弁護士法人ITJ法律事務所

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主    文
被告人を懲役9年に処する。
未決勾留日数中250日をその刑に算入する。
理    由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 結婚相談所で知り合ったA(当時68歳)から借用名下に金員を詐取しようと企て,
1(平成14年6月11日付け起訴・同年(わ)第1520号)
 平成10年3月ころ,富山県魚津市a○丁目○番○号所在の○号室から横浜市b
区c○丁目○番地○所在の前記A方に電話をかけるなどし,返済する意思も能力
もないのに,これあるように装い,同人に対し,「平成10年4月には結婚する。私に
は財産が10億円以上ある。その他にインドネシアの銀行に預けてある分があり,
月67万円の利子がある。母親が健在だったころから家族ぐるみの付き合いをし,
かわいがってくれていたある会社の社長K氏から,当時カードを渡されて,自由に
使いなさいと言われ使っていたら5000万円にもなってしまった。K氏の会社が厳し
い状況なので,返済を迫られている。絶対返すのでお金を送って欲しい。」などと虚
偽の事実を申し向け,上記Aをしてその旨誤信させ,よって,同年3月16日ころ,同
人をして,同区d○番地○所在の株式会社○○銀行○○支店において,富山市d
○番○号所在の株式会社○○銀行○○支店に開設した被告人名義の普通預金
口座に現金60万円を振込入金させ,
2(平成14年8月9日付け追起訴第1事実・同年(わ)第2163号)
 平成10年4月ころ,前同様に前記A方に電話をかけるなどし,前同様に装い,同
人に対し,「叔父が,私の土地,建物の権利証や宝石,証券など金目のものを持ち
逃げしたので,予定していた支払ができないし,生活費にも困っている。いくらでも
いいから,お金を貸してちょうだい。絶対に返すから大丈夫よ。」などと虚偽の事実
を申し向け,上記Aをしてその旨誤信させ,よって,別表1記載(略)のとおり,同月
24日から同年5月18日までの間,前後3回にわたり,同人をして,いずれも,前記
株式会社○○銀行○○支店において,前記被告人名義の普通預金口座に現金合
計250万円を振込入金させ,
3(平成14年8月9日付け追起訴第2事実・同年(わ)第2163号)
 平成10年7月ころ,前同様に前記A方に電話をかけるなどし,前同様に装い,同
人に対し,「この前叔父が持ち逃げした権利証が,叔父の博打のかたにやくざに持
って行かれてしまった。やくざが400万円で権利証を買い取れと毎晩言ってくる。絶
対返すので,400万円を貸して欲しい。」などと虚偽の事実を申し向け,上記Aをし
てその旨誤信させ,よって,同月31日,同人をして,前記株式会社○○銀行○○
支店において,前記被告人名義の普通預金口座に現金350万円を振込入金さ
せ,
 もって人を欺いて財物を交付させ
第2(平成14年9月19日付け追起訴・同年(わ)第2590号)
 中高年者の親睦団体で知り合ったB(当時69歳)から借用名下に金員を詐取しよう
と企て,平成13年12月21日ころ,東京都新宿区d○丁目○番○号○号室所在の上
記B方において,返済する意思も能力もないのに,これあるように装い,同人に対し,
「母の代からやっている無尽講で,1人が抜けることになったので,その枠を私がもら
いたい。でも,急な話で,今手元にお金がなくて困っている。その枠をもらうために,お
金を私に預けてくれないか。必ず返すから。」などと虚偽の事実を申し向け,上記Bを
してその旨誤信させ,よって,別表2記載(略)のとおり,同日及び同月25日の2回に
わたり,同人から現金合計2000万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付さ

第3(平成14年11月18日付け追起訴・同年(わ)第3273号)
 結婚相談所で知り合ったC(当時76歳)から借用名下に金員を詐取しようと企て,
1 平成10年12月28日ころ,富山県高岡市e町○番○号所在の前記C方において,
返済する意思も能力もないのに,これあるように装い,同人に対し,「塾の経営が苦
しくて,年を越すのも大変なんです。1か月ほどでいいんです。450万円貸してもら
えませんか。年が明けて1月末までには返します。」などと虚偽の事実を申し向け,
上記Cをしてその旨誤信させ,よって,同日,同人をして,富山県高岡市f町○番地
○所在の株式会社○○銀行○○支店(現○○銀行○○支店○○駅前出張所)に
おいて,前記被告人名義の普通預金口座に現金450万円を振込入金させ,
2 平成11年1月4日ころ,東京都内などから前記C方に電話をかけるなどし,前同
様に装い,同人に対し,「年末から東京に来て,会員制の○○ホテルに泊まってい
ました。ところが風邪をひいてしまい,高い熱を出して,軽い肺炎になってしまった。
○○ホテルの診療所で診てもらっているが,保険証を持ってきていないので,まる
まる払わなければなりません。後で返すので,お金を都合してくれませんか。とりあ
えず300万円でいいです。」などと虚偽の事実を申し向け,上記Cをしてその旨誤
信させ,よって,同月4日,同人をして,前記株式会社○○銀行○○駅前支店にお
いて,前記被告人名義の普通預金口座に現金300万円を振込入金させ,
3 同月8日ころ,東京都内などから前記C方に電話をかけるなどし,前同様に装い,
同人に対し,「診療代が足りないので,もう200万円送ってくれませんか。後で必ず
返しますから。」などと虚偽の事実を申し向け,上記Cをしてその旨誤信させ,よっ
て,同月8日,同人をして,前記株式会社○○銀行○○支店において,前記被告
人名義の普通預金口座に現金200万円を振込入金させ,
 もって人を欺いて財物を交付させ
第4(平成14年12月20日付け追起訴第1事実・同年(わ)第3729号)
 知人であるD(当時77歳)から借用名下に金員を詐取しようと企て,
1 平成12年4月4日ころ,富山市g町○番地前記D方居宅において,返済する意思
も能力もないのに,これあるように装い,同人に対し,「500万円貸してくれません
か。私のB銀行の口座に500万円を振り込んで下さい。3か月だけでもいいから貸
してくれれば必ず返すから。」などと虚偽の事実を申し向け,上記Dをしてその旨誤
信させ,よって,同日,同人をして,同町○番地所在の株式会社○○銀行○○支
店において,同市h○番○号所在の株式会社○○銀行△△支店の被告人名義の
普通預金口座に現金500万円を振込入金させ
2 同月26日ころ,前記D方居宅において,前同様に装い,同人に対し,「少しお金を
貸してくれませんか。サラ金で借りるときには何も聞かないで簡単に貸してくれた。
借りるときと返すときではまるで話が違っていた。その借金を返さないと親からもら
った家を取られてしまう。」などと虚偽の事実を申し向け,上記Dをしてその旨誤信
させ,よって,同日,同町○番地所在の○○郵便局前に停車中のタクシー内にお
いて,同人から現金50万円の交付を受け,
 もって人を欺いて財物を交付させ
第5(平成14年12月20日付け追起訴第2事実・同年(わ)第3729号)
中高年者の親睦団体で知り合ったE(当時71歳)から借用名下に金員を詐取しよう
と企て,平成13年10月31日ころ,東京都調布市i町○丁目○番○号○○駅ビル2
階株式会社○○□□駅店内において,返済する意思も能力もないのに,これあるよう
に装い,同人に対し,「実は,買いたいものがあるのですが,ここのところお金を使い
すぎて手持ちが少なくなってしまった。来月の15日ころには,私の会社からお金が入
るので,そのとき返すので,150万円でも200万円でもいいから貸してください。」な
どと虚偽の事実を申し向け,上記Eをしてその旨誤信させ,よって,そのころ,同所に
おいて,同人から現金50万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ
第6(平成15年2月14日付け追起訴・同年(わ)第305号)
1 結婚相談所で知り合ったF(当時54歳)から借用名下に金品を詐取しようと企て,
別表3記載(略)のとおり,平成14年3月31日ころから同年5月15日ころまでの
間,前後7回にわたり,東京都西東京市j町○丁目○番○号○号室の上記F方等に
おいて,返済する意思も能力もないのに,これあるように装い,同人に対し,同表欺
罔文言欄(略)記載のとおり虚偽の事実を申し向け,同人をしてその旨誤信させ,よ
って,同年3月31日から同年5月15日までの間,前後7回にわたり,東京都中央
区k○丁目○番○号2階○○株式会社○○駅前支店出入口付近ほか5か所にお
いて,同人から現金合計210万円及びトラベルバッグほか4点(販売価格合計40
万円)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ
2 かねて前記Fから同人名義の株式会社○○銀行○○支店普通預金口座のキャッ
シュカードを預かっていたものであるが,
(1) 同年3月25日ころ,前記Fの携帯電話に電話をかけ,前同様に装い,同人に対
し,「富山から東京に戻る列車の中で,電話をかけに席を立ったら,財布を入れて
いたバッグごと盗まれてしまった。今週中にも息子の大学の授業料を納めなければ
ならないので,30万円か50万円貸してほしい。」などと虚偽の事実を申し向け,上
記Fをしてその旨誤信させ,よって,被告人において前記キャッシュカードを使用し
て,30万円を前記口座から引き出すことを許可する旨の上記誤信に基づく意思表
示をさせた上,同月31日,東京都中央区k○丁目○番○号○ビル1階株式会社○
○銀行○○支店内において,上記キャッシュカードを使用して,同店に設置された
現金自動預払機から同支店支店長管理に係る現金30万円を窃取し
(2) 同年4月1日ころ,東京都台東区l○丁目○番○号○ビル1階株式会社○○配送
センターにいる前記Fの携帯電話に電話をかけ,前同様に装い,同人に対し,「知り
合いの女性のご主人から,足りなかった120万円は借りて,富山の男に返すこと
ができたが,もともとその女性のご主人の事業資金なので,早く返さなくてはいけな
い。何とか都合をつけて120万円を貸してほしい。」などと虚偽の事実を申し向け,
上記Fをしてその旨誤信させ,よって,被告人において前記キャッシュカードを使用
して,40万円を前記口座から引き出すことを許可する旨の上記誤信に基づく意思
表示をさせた上,同月2日,東京都中央区m○丁目○番○号○ビル1階株式会社
○○銀行○○支店内において,上記キャッシュカードを使用して,同店に設置され
た現金自動預払機から同支店支店長管理に係る現金40万円を窃取し
3 前記Fから金融会社のキャッシングカードを詐取するとともに,これを用いて現金を
入手しようと企て,
 (1) 同年5月15日ころ,東京都中央区k○丁目○番○号○○会館前歩道上におい
て,前同様に装い,前記Fに対し,「まだ足りないから,あと何軒かのサラ金を回っ
て借りてきて私に貸してほしい。責任を持って私が返済するから。」などと虚偽の事
実を申し向け,同人をしてその旨誤信させ,よって,即時同所において,同人から
○○カード1枚ほかカード2枚の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ
 (2) 同日,東京都中央区k○丁目○番○号○ビル○○株式会社○○支店において,
詐取に係る前記第6の3(1)記載の前記F名義の○○カードを使用し,同店に設置さ
れた現金自動預払機から同支店支店長管理に係る現金80万円を窃取し
第7(平成15年2月26日付け追起訴・同年(わ)第420号)
 結婚相談所で知り合ったG(当時59歳)から借用名下に金員を詐取しようと企て,別
表4記載(略)のとおり,平成13年9月12日ころから平成14年4月30日ころまでの
間,前後8回にわたり,埼玉県内又はその近辺に所在していた上記Gの携帯電話に
電話をかけ,返済する意思も能力もないのに,これあるように装い,同人に対し,同表
欺罔文言欄記載(略)のとおり虚偽の事実を申し向け,同人をしてその旨誤信させ,よ
って,平成13年9月14日から平成14年5月1日までの間,前後8回にわたり,東京
都千代田区n○丁目○番○号○○駅名店街店内ほか2か所において,同人から現
金合計356万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ
第8(平成15年2月28日付け追起訴・同年(わ)第433号)
 結婚相談所で知り合ったH(当時53歳)から借用名下に金員を詐取しようと企て,別
表5記載(略)のとおり,平成12年9月25日ころから同年11月6日ころまでの間,前
後8回にわたり,東京都板橋区o町○番○号○号室上記H方に電話をかけ,返済す
る意思も能力もないのに,これあるように装い,同人に対し,同表欺罔文言欄記載
(略)のとおり虚偽の事実を申し向け,同人をしてその旨誤信させ,よって,同年9月2
5日から同年11月7日までの間,前後8回にわたり,上記H方ほか2か所において,
同人から現金合計5450万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ
第9(平成15年3月3日付け追起訴・同年(わ)第459号)
 結婚相談所で知り合ったI(当時50歳)から借用名下に金品を詐取すること等を企
て,
1 平成12年5月25日ころ,東京都内又はその近辺に所在していた前記Iの携帯電
話に電話をかけ,返済する意思も能力もないのに,これあるように装い,同人に対
し,「亡くなった富山の叔父が私の実印を勝手に使って闇金から借金した。私は,叔
父から相続を放棄すればよかったのに放棄しなかったため,叔父の借金を私が返
さなければいけなくなった。生命保険を担保にお金を借りるとか,サラ金からお金を
借りるとか,何かあるでしょう。母が残した遺産を管理させている弁護士に連絡がと
れる状態になれば,あなたから借りたお金は返すし,富山に家を持っているから,
それを処分してあなたに返しますから。3000万円弱にはなりますから。」などと虚
偽の事実を申し向け,上記Iをしてその旨誤信させ,よって,同年6月1日ころ,東京
都杉並区p○丁目○番○号○号室上記I方において,同人から株式会社○○銀行
○○支店発行に係る同人名義のキャッシュカード1枚(平成7年10月20日発行に
係るもの)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ
2 同年6月1日,東京都中央区q○丁目○番○号株式会社○○銀行△△支店内に
おいて,詐取に係る前記第9の1記載のキャッシュカードを使用し,同店に設置され
た現金自動預払機から同支店支店長丁管理に係る現金75万円を窃取し
3 同月6日,札幌市r区s○丁目○番○号株式会社○○銀行□□支店(現株式会社
○○銀行□□支店)内において,詐取に係る前記第9の1記載のキャッシュカード
を使用し,同店に設置された現金自動預払機から同支店支店長管理に係る現金1
45万円を窃取し
4 同月24日,前記株式会社○○銀行□□支店内において,詐取に係る前記第9の
1記載のキャッシュカードを使用し,同店に設置された現金自動預払機から同支店
支店長管理に係る現金247万円を窃取し
5 平成13年3月8日ころ,東京都新宿区t○丁目○番○号u1階○○店内において,
前同様に装い,前記Iに対し,「まだ叔父の借金を返すのに足りない。もっとお金を
貸してほしい。」などと虚偽の事実を申し向け,上記Iをしてその旨誤信させ,よっ
て,同月19日ころ,前記I方において,同人から株式会社○○銀行○○支店発行
に係る同人名義のキャッシュカード1枚(平成12年10月3日発行に係るもの)の交
付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ
6 同月19日,東京都千代田区v○丁目○番○号株式会社○○銀行本店内におい
て,詐取に係る前記第9の5記載のキャッシュカードを使用し,同本店に設置された
現金自動預払機から同本店営業部長管理に係る現金74万円を窃取し
7 別表6記載(略)のとおり,平成12年6月16日ころから平成14年4月16日ころま
での間,前後13回にわたり,前記I方等において,前同様に装い,同人に対し,同
表欺罔文言欄記載(略)のとおり虚偽の事実を申し向け,同人をしてその旨誤信さ
せ,よって,平成12年6月16日から平成14年4月28日までの間,前後13回にわ
たり,東京都世田谷区w○丁目○番○号3階株式会社○○□□店ほか5か所にお
いて,同人から現金合計1546万7000円の交付を受け,もって人を欺いて財物を
交付させ
第10(平成15年3月31日付け追起訴第1事実・同年(わ)第798号)
 結婚相談所で知り合ったJ(当時55歳)から借用名下に金員を詐取しようと企て,
1 平成11年10月初旬ころ,富山県内又はその近辺に所在していた前記Jの携帯電
話に電話をかけ,返済する意思も能力もないのに,これあるように装い,同人に対
し,「知り合いの保証人になり,その借金の肩代わりをしなくてはならなくなった。50
00万円のうち2000万円は自分で出したが,3000万円を用意できないから貸し
てほしい。」などと虚偽の事実を申し向け,上記Jをしてその旨誤信させ,よって,別
表7記載(略)のとおり,同年10月13日から平成12年6月28日までの間,前後2
0回にわたり,同人をして,富山県小矢部市x○番地の○株式会社○○銀行○○
支店ほか4か所において,富山市d○番○号所在の株式会社○○銀行○○支店
の被告人名義の普通預金口座に現金合計2140万円を振込入金させ,
2 別表8記載(略)のとおり,平成13年6月末ころから平成14年4月18日ころまで
の間,前後3回にわたり,富山県内又はその近辺に所在していた前Jの携帯電話
に電話をかけ,前同様に装い,同人に対し,同表欺罔文言欄記載(略)のとおり虚
偽の事実を申し向け,同人をしてその旨誤信させ,よって,平成13年6月26日か
ら平成14年4月19日までの間,前後3回にわたり,同人をして,いずれも,前記株
式会社○○銀行△△支店において,前記被告人名義の普通預金口座に現金合計
400万円を振込入金させ,
 もって人を欺いて財物を交付させ
第11(平成15年3月31日付け追起訴第2事実・同年(わ)第798号)
 L(当時51歳)から借用名下に金員を詐取しようと企て,平成12年4月21日ころ,
富山県黒部市y○番地○○保険相互会社○○支社○○営業所に所在していた上記
Lに電話をかけ,返済する意思も能力もないのに,これあるように装い,同人に対し,
「今私,東京の病院にいるんだけど,置き引きに遭ってお金を盗まれてしまった。ホテ
ルのお金も払えないので40万円貸してくれない。明日,必ず振り込んで返すから。」
などと虚偽の事実を申し向け,上記Lをしてその旨誤信させ,よって,同日,同人をし
て,同市z○番地所在の株式会社○○銀行□□支店において,前記被告人名義の普
通預金口座に現金40万円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させ
たものである。
(証拠の標目)  省略
(法令の適用)  省略
(量刑の理由)
 本件は,判示のとおりの詐欺及び窃盗の事案である。
 犯行動機につき,被告人は,慣れ親しんだ贅沢な生活を維持し,ホストクラブ等での豪
遊を続ける金を得るために犯行を繰り返したなどと供述するが,そのような身勝手な動
機におよそ酌量の余地はない。犯行態様は,自己が資産家であるように装った上,種々
虚偽の事実を申し述べ,時には涙を見せるなどして金員の借用を申し込み,これを信じ
た被害者らから金銭を騙し取り,あるいはキャッシュカードを騙し取り,同カードを用いて
金融機関から現金を引き下ろし窃取するという悪質なものであり,常習性も顕著である。
とりわけ,男性の被害者らは,いずれも結婚相談所の紹介で被告人と知り合い,被告人
から結婚の意思があることをほのめかされ,将来の伴侶として被告人を全面的に信頼
するに至った後,言われるがままに詐欺の被害に遭っており,また,経済的余裕がない
ことが明らかな者からも,消費者金融で借入れまでさせて金員を騙し取っていること等
に照らすと,犯行の手口は非常に巧妙かつ卑劣というほかはない。本件の被害者は11
名に上り,被害金額は合計1億5000万円余と莫大であるが,被害弁償はほとんどされ
ておらず,今後の弁償の見込みも乏しい。信頼を裏切られた上,多額の財産を失った被
害者らの精神的衝撃は大きく,その処罰感情はいずれも峻烈である。加えて,被告人
は,昭和63年に本件と同様の手口による詐欺事犯(被害者4名,被害金額合計約800
0万円)を起こして懲役4年6月の実刑に処せられ,服役しながら,さらに規模の大きな
本件犯行を敢行していることに鑑みれば,この種犯罪傾向が明らかに認められ,規範意
識の鈍磨の根深さがうかがわれる。以上によれば,被告人の刑事責任は極めて重大で
ある。
 そうすると,他方において,騙取金のごく一部ではあるが返済がされていること,前刑
の執行終了後,本件の一連の犯行を開始するまで5年以上が経過しており,その間学
習塾を経営するなどして真面目に社会生活を送っていた時期もあること,被告人は事実
関係の概要を認めて反省悔悟の情を示し,捜査にも一貫して協力していることなど,弁
護人指摘の斟酌すべき事情も存するが,これらを十分考慮しても,前記犯情に照らせ
ば,被告人に対しては主文の実刑を科すのが相当である。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑・懲役12年,検察官細川充及び国選弁護人金子正和各出席)
平成15年6月4日
     横浜地方裁判所第1刑事部
             裁 判 官  足  立     勉

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