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平成21年9月3日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成20年(ワ)第13503号商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成21年6月16日
判決
原告A
同訴訟代理人弁護士岩淵秀道
被告株式会社B
同訴訟代理人弁護士田城讓
同山岡直人
主文
1本件訴えのうち,別紙商標目録記載の各商標に係る商標権が原告に帰属
することの確認を求める部分を却下する。
2原告のその余の訴えに係る請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
(1)別紙商標目録記載の各商標に係る商標権が原告に帰属することを確認す
る。
,,,(2)被告は原告に対し別紙商標目録記載の各商標に係る商標権について
移転登録手続をせよ。
(3)被告は,別紙商標目録記載の各商標を使用してはならない。
(4)訴訟費用は,被告の負担とする。
2被告
(1)原告の請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は,原告の負担とする。
第2事案の概要
1請求原因
(1)平成12年12月14日,原告は,被告に対し,別紙商標目録記載の
各商標(以下「本件商標」という)に係る商標権(以下「本件商標権」。
という)を,450万円で譲渡し(以下「本件譲渡」という,移転登。。)
録手続を行った。
(2)本件譲渡に際し,原告は,被告との間で,原告の意思表示により,本件
商標権を買い戻せることを合意した(以下「本件合意」という。。)
(3)平成20年9月29日,原告は,被告に対し,本件商標権を買い戻すと
の意思表示をした。
(4)被告は,本件商標を使用している。
(5)被告は,本件商標権が原告に帰属することを争っている。
(6)よって,原告は,被告に対し,本件商標権に基づき,本件商標権が原告
に帰属することの確認,本件商標権の移転登録手続,本件商標を使用しな
いことを求める。
2請求原因に対する認否
(1)請求原因(1)及び(3)は認める。
(2)請求原因(2)は否認する。
本件譲渡の際,原告は,本件商標権を買い戻す意思も能力もなく,その
ため,本件譲渡の際に作成された覚書(以下「本件覚書」という)の権。
利行使期間欄も白地となっているのであり,本件合意は成立していない。
そのため,これまで原告が買戻しを求めたこともなかった。
3抗弁
(1)期間経過による買戻権の消滅
本件合意には買戻期間の定めがないから,買戻期間は5年であるところ
(民法580条3項,本件合意時から5年が経過した。)
(2)買戻権の商事消滅時効
被告は株式会社であるが,本件合意時から5年が経過した。
被告は,原告に対し,平成21年1月23日の本件口頭弁論期日におい
て,上記時効を援用するとの意思表示をした。
4抗弁に対する認否
(1)抗弁(1)は否認する。
ア買戻期間の定めがないのは,永続的に買戻可能であることを合意した
からである。
イ民法580条3項は不動産に関する買戻しの規定であり,本件には適
用がない。
(2)抗弁(2)は否認する。
ア買戻権は形成権であるから,原告が買戻しの意思表示をした平成20
年9月29日から改めて形成後の権利について時効が起算される。
イ本件譲渡は,譲渡金額が低廉であることから窺われるように,被告に
本件商標権を一時預けるための手段に過ぎないから,原告の買戻権は,
消滅時効になじまない。
第3当裁判所の判断
1確認の利益について
原告は,本件商標権について,原告に帰属することの確認と,原告への移
転登録手続との双方を求めているところ,これは,同一の権利について,確
認判決と給付判決とを求めるものである。
しかしながら,本件において,原告は,本件商標権の移転登録手続請求権
について給付判決が得られれば,自己の法律上の地位に係る不安定さを解消
することができるから,これに加え,本件商標権の帰属について確認を求め
る利益はないというべきである(商標権は設定の登録により発生し(商標法
18条1項,その移転は,登録しなければ,その効力を生じない(商標法)
35条,特許法98条1項1号。)。)
したがって,本件訴えのうち,本件商標権の帰属の確認を求める部分は,
確認の利益がなく,不適法である。
2請求原因について
(1)請求原因(1)及び(3)の事実は,当事者間に争いがなく,請求原因(5)
の事実は,弁論の全趣旨から認められる。
請求原因(4)の事実について,証拠(甲9,乙1)及び弁論の全趣旨に
よると,被告は,他の服飾メーカーに本件商標の使用を許諾し,ロイヤリ
ティ収入を得ていることが認められるが,被告自らが,本件商標を直接使
用している事実を認めることはできない。
(2)請求原因(2)の事実について
真正に成立したことに争いがない本件覚書(甲2)によれば,請求原因
(2)の事実が認められる。
被告は,本件合意の成立を否認するが,被告代表者は,本件合意に係る
条項5条が存在することを認識した上で本件覚書を作成しており乙(),(
1,本件合意どおりの意思表示をしたといえる。また,同条項では,買)
(。),戻しの始期権利行使期間ではないを定める欄が空欄になっているが
このことは,始期を定めない合意がされたことを意味するに過ぎず,本件
合意の成立を否定する事実とはいえない。
被告は,その他,本件譲渡前の事情として,原告が,訴外会社から本件
商標権の仮差押を受けたりしたため,被告から1000万円を借り入れる
,,,など当時は本件合意が行われるような状況ではなかったと主張するが
これらの事情があったからといって,本件合意の成立についての認定を覆
すに足りない。
3抗弁(2)について
(1)上記のとおり,本件合意においては,買戻しの始期が定められていない
から,原告は,本件商標権の買戻請求権(本件合意が買戻特約であること
は,被告もこれを争っていない)を,本件合意時から行使可能であった。
といえる。
そして,買戻請求権は,一方的な意思表示により法律効果を発生させる
形成権であるが,債権に準じるものとして,消滅時効の規定の適用を受け
ると解すべきである(無断転貸を理由とする解除権についての最高裁昭和
62年10月8日第一小法廷判決・民集41巻7号1445頁,借地法上
の建物買取請求権についての最高裁昭和42年7月20日第一小法廷判
決・民集21巻6号1601頁など参照。)
また,本件譲渡が被告に本件商標権を一時預けるための手段であったと
しても,被告は,本件商標権の譲渡を受けた者として,本件商標の使用を
他の服飾メーカーに許諾しているのであり,その地位をいつまでも不安定
な状態に置くことは相当でないから,原告の買戻請求権が消滅時効になじ
まないということもできない。
(2)そして,被告が株式会社であること,時効の援用をしたことは,いずれ
も当裁判所に顕著であるから,原告の買戻請求権は,商行為により生じた
ものとして,本件合意がされた平成12年12月14日から5年を経過す
ることにより,時効消滅したといえる。
(3)よって,抗弁(2)は理由がある。
4結論
以上のとおりであるから,原告の訴えのうち,本件商標権が原告に帰属す
ることの確認を求める部分は,不適法であるから却下し,その余の訴えに係
る請求はいずれも理由がないから,棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官山田陽三
裁判官達野ゆき
裁判官北岡裕章
(別紙)
商標目録
1登録番号第2088729号
登録年月日昭和63年10月26日
商品の区分第21類
指定商品装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉およびその模造品,
造花,化粧用具
2登録番号第2133525号
登録年月日平成1年4月28日
商品の区分第23類
指定商品時計,眼鏡,これらの部品および附属品
3登録番号第2151801号
登録年月日平成1年7月31日
商品の区分第22類
指定商品はき物,かさ,つえ,これらの部品および附属品
4登録番号第2170296号
登録年月日平成1年9月29日
商品の区分第4類
指定商品せつけん類,歯みがき,化粧品,香料類
5登録番号第2180475号
登録年月日平成1年10月31日
商品の区分第25類
指定商品紙類,文房具類
6登録番号第1688813号
登録年月日昭和59年5月29日
商品の区分第17類
指定商品被服,布製身回品,寝具類
7登録番号第4255166号
登録年月日平成11年3月26日
商品の区分第28類
指定商品運動用具
8登録番号第1945418号
登録年月日昭和62年4月30日
商品の区分第17類
指定商品被服,布製身回品,寝具類
9登録番号第2133524号
登録年月日平成1年4月28日
商品の区分第23類
指定商品時計,眼鏡,これらの部品および附属品

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