと
していることなど知り得ない同月13日の段階で,同人らに「書面に
サイン・・・」というような具体的な架電ができるはずもない。
eさらに,乙25の陳述書添付の写真によっても,根の部分は根飾り
で覆われていて中差し係止部材と金具との関係を外部から視認でき
ず,まして,金具が台金に固定されていることは外部から視認し得な
いのであり,各陳述者によって認識していた程度はそれぞれ異なるの
が自然であるにもかかわらず,各陳述者が異口同音に「中差し係止部
材を支持金具を介して台金に支持させるタイプのかつら」がレンタル
等されていたと陳述をしていること自体,極めて不自然である。
,,f仮に乙25の陳述書に記載されている内容が事実であるとしても
日本髪かつらを購入した有限会社は,乙25添付の元帳の経費項目か
らも明らかなように,当該日本髪かつらを参考品(図書研究用)とし
て購入し,社内で保管,展示していたというのであり,また,外観か
らは中差し係止部材が台金に固定されているのか否かを視認すること
,,ができないのであるから不特定の第三者が認知できる状況にはなく
公然知られたものとはなっていない。
なお,乙25の陳述書に貼付された写真は,2005年(平成17
年)5月現在の写真であって,平成2年当時のものではない。
g加えて,原告らの従業員であった者の陳述書については,これらの
者が,上記抽象的に特定されたかつらを原告らの社内において守秘義
務を負いながら現認したというものであって,守秘義務を負わない第
三者のもとで現認しているものではない。しかも,本件特許権の出願
日(平成4年)から13年以上経って,現認した時期を特定できると
いうこと自体不自然である。
(エ)乙41の日本髪かつらを保有していた者の陳述書(乙42)によ
れば,同人は,当該日本髪かつらを昭和62年8月に,原告コスモフア
ニーの当時の常務から練習用として譲り受けたとされる。
しかし,原告コスモフアニーにおいては,その前身となる会社の当時
から,原告ファニーの日本髪かつらを第三者に売却することが認められ
ていなかった(甲25。)
したがって,乙42に記載されているような日本髪かつらの譲渡の事
実はあり得ない。
また,乙43は,被告アルタックが作成した定型文に記入されただけ
で,イ号物件の図面を添付した陳述書にすぎないから,信用性が疑わし
い。
(オ)レンタル等された日本髪かつらは,原告ファニーに戻されたとき
に,髷等の部品が交換されることによって漸次新しくされるものであり
甲19ないし2126及び27現存している日本髪かつらがい(,),,
つ現存する状態になったものであるのかについては,原告ファニーです
ら特定できない。被告アルタックは,現在ある日本髪かつらが当時のま
まであると主張しているが,その根拠は定かではない。
したがって,被告アルタックが本件で提出している写真撮影された日
本髪かつらについて,元の所有者が変更を加えたことがないとしても,
原告ファニーにおいて変更が加えられた可能性は否定できず,当該日本
髪かつらの状態をもって,本件特許権出願前から本件発明が公知であっ
たとすることはできない。
イロ号物件と同様の構造に係る日本髪かつらの出願前の公知事実
被告アルタックは,ロ号物件と同じ構造の日本髪かつらが,本件特許権
出願前から公然知られていたものであると主張する。
しかし,ロ号物件は,乙20ないし22,35及び36に記載されてい
るような中差し係止部材を線材で根掛に取り付けたものではない。ロ号物
,,件は中差し係止部材の一部を髷パットに差し込んで固定したものであり
線材がなくても,中差し係止部材は髷パットを介して台金に固定されてい
るのであり,このような構造のものが,上記各書証に記載されていないこ
とは明らかである。
したがって,被告アルタックの上記主張は失当である。
(3)争点3(本件発明は,進歩性を欠くか)について
(被告アルタックの主張)
本件発明は,その特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づ
いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法123条1
項2号所定の無効理由がある。また,本件特許権については,本件無効審決
(乙47)において,以下に述べるように,既に,無効とする旨判断されて
いる。
審決甲第1号証発明本訴乙35に記載されている発明以下乙3「()((「
5発明」という)を指す)において,髷を支える根掛の前側に中差しはめ。。
込み部材を配置するにあたり,はめ込んだ中差しが簡単に落下したりあるい
は,向きが安易に変化するようなことがあってはならないことは,日本髪か
つらの使用態様から見て,当業者が当然考慮すべき課題である。
してみると,甲第1号証発明においても,中差しはめ込み部材は,髷を支
える根掛の前側に配置されるよう,相応の強度,剛性を備えた箇所に,中差
しを確実に保持できるよう固定されていると解すべきである。
ところで,甲第1号証発明において,根掛は,ネジにより台金に固定され
る部分と解されることから,髷全体を支え,かつら装着時に髷がずれたりし
ないよう,相応の強度,剛性を備えているものというべきである。
また,台金は,前髪,びん,髱,髷が取り付けられ,日本髪かつら全体の
部品を支持するものであるから,当然のことながら,相応の強度,剛性を備
えているものといえる。
そうすると,甲第1号証発明において,髷を支える根掛の前側に配置され
るよう,中差しはめ込み部材を髷により形成される空間内に固定するにあた
り,根掛の前側あるいは台金の根掛取付部周辺のいずれかをその固定箇所と
,。して選択することは当業者がごく自然に想起し得ることというべきである
ところで,一の部品を固定するにあたり,例えば,次のような態様は,設
計上広く行われていることといえる。
①一の部品を直接固定する。
②一の部品を,支持部材を介して固定する。
③一の部品を既に固定されている他の部品に固定する。
,,,,そして強度部品点数の多少等の観点から見てそれぞれの態様の利点
欠点も,当業者に広く知られた事項であり,このような態様の中から最適な
ものを選択することは,まさに,設計上適宜なし得る事項と解される。
してみると,甲第1号証において,中差しはめ込み部材を,髷により形成
される空間内に固定するにあたり,固定箇所として台金を選定し,本件特許
発明1との相違点1(本件特許発明1においては『中差し係止部材』が台「,
金に固定されているのに対して甲第1号証発明においては中差しはめ込,,『
み部材』がどのような態様で,根掛の前側に配置されているのか明確ではな
い点」を指す)に係る構成とすることは,これを妨げる特段の事情も見当。。
たらず,当業者が容易に想到し,かつ,採用し得ることである」。
よって,本件特許権は,特許無効審判により無効にされるべきものである
から,特許法104条の3により,その権利の行使は認められない。
(原告ファニーの反論)
被告アルタックは,本件無効審決を引用して,本件発明が無効である旨主
張している。
しかし,同審決の判断は誤っており,これを引用する被告アルタックの主
張も当然失当である。
ア同審決は甲第1号証発明において髷を支える根掛の前側に中差しは,「,
め込み部材を配置するにあたり,はめ込んだ中差しが簡単に落下したりあ
るいは,向きが容易に変化するようなことがあってはならないことは,日
本髪かつらの使用態様から見て当業者が当然考慮すべき課題であると,。」
認定判断している。
しかし,同審決における甲1号証(乙35)に「ファニーのかつらの扱
い方と修正」と記載されているように,乙35に記載された日本髪かつら
が実用に供されていたことは明らかであって,この実用に供されている日
本髪かつらにおいて,少なくとも,同審決がいうような「はめ込んだ中差
しが簡単に落下したりあるいは,向きが容易に変化する」という課題は生
じていない簡単に落下容易に変化するのであれば実用に供する。「」,「」,
ことは困難である。
つまり,同審決は,本件発明を無効にするために,当時の日本髪かつら
において,当業者が考慮していない課題をあたかも考慮すべき課題である
と措定しているのであって,同審決の認定理由は,その出発点から根拠の
,。ない机上の認定にすぎずその認定判断が誤っていることは明らかである
,,「,しかも本件発明ははめ込んだ中差しが簡単に落下したりあるいは
向きが容易に変化するようなことがあってはならない」という課題の解決
を目的とするものではなく,中差しを簡単に装着できる日本髪かつらとす
ることも技術的課題としているのであり,この点については何ら言及して
いない。
イさらに本件無効審決はしてみると甲第1号証発明においても中,,「,,
差しはめ込み部材は,髷を支える根掛の前側に配置されるよう,相応の強
度,剛性を備えた箇所に中差しを確実に保持できるように固定されている
と解すべきである」と認定判断している。。
しかし乙35では中差しはめ込み部材は髷を支える根掛けの前側,,「,
に配置されている」だけであって,それが「固定」されているとは記載さ
れていないし,それを示唆する記載もない。そもそも,中差しはめ込み部
材を髷を支える根掛けの前側に配置するときに固定することを示す,,「」
,,周知・慣用技術については何ら根拠も示されていないのであって何故に
乙35発明において相応の強度剛性を備えた箇所に中差しを確実に,「,,
保持できるように固定されていると解すべきであるという認定をなし得。」
るのか,その根拠すら不明である。
(4)争点4(本件特許権侵害による原告ファニーの損害額はいくらか)につい

(原告ファニーの主張)
ア被告アルタックは,イ号物件及びロ号物件が本件発明の技術的範囲に属
することを知りながら,これを製造し,貸し渡し,貸渡しの申出をしてい
る。
被告アルタックのイ号物件及びロ号物件に関する売上高は,平成16年
10月から平成17年9月末までの1年間で,合計4000万円以上であ
る。日本髪かつらのレンタル(貸渡し)による利益率は一般的に50%を
下らないので,被告アルタックが本件特許権の侵害行為によって得る利益
は,少なくとも2000万円を下らない。
イなお,レンタルの場合,一旦取引関係が成立した場合には容易に変更さ
れないので,少なくとも1年間は取引が継続すると推認される。
よって,原告ファニーは,被告アルタックに対し,本件特許権侵害に対
する損害賠償として金2000万円の支払を求める(特許法102条2
項。)
(被告アルタックの反論)
原告ファニーの主張は争う。
(5)争点5(被告アルタックは,不正競争防止法2条1項14号,同項8号の
行為を行ったか)について
(原告らの主張)
ア営業誹謗行為(不正競争防止法2条1項14号)
(ア)競争関係の存在
原告ファニー及び原告コスモフアニーと被告アルタックとは,いずれ
も日本髪かつらの製造又はレンタル,リース及び販売などを業としてお
り,競争関係にある。
(イ)誹謗行為及び営業上の信用毀損
,,被告アルタックの代表者を始めとして被告の役員及び従業員は全員
原告ファニー又は原告コスモフアニーの元役員又は元従業員であり,原
告コスモフアニーの取引先に対しコスモフアニーは危ない近々つぶ,「。
れる我々が辞めたために技術力もないなどと原告らの信用を害する。。」
虚偽の事実を流布し,原告らを誹謗・中傷する言動をもって信用を毀損
している(甲4ないし7。)
なお,原告ファニーと原告コスモフアニーは,グループ会社であり,
原告ファニーが製造を,原告コスモフアニーがレンタル等を担当してお
り,原告コスモフアニーに対する営業上の信用毀損が原告ファニーに対
する信用毀損になるなど,両者は一体的な関係にある。そして,被告ア
ルタックの代表者を始めとして従業員も,これを熟知して誹謗行為を行
ったものである。
イ営業秘密不正開示後の利用行為(不正競争防止法2条1項8号)
(ア)被告アルタックは,本件営業秘密を,原告ファニー又は原告コス
モフアニーの元役員,元従業員を通じて取得し,取得した本件営業秘密
を使用して,原告コスモフアニーの取引先に対して営業活動を行ってい
る(甲8。)
(イ)本件営業秘密は,原告らの事業活動に有用な営業上の情報であっ
て,就業規則(甲9,10)上も,社外に対する開示が認められていな
い社外秘として管理してきたものであり,かつ,公然とは知られていな
い情報である。
(ウ)被告Aと原告ファニー又は原告コスモフアニーの役員又は従業員
の数名(甲4,11)とは,平成14年12月ころ,原告コスモフアニ
ーを退職してかつらのレンタル業を開始するための相談を数回にわたっ
て行い(甲12,平成15年7月に被告Aが自己都合で退職し(甲1)
),,,,3同年8月に被告会社が設立された後その他の者が短期間に順次
示し合わせたとしか推認できないような形で,原告ファニー又は原告コ
スモフアニーを退職して甲14ないし17被告アルタックに転職し(),
た。
この間,そのうちの1名は,原告コスモフアニーに在職中の平成15
年12月から平成16年1月にかけて,既に,原告コスモフアニーの取
引先に対して自らがかつらのレンタル業を行う旨を告げて営業活動を行
っていた甲18そして被告Aらは原告ファニー又は原告コスモ()。,,
フアニーから開示を受けた本件営業秘密を,被告アルタックに開示し,
被告アルタックの従業員として本件営業秘密を使用して営業活動を行っ
ており,被告アルタックは,開示された本件営業秘密について不正開示
行為が介在していることを知りながら,本件営業秘密を使用し,被告A
らをして営業活動を行わせている。
(エ)被告アルタックの反論に対する再反論
(,被告アルタックが営業上の情報源であると主張しているもの乙39
40)は,以下のとおり,実際には何ら営業上の情報を提供するもので
はない。
すなわち,
a結婚式場の住所,名称,総支配人の氏名がわかっているからといっ
て,いきなり総支配人に面会を求めるような営業を行うことはできな
い。
b乙39の「婚礼担当者」とは,一般的な結婚式や披露宴を担当する
担当者のことであって,日本髪かつらのレンタル等に関する担当者で
はない。
c乙39の「平均単価」とは,婚礼の平均単価のことであって,日本
髪かつらの平均単価のことではない。
d乙39の「披露宴会場数」は,披露宴の会場数であって,日本髪か
つらの「計画数」ではない。
e年間婚礼組数,年間レストランウエディング組数,神殿,挙式会場
数がわかったところで,これらから和装比率などはわからない。
,,また原告ファニーの製造に係るかつらを単にレンタルされた業者が
当該かつらの毛材をどの問屋で入手できるという情報まで知ることがで
きるものではない。仕入先情報は,原価ひいては利益を左右する極めて
重要な情報であり,かつらを見て仕入先まで容易に認識できるというこ
とはあり得ない。
このように,被告アルタックが営業上の情報源であると主張している
ものは,実際には何ら営業上の情報を提供するものではない。それにも
かかわらず,被告アルタックは,原告コスモフアニーの取引先に対し,
原告コスモフアニーの取引価格より低額での取引の申出を行い,実際に
取引を行っているのであって,これは,原告らの本件営業秘密を利用し
ない限り行えないことである。
ウ原告らは,被告アルタックの営業誹謗行為によって,客先から「コスモ
さん大丈夫ですかまだやっていたのですかといった度重なる問い。」,「。」
合わせを受けるなど,営業上の利益を害され,信用回復のために多大な労
力と時間を費やしている。
また,原告らは,被告アルタックが本件営業秘密を使用して原告らの取
引先に対して営業行為及び営業誹謗行為を行ったことによって,取引先に
対する信用を毀損されただけではなく,客先を奪取されるなど,営業上の
利益を害されている。
(被告アルタックの反論)
ア営業誹謗行為
被告アルタックによる営業誹謗行為に関して,原告らが提出している陳
述書(甲4ないし7)は,そのほとんどが虚偽の内容に係り,信用性に乏
しい。
イ営業秘密不正開示後の利用行為
(ア)被告アルタックの取締役や従業員,あるいは被告Aにおいて,本
件営業秘密を在職中にコピーし,あるいは第三者を通じて入手した経緯
はない。
(イ)また,本件営業秘密は,以下のとおり,非公知性,秘密管理性,
有用性の点で不正競争防止法に規定されている営業秘密に該当しない。
a非公知性について
(a)被告らが営業上使用している株式会社ブライダル産業新聞発行に
係る「ブライダル施設データ(乙39,株式会社リクルート発行」)
に係る結婚情報雑誌「ゼクシィ」においては,結婚式数の名称・住
,,,,,,所神前結婚式場の有無年間実績数会場数担当者平均単価
指定美容室が明確に記載されている。
(b)また,被告アルタックは,一般にこうした雑誌等に掲載されたデ
ータに基づき,式場の担当者や指定美容室に面会を求め,さらに,
式場が行う「ご婚礼下見フェア「ご婚礼和婚フェア」に婚礼用か」,
つらを出品すべく営業努力している。こうした営業活動の中で,営
業先から,既存の納入業者の納入単価が示されたり,年間の正式な
結婚式数(日本髪かつらを使用した式数)が示されるのである。す
なわち,原告コスモフアニーが営業秘密と主張している納入単価や
年間の式数については,営業活動をすれば客先から誰もが入手でき
る情報であり,この点からも本件営業秘密は,非公知性を欠く。
(c)さらに,原告らは,原告ファニーが保有する情報として,①仕入
先情報と,②材料,素材を挙げている。しかし,原告ファニーの製
造に係るかつらをレンタルされた業者やこれを購入した業者である
ならば,誰もが当該かつらの材料,素材を認識することができ,通
常の知識を有するものであれば,それが化繊なのか人毛か,あるい
は,毛材をどの問屋で入手できるか等について容易に認識できると
ころである。
b秘密管理性について
被告アルタックの取締役や従業員であって,かつて原告らに所属し
ていた者については,原告らに在職中,コンピュータを操作して,例
えば,甲24に係るデータにアクセスすることは可能であった。在職
中にこれらの情報を上司から営業秘密として指定されたことは一切な
く,これらの情報については,営業社員はもちろん,技術社員やアル
バイトにおいてさえも自由に閲覧できた。
このように,コンピュータに蓄積されたデータについて,原告らは
特別なセキュリティ管理を行っていなかったものであり,また,アク
セス制限(人的,物的)や秘密情報としての明示もなされていなかっ
たのであるから,本件営業秘密が,営業秘密としての秘密管理性を備
えていないことは明白である。
c有用性について
原告らが「営業秘密」と主張するデータは,原告らにおいて更新さ
れていないと考えられるところ,こうしたデータに係る情報は日々変
化するから,データ更新していない,すなわち,営業社員が営業活動
,,に基づき常に最新のデータに書き換えられていない情報については
何ら価値が存在しない。
,「」(),,一方前記ブライダル施設データ乙39は年3回発行され
前記事項に係る最新の情報が入手できるもので,こうした公開文献に
,。示されたデータの方が本件営業秘密に比してはるかに有用性が高い
加えて最近ではインターネットを活用して施設の細かい情報近,,,(
隣神社,近隣美容室)についても入手することができる。
このように,現在又は将来的営業価値の面で,あるいは事業への活
用性の面で,公開情報(雑誌情報,インターネット情報)の方が営業
上はるかに有用性が高く,本件営業秘密は,同業他社に先んじて収益
,。性を高める有益な情報となり得ないことは明白であり有用性がない
()(6)争点6被告アルタックの不正競争行為による原告らの損害額はいくらか
について
(原告らの主張)
ア被告アルタックは,前記営業誹謗行為及び営業秘密不正開示後の利用行
為によって,平成16年10月から平成17年9月末までの1年間で,合
計4000万円以上の売上げを得た。日本髪かつらのレンタルによる利益
率は,一般的に50%を下らないので,被告アルタックが上記侵害行為に
よって得る利益は,少なくとも2000万円を下らない。
イ原告ファニーと原告コスモフアニーとは,原告コスモフアニーが原告フ
ァニーに対して売上高の60%を支払う関係にあるので,原告ファニーの
損害は,1200万円,原告コスモフアニーの損害は,800万円をそれ
ぞれ下らない。
(被告アルタックの反論)
原告らの主張は否認ないし争う。
(7)争点7(被告Aは,不正競争防止法2条1項7号の行為を行ったか)につ
いて
(原告ファニーの主張)
被告Aは,原告ファニーに在籍当時は生産部門の責任者であり,原告コス
モフアニーに出向中は原告コスモフアニーの取締役であった者である。
本件営業秘密のうち,原告ファニー保有に係る情報(仕入先情報,材料,
素材情報以下ファニー固有情報というは原告ファニーで生産部門,「」。),
の責任者であった被告Aが持ち出したものである(甲8。)
被告Aは,原告ファニーと競争関係にある被告アルタックによる日本髪か
つらの製造等を行うために,ファニー固有情報を使用し,被告アルタックに
開示したものである。
(被告Aの反論)
原告ファニーは,被告Aが,ファニー固有情報を持ち出した旨の主張をし
ている。
しかし,被告Aにおいて,ファニー固有情報を原告ファニーから持ち出し
た事実はない。原告ファニー提出に係る陳述書(甲12)は,そのほとんど
が虚偽の内容であって,信用性に乏しい。
また前記(4)で述べたとおりファニー固有情報のうち原告ファニーの,,,
かつらに関する①仕入先情報,②材料,素材情報は,当該かつらをレンタル
された者,あるいは譲渡された者において,誰でもその材質等を分析できる
,。はずでありその分析結果から誰でも仕入先を自由に選択できるものである
(8)争点8(被告Aの不正競争行為による原告ファニーの損害額はいくらか)
について
(原告ファニーの主張)
原告ファニーが受けるべき相当額は,被告アルタックの売上高を基準とし
て定めるのが相当であり,被告アルタックの売上高は,4000万円を下ら
ず,通常受けるべき相当額は,その10%が相当であるから,400万円を
下らない。
(被告Aの反論)
原告らの主張は否認ないし争う。
第3争点に対する当裁判所の判断
1争点3(本件発明は,進歩性を欠くか)について
本件では,事案の内容にかんがみ,まず,争点3から判断する。
(1)乙35(雑誌「美容技術」1974年(昭和49年)10月号通巻175
号)の記載事項
ア乙35には,図面とともに,次の事項が記載されている。
()「」「,,,ア4枚目ファニーかつらの扱い方と修正欄下段髱鬢前髪
髷の取付け方」の欄
「①髱金は台金に固定してあり,根の部分にだけ孔があいています。
②両びんを取付けた所,左右ともネジを2つづつ使って止めます。
③前髪もネジ2つを使い,前髪のトップを入れる箇所からネジで止
めます。
④まわりが組立てられたら,髷のネジは少し長いものが使われてい
て,台金の中よりネジで止めます(ネジ廻し使用」
I
。)
(イ)4枚目「各部を止めるネジの位置」欄の図
,,日本髪かつらの台金において前方上部に前髪を止める2本のネジが
前方側面にびんを止める2本のネジが,中央上部に髱,びん,髷を止め
るネジが,それぞれ図示されている。
(ウ)4枚目「結い上げのいらないファニーかつら」欄中段の写真(別
紙【写真1(書き込みは被告らによる)】。)
,(),日本髪かつらにおいて髷と根根掛によって形成される空間内に
根(根掛)から髷方向に向かって,対象を挟んで固定するクリップ形状
の部材が設けられている。
エ5枚目中段附属品の取付け場所の欄の図別紙図面1書()「」(「」(
き込みは被告らによる)。)
日本髪かつらにおいて,髷と根(根掛)によって形成される空間内に
設けられた何らかの部材に「中差をはめ込む」旨が図示されている。,
,,,「,,,イまずこれらの記載からすれば乙35には台金に前髪びん髱
髷を取り付けてなる日本髪かつら」に係る発明が開示されているものと認
められる。
そして,このような日本髪かつらに,中差しをどのようにはめ込むかに
ついては,具体的に記載されているわけではないが「附属品の取付け場,
所の欄の図別紙図面1結い上げのいらないファニーかつら欄」(「」),「」
中段の写真別紙写真1からすれば根根掛の前側に位置するよ(【】),()
うに中差しをはめ込むことができるよう,中差しを支持するクリップ形状
の部材(中差しはめ込み部材)が設けられていることは明らかである。
したがって乙35発明は台金に前髪びん髱髷を取り付けてな,,「,,,
る日本髪かつらにおいて,前記髷を支える根の前側に,中差しはめ込み部
材を配置した日本髪かつら」ということができる。
(2)乙35発明と本件発明との対比
乙35発明と本件発明は,いずれも「台金に前髪,びん,髱,髷を取り付
けてなる日本髪かつら」に係る発明である。
まず本件発明において中差しを装着する場合中差し本体11aを髷3,,「
の中空部に通して,その幾分細くなった中央部を図2に示すように中差し係
止部材20の係止部20aに嵌入させるだけで,中差し本体11aが中差し
係止部材20に挟持され(本件明細書【0025)とある。そして,乙3」】
5発明においても前記(1)アエのとおり中差しは髷と根根掛に,(),,()
よって形成される空間内に設けられた何らかの部材にはめ込むことが図示さ
れているのであるから,中差しの装着方法は,乙35発明と本件発明との間
に相違がない。中差しをはめ込んで支持する部材を,中差しはめ込み部材と
呼ぶか中差し係止部材と呼ぶかは単なる呼称の問題にすぎない。
また,乙35発明においては,中差しはめ込み部材が根(根掛)の前側に
配置されているとあるのみで,根(根掛)に配置されているのか台金に配置
されているのか,また,中差しはめ込み部材がどのような態様で配置されて
いるのか不明であるが,本件発明においては「台金に「固定」する構成を,」
採用することが明記されている。
そうすると,乙35発明と本件発明とは,乙35発明では,中差しはめ込
み部材が根の前側に配置されているのに対し本件発明では中差し「」「」,,
係止部材が「台金に「固定」されている点で相違し(相違点,その余は同」)
一であるということができる。
(3)相違点についての検討
ア各文献の記載事項
(ア)乙21(実公昭62-41682号の公報,実願昭58-126
()())342号実開昭60-33901号のマイクロフィルム乙52
は同一出願に係る)の記載事項。
乙21には,笄止め具に関する考案について,図面とともに以下の記
載がある。
「従来,中差しを本髷の根に固定する為の手段としては・・・スプリ
ングの両端に中差しと掛合するフックを取着した止め具が実用化される
に至った・・・②単にスプリングで引っ張っているだけなので装着中の。
安定性に若干の問題があり(3頁1欄26行目ないし同頁2欄12行,」
目)
「本髷の根の周面に沿って装着できるように湾曲せしめられていると
共に着脱手段が配設されている帯状体と,上記帯状体の前面に取着せし
められた装着筒より成り,該装着筒の内部に中差しを挿通した時に押圧
して固定する為の板バネが配設されている笄止め具であってその目的と
する所は,①中差しを容易に着脱することができ,これにより着脱時に
生じ易い日本髪の形崩れや髷の損傷を防止することができ,又②中差し
を根に対してしっかりと装着することができ,更に③根を補強すること
ができる笄止め具を提供するにある(3頁2欄15行目ないし26行。」
目)
「。この笄止め具を使用する場合には本体1を本髷6の根7に装着する
上記装着は帯状体2を根7の周面に沿って外嵌し,次いで端部に穿設さ
れている透孔12に挿通ピン9を通し,この先端に受け具10を固着し
て行う・・・帯状体2を根7の周面に沿って装着することによって中差。
し17を装着する為の装着筒4を取着すると共に,根7を補強すること
ができる。上記の如くして装着筒4を根7に取着せしめた後は,中差し
17を単に装着筒4に挿し込むだけで根7に対して取着せしめることが
できる。しかも装着筒4内には板バネ11が配設されているので,中差
し17を挿通しやすいというだけでなく,一旦挿通した後は板バネによ
ってこれを押圧し,しっかりと固定することができる(4頁3欄21。」
行目ないし38行目)
(イ)乙53(実願平1-5013号(実開平2-98802号)のマ
イクロフィルム)の記載事項
乙53には,簡易かんざし取付装置に関する考案について,図面とと
もに以下の記載がある。
「本考案の構成は,凹状に設けた薄板材の中央に開口部を有した取付
本体の後部に設けた連結部を上方に折曲げ,連結部に連続する後部片を
U字状に折返した折返片と,前記連結部の両側に位置して後部片に連続
して設けた一対の下部片とで弾力性を有したU字状の本差保持部を設
け,柔軟で扁平な保持筒を有した左右対称形の後差保持部を取付本体の
前部両側に枢動可能に取付け,たぼ部取付用のゴム紐を取付本体に具え
ることを特徴とするものである(3頁5行目ないし14行目)。」
「取付本体1は,断面が略円形な日本髪のたぼ部32の上側に取付け
易くするため断面を湾曲させたり第2図又は取付本体の両側を下,(),
方に折曲げて全体を凹状に形成し,たぼ部32の上面に載置してゴム紐
25でたぼ部32を環回して取付ける。この場合,取付本体1の中央に
開口部2を有しているためたぼ部32に開口部が掛止し,取付本体1が
ずれたり移動したりすることなく安定して取付けることができる(5。」
頁1行目ないし9行目)
「次に,本実施例の作用について説明すると,文金高島田などの日本
髪かつら30の空間34を利用し,本差保持部10を後側に位置させた
取付本体1をたぼ部32上に載置してゴム紐25をたぼ部32に環回さ
。,せて止片22の掛止孔23を掛止片4に掛止させて止着するこの場合
取付本体1は左右方向を下側に凹状に形成し且つ中央に開口部2を有し
ているので,たぼ部32に安定させて取り付けることができる(6頁。」
7行目ないし15行目)
「ついで,両端に装飾片37を有した本差35を日本髪かつら30の
空間34内に挿通し,該本差35の中間部分を本差保持部10の入口部
10aから圧入して取付ける(6頁19行目ないし7頁2行目)。」
イ検討
(ア)まず,乙35発明と本件発明の相違点のうち,中差しはめ込み部
材(係止部材)が「固定」されているという構成について検討する。
乙21には,中差しを本髷の根に固定するための従来技術として,ス
プリングの両端に中差しと掛合するフックを取着した止め具が開示さ
れこのような従来技術には単にスプリングで引っ張っているだけな,,「
ので装着中の安定性に若干の問題3頁2欄10行目ないし同頁2欄1」(
1行目があるとされ乙21に記載された考案についてはその目的),,「
とする所は・・・②中差しを根に対してしっかりと装着することがで,
き3頁2欄20行目ないし24行目しかも装着筒4内には板バ,」(),「
ネ11が配設されているので,中差し17を挿通しやすいというだけで
なく,一旦挿通した後は板バネによってこれを押圧し,しっかりと固定
することができる(4頁3欄34行目ないし38行目)と記載されて。」
いるまた乙53においても取付本体1は断面が略円形な日本髪。,,「,
のたぼ部32の上側に取付け易くするため,断面を湾曲させたり(第2
図又は取付本体の両側を下方に折曲げて全体を凹状に形成したぼ部),,
32の上面に載置してゴム紐25でたぼ部32を環回して取付ける。こ
の場合,取付本体1の中央に開口部2を有しているためたぼ部32に開
口部が掛止し,取付本体1がずれたり移動したりすることなく安定して
。」()。取付けることができる5頁1行目ないし9行目と記載されている
このように,本件発明の出願前における,中差しを根(根掛)に装着す
るための従来技術では,中差しの安定性,中差しを支持する部材の安定
性を得ることが当然の課題とされており,その解決のために,中差しを
支持する部材を根掛に「固定」する構成が採用されていたものと認めら
れる。
この点について,原告ファニーは,中差しはめ込み部材を根掛の前側
に配置するときに,それを「固定」することは,周知・慣用技術といえ
ないと主張する。
しかし,日本髪かつらにおける装飾用品の1つである中差しを装着す
るに当たり,従来から,中差しが簡単に落下したり,その向きが安易に
変化してはならないようにすることは,前記説示のとおり,当業者が当
然考慮すべき課題というべきであって,中差しを支持する部材を配置す
るに当たっても,はめ込んだ中差しが簡単に落下したり,向きが安易に
変化しないように,中差しを支持する部材を「固定」することは,当業
者にとって周知・慣用技術であるというべきである。
したがって,原告ファニーの上記主張は,採用することができない。
そうすると,乙35発明において,中差しはめ込み部材が根(根掛)
の前側付近で「固定」されているかどうかは必ずしも明らかでないが,
同発明に上記周知技術を適用して,中差しはめ込み部材(係止部材)を
固定する構成とすることは,当業者にとって,容易に想到できるものと
いわなければならない。
(イ)次に,乙35発明と本件発明の相違点のうち,中差しはめ込み部
材(係止部材)が「台金に」固定されている構成について検討する。
乙35発明においては,中差しはめ込み部材が根(根掛)の前側に配
置されているとあるのみで,根(根掛)に配置されているのか台金に配
置されているのか明らかではないが,中差しを支持する部材を「根(根
掛)に」固定する構成は,乙21,53の前記各記載にあるとおり,周
知技術というべきである。
そして,根(根掛)は,台金に一体的に固定される部材であって,台
金も根(根掛)も相応の強度を備えているものと考えられるから,中差
しを支持する部材を根(根掛)に固定する場合と,台金に固定する場合
とで,中差しを支持する部材の支持剛性において格別な差異が生じると
は考えられない。
そうすると,中差しはめ込み部材(係止部材)の固定箇所として,根
(根掛)の前側又は台金の根(根掛)取付部周辺のいずれかを選択する
ことは,中差しはめ込み部材(係止部材)を支持部材を介して台金に固
定する場合も含めて,当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎないとい
うべきである。
(ウ)なお,原告ファニーは,本件発明が,中差しを簡単に装着できる
日本髪かつらとすることも技術課題としている旨主張しているが,乙3
5発明に対して,前記周知・慣用技術及び設計的事項を考慮することに
より構成された発明が,上記技術課題を解決し得ることも,当業者が容
易に想到できることである。
ウしたがって,本件発明は,乙35発明に基づいて,周知・慣用技術等を
考慮することにより,当業者が容易に発明をすることができたものである
といえる。
(4)以上検討したところによれば,本件発明は,特許法29条2項に該当する
事由があり,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無
効にされるべきものと認められるから,原告ファニーは,被告アルタックに
対し,本件特許権を行使することができない。
したがって,その余の点について検討するまでもなく,本件特許権侵害を
理由とする原告ファニーの請求は理由がない。
2争点5(被告アルタックは,不正競争防止法2条1項14号,同項8号の行
為を行ったか)について
次に,争点5について検討する。
(1)不正競争防止法2条1項14号について
原告らは,被告アルタックの従業員が,2004年(平成16年)7月な
いし10月ころ原告コスモフアニーの取引先においてコスモフアニーは,,「
危ない,近々つぶれる,我々が辞めたために技術力がない」との虚偽事実の
,,()流布誹謗中傷を行ったと主張しこれに沿う内容の陳述書甲4ないし7
を提出する。
しかし,原告らの上記主張自体,行為者,取引先,行為日時,言動の内容
等について具体性を欠いている上,上記各陳述書は,当該行為者が当該言動
を行った日時や具体的状況等が明らかでなく,しかも,被告アルタック従業
員が誹謗中傷するのを聞いたという原告らの取引先から,原告コスモフアニ
ーの従業員が更に聞き出して書面化したというものであって,これらの陳述
書から,原告らの主張する被告アルタックの営業誹謗行為を認めることは到
底できない。また,その他,被告アルタックの営業誹謗行為を認めるに足り
る証拠もない。
したがって,その余の点について検討するまでもなく,被告アルタックの
不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に基づく,原告らの損害賠償
請求は理由がない。
(2)不正競争防止法2条1項8号について
原告らは,被告アルタックが,原告らの元役員,元従業員を通じて,本件
営業秘密を取得した上,同秘密を使用して,原告コスモフアニーの取引先に
対して営業活動を行っていると主張する。
不正競争防止法における営業秘密は秘密として管理されている不「」,「」(
正競争防止法2条6項)ことが要件とされるところ,原告らは,本件営業秘
密の社外に対する開示が,単に就業規則上認められていなかったと主張し,
同就業規則を証拠として提出する(甲9,10)のみであり,被告アルタッ
クがその秘密管理性を否認するのに対して,原告らの社内における具体的な
秘密管理の手段,内容,実施状況等についての主張,立証を行わないから,
本件営業秘密について,その秘密管理性を認めることはできない。
そうすると,その余の点について検討するまでもなく,被告アルタックの
不正競争防止法2条1項8号の不正競争行為に基づく,原告らの損害賠償請
求はいずれも理由がない。
3争点7(被告Aは不正競争防止法2条1項7号の行為を行ったか)について
,,,,原告ファニーは被告Aがファニー固有情報を持ち出してこれを使用し
又は被告アルタックに開示したと主張する。
しかし,ファニー固有情報は,本件営業秘密の一部であるところ,本件営業
秘密が,秘密として管理されているとはいえず,不正競争防止法2条6項にい
う営業秘密とは認められないことは,前記2(2)のとおりである。
したがって,その余の点について検討するまでもなく,被告Aの不正競争防
止法2条1項7号の不正競争行為に基づく,原告ファニーの損害賠償請求は理
由がない。
第4結論
,,,以上の次第で原告らの請求はその余の争点について検討するまでもなく
いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官清水節
裁判官山田真紀
裁判官片山信
(別紙)イ号物件説明書
【名称】
日本髪かつら
【図面の説明】
図1は,日本髪かつらの全体を示す側面説明図である。
,。図2は同じく中差し係止部材取り付け部の内部構造を示す拡大側面説明図である
図3は同じく中差し係止部材に中差しを係止させた使用状態を中差し装着方向から,
見た説明図である。
【構成】
1全体説明
(),(),,,()1この日本髪かつらは内側の台金17図2参照に前髪1びん2髱たぼ
4,髷(まげ)3,根掛(正確には「根」という)15を取り付けている。。
2根掛15は金属アルミニウム製の筒状の部材の内部に補強金具16が一体(),(),
に固着されており,その下部に台金17にねじ止めするためのねじ孔が形成され
て,止めねじ18で台金17に固定されている。また,その円筒状の部材内には,
発泡スチロール等の軽い樹脂製の髷パット14の後部下面から下方に柱状に突設
,。された根部が嵌入固着しており根掛15と髷パット14が一体に構成されている
3さらにその根掛15の前面15aは平面状になっておりそこにL字形の支持金具(),,
19が一体に取り付けられている。そして,補強金具16を止めねじ18で,支持金
具19を止めねじ23と蝶ナット24で,それぞれ台金17に固着することによって,
根掛15と髷パット14を一体的に台金17に固着している。また,支持金具19の平
面部上に突出する蝶ナット24の部分には黒いカバー25を被せて目隠ししてい
る。
4根掛15の前面15aの支持金具19には中差し11の中差し本体11aを嵌め入れるコ(),
字状の係止部20aと逆L字状の取付部20bを一体に折り曲げ形成した中差し係止部
材20を,ピン21及びワイヤ22で固定している。
5この日本髪かつらを使用するとき図3に示すように例えば中差し本体11b及(),,
び飾り部材11bなどを備えた中差し11を,中差し係止部材20の係止部20aに嵌め
込むという簡単な操作で,中差し11を装着することができる。
2構成要件
上記イ号物件の構成要件を,本件発明の構成要件に沿って分説すると,次のとお
りである。
a1:台金17に前髪1,びん2,髱4,髷3を取付けてなる日本髪かつらにおいて,
b1:台金17に固定された前記髷3を支える根掛15の前側に台金17に固定された支,
持金具19を設け,この支持金具19にピン21及びワイヤ22で中差しを係止する
中差し係止部材20を固定した
c1:ことを特徴とする日本髪かつら。
(別紙)ロ号物件説明書
【名称】
日本髪かつら
【図面の説明】
図1は,日本髪かつらの全体を示す側面説明図である。
,。図2は同じく中差し係止部材取り付け部の内部構造を示す拡大側面説明図である
図3は同じく中差し係止部材に中差しを係止させた状態を中差し装着方向から見た,
説明図である。
【構成】
1全体説明
(),(),,,()1この日本髪かつらは内側の台金17図2参照に前髪1びん2髱たぼ
4,髷(まげ)3,根掛(正確には「根」という)15を取り付けている。。
2根掛15は金属アルミニウム製の筒状の部材の内部に補強金具16が一体(),(),
に固着されており,その下部に台金17にねじ止めするためのねじ孔が形成され
て,止めねじ18で台金17に固定されている。また,その円筒状の部材内には,
発泡スチロール等の軽い樹脂製の髷パット14の後部下面から下方に柱状に突設
,。された根部が嵌入固着しており根掛15と髷パット14が一体に構成されている
3さらにその根掛15の前面15aは平面状になっておりそこにL字形の支持金具(),,
19が一体に取り付けられている。そして,補強金具16を止めねじ18で,支持金
具19を止めねじ23と蝶ナット24で,それぞれ台金17に固着することによって,
根掛15と髷パット14を一体的に台金17に固着している。また,支持金具19の平
面部上に突出する蝶ナット24の部分には黒いカバー25を被せて目隠ししてい
る。
4根掛15の前面15a側には中差し11の中差し本体11aを嵌め入れるコ字状の係止(),
部20aと取付部20bを一体に折り曲げ形成した中差し係止部材20を係止部20aを,
ワイヤ22で根掛15に固定するとともに取付部20bを髷パット14に差し込んで固,
定している。
5この日本髪かつらを使用するとき図3に示すように例えば中差し本体11b及(),,
び飾り部材11bなどを備えた中差し11を,中差し係止部材20の係止部20aに嵌め
込むという簡単な操作で,中差し11を装着することができる。
2構成要件
上記ロ号物件の構成要件を,本件発明の構成要件に沿って分説すると,次のとお
りである。
a2:台金17に前髪1,びん2,髱4,髷3を取付けてなる日本髪かつらにおいて,
b2:台金17に固定された前記髷3を支える根掛15の前側にワイヤ22で根掛15に固,
定するとともに取付部20bを髷パット14に差し込んで固定した中差しを係,,
止する中差し係止部材20を設けた
c2:ことを特徴とする日本髪かつら。
(別紙)営業秘密目録
1コスモファニー株式会社の納入先マスターにデータとして保存されている,
(1)納入先の名称,住所,日本髪かつらの納入に関する担当者
(2)納入先に対する日本髪かつらの納入単価
(3)納入先が扱う年間の結婚式の組数,年間の結婚式の組数における和装の比
率,及び,各納入先から受注した受注数,各納入先に対する計画数,各納入
先に対して納入した実績数
の情報
2株式会社ファニーの日本髪かつらの材料の仕入先の住所名称及び材料・素材の,
情報
(別紙)
【写真1】
【図面1】

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