弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人早稲田逸郎の上告趣意は末尾に添えた書面記載のとおりである。
 論旨第一点について。
 原判決の証拠に援用した第一審第二回公判調書によれば、原審裁判長は被告人に
対し、被告人が原判示の如く指定輸出品を関東州大連市又は満州国奉天市に密輸出
したとの記載のある予審終結決定書の犯罪事実を読聞けており、被告人はそれに対
して「取引サレタ品物ヤ日時ハソノ通リデスガ主トナツテ居タノハAデアリ私ハ使
イヲシテ遣ツタノデアリマス」と述べていて、奉天市に密輸出したことについては
争つてはいないし、又原判決の証拠に援用した証人Bに対する予審判事の昭和二〇
年九月二四日附訊問調書によれば、予審判事が同証人に対し、被告人が原判決第二
の事実のとおり奉天市に密輸出したとの記載がある予審請求書中の公訴事実の第二
の(三)の(ロ)の犯罪事実を読聞けていて、同証人はそれに対して「共ノ通リ町
違アリマセヌ」と答えているのであるから、原判決はこれらの証拠によつて所論の
事実を認定したのであつて、証拠によらずして罪となるべき事実を認定したもので
はない。それゆえ論旨は理由がない。
 同第二点について。記録を調査すると、原審第一回(昭和二二年五月二一日)よ
り一一回(同二四年一月二八日)各公判期日に被告人より病気(ロイマチス性多発
関節炎)を理由として期日延期申請を為しているが、各同とも診断書には療養期間
として二ケ月或いは三ケ月と記されており、次で第一二回公判期日(同年四月二〇
日)においても被告人より前記病気を理由として二ケ月の療養期間を要する旨の診
断書を提出して公判期日延期願を出して出頭しなかつたものである。そこで原審は
右診断書記載の療養期間より更に四〇日以上も先に第一三回公判期日(同年八月一
日)を定めたのであるが同期日にも又被告人よう前記病気を理由として公判期日の
延期を申請した。原審は該申請を却下して被告人不出頭のまま審理して弁論を終結
し、同年九月一二日判決を言渡したものである。そして前記第一三回公判期日の延
期申請書に添えられた診断書には、被告人が慢性多発性関節ロイマチスにかかつて
いて安静加療を要すると記載されているだけであつて、公判廷に出頭することがで
きないような病状であることは少しも示されていない。それゆえ、原審右の診断書
の記載や前記のような事情で公判期日が度々変更されてきた状況等を綜合して、被
告人は前記第一三回公判期日に旧刑訴法第四〇四条後段に所謂正当の事由なくして
出頭しなかつたものと認めて被告人の陳述を聴かないで審理を進め判決をしたこと
はもとより正当であつて原審の訴訟手続には所論のような違法はない。また原審弁
護人は昭和二四年四月二〇日の原審第一三回公判期日には出頭して同年八月一日の
次回公判期日の告知を受けながら、右公判期日の延期申請もせずに第一二回公判期
日に出頭しなかつたことは記録によつて明らかである。されば、原審弁護人はみづ
から公判期日に出頭しないで弁護権を行使しなかつたに過ぎないのであつて、原審
が所論のように弁護権を不法に制限したものではないから論旨は理由がない。
 同第三点について。
 記録によると、被告人が昭和二四年七月一五日附を以てした公判期日延期申請書
の上欄には裁判長の許否の欄が押されており、その欄内「否」とある部分に裁判長
の印があるから前記公判期日の延期申請に対しては明かに却下の命令があつたもの
と認あ得べく、又同年九月九日附の被告人の公判延期申請書は同年九月一二日原審
判決宣告期日に原審裁判所に受理されているに拘らず、右期日には公判が開かれて
いるのであるから、該期日の開かれたこと自体によつて右延期申請に対し却下命令
のあつたことを推認することができる。それゆえ論旨は何れも理由がない。同第四
点について。 原審の適用した昭和一八年六月二六日商工王省告示第五五三号の四
五九には単に「白金」とあること所論のとおりであるが、右告示の五二一には「貴
金属製品」とあつて、本件白金指輪はこれに該当しその翰出は禁じられているもの
であるから、原判決が右告示を適用したことには何等法令の適用の誤りはなく、論
旨は理由がない。
 同第五点について。
 罰金刑の言渡を受けた者が罰金を完納することができない場合の労役場にあける
留置は、刑の執行に準ずべきものであるから、留置一日に相応する金銭的換価率は、
必ずしも自由な社会における勤労の報酬額と同率に決定さるべきものではなく、旧
刑訴法事件において一日二〇円の換算であつても、基本的人権と法の下における国
民の平等を保障した憲法の条項に反するものではないこと、当裁判所の判例(昭和
二三年(れ)第一四二六号同二四年一〇号五日大法廷判決)の示すとおりである。
されば、原審が被告人において罰金を完納することができないときは金五〇円を一
日に換算した期間被告人を労役場に留置すると言渡したことは、何ら人権蹂躙の裁
判でもなく刑の不当な加重にも当らないから論旨は理由がない。
 同第七点について。
 原判決挙示の第一審第二回公判調書に記載されている被告人の供述が強制等によ
るものと認むべき証拠はないし、又右公判廷において被告人は検事に対する供述内
容と同一のことを述べているからといつて所論の如く検事に対する被告人の供述に
よつて判示事実を認定したものということはできない。それゆえ、論旨は理由がな
い。
 よつて本件上告を理由ないものと認め、旧刑訴法第四四六条に従い主文のとおり
判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二六年一月二三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   土       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官穂積重遠は差支えの為署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    井   上       登

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛