弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人小薬正一、同柏崎正一の上告理由について。
 上告人は、訴外株式会社Dの取締役および代表取締役に就任した旨の登記につき、
承諾を与えたとする原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯する
ことができ、本件記録に徴すれば、右認定判断の過程に弁論主義や経験則の違背な
ど所論の違法を見出だすことはできない。
 ところで、原審の確定した事実によれば、上告人の取締役への就任は、右会社の
創立総会または株主総会の決議に基づくものではなく、まつたく名目上のものにす
ぎなかつたというのである。このような場合においては、上告人が同会社の取締役
として登記されていても、本来は、商法二六六条ノ三第一項にいう取締役には当た
らないというべきである。けだし、同条項にいう取締役とは、創立総会または株主
総会において選任された取締役をいうのであつて、そのような取締役でなければ、
取締役としての権利を有し、義務を負うことがないからである。
 商法一四条は、「故意又ハ過失ニ因り不実ノ事項ヲ登記シタル者ハ其ノ事項ノ不
実ナルコトヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ」と規定するところ、同条に
いう「不実ノ事項ヲ登記シタル者」とは、当該登記を申請した商人(登記申請権者)
をさすものと解すべきことは諭旨のいうとおりであるが、その不実の登記事項が株
式会社の取締役への就任であり、かつ、その就任の登記につき取締役とされた本人
が承諾を与えたのであれば、同人もまた不実の登記の出現に加功したものというべ
く、したがつて、同人に対する関係においても、当該事項の登記を申請した商人に
対する関係におけると同様、善意の第三者を保護する必要があるから、同条の規定
を類推適用して、取締役として就任の登記をされた当該本人も、同人に故意または
過失があるかぎり、当該登記事項の不実なことをもつて善意の第三者に対抗するこ
とができないものと解するのを相当とする。
 上告人が前記訴外会社の取締役に就任した旨の登記につき、同人が承諾を与えた
ことは、前示のとおりであり、同人が右登記事項の不実であることを少なくとも過
失によつて知らなかつたことは原審の適法に確定するところであるから、同人は、
右登記事項の不実であること、換言すれば同人が同訴外会社の取締役でないことを
もつて善意の第三者である被上告人に対抗することができず、その結果として、原
審の確定した事実関係のもとにおいては、上告人は被上告人に対し同法二六六条ノ
三にいう取締役としての責任を免れ得ないものというべきである。
 原判示中には右と見解を異にする部分もあるが、上告人の同条に定める責任を肯
定した原判決の結論は正当として首肯することができる。原判決にはその結論に影
響を及ぼすべき所論の違法はなきに帰し、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官岩田誠の反対意見があ
るほか、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。
 裁判官岩田誠の反対意見は、次のとおりである。
 私は、商法二六六条ノ三第一項の規定は取締役の特殊の不法行為責任を規定した
ものであり、右規定により取締役が損害賠償の責に任ずるのは、第三者に与えたい
わゆる直接損害に限るのであつて、いわゆる間接損害にはおよばないものと解する。
その理由は、昭和三九年(オ)第一一七五号同四四年一一月二六日大法廷判決民集
二三巻一一号二一八二頁以下に示した私の意見を参照されたい。
 ところで、被上告人の主位的請求は、訴外株式会社Dの代表取締役として登記さ
れた上告人に対し、商法二六六条ノ三第一項の規定により、いわゆる間接損害の賠
償を請求するものであることは、記録上明らかであり、原審が右請求を正当と認め
これを認容すべきものと判断したことは原判文上明らかである。しかしながら、私
見によれば、前示のように、取締役は右規定によつてはいわゆる間接損害につき賠
償の責に任じないものと解すべきであるから、原判決には、右規定を誤つて解釈適
用した違法があるものというべきであり、原判決は論旨の当否を判断するまでもな
く破棄を免れず、右請求は棄却されるのを相当と思料する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    岸       盛   一

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