弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人原田香留夫、同荒木宏、同神田昭二の上告趣意所得税法違反関係第一点に
ついて。
 論旨は、原判決が所得税法三条の二は創設的な規定であつて、これを同条制定以
前の本件に遡及適用したことをもつて憲法三九条及び同三一条に違反するというの
であるが、原判決が、第一審判決は税法上古くから条理として是認されていたいわ
ゆる実質課税の原則によつて納税義務の所在を決定したうえ、所得税法六九条一項
に照らし、被告人を処罰したもので、同法三条の二を遡及適用したものではないと
したこの点に関する判断は相当である。それ故、所論違憲の主張は、その前提を欠
き、採用するを得ない。
 同第二点について。
 憲法三八条一項は、何人も自己が刑事上の責任を問われる虞のある事項について
供述を強要されないことを保障したものと解すべきことは、当裁判所の判例とする
ところである(昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日大法廷判決、刑集
一一巻二号八〇二頁参照。)。しかして、申告納税制度の下における所論申告の如
く、憲法の規定する納税義務を前提とし、その税額を決定するために所得の申告を
求めるが如きは、同条項にいう「自己に不利益な供述」には当らないものであると
した原判決の判断の相当であることは、右判例の趣旨に照らし明らかなところであ
る。それ故、所論違憲の主張は、採用するを得ない(なお、所論は、所得税法六九
条の四の規定も違憲であると主張するが、原判決および第一審判決は、同条の罪を
認定していないし、同条を本件に適用していないのであるから、この点に関する論
旨は不適法である。)。
 同第三点について。
 論旨のうち判例違反を主張する点は、引用の判例は事案を異にする本件に不適切
であるから、その前提を欠き、その余の論旨は、原判決の認定に副わない主張を前
提とする単なる法令違反の主張であつて、すべて上告適法の理由に当らない(本件
第一の(一)、(二)の各所為が所得税法六九条一項に当るとした原判決の判断は
正当である。)。
 同第四点について。
 論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、上告適法の理由に当らない。
 同第五点について。
 原判決が、被告人と共謀して所得税を逋脱したとされている者が、本件組合員と
して組合から支給されていた給与所得に対し源泉徴収により納付した税額を逋脱額
の算定に際し差し引かなかつた一審判決は違法であると認めながら、右の差し引か
れるべき額が逋脱額に比して些少であるから、判決に影響を及ぼすこと明らかであ
る場合に当らないと判断したことは、相当であるのみならず、仮りに、右違法が判
決に影響を及ぼすべきものとしても、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する
ものとは認められないから、論旨は理由がない。
 同第六点について。
 論旨は、事実誤認の主張であつて、上告適法の理由に当らない。
 同第七点について。
 論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、上告適法の理由に当らない
(原判決が、本件所得の無申告ないしは過少申告には期待可能性がないとはいえな
いとした判断は相当である。)。
 同弁護人らの上告趣意公務執行妨害罪関係第一点について。
 論旨は、本件の捜索、差押は憲法三五条、刑訴法一〇七条、一一〇条、一一四条
に違反し、不適法な公務の執行であるから、これを前提として本件につき公務執行
妨害罪の成立を認めた原判決には憲法三五条違反、事実誤認、法令違反があると主
張する。しかしながら、本件捜索、差押令状中差押えるべき物の表示として所論の
記載が憲法三五条、刑訴法一〇七条の要求する記載要件に適つたものであると認め
た原審の判断は相当であり、また記録を調べると、本件執行に際し被告人に令状が
示されず、その立会もなく、本件組合の渉外課長兼総務課長であるAに対し呈示さ
れ、同人が立会を承諾した経過状況につき、所論引用の原判決の説示にかかる事実
が認められ、原判決が、右の事実関係を目して刑訴法一〇七条、一一四条の手続が
適法に履践されたものと判断したのは相当である。したがつて、本件捜索、差押が
違憲であり訴訟法に違反するという主張は理由がないから、不適法な公務執行を前
提とする所論各主張は、すべて前提を欠き、採用するを得ない。
 同第二点について。
 論旨は、事実誤認の主張であつて、上告適法の理由に当らない。
 被告人本人の上告趣意について。
 論旨はすべて弁護人原田香留夫、同荒木宏、同神田昭二の上告趣意を引用するも
のであるから、これに対する当裁判所の判断も右上告趣意に対する判断を引用する。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三九年六月三〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    田   中   二   郎

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