弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人野村清美、同仲森久司の上告理由第一点について。
 旧法人税法(昭和二二年法律第二八号、以下単に法と称する。)三五条五項は、
審査の請求に対する決定の通知は、その決定をした理由を附記した書面によるべき
ことを定めたものにすぎない。従つて、その通知書に附記されたところが、たとえ
法令の解釈適用を誤つた失当のものであつたとしても、それが決定をした理由と認
めうる内容のものであるならば、理由の附記として欠けるところはないのである。
ところで、本件において被上告人大阪国税局長の審査決定通知書の附記が右にいう
理由の附記と認めるに足りることは、原判決の引用する第一審判決の判示するとお
りである。してみると、これを法三五条違反とする所論の理由のないことは明らか
であり、さらに租税法律主義にもとり違憲とする所論も、ひつきよう理由附記の有
無と理由の内容の当否とを混同し、違憲に名を藉りて法三五条の解釈を争うものに
ほかならない。論旨はいずれも採用しがたい。
 同第二点について。
 法人の各事業年度における純益金額、欠損金額のごときは、企業会計上表示され
る観念的な数額にすぎず、被合併会社におけるこれら数額は、もとより商法一〇三
条に基づき合併の効果として合併会社に当然承継される権利義務に含まれるもので
はない。
 論旨は、被合併会社が青色申告者として法九条五項により与えられた欠損金額繰
越控除の特典は一の権利であり、権利である以上、商法一〇三条により合併会社に
当然承継せらるべく、このことは法三条の趣旨からも明らかであるがごとく主張す
るが、すでに欠損金額の当然承継を認めがたい以上、右数額を基礎としてその繰越
控除のできる特典が当然受け継がれるものとは考えられない。おもうに、欠損金額
の繰越控除とは、いわば欠損金額の生じた事業年度と所得の申告をすべき年度との
間における事業年度の障壁を取り払つてその成果を通算することにほかならない。
これを認める法九条五項の立法趣旨は、原判決の説示するように、各事業年度毎の
所得によつて課税する原則を貫くときは所得額に変動ある数年度を通じて所得計算
をして課税するのに比して税負担が過重となる場合が生ずるので、その緩和を図る
ためにある。されば、欠損金額の繰越控除は、それら事業年度の間に経理方法に一
貫した同一性が継続維持されることを前提としてはじめて認めるのを妥当とされる
性質のものなのであつて、合併会社に被合併会社の経理関係全体がそのまま継続す
るものとは考えられない合併について、所論の特典の承継は否定せざるをえない。合
併会社とは無関係な経営のもとに生じた被合併会社の既往の欠損金額を合併により
これと経営を異にする合併会社に承継利用させる合理的な理由は、通常の場合見出
だしがたく、また被合併会社の欠損金額は、合併会社において受入資産の価額の定
め方によつて当然調整できるものであるから、普通には欠損金額の引継などを考慮
する要もないのである。結局、合併による欠損金額の引継、その繰越控除の特典の
承継のごときは、立法政策上の問題というべく、それを合理化するような条件を定
めて制定された特別な立法があつてはじめて認めうるものと解するのが相当であり、
所論の商法一〇三条、法三条の規定も、右のように解するのにつきなんら妨げとな
るものではない。要するに、原判決が合併会社である上告人につき被合併会社の欠
損金額繰越控除の特典の承継を否定したのは正当であつて、これを非難する論旨は
理由がない。
 同第三点について。
 法九条五項が欠損金額の繰越控除を青色申告者の特典としていること自体、租税
政策上の考慮に出でたものであることは明らかである。税法がこのような考慮、あ
るいは経済政策ないし社会政策的見地から特定の事項について独自な課税上の取扱
いを定めることがあつても、それが国会の立法に基づくかぎり、租税法律主義に反
するものということはできない。また実質的課税の原則も、政策的な考慮を加えた
税法規の制定を否定するものではない。されば、これら政策的な考慮はすべて許さ
れないものとして、原判決が税法においては一定額の税収入をあげまたは特定の事
業を保護育成するということを望ましいとする政策的配慮から、会計の計算規定に
ついても商法のそれとはおのずから異なるものがあることは当然である旨を説示し
たのを非難する論旨は、肯認しがたい。商法一〇三条によつては被合併会社の欠損
金額の繰越控除の関係の合併会社への承継を認めがたいとした原判決の判断は前叙
のとおり正当であつて、これを違法とする所論は、採用に値しない。
 同第四点について。
 原判決は、さきに述べたように法九条五項の立法趣旨を説き、従つてこの立法趣
旨からすれば、欠損金額の繰越控除が許されるためには、当該法人が独立の人格と
その同一性を保つていることを当然の前提とするものと解すべきものとし、この見
地から、吸収合併においては、被合併会社は合併の日に消滅するが、合併会社はそ
のまま人格の独立性と同一性を保持しているから、合併後従前の繰越欠損を控除す
ることは、なんら法九条五項の法意に反するものでない旨を判示したのである。そ
れは判文上明らかというべく、これに理由不備の違法は認められない。論旨は、原
判決を正解しないもので、採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛