弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
 控訴人は、「一 原判決を取消す。二 被控訴人らは、その製造または販売にか
かる食酢につき、「くろず」、「黒酢」、及び「くろ酢」、その他「くろず」、
「黒酢」、及び「くろ酢」を付加して表示する商標を使用し、またはこれを使用し
た食酢を販売拡布もしくは輸出してはならない。三 被控訴人らの占有する「くろ
ず」、「黒酢」、及び「くろ酢」、その他「くろず」、「黒酢」、及び「くろ酢」
を付加して表示する商標、及びこれらの商標を使用した看板、標識、容器、包装
紙、印刷物の占有を解いて、申請人の委任する執行官にこれが保管を命ずる。四 
右執行官はその保管にかかる看板、標識、容器、包装紙、印刷物につき、被控訴人
らが前項の各商標を抹消削除する旨申し出たときはこれを許し、当該物件に対する
保管を解くことができる。五 前二項の場合において執行官は、その保管にかかる
ことを公示するため適当な方法をとらねばならない。六 訴訟費用は第一、二審と
も被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、主文同旨の判決を
求めた。
 当事者の主張は、当審における左記主張・反論を付加するほか、原判決事実摘示
のとおり(但し原判決三枚目表七行目から八行目の「申請人会社の代表取締役
【A】は」とあるのを「控訴人会社の初代代表取締役の一人である【A】(昭和六
〇年一○月一九日死亡)は」と訂正)であるからこれを引用する。
(控訴人の主張)
一 控訴人が使用している「くろず」の名称は、福山町一帯において「あまん」と
通称され来つた天然米酢を、控訴人が健康食品として商品化するにあたり名付けた
名称であり、従来全く使われたことのない新規な名称である。控訴人の米酢は、昭
和五二年三月から「坂元のくろず」の商品名で、ほぼ六年間に亘り独占的に宣伝販
売されて来た結果、今日取引界において「健康酢」といえば「くろず」を指し、
「くろず」は健康酢の代名詞ともなつて、健康食品としての特別顕著性を取得して
いる。おおよそ、商品の名称であつても、それが未だ一般に知られず、且つ同業者
間においても使用する者がない場合には、商標機能を有するものというべきであ
り、右事実に鑑みれば、正にその場合に該当する。
二 特許庁が控訴人の「海蔵くろず」なる商標の出願を拒絶したのは、商標法四条
一項一六号によつてであり、三条一項一号によつてではない。原審認定はこの点を
誤つている。ある名称が普通名称であるか否かと、品質の誤認を生ずるおそれがあ
るか否かとは明確に区別すべきであり、ある商品の普通名称を示す語が、他の商品
の商標として使用されるときは常に品質の誤認を生ぜしめるおそれありと機械的に
いつてしまうことはできない。
(被控訴人らの反論)
一 「くろず」「黒酢」が法二条一項一号の普通名称であることは従来述べたとお
りである。控訴人が使用して来た商品名は単なる「くろず」ではなく「坂元のくろ
ず」である。
二 特許庁の拒絶理由は三条一項一号を直接の根拠とはしていないが、四条一項一
六号を導き出す前提として「黒酢」「くろず」が黒味を帯びた食酢の普通名称であ
ることを認めた-だからこれをくろず以外の指定商品(梅酢、リンゴ酢等等、食酢
一般)に使えば品質の誤認を生ずるものとしたのである。若し控訴人が指定商品を
「くろず」に限定補正すれば拒絶理由は解消し登録される(疎乙B第四一号証)
が、それによつても他人の「海蔵くろず」の使用を禁じ得るに止まり、「黒酢」
「くろず」の使用を禁ずることはできない。
証拠関係(省略)
       理   由
一 当裁判所は、当審における新たな証拠調の結果を参酌してもなお、控訴人の本
件仮処分申請はいずれも失当として却下を免れないものと判断するが、その理由
は、次に付加、訂正するほか、原判決の理由説示記載のとおりであるから、これを
引用する。
1 原判決一九枚目表一一行目から一二行目にかけて「一人である」とあるを「一
人であつた」と改め、同二〇枚目表二行目「就任し」の次に「(【A】は昭和六〇
年一〇月一九日死亡)」を挿入する。
2 同二〇枚目裏三行目「被申請人森産業」とあるを「訴外森産業」と改める。
3 原判決の理由五を(二一枚目表一一行目から二二枚目裏一〇行目まで)次のと
おり変更する。
「五 被申請人らは、同人らの使用するクロズという名称はいわゆる普通名称の普
通使用である旨主張するので、これについて判断する。
(一) 法二条一項一号にいう普通名称とは取引界において商品の一般的名称であ
るとして通用しているものをいい、言語構成上性状、品質、機能等を説明的に表現
するものは、誰が最初にそれを使用し始めたかを問わず、普通名称と認めるべきも
のであり、また普通に使用せられる方法とは普通名称使用の態様が一般取引上普通
に行われる程度のものであることを指すというのが相当である。
(二) (1) 成立に争いのない疎乙A第四号証の一ないし三(同B第三号証)
によると、昭和五六年七月発行の日本醸造協会雑誌に「鹿児島では食酢のことをア
マンといい、福山米酢は酢の代名詞でもあつたが、これを数年間醸成して着色の進
んだものを黒酢(クロス)」ともいつていた」と記載されていることが、(2) 
弁論の全趣旨により成立を認め得る同第五号証の一、二によると、昭和五七年七月
頃玄米酢が既に「黒酢」とも呼称されていたことが、(3) 弁論の全趣旨により
成立を認め得る同第七号証の一、二(同B第三三号証)によると、昭和五八年九月
開催の醸造に関するシンポジユウム(日本醸造協会)の席上、前(1)認定記載同
旨の報告がなされたことが、(4) 成立に争いのない疎乙B第一五ないし一七、
一九号証、弁論の全趣旨により成立を認め得る同第一〇及び第一九号証などによる
と、それらはいずれも最近の発行にかかる雑誌、書物類ではあるが「黒酢」が天然
米酢の別称として慣用されていることを報じ又はその事実を前提とする記述がなさ
れているが、それら各記事の性格に照らし、前認定の控訴人が「坂元のくろず」
「薩摩黒酢」を使用し来つたことによる影響を受けたとは認め難いことが、それぞ
れ一応認められる。
(三) 成立に争いのない疎乙B第二二、二三号証、第二六号証の一、二、第二七
号証の一ないし五、官署作成部分の成立について争いがなく、その余の部分は弁論
の全趣旨により真正に成立したものと認められる疎乙B第二四、第二五号証の各
一、二、及び被控訴人福山酢醸造代表者尋問(原審)の結果によれば、被控訴人福
山酢醸造が事実摘示欄第二、三1(二)で主張する事実、すなわち、控訴人会杜は
昭和五五年六月一二日、特許庁に対し、指定商品及び商品の区分を「第三一類、調
味料、香辛料、食用油脂、乳製品(その後「食酢」のみに補正)、商標を前記
【A】の名を冠して「海蔵くろず」とする商標登録出願をしたこと、右出願は一旦
出願公告され公衆審査にかけられたところ、「くろず」は黒味を帯びた食酢の性状
を表現する普通名称であることなどを理由にダイオー株式会社外一名から異議申立
がなされたこと、特許庁は昭和五八年一一月二九日、右出願商標は「その構成中の
『くろず』は福山地方で玄米から作られる醸造酢は、その原料名を付して玄米酢と
呼はれると共に、黒味を帯びていることから、黒酢(くろす、くろず)と呼ばれて
いる。してみれば『くろず』は黒味を帯びた食酢を表わす名称であるから、これを
本願の指定商品(食酢)中、くろず以外の商品に使用するときは、商品の品質につ
いて誤認を生じさせるおそれがある」との理由で商標法四条一項一六号に基づき拒
絶査定したこと、これに対し控訴人会社は不服の審判を請求し、その理由中におい
て黒味を帯びた食酢が存在し「黒酢」と一般に呼ばれていることまでをも否定する
ものではなく、これまで平仮名で「くろず」と表示されたことはないから申請人の
出願は認められるべきであると主張したが、請求の理由を記載した補正書が指定期
間を徒過して提出されたため不受理処分とされたことが、一応認められる。(なお
控訴人は右審判請求の理由に関し、疎甲第三〇ないし三三号証、同第三五号証を援
用して、それが錯誤に基づくものである様に疎明するけれども、右各証拠はいずれ
も、本紛争発生後、控訴人の意を承けて作成された疑がありたやすく採用し難いの
みならず、右の如き重要な事柄につき主張の点に錯誤があつたとは認められな
い。)
(四) さらに前記(二)項掲記の各証拠並びに成立に争いのない疎乙B第四三号
証、同第四四号証の一、二及び原審における控訴会社代表者尋問の結果により真正
に成立したものと認められる疎甲第三三号証の三によれば、現在では、本件訴訟に
現れた範囲においても、当事者の他に米を原料とする食酢あるいはこれを含有する
商品の容器、包装、宣伝に「クロズ」の語を用いている業者の数は一〇を下らない
こと、控訴人においても単なる「くろず」ではなく「坂元のくろず」の表示を用い
ていること、「クロズ」を健康食品としての米を原料とする醸造酢の総称と理解さ
れている状況も窺われることが一応認められる。
(五) 前記(一)の基準に従い、右(二)ないし(四)認定の事実に原審証人
【B】の証言及びこれにより成立を認め得る疎乙A第一号証(同B第八、C第五号
証)と、「黒酢(クロズ、クロス)」が言語構成上黒味を帯びた食酢の性状を極め
て直截に表現する言葉であることを併せ考慮すると、「黒酢(クロズ、クロス)」
は、本件使用の対象となつている天然醸造米酢を指すものとしても、当該商品の普
通名称に該当するといわざるを得ず(「黒酢」が他に、「コンブまたはシイタケの
黒焼きにしたものをすりつぶして酢を加えたもの」の総称としての意味を有するこ
と〔疎乙A第三号証、同B九号証の二、同C二号証の二〕はこの判断の妨げとなら
ない)、被控訴人らはこれを食酢に普通に用いる方法でもつて使用していると認め
られるから、法二条一項一号により、法一条の適用が排除され、控訴人会杜は被控
訴人らの右使用を妨げることができないものといわなければならない。」
4 控訴人の当審主張に対する判断。
(一) 前認定(原判決理由二、三項)によれば、天然醸造米酢の健康食品性に着
目し、これに「黒酢」「くろす」をその構成の一部とする商標を付して宣伝販売し
た者は【C】ないしさかもと薬品を蒿矢とし、被控訴人らは、控訴人会社が「坂元
のくろず」「薩摩黒酢」の販売を始め、その販売実績を相当程度挙げた五、六年後
に後発参入した者らであることは控訴人主張のとおりであるが、宣伝販売において
健康食品性が強調され、世上天然醸造米酢の健康食品性に更めて注目を集めさせた
ことがあるにしても(もつとも、古来食酢が一般に保健上著効を有することは世間
一般に知られていたところでもあるが)、薬品として売られたわけではなく、その
呼称として食酢の一性状を表わす普通名称がそのまま用いられたに過ぎない本件の
場合、以後消費者が「黒酢(くろず、くろす)」につき、その健康食品性に着目し
てその購買することであつても、なお右呼称が先に認定した普通名称性を失い、健
康食品としての天然醸造米酢についての特別顕著性を取得するものとは解せられな
い。
(二) 特許庁の拒絶査定理由に対する原審認定の誤解をいう部分は、右拒絶査定
理由は前3(三)認定のとおりであつて、その解釈は前掲被控訴人らの反論のとお
りであり、また「食酢」と「健康食品たる天然醸造酢」が、黒酢(くろず、くろ
す)の呼称との関係で、別個の商品であることを前提とする控訴人の主張は前説示
のとおり相当でない。
 よつていずれも理由がない。
二 そうすると、控訴人の本件申請を却下した原判決は相当であつて、本件控訴は
理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五
条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 潮久郎 吉村俊一 栗田健一)

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