弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人中川十一郎上告趣意第一点について。
 仍つて、所論各点を記録につき調査すると、先づ弁護人松本要に対しては所論の
昭和二四年一〇月八日の公判期日召喚状を同年八月三一日適法に送達されている(
記録九四丁)。しからば所論はその前提において誤りであること明らかであるから、
此点の論旨は理由がない。次にA同Bの弁護届は被告人と連署のもとに、原審第一
回公判期日である昭和二四年一〇月八日当日の日附で提出されている。然るに右両
弁護人に対し右公判期日の召喚状の送達も亦期日請書の提出のあつたことも記録上
発見できないこと並びにA弁護人は当日の公判に出廷しなかつたことも所論指摘の
とおりである。しかし、前示の如く右弁護届は右公判期日当日原審裁判所に提出さ
れたものと認むべきであるから、勿論右期日の召喚手続を為す時間的余地のないこ
とは当然であり、且つ公判当日弁護届を提出するような場合には期日請書をも徴す
る暇のない場合も往々であり、その上元来弁護人はその弁護を引受くる時、就中裁
判所に弁護届を提出するような段階においては、既に被告人より或は裁判所に対し、
事件は如何なる進行の段階にあるや殊に公判期日は既に定まつているか、定まつて
いるならば何日であるかは之を確かめるのを当然の筋合と謂わねばならないのであ
る。そして本件被告人に対して右一〇月八日の公判期日の召喚状は既に九月四日適
法に送達されているところ(記録九五丁)であるから、A弁護人は上示何れかの方
法により該公判期日は之を十分に諒知しているものと云わねばならない。現に同一
弁護届をもつて選任のあつたB弁護人は当日召喚状は勿論期日請書の提出もないの
に、右当日の公判廷に出廷し終始弁護の任に当りその弁護権を行使しているところ
であつて以上のような場合においては召喚状の送達は勿論又期日の請書も之を必要
としないものと解するを相当とするのである(昭和二四年(れ)第一六三一号、同
二月一五日第三小法廷判決参照)。しからばA弁護人は所論公判期日に正当の事由
なくして出廷しなかつたものと謂うの外なく、そして本件は旧刑訴第三三四条所定
の所謂強制弁護の事件ではないのであるから、当日弁護人はB弁護人のみ出廷の儘
審理を遂げた原審手続に何等の違法はないのである。次に所論指摘の昭和二三年(
れ)第七一九号第三小法廷の判例は所謂強制弁護事件である強盗被告事件に弁護人
を附さなかつたことに関するものであつて、本件に適切の判例ではない。論旨はす
べて理由がない。
 同第二点について。
 所論公判調書に、被告人の氏名「朝鮮名Cこと、D」と記載されていることは所
論指摘のとおりである。しかし同公判調書に記載されてある被告人の年令、職業、
本籍、住居及び被告人の朝鮮名並びにEの姓等は全部原判決書の冒頭記載と一致す
るところであるから、右公判調書中の「F」とは「E」の誤記であること(想うに
当日出廷したB弁護人の名「F」を誤記したものと推認される)は明らかであるか
ら、論旨は採るを得ない。
 同第三点について。
 所論は違憲に名を籍る量刑不当論であつて(昭和二三年(れ)第五一七号、同年
九月二五日第二小法廷判決。昭和二三年(れ)第一〇五三号、同年一〇月一九日第
三小法廷判決各参照)、上告適法の理由とならない。
 仍つて、刑訴施行法第二条旧刑訴第四四六条に従い、主文のとおり判決する。
 此判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 田中巳代治関与
  昭和二五年六月二三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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