弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原決定ならびに大阪高等裁判所が昭和四四年一月九日にした上訴権回復
請求棄却決定は、いずれもこれを取り消す。
     申立人の上訴権回復の請求を許容する。
         理    由
 本件抗告申立の理由は末尾添付書面記載のとおりである。
 所論のうち、憲法三一条、三二条違反を主張する点は、実質は単なる法令違反の
主張であり、判例違反を主張する点は、引用の判例は本件と事案を異にして適切で
ないから、いずれも刑訴法四三三条の抗告理由にあたらない。
 しかし、職権をもつて調査すると、原決定が確定した事実によれば、申立人を被
告人とする大阪高等裁判所における職業安定法違反、横領被告事件の昭和四三年一
〇月一四日の第一回公判期日には、申立人は出頭せず、国選弁護人のみ出頭して、
公判を開廷審理し、弁論を終結したうえ、第二回公判期日(判決宣告期日)を同月
二八日と指定告知し、右第二回公判期日には、申立人および弁護人ともに出頭しな
かつたがそのまま判決の宣告をしたこと、申立人は、右第一回公判期日には適法な
召喚状の送達を受けたが、第二回公判期日には、召喚はもちろん公判期日の通知も
受けていなかつたというのである。
 ところで、刑訴法二七三条二項は「公判期日には、被告人を召喚しなければなら
ない。」と規定し、第一回公判期日のみならずすべて公判期日には被告人の召喚を
必要としている。そして、右規定は控訴審にも同法四〇四条により準用されている
が、ただ、控訴審においては、同法三九〇条によつて、同条但書の場合を除き、被
告人は原則として公判期日に出頭を要しないとされ、公判期日に召喚されても出頭
する義務を負わない。しかし、被告人は公判期日に出頭する権利を有するものであ
るから、控訴審における被告人に対する公判期日の召喚は、結局、公判期日を被告
人に通知し、出頭を欲する被告人に出頭する機会を与えることを意味するものと解
すべきである(昭和二四年新(れ)第五一九号同二七年一二月二五日第一小法廷判
決、刑集六巻一二号一四〇一頁参照)。そして、控訴審において公判期日を被告人
に知らせることなく開廷し、実質的な審理を進めることは、被告人の防禦権の行使
に支障を与える場合もあり、また、それが判決宣告期日の場合には、民事訴訟事件
のように、判決の送達日から上訴提起期間が進行する(民訴法三六六条一項、三九
六条参照)のと異なり、判決宣告の日から右期間は進行し、しかも、控訴審におい
ては判決のあつた事実を被告人に通知することは必要とされていないから、被告人
に上訴する機会を失わせるおそれがある。したがつて、控訴審において被告人に公
判期日の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは刑訴
法二七三条二項に違反し、たとえ、それが判決宣告期日の場合であつても、同様で
あると解すべきである。
 そうすると、申立人に対する前記被告事件の控訴審として、大阪高等裁判所がし
た前記訴訟手続には違法があつたものといわざるを得ない。右違法があつた結果、
申立人は判決宣告の事実を知り得ず、そのため上訴の提起期間内に上訴をすること
ができなかつたものと認められるので、申立人は、自己または代人の責に帰するこ
とができない事由によつて、上訴権の行使を妨げられたものというべきである。
 そして、申立人が、別件の刑の執行猶予の言渡取消請求に対する求意見書の送達
を受けることにより、判決宣告のあつた事実を知つた日から刑訴法三六三条に定め
る期間内に、本件上訴権回復の請求をしていることは、本件記録および当裁判所に
係属中の申立人の申立にかかる昭和四四年(し)第一二号刑執行猶予言渡取消決定
に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件の記録に徴して明らかである。
 してみると、申立人に対する控訴審の訴訟手続に所論のような違法は認められな
いとして、本件上訴権回復請求を棄却した大阪高等裁判所の昭和四四年一月九日付
の決定およびこれを維持した原決定には、刑訴法の解釈をあやまつた違法があり、
これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められるから、同法四一一条一号
を準用して、これを取り消すべきものである。
 よつて、同法四三四条、四二六条二項により、主文掲記の各決定を取り消し、本
件上訴権回復請求を許容すべきものとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり
決定する。
  昭和四四年一〇月一日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    石   田   和   外
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    関   根   小   郷

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛