弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
○事実
控訴人らは「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五七年一月一二日付で控訴人らに対し、
て
した相続税に係る各更正処分(ただし、同年六月一〇日付異議決定により一部取消がされ
た後のもの)はいずれもこれを取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担と。
す
る」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおり
であるからこれを引用する。
(控訴人らの主張)
、、相続税に関する評価通達によれば相続財産中に取引相場のない株式が含まれている場合
、()、()これをいわゆる純資産価額方式によつて評価するについては1未納法人税額等2
課税時期前に賦課期日のあつた固定資産税の税額(3)直前の事業年度の利益処分とし、
て
確定した配当金額及び役員賞与の金額(4)被相続人の死亡により相続人等に支給する、
こ
とが確定した退職手当金等の金額をいずれも負債に計上すべきこととしている。しかし、
右に挙げられた(2)以下の項目は、それが一株当りの純資産価額の計算上負債に含める
ことが妥当であるからといつて、直ちに未納法人税額等の算定においても損金処理をしな
ければならないものなのではない(このことは(3)の配当金額等が未納法人税額等の、
計
算においては損金処理の対象にならないことからも明らかである。もともと、資産評価)
に
おいては、通常の会計原則にしたがい、負債は基準日たる課税時期において確定している
もの、又はそうでなくても存在することが確実でその金額を合理的に算定しうるもののみ
が負債とせらるべきなのであるが(4)の退職手当金等がこれに該当しないにも拘わら、
ず、
右に含められているのは、相続人にとつて死亡退職金等がいわゆる、みなし相続財産とさ
れていることとの関連で、実質的な二重課税となることを避けようとしたものに外ならな
い。しかして、二重課税回避の趣旨はこれにて足るのであるから、これをそれ以外の未納
法人税額等の計算にまで及ぼすべきではなく、未納法人税額等の計算は、通常の例により
未確定の死亡退職金は損金に加えずに計算されるべきである。
なお、この場合の未納法人税額の計算は、
後に課税時期を含む事業年度の終了後に現実に評価会社の現実に支払うこととなる法人税
額とは直接関係がないから、控訴人ら主張の未納法人税額の計算がその後の評価会社の現
実の支払額にくらべて過大であつたとしても、これをもつて右計算を誤りであるとするこ
とはできない。
○理由
当裁判所も控訴人らの本訴請求は失当と判断するものであつて、その理由は原判決理由に
説示のとおりであるから、これを引用する。
すなわち、本件の争点は、控訴人らの相続財産である取引相場のない株式をいわゆる純資
産価額方式により評価する際、負債項目となる未納法人税額等の計算において退職手当金
等を損金に計上すべきか否かにあるところ、評価会社の一株当りの純資産価額の計算上右
退職手当金等を負債に計上する以上、未納法人税額等の計算においてもこれを損金に計上
することとするのが相当である。控訴人らは、死亡退職手当金を評価会社の資産計算にあ
たつて損金とすることには実質的な二重課税を防ぐという合理的理由があるが、未納法人
税額等の計算においてはそのような理由がないから、通常の事業年度末における法人税の
所得計算例にならい、かかる未確定の債務は損金に算入しない取り扱いをすべき旨主張す
るが、同一の時期に同一の目的のためにする評価計算において彼此差別した扱いを正当と
する実質上の理由を見出し難い。なお、この場合の法人税額の計算については、事業年度
の途中で仮決算を組むのである(本件でもとられている直前の事業年度終了の日の決算を
借用したやり方はこの仮決算に代るものである)から、事業年度終了の際になされる確。
定
決算にもとづき評価会社の現実に負担することとなる法人税額と過不足の生ずるのはやむ
を得ないところであるが、それは主として仮決算時においてはその後に生じうべき所得の
変動を事前に考慮することが不可能なためであつて、発生することの確実な、一般的で客
観的な事情まで無視してよいということまでを意味するものではない。ここで問題の死亡
退職手当金のごときは、正にかかるものに属する。したがつて、評価会社の一株当りの純
資産価額計算の一方においてこれを考慮に入れながら、他方でこれを度外視して未納法人
税額等を計算すべきだという控訴人らの主張には同調できない。
よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用
の負担について民訴法九五条、
八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官小谷卓男海老澤美廣笹本淳子)

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