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平成24年1月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成22年(ワ)第32483号商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成23年12月2日
判決
富山市<以下略>
原告株式会社カムイワークスジャパン
同訴訟代理人弁護士稲元富保
同訴訟代理人弁理士宮田信道
富山市<以下略>
被告株式会社中条
同訴訟代理人弁護士平尾正樹
同補佐人弁理士猪狩充
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,ゴルフクラブに,別紙被告標章目録記載1,3,5の各標章を付し
て,譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,電気通
信回線を通じて提供してはならない。
2被告は,キャディバッグに,別紙被告標章目録記載3の標章を付して,譲渡
し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,電気通信回線を
通じて提供してはならない。
3被告は,ゴルフクラブ及びキャディバッグに関する広告に,別紙被告標章目
録記載1ないし4の各標章を付して展示し若しくは頒布し,同広告を内容とす
る情報に上記各標章を付して電磁的方法により提供してはならない。
4被告は,その所有し,占有する別紙被告標章目録記載1,3,5のいずれか
の標章を付したゴルフクラブ,同目録記載3の標章を付したキャディバッグ及
び同目録記載1ないし4のいずれかの標章を付したゴルフクラブの広告用パン
フレットを廃棄せよ。
5被告は,原告に対し,8000万円及びこれに対する平成22年9月11日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,「KAMUI」の商標(商品及び役務の区分は第28類,指定商品
は運動用具)を有する原告が,被告が同商標と同一又は類似の標章を付したゴ
ルフクラブ及びキャディバッグの譲渡等を行い,これらの商品の広告に同標章
を付して展示等をしていることが原告の商標権を侵害するとして,商標法(以
下単に「法」という。)36条1項に基づく被告の上記侵害行為の差止め及び
同条2項に基づく上記各商品の廃棄並びに不法行為に基づく損害賠償を求める
事案である。
1争いのない事実
(1)当事者
ア原告は,ゴルフ用具の製造及び販売などを業とする株式会社である。原
告の旧商号は,株式会社北陸ゴルフ製作所であり,その後,商号が株式会
社カムイワークスに変更され,平成9年10月22日に,現在の商号であ
る株式会社カムイワークスジャパンに変更された。
イ被告は,ゴルフ用品の製造及びスポーツ用品の販売などを業とする株式
会社である。
(2)原告は,次の商標権(以下,「本件商標権」といい,その登録商標を
「本件商標」という。)を有する。
登録番号第5142685号
出願年月日平成19年4月23日
登録年月日平成20年6月20日
公報発行日平成20年7月22日
商品及び役務の区分第28類
指定商品運動用具
登録商標KAMUI(標準文字)
(3)被告は,遅くとも平成20年7月23日から,被告が製造するゴルフク
ラブ及びキャディバッグ(以下,これらを総称して「被告製品」ということ
がある。)に,別紙被告標章目録記載1ないし5記載の各標章(以下,それ
ぞれ「被告標章1」などといい,これらを総称して「被告各標章」というこ
とがある。)の少なくともいずれかを付して,譲渡し,引き渡し,譲渡若し
くは引渡しのために展示し,輸出し,電気通信回線を通じて提供し,また,
被告製品に関する広告に被告各標章の少なくともいずれかを付して展示し若
しくは頒布し,同広告を内容とする情報に上記各標章を付して電磁的方法に
より提供している。例えば,被告は,ゴルフクラブに被告標章1,3又は5
を付し,キャディバッグに被告標章3を付し,また,広告用パンフレットに
被告標章1ないし4のいずれかを付している。
(4)被告標章1ないし3は,いずれも本件商標と同一又は類似の商標である。
2争点
(1)本件商標と被告標章4及び5は同一又は類似の商標であるか(争点1)
(2)被告に法32条1項の先使用権が認められるか(争点2)
(3)本件商標は,商標登録無効審判により無効にされるべきもので,原告の
本件商標権の行使は許されないか(争点3)
ア本件商標は法4条1項7号に該当するか(争点3-1)
イ本件商標は法4条1項10号に該当するか(争点3-2)
(4)原告の本件商標権の行使が権利の濫用に当たり許されないか(争点4)
(5)原告の損害(争点5)
3当事者の主張
(1)本件商標と被告標章4及び5は同一又は類似の商標であるか(争点1)
(原告の主張)
ア被告標章4は,ゴシック体に相当する書体で「KAMUITypho
onPro」の英文字を書して成るところ,「KAMUI」と「Typh
oonPro」との間には間隔が空いており,かつ,一語とするには長い
語であることからすれば,両者は分離して観察されることも多いというべ
きであるので,「カムイタイフーンプロ」の自然的称呼とともに「カム
イ」の自然的称呼も生じる。
よって,被告標章4は,本件商標と同一又は類似の商標である。
イ被告標章5は,被告標章3と「PRO」を二段に書して成るものであり,
被告標章3の部分のみ分離観察されるため,「カムイプロ」の自然的称呼
とともに「カムイ」の自然的称呼も生じる。
したがって,被告標章5は,本件商標と同一又は類似の商標である。
(被告の主張)
被告標章4及び5は,いずれも本件商標と非類似である。
(2)被告に法32条1項の先使用権が認められるか(争点2)
(被告の主張)
ア被告の「KAMUI」商標の周知性
(ア)被告は,平成8年ころから,ゴルフクラブに「KAMUI」,「T
YPHOONPRO」あるいは両者を結合した「KAMUITYPH
OONPRO」の使用を開始し,現在も使用を継続している。なお,被
告標章1ないし3はいずれも「KAMUI」商標であって,社会通念上
同一の商標である。被告標章4は,被告標章1又は2に「Typhoo
nPro」を結合して成り,被告標章5は,被告標章3に「PRO」を
二段併記して成り,いずれも本件商標と非類似であるし,仮にこれらを
2個の商標とみたとしても,被告標章4及び5の「KAMUI」商標は,
被告標章1ないし3と社会通念上同一の商標である。
よって,被告は,社会通念上同一の商標である「KAMUI」商標の
使用実績を主張,立証する。
(イ)被告が製造するゴルフクラブには,すべて「KAMUI」商標が付
されている。被告は,10年以上にわたって「KAMUI」商標を使用
してきており,「KAMUI」のクラブの総販売本数は7万本以上であ
って,その販売額は年間1億2000万円ないし2億円である。また,
「KAMUI」のクラブは,多数の雑誌に掲載され,多くのプロに使用
されている。したがって,被告の「KAMUI」商標は,法32条1項
の周知性の要件を満たす。
なお,全国において被告の製造するゴルフクラブのシェアが0.3%
程度であったとしても,法32条1項の周知性の要件は満たされる。
(ウ)原告は,被告との共同事業を解消した後,商品名を「カムイツア
ー」に変更し,これを使用してきた。原告は,「KAMUI」と非類似
で,社会通念上同一とはいえない「KAMUITOUR」の使用実績を
立証しているだけである。
イ「KAMUI」の命名者は,被告の代表者であり,原告と被告が共同企
業体を解消した際,「カムイ」の新製品については,各々の会社が権利を
有するとの約束の下,被告は,遅くとも平成8年には「KAMUI」商標
の使用を開始している。他方,原告が本件商標の使用を開始したのは,本
件商標が設定された平成20年6月以降であるから,被告に不正競争の目
的がなかったことは明らかである。
ウ被告は,本件商標が出願された平成19年4月23日以前から現在至る
まで,継続して「KAMUI」商標を使用してきた。
エ以上によれば,被告には,「KAMUI」商標について法32条1項の
先使用権が認められる。
(原告の主張)
ア被告各標章に周知性が認められないこと
(ア)先使用権は当該商標が周知であるときに認められるものであり,被
告標章4及び5の使用実績は,「KAMUI」単独の商標の使用実績を
立証するものではない。また,「KAMUI」と「KAMUIPRO」
は別異のものであり,「KAMUIPRO」の使用実績は,「KAMU
I」の使用実績を立証するものではない。
(イ)被告が提出した証拠によっても,被告標章1ないし5がゴルフクラ
ブ,キャディバッグについて,被告の業務に係る商品を表示するものと
して,需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
(ウ)原告は,被告との共同事業を解消した後,「KAMUITOUR」,
「カムイツアー」の標章を付したゴルフクラブの販売を開始し,平成8
年から平成11年まで集中的な宣伝活動を行うことによって,ゴルフク
ラブ業界において「カムイ」というときは,原告のクラブを指すほどま
でに認知された。その後も,原告は,継続して上記標章を付したゴルフ
クラブの宣伝活動を行っている。
したがって,ゴルフクラブについて「カムイ」の称呼が生じる「KA
MUI」の文字列を含む標章は,原告のクラブを表示するものとして需
要者の間に周知になっていることが明らかである。被告は,「KAMU
I」の文字列を含む標章やカムイの称呼を持つ標章の周知主体ではない。
(エ)2009年版ゴルフ産業白書によれば,国内には145のゴルフ用
品メーカーがあり,そのうち上位24社を除く121社の出荷金額のシ
ェアは7.7%,出荷数量のシェアは12.8%である。
被告の主張によれば,2007年度の被告の出荷金額のシェアは0.
3%,出荷数量のシェアは0.3%であり,この程度のシェアでは,全
国を市場とするゴルフクラブの市場において,被告の標章が周知である
とは到底認められない。
なお,原告の2007年度の出荷金額のシェアは0.27%,出荷数
量のシェアは0.4%であるが,上記のとおり,原告はこれまで大量の
宣伝広告行為や販売によって「カムイ」ブランドを確立してきたのであ
って,2007年度において被告と同程度のシェアであっても,原告が
「カムイ」の周知主体であることに影響を与えるものではない。
イ本件商標の出願前における,被告の「KAMUI」標章の使用の事実に
ついては知らない。
ウ被告は,被告と株式会社卑弥呼(以下「卑弥呼」という。)との間の
「CAMUI」商標についての使用許諾契約が平成17年2月末日をもっ
て終了しているにもかかわらず,標章「KAMUI」等の使用を継続し,
卑弥呼の商標権を故意に侵害する行為を継続的に行っている。このような
被告が,正当な手続を経て商標登録を受けた原告に対し,先使用権を主張
することは,権利の濫用である。
(3)本件商標は,商標登録無効審判により無効にされるべきもので,原告の
本件商標権の行使は許されないか(争点3)
ア本件商標は法4条1項7号に該当するか(争点3-1)
(被告の主張)
原告は,被告が「KAMUI」商標を使用してゴルフクラブを販売して
いる事実を知りながら,被告のライセンサーである卑弥呼が有する「CA
MUI」の商標が取り消しうるものであることに目を付け,これを取り消
すとともに,本件商標を出願してその登録を得ており,これは他人の商標
の剽窃に該当する。しかも,原告は,被告との間で,共同企業体を解消す
るに当たり,原告は「KAMUITOUR」を,被告は「KAMUIPR
O」,「KAMUI」を使用することを約束したにもかかわらず,その約
束に反して本件商標を出願し,その登録を得たものである。そして,原告
は,その後,被告標章2と酷似した書体の「KAMUI」商標を,被告が
使用しているくさび形図形と同色のくさび形図形を併記して使用し始めた。
以上の原告の行為は,被告の業務を妨害し,その業務上の信用を横取り
することを目論んだと評価するしかなく,公正な競業秩序を蹂躙するもの
であるから,本件商標は,法4条1項7号に該当し,商標登録無効審判に
よって無効とされるべきものである。
(原告の主張)
(ア)原告は,「KAMUITOUR」,「KAMUIWORKS」など
「KAMUI」を含む標章を平成8年当時から使用しており,「KAM
UI」の標章について商標権を取得するため,不使用取消審判を請求し,
本件商標権を取得したことについて,何ら違法はない。
(イ)むしろ,被告は,被告と卑弥呼との間の「CAMUI」商標につい
ての使用許諾契約が平成17年2月末日をもって終了しているにもかか
わらず,標章「KAMUI」等の使用を継続し,卑弥呼の商標権を故意
に侵害する行為を継続的に行っていたにもかかわらず,本件商標の無効
を主張している。
(ウ)原告は,平成9年に,韓国で,「KAMUI」,「KAMUITO
UR」,「KAMUIPRO」の商標の出願を行ったところ,既に登録
されている株式会社プラコの「KAMUIPRO」の商標と類似である
として拒絶された。そこで,韓国において,原告の代理店が上記「KA
MUIPRO」の商標について無効審判の申立てをし,平成13年4月
に無効審決が確定した。しかし,その1年後の平成14年5月に,被告
が韓国で商標「KAMUI」を出願し,平成15年9月に商標登録がさ
れた後,被告は,原告の「KAMUITOUR」を付したゴルフクラブ
を取り扱う店舗に対して,販売の中止を要求する警告等を行ったため,
原告は韓国の市場において多大な損害を被った。そこで,原告は,日本
でも同様の事態が生じることを危惧した。
また,原告は,アメリカや中国にもゴルフクラブを輸出していたため,
法改正により,「輸出」も被告に妨害されるおそれが生じた。
さらに,原告のゴルフクラブは,「カムイ」ブランドのゴルフクラブ
として需要者,取引者に広く認識されているので,上記韓国における被
告の行為を受けて,「カムイ」ブランドを保護する必要性が生じた。
このように,原告は,標章「KAMUI」の商標登録を受ける必要性
に迫られたため,卑弥呼の「CAMUI」に対して不使用取消審判を請
求し,その結果,不使用取消しが認められ,本件商標の登録が受けられ
たのである。
他方,被告は,「KAMUIPRO」の商標権を有しており,この商
標権を使用して,従前どおりゴルフクラブを製造,販売することが継続
できるから,被告の不利益はさしたるものではない。
(エ)よって,本件商標は,法4条1項7号に違反して登録されたもので
はない。
(原告の主張に対する被告の反論)
(ア)被告は,卑弥呼との間の2回目の「CAMUI」商標の使用許諾契
約が終了した後,「KAMUI」を被告製品の統一ブランドとして使用
することとし,単独のゴルフクラブの名称としては使用しないこととし
た。このような事情から,被告は,上記契約の更新をしなかったが,卑
弥呼もこのことを了知し,何ら異議を述べることはなかった。したがっ
て,平成17年3月1日から平成20年3月18日まで,被告は,卑弥
呼から黙示の許諾を得て「KAMUI」を使用してきたと評価できる。
(イ)韓国において,被告もその販売代理店も,「KAMUIPRO」の
商標権を根拠に原告の「KAMUITOUR」を排除しようとしたこと
は一度もなかった。しかし,原告は,韓国において,被告が使用してい
た「KAMUIPRO」,「KAMUI」の商標を出願し,被告の販売
代理店の「KAMUIPRO」の商標を無効にし,被告の「KAMUI
PRO」,「KAMUI」のゴルフクラブを韓国市場から排除しようと
した。このような経緯があったため,被告は,韓国で「KAMUI」商
標が設定された後,原告の「KAMUITOUR」の使用に異議を述べ
ることとなり,被告名義で販売店に警告状を送付したのである。以上の
経緯に対して,原告は逆恨みをし,日本において被告の「KAMUI」
製品を排除することを企て,不使用取消審判を請求して,卑弥呼の「C
AMUI」商標を取り消し,自ら「KAMUI」商標の登録を得,被告
のクラブと酷似した「KAMUI」のクラブの製造,販売を開始し,被
告の「KAMUI」のクラブを日本市場から排除する目的で本件訴訟を
提起したのである。
イ本件商標は法4条1項10号に該当するか(争点3-2)
(被告の主張)
上記(2)(被告の主張)ア(イ)のとおり,被告の「KAMUI」商標は,
ゴルフ用品の需要者の間で広く知られていたから,本件商標の登録は,法
4条1項10号の規定に違反してされたものであり,商標登録無効審判に
よって無効とされるべきものである。
(原告の主張)
被告の主張は,争う。
被告は,本件商標に対して,無効審判を請求し(無効2009-890
077号),法4条1項10号違反等を主張したが,特許庁は,被告の請
求は成り立たないとの審決をし,この審決は確定している。
(4)原告の本件商標権の行使が権利の濫用に当たり許されないか(争点4)
(被告の主張)
上記(3)ア(被告の主張)で述べた事情によれば,原告による本件商標権
の行使は,権利の濫用に当たり許されない。
(原告の主張)
原告は,正当な手続と権利の行使を経て,本件商標権を取得したものであ
り,その行使が権利の濫用に当たることはない。
(5)原告の損害(争点5)
(原告の主張)
被告は,遅くとも平成20年7月23日から,被告各標章のいずれかを付
した被告製品を製造,販売している。被告製品の年間販売額は,2億円を下
らず,被告製品の利益率は20%を下らない。
そうすると,被告が,同日から平成22年7月末日までの約2年間で,被
告製品の譲渡によって得た利益は,8000万円(2億円×0.2×2)と
なる。
よって,原告の損害額は,法38条2項により,8000万円と推定され
る。
(被告の主張)
否認する。
第3争点に対する判断
1争点1(本件商標と被告標章4及び5は同一又は類似の商標であるか)につ
いて
(1)本件商標と被告標章4について
本件商標は,標準文字から構成される「KAMUI」の外観を有する商標
で,「カムイ」の称呼が生じる。その称呼である「カムイ」は,アイヌ語の
「神」を意味する語である(広辞苑第6版)ものの,このような意味が取引
者,需要者に浸透して良く知られていると認めるに足りる証拠はないから,
本件商標から特定の観念が生じるとまで認めることはできない。
これに対して,被告標章4は,ゴシック体に類した書体のアルファベット
で一列に表記された「KAMUITyphoonPro」の外観を有し,
「KAMUI」と「TyphoonPro」との間には空白があり,「KA
MUI」はすべて大文字で表記され,「TyphoonPro」は「Typ
hoon」の「T」と「Pro」の「P」のみが大文字で,ほかは小文字で
表記されている。このような外観からすれば,「KAMUI」の部分と「T
yphoonPro」の部分は不可分的に結合しているものとはいえないか
ら,両部分は分離して観察することが可能であり,かつ「KAMUI」の部
分は,後記2のとおり,被告のゴルフクラブ等を表示するものとして需要者
の間に広く認識されていたと認められるから,被告標章4の一部である「K
AMUI」を取り出して本件商標と比較し,その類否を判断することができ
るというべきである。そして,「KAMUI」の部分は,本件商標と外観が
類似し,本件商標と同一の「カムイ」の称呼が生じる。
よって,本件商標と被告標章4の「KAMUI」の部分とは外観が類似し,
称呼が同一であるから,本件商標と被告標章4とは,類似の商標であるとい
える。
(2)本件商標と被告標章5について
本件商標の外観,称呼,観念については,上記(1)で述べたとおりである。
これに対して,被告標章5は,ゴシック体に類した書体のアルファベット
で表記された「KAMUI」(「A」に該当する文字は,横線が省略されて
いる。)とゴシック体に類した書体のアルファベットで表記された「PR
O」が二列に表記され,「PRO」は「KAMUI」の下方の中央に位置し,
文字の間隔が「KAMUI」に比べると狭いという外観を有する。このよう
な外観からすれば,「KAMUI」の部分と「PRO」の部分とは不可分的
に結合しているものとはいえないから,両部分は分離して観察することが可
能であり,かつ,被告標章5の一部である「KAMUI」を取り出して本件
商標と比較し,その類否を判断することができるというべきことは,上記
(1)に説示したとおりである。そして,被告標章5の「KAMUI」の部分
は,本件商標と外観が類似し,本件商標と同一の「カムイ」の称呼が生じる。
よって,本件商標と被告標章5の「KAMUI」の部分は,外観が類似し,
称呼が同一であるから,本件商標と被告標章5とは,類似の商標であるとい
える。
2争点2(被告に法32条1項の先使用権が認められるか)について
(1)認定事実
争いのない事実,証拠(甲1~8,11の1~18,12~44,46~
51,54~86,95,96,97の1・2,98,乙1,2の1~4,
3,4の1~3,5の1・2,6,7,8の1・2,9,10の2,11の
1~4,12の1~7,13,14の1~5・7~16,15,16,18
の1・2,23の1・2,24の1~8,26,27の1~9,原告代表者
本人,被告代表者本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認めら
れる。
ア原告と被告との間の「KAMUI」に関する標章を巡る事実経過
(ア)原告と被告は,平成5年ころ,共同でゴルフクラブを製造,販売す
ることを計画し,平成6年2月1日,ゴルフクラブの開発,製造,販売
を目的とする共同企業体カムイクラフト(以下「カムイクラフト」とい
う。)を設立し,製造したゴルフクラブに「KAMUIPRO」(カム
イプロ)の名称を付けて販売した。そして,原告と被告は,同月28日,
共同で「KAMUIPRO」の商標を,第28類の運動用具で出願し,
同商標は,平成9年11月7日に登録された。
当時,カムイクラフトが製造したゴルフクラブ「カムイプロ300」
は,非常によく売れ,一大ヒット商品となった。
(イ)原告と被告は,平成7年2月21日,カムイクラフトによる共同事
業を解消し,カムイの新製品については,それぞれが権利を有すること,
カムイプロ300の金型については,それぞれが50%の権利を有する
ことを確認した。
(ウ)原告は,平成7年8月30日,カムイプロ300の部品を製造して
いた株式会社タカギセイコー(以下「タカギセイコー」という。)に対
し,今後カムイプロ300の金型を使用しないことを要求した。そこで,
被告は,同年10月,原告とタカギセイコーに対し,カムイプロ300
の金型の使用を妨害しないことを求める仮処分を富山地方裁判所に申し
立てた。この仮処分事件は,同年11月,和解によって終了し,被告と
タカギセイコーは今後もゴルフクラブの製作の取引を継続すること,タ
カギセイコーが製作するゴルフクラブヘッドにカムイクラフトの名称を
刻印しないことなどが確認された。
(エ)原告は,平成7年の秋ころ,取引先に対し,今後はゴルフクラブの
名称をカムイプロからカムイツアーに改め再出発を図ること,社名もカ
ムイワークスに変更することを通知し,その後,カムイツアーの名称を
付したゴルフクラブを製造,販売するようになった。なお,原告は,平
成7年8月24日に,「KAMUITOUR(標準文字)」の商標を第
28類の運動用具で登録出願し,これは平成9年12月26日に登録さ
れた。
他方,被告は,平成8年3月ころ,取引先に対し,原告と被告がカム
イプロのゴルフクラブを別々に販売することになった旨通知し,その後
も,カムイプロの名称を付したゴルフクラブの製造,販売を継続した。
(オ)有限会社カムイは,平成8年12月25日に設立され,被告代表者
の妻がその代表取締役に就任した。同社は,被告が製造するゴルフクラ
ブ等の販売を行った。
(カ)原告は,韓国で,平成9年1月25日,「KAMUI」,「KAM
UITOUR」,「KAMUIPRO」の商標を,指定商品をゴルフ
クラブ,ゴルフボール,キャディバッグとして出願した。しかし,韓国
では,被告の販売代理店であるキムズクラブの代表者Aと株式会社プラ
コが「KAMUIPRO」の商標を有しており,この商標と類似すると
して,上記出願は拒絶された。
(キ)原告の韓国における販売代理店である株式会社ユニオン産業は,平
成11年12月18日,上記(カ)の韓国におけるAらの「KAMUIP
RO」の商標に対し,無効審判を申し立て,平成12年7月27日,同
商標を無効とする審決がされ,その後,平成13年4月13日,同審決
に対する取消しの訴えが棄却され,同年5月5日,同審決は確定した。
(ク)被告は,平成12年1月14日,卑弥呼との間で,卑弥呼が有する
次の商標(以下「CAMUI商標」という。)について,商標使用許諾
契約を締結した。同契約において,卑弥呼は,被告に対し,CAMUI
商標について通常使用権を許諾し,使用商品はゴルフクラブ,使用期間
は平成11年3月1日から平成14年2月末日までの3年間,使用地域
は日本国内とされ,被告は,卑弥呼に対し,通常使用権の対価として2
40万円を支払った。なお,同契約において,被告は,卑弥呼に対して,
CAMUI商標の有効性を争わないことを約束していた。
登録番号第2280009号
登録年月日平成2年11月30日
商品の区分旧第24類(その後,第15類,第25類及び第28類
に書換登録された。)
登録商標CAMUI(標準文字)
(ケ)被告は,上記使用許諾契約を締結したころから,ゴルフクラブ等に
「KAMUI」の標章を使用し始めた。原告は,程なくして,被告の上
記標章の使用について認識したものの,被告に対して特段異議を述べる
ことはなかった。
(コ)被告は,平成14年3月1日,卑弥呼との間で,CAMUI商標に
ついて,上記(ク)の商標使用許諾契約とほぼ同じ内容の契約を締結し,
使用期間は,平成14年3月1日から平成17年2月末日までとされ,
被告は,卑弥呼に対し,通常使用権の対価として210万円を支払った。
なお,被告は,上記契約を,平成17年3月以降,卑弥呼との間で更
新しなかった。しかしながら,その後においても,卑弥呼から,被告が
「KAMUI」の標章を使用することについて,異議が述べられること
はなかった。
(サ)被告は,Aから,上記(キ)のとおり,韓国における「KAMUIP
RO」の商標が無効とされたとの連絡を受けたため,韓国で「KAMU
I」の商標を登録する方法を検討し,最終的に,平成14年5月17日,
「KAMUI」の商標をゴルフクラブ,ゴルフボール,キャディバッグ
等を指定商品として商標登録出願し,平成15年9月2日,同商標は韓
国において登録された。
上記商標が登録された後,被告は,キムズクラブと相談の上,韓国の
ゴルフクラブの販売店に対し,原告の「KAMUITOUR」の商標を
付したゴルフクラブを取り扱わないことを求めた。
(シ)原告は,平成19年4月23日,本件商標を登録出願した。そして,
原告は,同月24日,CAMUI商標の第25類「運動用特殊衣服,運
動用特殊靴」及び第28類「運動用具」について,過去3年間使用され
た事実が認められないとして,商標登録取消しの審判を請求し,平成2
0年3月18日,上記指定商品についての登録を取り消す審判がされた。
なお,被告は,上記審判がされたことを認識していなかった。
そして,本件商標は,平成20年6月20日に登録された。
(ス)原告は,平成21年4月3日,被告に対し,今後第28類の運動用
具について,「KAMUI」単独での表示を使用することを禁止する旨
通知した。さらに,原告は,同年6月22日,被告に対し,今後「KA
MUI」商標を使用しないことを求める警告書を送付した。
そして,原告は,平成22年8月26日,被告に対し,本件訴訟を提
起した。
(セ)原告代表者は,カムイクラフトによる共同事業の解消の際,原告と
被告はお互いに「KAMUIPRO」を使用しないようにすることを約
束し,被告の「KAMUIPRO」の使用に対しても異議を述べた旨供
述するが,上記供述は,具体的な内容についてあいまいであり,同供述
に符合する客観的な証拠もないから,これに反する被告代表者の供述に
照らし,採用することはできない。
イ被告による被告各標章の使用について
(ア)被告は,平成12年の時点で,被告標章3やその他「KAMUI」
単体の標章を,ゴルフクラブのヘッドやネックに付して製造・販売し
(有限会社カムイが販売。以下同じ。),また,キャディバッグに被告
標章3を付して販売し,さらに,被告のゴルフ用品のカタログにも上記
各標章を付していた。また,被告は,このころ,「KAMUIPRO」
の標章や名称が付されたゴルフクラブも製造・販売しており,これらが
掲載されたカタログには「KAMUIPRO」の標章も付されていた。
(イ)被告が製造・販売したゴルフクラブ「KAMUI320」には,ヘ
ッドに被告標章1,シャフトに被告標章3が付されていた。「KAMU
I320」は,平成13年には1万1720本,平成14年には867
6本,平成15年には2730本,平成16年には924本,平成17
年には345本が販売された。
(ウ)被告が製造・販売したゴルフクラブ「TYPHOONPRO38
0」(タイフーンプロ380)には,ヘッドとシャフトに被告標章3と
「Typhoonpro」の標章が付されていた。「TYPHOONP
RO380」は,平成14年には2808本,平成15年には4316
本,平成16年には1199本,平成17年には312本,平成18年
には137本が販売された。
なお,被告は,「TYPHOONPRO」(標準文字)の商標を平成
7年8月24日に登録出願し,同商標は平成9年8月1日に登録された。
(エ)「TYPHOONPRO380」を除く,被告が製造・販売した
「TYPHOONPRO」シリーズのゴルフクラブには,ヘッドやネッ
クに被告標章3が,また,ヘッドに「Typhoonpro」の標章が
付されていた。「TYPHOONPRO380」を除く「TYPHOO
NPRO」シリーズは,平成12年には2373本,平成13年には5
54本,平成14年には260本,平成15年には177本,平成16
年には94本が販売された。
(オ)被告が製造・販売したゴルフクラブ「RDⅡ」(RDⅡKAMU
IPROFAIRWAYWOOD)には,ヘッドに被告標章3が付
されていた。「RDⅡ」は,平成16年には592本,平成17年には
680本,平成18年には1752本,平成19年には247本,平成
20年には141本,平成21年には169本が販売された。
(カ)被告が製造・販売したゴルフクラブ「KAMUIPRO430」に
は,ヘッドに被告標章3が付されていた。「KAMUIPRO430」
は,平成17年には2644本,平成18年には3478本,平成19
年には971本,平成20年には131本が販売された。
(キ)被告が製造・販売したゴルフクラブ「TP-03」(同クラブのカ
タログ(甲5)では,「TP-03タイフーンプロTyphoon
Pro®」,「タイフーンプロ<TP-03>」と記載されていること
からすると,「TP」は「TyphoonPro」を意味すると認めら
れる。)には,ヘッドに被告標章3とロゴを用いた「TyphoonP
ro」の標章が付されていた。「TP-03」は,平成19年には70
93本,平成20年には6150本,平成21年には1886本が販売
された。
(ク)上記(イ)ないし(キ)の被告が製造する被告標章1又は3の「KAM
UI」の標章が付されたゴルフクラブは,全国各地で販売され,その販
売本数の合計は,平成12年は2376本,平成13年は1万2274
本,平成14年は1万1744本,平成15年は7223本,平成16
年は2809本,平成17年は4008本,平成18年は5464本,
平成19年は8355本,平成20年は6453本であった。
(ケ)有限会社カムイの平成15年12月21日から平成16年12月2
0日までの売上高は1億7455万円,平成16年12月21日から平
成17年12月20日までの売上高は1億2026万円,平成17年1
2月21日から平成18年12月20日までの売上高は1億1826万
円,平成18年12月21日から平成19年12月20日までの売上高
は1億9888円であり,同社の売上高のほぼすべては,被告が製造す
るゴルフクラブの販売によるものであった。
(コ)雑誌等における被告のゴルフクラブの掲載状況
a被告のゴルフクラブ「KAMUI320」(上記(イ)参照)は,被
告(中条)の表示と共にゴルフメイト2001年8月号に掲載され,
また,ゴルフダイジェスト2001年10月号にも掲載された。
b被告のゴルフクラブ「TYPHOONPRO380」(上記(ウ)参
照)は,週刊ゴルフダイジェスト2002年10月1日号に「カム
イ」のクラブとして掲載され,また,同年に発刊されたゴルフクラシ
ックにも被告の表示及び「カムイ」の記載と共に掲載された。さらに,
同クラブは,ゴルフダイジェスト2004年2月号にも「カムイ」の
クラブとして掲載された。
c被告のゴルフクラブ「KAMUI320改」(このクラブは,上記
(イ)の「KAMUI320」同様,ヘッドに被告標章1が付されてい
る。)は,チョイス2002年11月号に「カムイ」のクラブとして
掲載された。
d月刊ゴルフ用品界2004年9月号に,被告のゴルフクラブ「KA
MUIPROV」の広告が,被告及び「KAMUIPRO」の表示
と共に掲載された。このクラブのヘッドには被告標章3と「KAMU
I」と「PRO」を二段に表記した「KAMUIPRO」の標章が付
されていた。
e月刊ゴルフ用品界2005年8月号に,被告のゴルフクラブ「KA
MUIPRO430」(上記(カ)参照)の広告が,被告標章3,被告
及び「KAMUIPRO」の表示と共に掲載された。
f月刊ゴルフ用品界2006年3月号に,被告のゴルフクラブ「KA
MUIPRO430」と「KAMUIPRO430CFM」を紹介す
る記事が,被告及び「KAMUI」の表示と共に掲載された。「KA
MUIPRO430CFM」のヘッドにも被告標章3が付されていた。
g月刊ゴルフ用品界2006年8月号に,「KAMUIPRO430
CFM」を被告のゴルフクラブとして紹介する記事が,「KAMU
I」の表示と共に掲載された。
h平成18年10月27日の読売新聞に,被告のゴルフクラブ「KA
MUIPRO430CFM」の広告が被告及び「カムイ」の表示と共
に掲載された。
i月刊ゴルフ用品界2007年3月号に,被告のゴルフクラブ「KA
MUIPROV」,「KAMUIPROWEDGE」,「KAM
UITP」,「RDⅡ」(上記(オ)参照)の広告が被告標章3,被
告及び「KAMUIPRO」の表示と共に掲載された。また,同誌に
は,被告,「KAMUIPROブランド」のニューモデルとして,
「KAMUIPROV」を除く上記各クラブと「KAMUIPRO
PUTTER」を紹介する記事が掲載された。
j被告は,2007(第9回)ゴルフダイジェストドラコン日本選手
権の協賛企業となり,同選手権のパンフレットに,被告標章3及び被
告の表示と共に被告のゴルフクラブ「TP-03」(上記(キ)参照)
の広告が掲載された。
k月刊ゴルフ用品界に掲載される,全国の主なゴルフ用品販売店にお
ける売れ筋のクラブの情報を提供する「定店観測」と題する記事にお
いて,被告のゴルフクラブ「KAMUIPROV」が2004年1
2月号,2005年1月号,同年12月号に掲載され,また,「KA
MUIPRO430」が2005年10月号,2006年2月号,同
年9月号,同年11月号,同年12月号,2007年1月号,同年2
月号に掲載された。
(サ)被告は,これまで被告標章3や被告標章1などの「KAMUI」の
標章を付したゴルフクラブを,100名を超えるプロゴルファーに納品
している。
(シ)被告は,上記(イ)の「KAMUI320」や上記(ウ)の「TYPH
OONPRO380」を製造・販売していたころ,キャディバッグに被
告標章3を付して販売していた。また,上記(キ)の「TP-03」を製
造・販売していたころ,キャディバッグに被告標章3を付して販売して
いた。
(ス)被告が製造・販売したゴルフクラブ「TP-05」(同クラブの
「TP」が「TyphoonPro」を意味するのは,上記(キ)の「T
P-03」と同様である。)には,ヘッドに被告標章5が付されていた。
「TP-05」は,平成21年には5611本が販売された。
ウ原告による「KAMUI」に係る標章の使用等について
(ア)原告は,上記ア(エ)のとおり,カムイクラフトの解消後は,製造・
販売するゴルフクラブの名称として,「KAMUITOUR」,「カム
イツアー」を採用した。原告が製造・販売したゴルフクラブのうち,
「KAMUITOUR300」(カムイツアー300)には,ヘッドに
「KAMUITOUR」,「KAMUIWORKS」の標章が付された。
平成9年6月ころから販売された「KAMUITOURASIR
I」(カムイツアーアシリ)には,ヘッドに「KAMUITOUR」,
「KAMUIWORKS」の標章が付され,平成10年6月ころから販
売された「アシリアイアン」においては,ヘッドに筆記体の「Kamu
itour」の標章と,ブロック体の「Kamuiworks」の標章
が付された。
さらに,平成13年11月ころから販売されたカムイツアー360や,
それ以降に販売されたカムイツアーアシリ等のゴルフクラブにおいては,
ヘッドに筆記体の「Kamuitour」の標章等が付された。
なお,原告は,本件商標が登録されるまで,日本国内で原告が製造・
販売するゴルフクラブに「KAMUI」単独の標章を使用することはな
く,その広告にも「KAMUI」単独の標章は使用せず,「KAMUI
TOUR」,「カムイツアー」,「ASIRI」,「アシリ」等の標章
を使用していた。
(イ)原告のゴルフクラブが「カムイ」のゴルフクラブとして扱われてい
る雑誌等の記事は,以下のとおりである。
a平成9年6月2日のスポーツニッポンに,原告の「カムイツアーア
シリ」が「カムイ」の新製品として紹介された。
bパーゴルフ1997年9月号に,原告の「カムイツアーアシリ」が
「カムイ」の「ニューモデルチタン」として紹介された。
c平成10年2月19日のスポーツ報知に,原告の「カムイツアーア
シリ」が「カムイのドライバーはめちゃくちゃ飛ぶ」と紹介された。
dアルバトロス・ビュー1998年4月23日号の原告の「カムイツ
アーアシリ」を紹介する記事の中で,同クラブが「カムイ」と記載さ
れ,また原告も「カムイ」と記載された。
e平成10年4月27日の北日本新聞に,原告代表者へのインタビュ
ー記事が掲載され,この記事の中で「アイアンからパター,ゴルフバ
ッグまで『カムイ』ブランドがそろった」との記載がされた。
f平成10年8月5日のデイリースポーツに原告の「カムイツアーア
シリ」を紹介する記事が掲載され,この記事の中に「カムイのクラブ
の申し込み・問い合わせは」との記載があった。
g平成10年9月4日の大阪日刊スポーツに,「カムイのドライバ
ー」として原告の「カムイツアーアシリ」のモニターを募集する記事
が掲載された。
h平成11年4月7日のデイリースポーツに,原告の新製品を紹介す
る記事が掲載され,この記事の中で原告が「『カムイ』ブランドで一
躍,名を売った」と紹介された。
i平成11年3月18日の読売新聞に掲載されたゴルフクラブの広告
記事の中で,原告の新製品が紹介され,「ドライバーはカムイ。カム
イの名前は・・・」との記載がされた。
jゴルフダイジェスト2006年12月号に,原告がかつて製造・販
売していた「KAMUITOUR300」を「カムイ」のクラブとし
て紹介する記事が掲載された。
(ウ)原告の製造するゴルフクラブの年度別(各年度は,4月から翌年の
3月まで)の売上本数と売上高は,平成8年度は2万4794本,11
億0456万円,平成9年度は2万6054本,15億0672万円,
平成10年度は1万5809本,6億7474万円,平成11年度は1
万2496本,4億7806万円,平成12年度は6657本,2億3
993万円,平成13年度は4242本,1億2150万円,平成14
年度は4721本,1億4809万円,平成15年度は4751本,1
億3398万円,平成16年度は5376本,1億2697万円,平成
17年度は6676本,1億2905万円,平成18年度は1万161
3本,1億9242万円であった。
(2)上記(1)イのとおり,被告は,平成12年以降,ゴルフクラブに被告標章
3をはじめ,被告標章1やその他「KAMUI」単体の標章を付して製造・
販売し,また,キャディバッグにも被告標章3を付して販売しており,これ
らの各標章は,「KAMUI」の標章として社会通念上同一のものと認めら
れる。そして,上記(1)イ(ク),(ケ)のとおり,上記「KAMUI」の標章
が付されたゴルフクラブが,平成12年から本件商標が登録される前年の平
成18年までに合計して約4万5000本販売されており,平成16年以降
は毎年1億円を超える売上げがあったこと,上記(1)イ(コ)のとおり,複数
の雑誌等に上記「KAMUI」の標章が付された被告のゴルフクラブが,場
合によっては被告の表示と共に,掲載されていたこと,上記(1)イ(サ)のと
おり,上記「KAMUI」の標章が付されたゴルフクラブが100名を超え
る多数のプロゴルファーに納品されていることを併せ考慮すると,上記「K
AMUI」の標章は,本件商標が登録出願された平成19年4月23日の時
点において,被告の製造・販売するゴルフクラブ及びその関連用品であるキ
ャディバッグを表示するものとして需要者の間に広く認識されていた(法3
2条1項)というべきである。
そして,上記(1)ア認定の事実経過によれば,被告が「KAMUI」標章
を使用することに不正競争の目的は認められないから,被告には,法32条
1項により,ゴルフクラブ及びその関連用品であるキャディバッグについて,
「KAMUI」の標章として社会通念上同一の標章と認められる被告標章1
ないし3の先使用権が認められる。
他方,被告は,社会通念上同一性が認められる「KAMUI」の標章の周
知性について主張・立証するのみで,被告標章4及び5については,具体的
な主張・立証がないから,これらの標章について被告に法32条1項の先使
用権を認めることはできない。
なお,原告は,被告が卑弥呼との間の商標使用許諾契約が平成17年2月
末日に終了したにもかかわらず,「KAMUI」の標章の使用を継続したこ
とを論難するが,上記契約終了後も卑弥呼から被告に対し,「KAMUI」
の標章の使用について,特段異議が述べられたことが認められないことから
すれば,被告が原告に対し,法32条1項の先使用権を主張することは何ら
妨げられないというべきである。
3争点4(原告の本件商標権の行使が権利の濫用に当たり許されないか)につ
いて
被告標章4及び5について,被告に法32条1項の先使用権が認められない
ことは,上記2説示のとおりである。
しかしながら,①社会通念上同一の標章と認められる「KAMUI」の標
章をゴルフクラブ及びその関連用品であるキャディバッグへ使用することにつ
いては,上記2のとおり,被告に法32条1項の先使用権が認められ,また,
上記2(1)の認定事実によれば,②原告と被告は,カムイクラフトの共同事
業を解消した後は,原告は「KAMUITOUR」(カムイツアー),「AS
IRI」(アシリ),被告は「KAMUIPRO」(カムイプロ),「TYP
HOONPRO」(タイフーンプロ),「KAMUI」(カムイ)の名称でそ
れぞれゴルフクラブを販売し,日本国内では互いの名称について異議を述べた
ことは認められないこと,③被告が卑弥呼からCAMUI商標について使用
許諾を得て,平成12年ころから被告のゴルフクラブに「KAMUI」の標章
を使用し始め,被告のゴルフクラブに被告標章1,3等の「KAMUI」単独
の標章を付すようになったこと,④原告は,被告が「KAMUI」単独の標
章を使用していることをその使用開始から程なくして認識していたものの,本
件商標が登録されるまで,その使用について特段異議を述べることはなかった
こと,⑤原告は,本件商標が登録されるまで,日本国内で製造・販売するゴ
ルフクラブに「KAMUI」単独の標章を使用することはなかったこと,⑥
雑誌等においても,原告のゴルフクラブを「カムイ」のゴルフクラブとして扱
うものは平成9年から平成11年までのものがほとんどで,「KAMUI」や
「カムイ」の単独の表記が原告の標章として浸透していなかったことが認めら
れる。そして,上記2(1)ア認定の事実経過,証拠(甲82,95,原告代表
者本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告が被告による「KAMUI」単
独の標章の使用の事実を知りながら,あえて卑弥呼のCAMUI商標の取消審
判を得た上で,本件商標を登録し,被告に対し本件商標権を行使したのは,韓
国で被告が原告の「KAMUITOUR」の商標を付したゴルフクラブの取扱
いの中止を各販売店に要請したことに報復する目的があったためであることが
認められる。
上記①ないし⑥の事情に原告の本件商標権の行使の目的を併せて考慮すれば,
原告が被告に対し,本件商標(KAMUI)と類似すると認められる被告標章
4(「KAMUITyphoonPro」の標章)及び5(「KAMUI」
と「PRO」から成る二段表記の標章)をゴルフクラブに使用する行為につい
て,本件商標権を行使することは,正当な権利行使とは認められず,権利の濫
用として認められないというべきである。
4まとめ
以上のとおり,被告には,法32条1項により,被告標章1ないし3をゴル
フクラブ及びその関連用品であるキャディバッグに使用する権利が認められる。
また,原告が,被告に対し,被告標章4及び5をゴルフクラブに使用すること
について,本件商標権を行使することは,権利の濫用として許されない。
さらに,被告標章4については,証拠上,甲第4号証の被告のゴルフクラブ
のパンフレットで使用されている事実しか認められず,被告のキャディバッグ
やその広告に使用されていることを認めるに足りる証拠がないことからすれば,
被告標章4がキャディバッグに使用されるおそれも認められないというべきで
ある。よって,原告は被告に対し,キャディバッグに関する広告に被告標章4
を付さないことを求めることはできない。
よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも
理由がないこととなる。
第4結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却すること
とし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官阿部正幸
裁判官山門優
裁判官小川卓逸
別紙
被告標章目録




KAMUITyphoonPro

PRO

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