弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
一 申立
1 原告
「被告は原告に対し金二、一四五、七〇一円およびこれに対する昭和四六年一月一
四日から完済まで年五分の金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判
決および仮執行の宣言を求める。
2 被告
主文と同旨の判決を求める。
二 主張
1 原告の請求原因
(一) 被告は一般国道一七〇号改築工事(土地収用法二六条による事業認定の告
示昭和四四年二月一九日、同法三四条の三による手続開始の告示同年六月四日)の
起業者として、昭和四五年五月三〇日大阪府収用委員会に対し、原告所有の寝屋川
市<以下略>宅地実測一三一・五五平方米および同所<以下略>宅地実測一〇〇・
八〇平方米中九〇・四五平方米(以下これを本件土地という)の収用の裁決を申請
し、あわせて明渡裁決を申立て、同委員会は昭和四五年一〇月六日、本件土地を右
事業のため収用し、損失補償金額二八、三五一、三八〇円(内訳、土地損失補償
八、〇一五、二一〇円、物件移転料一五、四四六、七七〇円、その他通常受ける損
失補償(動産移転料、営業補償、移転雑費)四、八八九、四〇〇円)、権利取得の
時期昭和四五年一一月六日、明渡の期限昭和四六年三月一五日とする裁決をした。
(二) 原告は右損失補償のうち物件移転料につき不服がある。
原告は本件土地および隣接の土地を使用してガソリンスタンド経営および石油大口
販売を業としていた。本件裁決中の物件移転料は、原告の右営業の施設である事務
所ほか三三項目の物件についての移転料の合計額であるが、このうち左記五項目の
物件については、裁決の金額が起業者である被告の見積額を下廻つている。
右五項目の物件は本件土地に定着してそれぞれ独自の経済的効用を発揮しているも
ので、独立して取引の対象となるから、各別に移転する経済的価値がある。起業者
はこのような物件については個別的に移転料の見積りをすべきであり、また収用委
員会は起業者が申し立てた範囲をこえて裁決してはならない(土地収用法四八条三
項)。大阪府収用委員会が右五項目の物件について被告の見積額より少ない裁決を
したのは、右法条に違反する。
(三) よつて原告は被告に対し右差額に相当する金二、一四五、七〇一円とこれ
に対する昭和四六年一月一四日(本件訴状送達の日の翌日)以降完済まで民法所定
年五分の遅延損害金の支払を求める。
2 被告の答弁
請求原因(一)は認める。
同(二)のうち、原告の営業は認める。土地収用法四八条三項違反の主張は争う。
収用によつて生ずる損失の補償は包括的にその範囲を定めるべきであるから、裁決
において各個の項目毎に補償金額が定められている場合で、仮りにその中に妥当で
ないものがあつたとしても、全体としての補償金額が妥当であれば、違法とはなら
ない。
三 証拠(省略)
○ 理由
一 請求原因(一)の事実(収用委員会の裁決)は、当事者間に争いがない。
二 原告が本件土地および隣接の土地を使用してガソリンスタンド経営と石油大口
販売を業としていたことは、当事者間に争いがなく、本件裁決における損失補償の
うちの物件移転料は、原告の右営業の施設である事務所ほか三三項目の物件の移転
料の総額であり、そのうち原告の指摘する五項目の物件について、請求原因(二)
の一覧表のとおり裁決の金額が被告の見積額を下廻つていることは、被告において
明らかに争わないからこれを自白したものとみなされる。
三 起業者は収用の裁決の申請あるいは明渡裁決の申立の際、損失補償の見積りと
その内訳を、積算の基礎を示して明らかにすることとなつている(土地または土地
に関する所有権以外の権利に対する損失補償につき土地収用法四〇条一項二号ホ、
同法施行規則一七条三号、その他の損失補償につき同法四七条の三第一項一号ニ、
同法施行規則一七条の六第二号)、そして他方、同法四八条三項、四九条二項によ
れば、収用委員会は損失補償につき起業者の申し立てた範囲をこえて(すなわち見
積額より下廻つて)裁決してはならないものとされ、一種の処分権主義が採用され
ているところ、この規定の適用については、被告の主張するように損失補償の総額
において申立の範囲をこえなければよいといえるかは疑問があり、少なくとも四八
条に規定される土地の補償と四九条に規定されるその他の補償(物件補償料、営業
補償等)との間では、彼此流用して一方を見積りよりも多く他方を見積りより少な
くすることはできないと解すべきである。
しかしながら、かかる大分類の枠内において、本件のように営業上の施設にかかる
物件移転料につき、その内訳として細目にわたつて個々の物件毎に見積額が示さ
れ、これに対応して裁決でも個別的に金額が表示されている場合、個々の物件につ
いてみれば裁決額が見積額を下廻つているものがあつても、物件移転料としては営
業施設全体を包括して一個の補償額が定められるべきものであるから、移転料の総
額において裁決額が見積額を下廻つていないかぎり、同法四九条二項、四八条三項
には違反しないと解するのが相当である。
成立に争いのない乙第六号証によれば、本件において物件移転料につき被告の見積
総額は金一四、五五二、四〇〇円、収用委員会の裁決額は金一五、四四六、七七〇
円であるから、この点に関して違法がないことは右説示したところにより明らかで
ある。
なお、右移転料に関する裁決額が全体として過少であることの立証はない。
四 よつて原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用につき民
事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 下出義明 藤井正雄 石井彦寿)

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