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平成16年(ネ)第3458号 損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平
成15年(ワ)第16055号)(平成16年9月8日口頭弁論終結)
          判           決
       控訴人        株式会社オットー
訴訟代理人弁護士   田 辺 信 彦
同          加 野 理 代
同          橋 本 裕 幸
補佐人弁理士     村 田 幸 雄
同          松 本   悟
       被控訴人       日誠コンクリート株式会社
       被控訴人       林田セメント工業株式会社
       被控訴人       琴海生コン株式会社
       被控訴人       長崎生コンクリート株式会社
       4名訴訟代理人弁護士 近 藤 恵 嗣
同          丸 山   隆
          主           文
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。
          事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人日誠コンクリート株式会社は,控訴人に対し,6000万円及びこ
れに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
3 被控訴人林田セメント工業株式会社は,控訴人に対し,6000万円及びこ
れに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
4 被控訴人琴海生コン株式会社は,控訴人に対し,3000万円及びこれに対
する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被控訴人長崎生コンクリート株式会社は,控訴人に対し,500万円及びこ
れに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
6 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
7 仮執行宣言
第2 事案の概要
 本件は,後記防波堤用異形コンクリートブロックの特許権(以下「本件特許
権」という。)の共有者である控訴人が,コンクリート会社である被控訴人らの製
造販売するコンクリート(以下「各被控訴人製品」という。)は,本件特許権に係
る特許発明(以下「本件特許発明」という。)における硬化前の混練物と同一であ
り,当該コンクリートの硬化体から成るコンクリートブロックは,本件特許発明の
技術的範囲に属するから,被控訴人らによる各被控訴人製品の製造販売行為は,特
許法101条1号ないし2号に規定する間接侵害行為に該当し,仮にそうでないと
しても,各被控訴人製品の納入を受けて防波堤用異形コンクリートブロックを製造
した者との共同不法行為に該当するとして,被控訴人らに対し損害賠償を求めた事
案であり,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決に対し,控訴人がその取消しを
求めて控訴した。
 本件の前提となる事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり
当審における主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の
概要」及び「第3 争点に関する当事者の主張」のとおりである(ただし,原判決
17頁10行目及び17行目に「塙被告製品」とあるのを「各被控訴人製品」に,
25頁10行目に「(1) 特許法101条1号」とあるのを「控訴人は,各被控訴人
製品が特許法101条1号の『その物の生産にのみ用いる物』に該当すると主張す
るが,」にそれぞれ改める。)から,これを引用する。
1 控訴人の主張(争点4関係)
 原判決は,均等の第1要件及び第5要件に関する判断を誤ったものであり,
各被控訴人製品は,均等の第1要件~第5要件をすべて満たすから,本件特許発明
の構成と均等なものとして,その技術的範囲に属するというべきである。
(1) 均等の第1要件について
ア 原判決は,「『砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の
酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利』を用いる
ことは,先行技術に見られない本件特許発明特有の解決手段として位置付けられて
いるものというべきであるから,本件特許発明の本質的部分を構成するというべき
である」と判断したが,誤りである。
イ 先行技術との関係について
 原判決は,特開平1-201055号公報(乙5,以下「乙5公報」と
いう。),特開平1-317147号公報(乙6,以下「乙6公報」という。)及
び特開平1-301549号公報(乙7,以下「乙7公報」という。)を証拠とし
て引用しつつ,「本件特許出願以前に,粒径を限定することなく酸化鉄系鉄鉱石を
用いて,全体の比重を増加させつつ比重分離を生じさせない防波堤用コンクリート
ブロックに関する発明が存在していた」と認定したが,正確ではない。
 乙6公報及び乙7公報に,「細骨材の砂鉄としては,磁鉄鉱,赤鉄鉱,
褐鉄鉱等を主体とし,比重が約4.0~5.0,粒径が約5mm以下(50~20
0メッシュ程度)のものが使用される」(3頁左上欄下から第2段落)とあるとお
り,乙6公報及び乙7公報に記載された発明は,細骨材の砂鉄として,「粒径が約
5mm以下(50~200メッシュ程度)のもの」を用いるものであり,また,乙
5公報に,「本発明の特徴である消波ブロックを形成する骨材の砂およびバラスの
全部又は一部を鉄鉱石に代えたセメントコンクリートの物性および単位重量を調べ
るため以下の要領にて試作を行った。1)試験に用いた鉄鉱石は,オーストラリア
産の品名ハマスレイであり,粒度により粉鉱と鉱塊に区分した。粉鉱……粒度径5
m/m未満の鉄鉱石」(2頁右下欄最終段落~3頁左上欄第1段落)とあるとお
り,乙5公報に記載された発明は,細骨材として,「粒度径5m/m未満の鉄鉱
石」を用いるものである。そして,「磁鉄鉱,赤鉄鉱,褐鉄鉱」及び「オーストラ
リア産の品名ハマスレイ」は,いずれも酸化鉄系鉄鉱石であり,さらに,本件特許
発明において鉄鉱石の粒径の下限を規定する0.1mmは,ふるい目の寸法のほぼ
下限を規定したにすぎず,重要な意味を持つものではないから,乙5公報~乙7公
報には,細骨材として,「粒径5.0~0.1mmの酸化鉄系鉄鉱石」を用いる技
術が開示されていたということができる。
 したがって,細骨材として,「粒径5.0~0.1mm」の酸化鉄系鉄
鉱石を用いることは,「先行技術に見られない本件特許発明特有の解決手段」とは
いい得ないから,原判決の上記判断は誤りである。
ウ 本件特許発明の本質について
 乙6公報及び乙7公報に記載された発明(先行技術)は,「粗骨材,細
骨材の双方共に比重の高い材料とする」(2頁右下欄第2段落)ものであり,具体
的には,「粗骨材の酸化鉄鉱石」として,「比重が約4.0~5.0,粒度が粒径
約5~60mmのもの」(3頁左上欄下から第3段落)を用い,「細骨材の砂鉄」
として,「比重が約4.0~5.0,粒径が約5mm以下(50~200メッシュ
程度)のもの」(同欄下から第2段落)を用いるものであり,乙5公報に記載され
た発明も,粗骨材である「粒度径5m/m以上40m/m以下」の「鉱塊」と,細
骨材である「粒度径5m/m未満」の「粉鉱」又は海砂とを併用するものである
(3頁左上欄第1段落)。また,本件特許出願前から,コンクリートは,その単位
容積重量によって,重量コンクリート,普通コンクリート及び軽量コンクリートの
3種類に区分されていたが,重量コンクリートという場合には,粗骨材として「重
量骨材」を,細骨材として「重量骨材・砂または砕砂」を用いることが通常であっ
た(昭和51年2月25日技報堂出版発行「コンクリート便覧」,甲34)。
 このように,防波堤用コンクリートブロックなどに用いる重量コンクリ
ートに関する先行技術は,粗骨材及び細骨材の双方に比重の高い鉄鉱石を用いる
か,粗骨材に比重の高い鉄鉱石を用い,細骨材に通常の砂を用いるものであり,粗
骨材には,必ず,比重の高い鉄鉱石を用いるため,モルタルと粗骨材との比重分離
を生じさせないようにする目的で,混和剤(分離阻止剤)として,超微粉水砕スラ
グ,シリカヒューム等を加える必要があったものである。
 これに対し,本件特許発明は,「細骨材に比重が高く,化学安定性に優
れた酸化鉄系鉄鉱石を使用することにより,特別な分離阻止剤を添加することなし
に,従来技術においてしばしば発生した比重分離現象の発生を阻止できる防波堤用
異形コンクリートブロックの製造に成功した」(本件明細書〔甲2〕の段落【00
04】)ものであり,「砂及び砂鉄等の酸化鉄系鉄鉱石の細骨材とセメントペース
トからなるモルタルの比重と,砂利からなる粗骨材の比重とを可能な限り近似させ
ることによって,モルタルと粗骨材との比重分離を回避し,全体として均質な防波
堤用異形コンクリートブロックを構成するものである。そして,細骨材の一部に所
要量の砂鉄等の細粒の酸化鉄系鉄鉱石を用いることにより,生コンクリートの比重
分離を回避し,化学安定性,機械的特性に優れ,比重2.4~2.6の実用的な防
波堤用異形コンクリートブロックを製造することができる」(同段落【000
6】)とされている。
 以上によれば,「先行技術に見られない本件特許発明特有の解決手段」
は,細骨材に用いる酸化鉄系鉄鉱石を「粒径5.0~0.1mm」に限定した点で
はなく,粗骨材には比重の高い鉄鉱石を用いずに,「細骨材は砂と・・・比重2.
9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,・・・粗骨材は砂利からなり,・・・セ
メントペーストと細骨材からなるモルタルの比重が2.1~2.56」とした点で
あり,この点が,本件特許発明の本質的部分を構成するというべきであるから,原
判決の上記判断は誤りである。
エ 出願経過との関係
(ア) 原判決は,本件特許発明に係る特許出願人である控訴人及び水工建
(以下「控訴人外1名」という。)が平成14年1月15日付け手続補正書(乙
3)により行った,本件明細書に係る補正(以下「本件補正」という。)につい
て,「本件特許出願以前に,粒径を限定することなく酸化鉄系鉄鉱石を用いて,全
体の比重を増加させつつ比重分離を生じさせない防波堤用コンクリートブロックに
関する発明が存在していたところ(乙5ないし7),本件特許の出願人である原告
及び水工健は出願経過において,特許庁審査官から上記発明の存在を指摘されて,
粒径40ないし5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石を除外する補正を行った」と認定し
た。
 しかしながら,本件補正は,本件特許権に係る本件補正前の明細書
(乙1,以下「当初明細書」という。)の特許請求の範囲に記載されていた「粗骨
材は砂利及び粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とから
なり」を「粗骨材は砂利からなり」に改めたものであって,補正前における粗骨材
から,「粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石」を除外
し,砂利のみに限定する補正を行ったものである。すなわち,本件補正は,拒絶理
由通知書(乙2)に引用された乙5公報~乙7公報に,「粗骨材,細骨材の双方共
に比重の高い材料」(鉄鉱石)を用いるものが示されていることから,それらに記
載された発明との相違を明確にする意図で,粗骨材から比重の高い酸化鉄系鉄鉱石
を除外したものにすぎない。その際,除外された酸化鉄系鉄鉱石の粒径である「4
0~5.0mm」については,上記ウのとおり,乙5公報~乙7公報における粗骨
材の酸化鉄系鉄鉱石の粒径と同程度であることからも明らかなように,粗骨材とし
て通常使用されている範囲のものである。
 以上のとおり,本件補正は,飽くまで,粗骨材である「粒径40~
5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」を除外したものであり,細骨材として含まれる特定
の粒径の酸化鉄系鉄鉱石を除外する意図はないにもかかわらず,原判決の上記認定
は,この点を無視したものであって正確ではない。
(イ) 控訴人外1名が本件補正とともに特許庁に提出した平成14年1月
15日付け意見書(乙4,以下「本件意見書」という。)には,「引用文献2及び
3(注,乙6公報及び乙7公報)には,本願発明の特徴である『モルタルと粗骨材
の比重を可能な限り近似させることによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を
回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成せんとする
点』,特に『砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱
石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利を一定割合で混合するこ
とによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を回避し,全体として均質な防波堤
用異形コンクリートブロックを構成せんとする点』については,何らの記載が見い
だせません」との記載がある。
 しかしながら,上記のうち,細骨材に係る「粒径5.0~0.1m
m,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石」との構成は,当初明細書(乙1)に記
載されていたものであって,本件補正により限定されたものではないし,その粒径
は,上記イのとおり,乙5公報~乙7公報に記載された先行技術に見られる細骨材
としての酸化鉄系鉄鉱石と同程度のものである。したがって,「粒径5.0~0.
1mmの酸化鉄系鉄鉱石」という構成は,単に,「細骨材としての酸化鉄系鉄鉱
石」というのと同義であるから,先行技術には見られない本件特許発明特有の解決
手段と位置付けられるものではない。そうすると,本件特許発明の本質的部分は,
酸化鉄系鉄鉱石の粒径を限定した点にはなく,本件補正により,モルタルの比重を
「2.1~2.56」に引き下げるとともに,粗骨材から酸化鉄系鉄鉱石を除外し
て「砂利」のみにしたことにあることは明らかである。
 また,本件特許発明の本質的部分が上記の点にあることは,本件明細
書(甲2)において,酸化鉄系鉄鉱石の粒径については限定理由が記載されていな
いのに対し,モルタルの比重を2.1~2.56としたことについては,詳細な限
定理由が記載されていること(段落【0019】参照)からも明らかである。
オ 仮想クレームによる検討
 本件特許発明から,酸化鉄系鉄鉱石の粒径に関する限定を省いた「仮想
クレーム」を想定すると,本件特許発明の作用効果には全く変わりがなく,かつ,
乙5公報~乙7公報に記載された先行技術との関係では進歩性を有するものである
ことが理解される。したがって,本件特許発明は,酸化鉄系鉄鉱石の粒径に関する
限定を省いたとしても,発明として十分に成立するものであり,本件特許発明の
「粒径5.0~0.1mmの酸化鉄系鉄鉱石」という構成は,その本質的部分では
ないというべきである。
カ 以上によれば,「先行技術に見られない本件特許発明特有の解決手段」
は,「細骨材は砂と・・・比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,上記
粗骨材は砂利からなり,・・・・セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比
重が2.1~2.56である」との点にあり,この点が本件特許発明の本質的部分
を構成するものである。したがって,酸化鉄系鉄鉱石に係る「粒径5.0~0.1
mm」との限定は,本件特許発明の本質的部分を構成するものではなく,各被控訴
人製品は,均等の第1要件を満たしている。
(2) 均等の第5要件について
ア 原判決は,「本件特許発明の・・・出願経過に照らせば,粒径40ない
し5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石を除外する補正を行って,酸化鉄系鉄鉱石の粒径を
5.0~0.1mmと限定したものというべきである。被告各製品は,細骨材に粒
径5.0ないし8.0mmの鉄鉱石を含んでおり(各被告製品の構成e),この点
で本件明細書の特許請求の範囲に記載された構成と異なっているところ,当該相違
部分は,上記のとおり,特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識
的に除外されたものというべきであるから,各被告製品は,均等の第5要件も満た
さない」と判断したが,誤りである。
イ 本件補正は,当初明細書の特許請求の範囲に記載されていた「粗骨材は
砂利及び粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからな
り」を「粗骨材は砂利からなり」に改めたものであり,細骨材に係る「粒径5.0
~0.1mmの酸化鉄系鉄鉱石」という構成は,当初明細書に記載されていたもの
であって,本件補正により限定されたものではない。
 他方,上記(1)イのとおり,防波堤用異形コンクリートブロックなどに用
いる重量コンクリートについて,細骨材として,「粒径5.0~0.1mmの酸化
鉄系鉄鉱石」を用いることは公知技術であり,本件補正により酸化鉄系鉄鉱石の粒
径を「5.0~0.1mm」に限定することによって,当該公知技術との間に差異
が生じるものではないから,控訴人外1名は,本件補正に当たり,酸化鉄系鉄鉱石
の粒径を5.0~0.1mmに限定することを意図して,「粒径40~5.0mm
の酸化鉄系鉄鉱石」を除外したものではない。
ウ 本件補正は,上記(1)エ(ア)のとおり,拒絶理由通知書(乙2)に引用さ
れた乙5公報~乙7公報に,「粗骨材,細骨材の双方共に比重の高い材料」(鉄鉱
石)を用いるものが示されていることから,それらに記載された発明との相違を明
確にする意図で,粗骨材から比重の高い酸化鉄系鉄鉱石を除外したものである。
 そして,乙5公報~乙7公報における粗骨材の酸化鉄系鉄鉱石の粒径
(上記(1)ウ)からも明らかなとおり,防波堤用異形コンクリートブロックなどに用
いる重要コンクリートに,粗骨材として,「粒径40~5.0mm」の酸化鉄系鉄
鉱石を用いることは公知技術である。したがって,控訴人外1名が,本件補正によ
り「粒径40~5.0mm」の酸化鉄系鉄鉱石を除外した意図は,通常の粒径を有
する「粗骨材としての酸化鉄系鉄鉱石」を除外するというものにすぎず,細骨材中
に含まれるものを含め,特定の粒径(5.0mm以上)の酸化鉄系鉄鉱石を除外す
ることを意識したものではない。
エ 本件補正により除外された酸化鉄系鉄鉱石は,粗骨材である「粒径40
~5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」である。ここで,細骨材である酸化鉄系鉄鉱石に
ついても,質量にして15%程度は,粒径5.0~10mmのものが含まれている
ことは技術常識であるから,粗骨材である「粒径40~5.0mmの酸化鉄系鉄鉱
石」を除外したからといって,細骨材である「粒径5.0~8.0mmの酸化鉄系
鉄鉱石」までもが除外されたと解することは,骨材の粒度分布を無視するものであ
り,技術常識に反する。
 本件補正により粗骨材から除外された「粒径40~5.0mmの酸化鉄
系鉄鉱石」とは,「粒径40~5.0mm」,すなわち,JIS規格にいう「40
05」(甲14の表1及び表4参照)に相当する粗骨材である酸化鉄系鉄鉱石であ
り,同じく本件補正により実施例から除外された,粗骨材である「平均粒径25m
mの赤鉄鉱」(当初明細書〔乙1〕の段落【0022】)がこれに対応する。これ
に対し,各被控訴人製品における「粒径5.0~8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」と
は,そのようなものが独立して存在しているわけではなく,細骨材としての「粒径
0~8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」の一部に対応するものである。
 この両者を比較すると,前者は,粒径5~8mmにかけて増大する粒度
分布を有するのに対し,後者は,粒径5~8mmにかけて減少する粒度分布を有す
るものであるから,細骨材に含まれる「粒径5.0~8.0mmの酸化鉄系鉄鉱
石」と,粗骨材に含まれる「粒径5.0~8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」とが,そ
の内容を異にするものであることは明らかである。
オ 以上のとおり,本件補正は,粗骨材である「粒径40~5.0mmの酸
化鉄系鉄鉱石」を除外したものであり,細骨材の一部である「粒径5.0~8.0
mmの酸化鉄系鉄鉱石」を除外したものではない。このことは,当業者であれば当
然に理解し得ることであるから,本件補正の経緯から,細骨材に含まれる粒径5.
0mmを超える酸化鉄系鉄鉱石までもが,本件特許発明の技術的範囲から除外され
たなどという理解は生じない。
 したがって,細骨材の一部である「粒径5.0~8.0mmの酸化鉄系
鉄鉱石」は,本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除
外されたものには該当せず,各被控訴人製品は,均等の第5要件を満たしている。
2 被控訴人らの主張
 原判決の均等の第1要件及び第5要件に関する判断は正当であり,各被控訴
人製品は,均等の要件を満たすものではない。
(1) 均等の第1要件について
ア 控訴人は,乙5公報~乙7公報の発明の詳細な説明に,細骨材として用
いる酸化鉄系鉄鉱石の粒径に関し,「粒度径5m/m未満の鉄鉱石」及び「粒径が
約5mm以下(50~200メッシュ程度)」との記載があることを根拠に,細骨
材に係る酸化鉄系鉄鉱石を「粒径5.0~0.1mm」に限定した点は,本件特許
発明の本質的部分ではない旨主張する。
 しかしながら,乙5公報~乙7公報記載の発明は,特許請求の範囲にお
いて,何ら酸化鉄系鉄鉱石の粒径を限定していない。また,本件特許発明の特許出
願手続において,控訴人外1名は,特許庁審査官の拒絶理由通知(乙2)を受け
て,粒径40~5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石を除外する本件補正を行った上,本件
意見書(乙4)において,「特に『砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~
5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利を
一定割合で混合することによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を回避し,全
体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成せんとする点』について
は,何らの記載が見いだせません」との意見を述べて,特許査定を得ていることか
ら明らかなとおり,本件特許発明は,控訴人外1名自身の意思により,特許請求の
範囲の記載において,明確に,酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0~0.1mmに限定
されたものである。
 そうすると,本件特許発明においては,酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0
~0.1mmに限定する点も,その本質的部分を構成する要素の一つであるという
ほかはなく,たとえ,その点が先行技術に開示されていたとしても,当該事項が本
件特許発明の本質的部分となるか否かには関係がないというべきである。したがっ
て,控訴人の上記主張は失当である。
イ 控訴人は,本件明細書(甲2)の段落【0004】及び段落【000
6】の記載を根拠に,粗骨材に比重の重い鉄鉱石を用いないことも,本件特許発明
の本質的部分の要素の一つである旨主張する。
 しかしながら,本件特許発明については,当初明細書(乙1)の特許請
求の範囲の記載では,先行技術と同様,粗骨材にも酸化鉄系鉄鉱石を用いる構成が
採られていたが,特許庁審査官の拒絶理由通知(乙2)を受けたため,本件補正に
より,本件明細書の特許請求の範囲の記載のとおり,特許請求の範囲を減縮したも
のである。そして,本件明細書の上記段落【0004】及び段落【0006】の記
載については,当初明細書の段落【0004】及び段落【0006】でも同一の記
載がされているのであるから,当該記載に示された解決手段は,粗骨材に酸化鉄系
鉄鉱石を用いる当初明細書記載の構成についても当てはまるものであり,本件特許
発明についてのみ示された解決手段でないことは明らかである。したがって,控訴
人の上記主張は失当である。
ウ そもそも,本件特許発明の目的は,モルタルと粗骨材の比重をできるだ
け近似させることにより,粗骨材とモルタルの比重分離を回避することにあるが,
同様の比重分離は,モルタル内における,セメントペーストと細骨材についても起
こり得る問題であり,細骨材の粒径が大きくなれば,セメントペースト内での挙動
が粗骨材に近づくことは明らかである。そうとすれば,本来,本件特許発明におい
て規定する酸化鉄系鉄鉱石の5.0mmという粒径であっても,モルタル内におけ
る比重分離の問題を回避して本件特許発明の目的を達するには,大きすぎるほどで
ある。
 にもかかわらず,控訴人は,細骨材の粒径は本件特許発明の本質的部分
ではないと主張し,5.0mmをも超えて,本件特許権の権利範囲に取り込もうと
しているものであって,こうした控訴人の主張が本件特許発明の本質に反すること
は明らかである。
エ なお,控訴人は,仮想クレームによる検討を主張するが,要するに,均
等の第4要件(対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は
当業者がこれから容易に推考できたものではないこと)について形を変えて述べて
いるにすぎず,本件において,米国の仮想クレームの議論を行う必要はない(ちな
みに,当業者が公知技術から各被控訴人製品を容易に想到できたことは明らかであ
るから,均等の第4要件も充足しない。)
 また,控訴人の請求に係る判定2003-60090号事件において,
特許庁は,平成16年6月7日,各被控訴人製品は本件特許発明の構成要件Eを充
足しないとした上,均等論についても,「本件発明(注,本件特許発明)の構成中
『細骨材』はその中核をなすものであり,イ号物件と異なる部分が,本件特許発明
の本質的要件である」と説示して,各被控訴人製品は本件特許発明の技術的範囲に
属しない旨の判定をしている(乙8)。
オ 以上によれば,原判決の「『砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.
9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂
利』を用いることは,先行技術に見られない本件特許発明特有の解決手段として位
置付けられているものというべきであるから,本件特許発明の本質的部分を構成す
るというべきである」との判断は正当であり,各被控訴人製品は,均等の第1要件
を満たさないというべきである。
(2) 均等の第5要件について
ア 当初明細書(乙1)の特許請求の範囲の記載においては,酸化鉄系鉄鉱
石の粒径について,細骨材は5.0~0.1mm,粗骨材は40~5.0mmと明
確に規定していたものを,控訴人外1名は,拒絶理由通知を契機として,細骨材の
粒径範囲の記載を維持したまま,酸化鉄系鉄鉱石を粗骨材の構成から除く本件補正
をしたものであるから,控訴人外1名が,本件補正に当たり,「粒径40~5.0
mmの酸化鉄系鉄鉱石」を特許請求の範囲から除外する意思であったことは明らか
である。
イ また,最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号1
13頁(以下「平成10年最判」という。)は,均等の第5要件について,「特許
出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特許権者の
側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形
的にそのように解される行動をとった者について,特許権者が後にこれと反する主
張をすることは禁反言の法理に照らし許されない」と判示している。控訴人外1名
の主観がどのようなものであれ,本件補正の行われた経過を見た当業者は,出願人
が酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0~0.1mmの範囲に限定したと理解するから,
本件補正による酸化鉄系鉄鉱石の粒径の限定が,「外形的にそのように解される行
動」に該当することは明らかである。
ウ 以上によれば,原判決の均等の第5要件についての判断は正当であり,
各被控訴人製品は,均等の第5要件も満たさないというべきである。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(各被控訴人製品は構成要件Eを充足するか)について
 本争点に関する当裁判所の判断は,原判決「事実及び理由」欄の「第4 当
裁判所の判断」の「1」のとおりであるから,これを引用する。
2 争点2(均等の成否)について
(1) 特許発明の技術的範囲は,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に
基づいて確定しなければならず(特許法70条1項),特許請求の範囲に記載され
た構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合には,当該対象製品等は,特許
発明の技術的範囲に属するということはできない。しかし,特許請求の範囲に記載
された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても,①上記部分が
特許発明の本質的部分ではなく,②上記部分を対象製品等におけるものと置き換え
ても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであっ
て,③上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点にお
いて容易に想到することができたものであり,④対象製品等が,特許発明の特許出
願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できた
ものではなく,かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の
範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,対象製
品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的
範囲に属するものと解するのが相当である(以上につき,平成10年最判参照。上
記①を「均等の第1要件」,上記⑤を「均等の第5要件」といい,①~⑤の要件を
総称して「均等の要件」という。)。
 ここで,本件特許発明と各被控訴人製品との構成とを対比すると,本件明
細書(甲2)の特許請求の範囲に記載された本件特許発明の構成においては「酸化
鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」(構成要件E)とされているのに対し,
各被控訴人製品においては「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mm」(各被控訴
人製品構成e)とされており,異なる部分(以下「本件相違部分」という。)が存
在するが,控訴人は,本件相違部分の存在にもかかわらず,各被控訴人製品は,均
等の要件を満たし,本件明細書の特許請求の範囲に記載された本件特許発明の構成
と均等なものとして,本件特許発明の技術的範囲に属する旨主張するので,以下,
検討する。
(2) 均等の第1要件について
ア 本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明には,以下のような記載があ
る。
(ア) 「従来,重量コンクリートの製造において,かんらん石,鉄鉱石な
どの粗骨材に砂などの細骨材とセメント,水とを混合して,これを流し込み打設し
ていたが,鉄鉱石は比重が高いため,下方に沈んでしまう分離現象が生じる問題が
あった。そこで,水セメント比を小さくして打設施工しようとすると,施工性が悪
くなり,製品コンクリートの化学的,機械的特性等が劣化してしまう」(段落【0
003】)
(イ) 「本発明者は種々研究の結果,細骨材に比重が高く,化学安定性に
優れた酸化鉄系鉄鉱石を使用することにより,特別な分離阻止剤を添加することな
しに,従来技術においてしばしば発生した比重分離現象の発生を阻止できる防波堤
用異形コンクリートブロックの製造に成功した」(段落【0004】)
(ウ) 「本発明は,施工時における高比重骨材とセメントペーストとの分
離を回避し,高比重,高化学安定性の防波堤用異形コンクリートブロックを提供し
ようとするものであって,すなわち,(1)水セメント比0.4~0.6のセメン
トペースト100重量部と細骨材100~450重量部と粗骨材150~500重
量部との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックであり,該硬
化体の比重は2.4~2.6であって,かつ上記細骨材は砂と,粒径5.0~0.
1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,上記粗骨材は砂利から
なり,そして上記細骨材の内訳は砂10~90重量%,酸化鉄系鉄鉱石90~10
重量%からなるものであり,さらに上記セメントペーストと細骨材からなるモルタ
ルの比重が2.1~2.56であることを特徴とする防波堤用異形コンクリートブ
ロック・・・である」(段落【0005】)
(エ) 「本発明では,砂及び砂鉄等の酸化鉄系鉄鉱石の細骨材とセメント
ペーストからなるモルタルの比重と,砂利からなる粗骨材の比重とを可能な限り近
似させることによって,モルタルと粗骨材との比重分離を回避し,全体として均質
な防波堤用異形コンクリートブロックを構成するものである。そして,細骨材の一
部に所要量の砂鉄等の細粒の酸化鉄系鉄鉱石を用いることにより,生コンクリート
の比重分離を回避し,化学安定性,機械的特性に優れ,比重2.4~2.6の実用
的な防波堤用異形コンクリートブロックを製造することができる」(段落【000
6】)
(オ) 「モルタル比重を2.1~2.56とした点については,・・・
2.56を超える場合には,モルタルとしての細骨材の比重が大きくなり,したが
って,相対的にセメントペーストの比重が小さくなるため,モルタル自体の分離,
すなわちセメントペーストと細骨材との比重差分離が生じ易くなる」(段落【00
19】)
イ 本件特許発明の特許出願手続においては,当初明細書の特許請求の範囲
の記載等を,特許庁審査官の拒絶理由通知を契機として,本件明細書のとおりに改
める本件補正がされたものであり,その経緯は,以下のとおりであると認められる
(甲2,乙1~7)。
(ア) 当初明細書(乙1)の特許請求の範囲の【請求項1】の記載
 「水セメント比0.4~0.6のセメントペースト100重量部と細
骨材100~450重量部と粗骨材150~500重量部との混練物の硬化体から
なる防波堤用異形コンクリートブロックであり,該硬化体の比重は2.4~2.9
であって,かつ上記細骨材は砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0
の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,上記粗骨材は砂利及び粒径40~5.0mm,比重
2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,そして上記細骨材の内訳は砂10~
90重量%,酸化鉄系鉄鉱石90~10重量%からなり,上記粗骨材の内訳は砂利
100~0重量%及び酸化鉄系鉄鉱石0~100重量%からなるものであり,さら
に上記セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比重が2.1~2.9である
ことを特徴とする防波堤用異形コンクリートブロック。」
(イ) 特許庁審査官の拒絶理由通知
 特許庁審査官は,平成13年10月19日付け拒絶理由通知書(同年
11月13日発送,乙2)において,乙5公報~乙7公報を引用文献として掲げた
上,当初明細書に係る「請求項1-4に係る発明と,引用文献1(注,乙5公報)
に記載の発明を対比すると,両者は,比重が異なる点で相違する」とした上,「鉄
鉱石を骨材に採用すると,比重を大きくすることができる一方で,分離の問題が発
生することは周知の事項であるので(要すれば,引用文献2,3〔注,乙6公報,
乙7公報〕参照),引用文献1においても,求める製品の比重と分離の問題を勘案
して,一般的な骨材である砂やバラスの置換量を適当な範囲に設定することは当業
者が適宜なし得る事項である」と指摘した。
(ウ) 本件補正及び本件意見書の内容
 出願人である控訴人外1名は,上記拒絶理由通知を受けて,平成14
年1月15日付け手続補正書(乙3)により,当初明細書(乙1)の特許請求の範
囲の【請求項1】の記載(上記(ア))について,①「硬化体の比重」につき,
「2.4~2.9」を「2.4~2.6」に,②「粗骨材は砂利及び粒径40~
5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり」を「粗骨材は砂利
からなり」に,③「セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比重」につき,
「2.1~2.9」を「2.1~2.56」にそれぞれ改める本件補正を行った。
 その際,控訴人外1名は,同日付け本件意見書(乙4)において,
「引用文献2及び3(注,乙6公報及び乙7公報)には,本願発明の特徴である
『モルタルと粗骨材の比重を可能な限り近似させることによって,モルタルと粗骨
材との比重差分離を回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロック
を構成せんとする点』,特に『砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.
0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利を一定
割合で混合することによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を回避し,全体と
して均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成せんとする点』については,
何らの記載が見いだせません」(6頁第3段落)と主張した。
ウ 上記イ(イ)の拒絶理由通知において引用文献とされた乙5公報~乙7公
報には,以下のような記載がある。
(ア) 乙5公報(拒絶理由通知における引用文献1)
 「セメント,砂,バラスを水で混練してセメントコンクリートを製造
し,このセメントコンクリートを成型して製造される消波ブロックにおいて,前記
砂およびバラスの全部又は一部を略々同程度,同容量の鉄鉱石に置換したことを特
徴とする消波ブロック」(特許請求の範囲第1項)
(イ) 乙6公報(拒絶理由通知における引用文献2)
 「従来,重量コンクリートの製造においては,かんらん石,各種鉄鉱
石などの粗骨材に砂などの細骨材とセメント,水とを混合して,これを打設施工し
ていたが,粗骨材の鉄鉱石は比重が高いため,下方へ沈んでしまう分離現象が生
じ,その結果不均質な組成の機械的,化学的特性の劣化した重量コンクリート製品
となってしまう問題があった。本発明者は種々の研究の結果,細骨材に比重の高い
砂鉄を使用し,そして混和剤に超微粉水砕スラグ又は超微粉水砕スラグと炭素繊維
を加えることにより,この分離現象の発生を阻止できることを見出だした。細骨材
に砂鉄を用いることによって,粗骨材,細骨材の双方共に比重の高い材料とする一
方,セメントと水からなるセメントペースト分は比重の低い材料となったので,比
重差から粗,細骨材が沈降し,セメントペースト分が上方に残って分離が生じるも
のと予想されたけれども,この予想を覆すことができた」(2頁左下欄下から第2
段落~右下欄第2段落)
(ウ) 乙7公報(拒絶理由通知における引用文献3)
 「従来,重量コンクリートの製造においては,かんらん石,各種鉄鉱
石などの粗骨材に砂などの細骨材とセメント,水とを混合して,これを打設施工し
ていたが,粗骨材の鉄鉱石は比重が高いため,下方へ沈んでしまう分離現象が生
じ,その結果不均質な組成の機械的,化学的特性の劣化した重量コンクリート製品
となってしまう問題があった。本発明者は種々の研究の結果,細骨材に比重の高い
砂鉄を使用し,そして混和剤にシリカヒューム又はシリカヒュームと炭素繊維を加
えることにより,この分離現象の発生を阻止できることを見出だした。細骨材に砂
鉄を用いることによって,粗骨材,細骨材の双方共に比重の高い材料とする一方,
セメントと水からなるセメントペースト分は比重の低い材料となったので,比重差
から粗,細骨材が沈降し,セメントペースト分が上方に残って,分離が生じるもの
と予想されたけれども,この予想を覆すことができた」(2頁左下欄最終段落~右
下欄第2段落)
エ 以上に基づき,本件相違部分に係る,本件特許発明の「酸化鉄系鉄鉱石
の粒径は5.0~0.1mm」との構成が,本件特許発明の本質的部分であるか否
かについて検討する。
 均等の第1要件である特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記
載された特許発明の構成のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける
技術的思想の中核を成す特徴的部分,言い換えれば,当該部分が他の構成に置き換
えられるならば,全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価され
るような部分をいうものと解される。そして,発明が各構成要件の有機的な結合に
より特定の作用効果を奏するものであることに照らせば,対象製品等との相違が特
許発明における本質的部分に係るものであるかどうかを判断するに当たっては,特
許請求の範囲の記載だけでなく,特許発明を先行技術と対比して,課題の解決手段
における特徴的原理を確定すべきである。
 本件においては,本件特許出願前,本件特許発明に係る防波堤用異形コ
ンクリートブロックの技術分野において,①上記ウ(ア)のとおり,当該ブロックに
用いるコンクリートの比重を高めるため,比重の重い鉄鉱石を骨材として用いるこ
と(乙5公報)が公知ないし周知の技術であったこと,②上記イ(イ)並びに上記ウ
の(イ)及び(ウ)のとおり,鉄鉱石を骨材に採用すると,比重を大きくすることがで
きる一方で,比重分離の問題が発生するとの課題が周知の事項であったこと,③上
記課題を解決するため,混和剤として,超微粉水砕スラグ若しくは超微粉水砕スラ
グと炭素繊維(乙6公報),又は,シリカヒューム若しくはシリカヒュームと炭素
繊維(乙7公報)を加えるとの技術が公知であったことをそれぞれ認めることがで
きる。
 そうした中,本件特許発明の特許出願人である控訴人外1名は,上記ウ
のとおり,特許庁審査官から,拒絶理由通知において,乙5公報~乙7公報記載の
技術的事項の存在を指摘されたことを受けて,当初明細書の特許請求の範囲の記載
中,「粗骨材は砂利及び粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄
鉱石とからなり」との記載を「粗骨材は砂利からなり」に改める等の本件補正を行
い,その際,乙6公報及び乙7公報に記載の発明と対比して,「『モルタルと粗骨
材の比重を可能な限り近似させることによって,モルタルと粗骨材との比重差分離
を回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成せんとする
点』,特に『砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱
石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利を一定割合で混合するこ
とによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を回避し,全体として均質な防波堤
用異形コンクリートブロックを構成せんとする点』」が「本願発明の特徴である」
との意見を述べて,その結果,特許査定を得たものである。
 以上に加え,本件明細書の発明の詳細な説明の記載(上記ア)をも勘案
すると,直接の先行技術であると見られる乙6公報及び乙7公報に記載された発明
と対比して,本件特許発明における課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核を
成す特徴的原理と見られる部分は,「砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9
~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利
を一定割合で混合すること」という特有の混合構成(以下「本件混合構成」とい
う。)を用いることにより,「砂及び砂鉄等の酸化鉄系鉄鉱石の細骨材とセメント
ペーストからなるモルタルの比重と,砂利からなる粗骨材の比重とを可能な限り近
似させる」(上記ア(エ))こととし,それによって,乙6公報及び乙7公報に記載
の発明のように特別な混和剤ないし分離阻止剤を用いることなく,「モルタルと粗
骨材との比重分離を回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロック
を構成する」(同)との課題を解決しようとした点にあると認めるのが相当であ
る。 
 したがって,本件特許発明の本質的部分は,酸化鉄系鉄鉱石についての
「粒径5.0~0.1mm」との限定を含む,本件混合構成にあるということがで
きる。
オ これに対し,控訴人は,乙5公報~乙7公報に,細骨材として用いる酸
化鉄系鉄鉱石の粒径に関し,「粒度径5m/m未満の鉄鉱石」(乙5公報)及び
「粒径が約5mm以下(50~200メッシュ程度)」(乙6公報及び乙7公報)
との記載があることを根拠に,細骨材として,「粒径5.0~0.1mm」の酸化
鉄系鉄鉱石を用いることは,「先行技術に見られない本件特許発明特有の解決手
段」とはいい得ないから,細骨材に係る酸化鉄系鉄鉱石を「粒径5.0~0.1m
m」に限定した点は,本件特許発明の本質的部分ではない旨主張する。
 確かに,乙5公報~乙7公報には,控訴人主張に係る上記記載が存在す
るが,それらは,いずれも発明の詳細な説明における記載であって,特許請求の範
囲においては,いずれも,細骨材に係る酸化鉄系鉄鉱石の粒径について,何ら限定
は付されていないことが明らかである。これに対し,本件特許発明においては,当
初明細書の段階から,特許請求の範囲において酸化鉄系鉄鉱石の粒径について限定
が付されていた上,控訴人外1名は,酸化鉄系鉄鉱石につき,「粒径40~5.0
mmの酸化鉄系鉄鉱石」を除く本件補正をし,さらに,その際,本件意見書におい
て,乙6公報及び乙7公報に記載の発明と対比して,酸化鉄系鉄鉱石につき,「粒
径5.0~0.1mm」との限定を付した本件混合構成が「本願発明の特徴であ
る」との意見を述べたものである。
 他方,仮に,控訴人主張のとおり,細骨材に係る酸化鉄系鉄鉱石とし
て,「粒径5.0~0.1mm」のものを用いること自体が公知技術であるとして
も,それと他の構成とを組み合わせることにより,全体としての本件混合構成が進
歩性を獲得することは,十分にあり得ることである。そして,現に,乙6公報及び
乙7公報の特許請求の範囲に記載された発明が,酸化鉄系鉄鉱石の粒径に限定を付
していないこととの対比の上で,相違点を形成していることも明らかであることを
考え併せれば,本件特許発明においては,そうした粒径に関する限定が,本件混合
構成中の他の要件とあいまって,「砂及び砂鉄等の酸化鉄系鉄鉱石の細骨材とセメ
ントペーストからなるモルタルの比重と,砂利からなる粗骨材の比重とを可能な限
り近似させる」(上記ア(エ))役割を果たしているものと推認されるというべきで
ある。
 以上によれば,本件特許発明の本件混合構成において規定された要件の
中から,酸化鉄系鉄鉱石についての「粒径5.0~0.1mm」との限定のみを除
外すべき理由はないというほかはないから,控訴人の上記主張は採用の限りではな
い。
カ 次に,控訴人は,本件明細書(甲2)の段落【0004】及び段落【0
006】の記載(上記アの(イ)及び(エ))などを根拠に,本件特許発明の本質的部
分は,細骨材に用いる酸化鉄系鉄鉱石を「粒径5.0~0.1mm」に限定した点
ではなく,粗骨材には比重の高い鉄鉱石を用いずに,「細骨材は砂と・・・比重
2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,・・・粗骨材は砂利からな
り,・・・セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比重が2.1~2.5
6」とした点にある旨主張する。
 控訴人の上記主張は,本件補正後の本件特許発明においては,粗骨材に
は比重の高い鉄鉱石を用いないこととした点において,先行技術に見られない特有
の解決手段を有するとする趣旨であると理解される。
 しかしながら,本件特許発明に係る当初明細書(乙1)の特許請求の範
囲の記載では,乙5公報~乙7公報に記載された先行技術と同様,粗骨材にも酸化
鉄系鉄鉱石を用いる構成が採られていたが,特許庁審査官の拒絶理由通知(乙2)
を受けたため,本件補正により,本件明細書の特許請求の範囲の記載のとおり,特
許請求の範囲を改めたものであることは,上記イのとおりである。そして,本件明
細書の上記段落【0004】及び段落【0006】の記載については,当初明細書
の対応箇所でも同一の記載がされているのであるから,当該記載に示された解決手
段や作用は,粗骨材に酸化鉄系鉄鉱石を用いる当初明細書記載の構成についても当
てはまるものであり,本件補正後の本件特許発明についてのみ示された解決手段で
ないことは明らかである。したがって,控訴人の上記主張は,上記エないしオの判
断を覆す理由とはなり得ないというほかはなく,採用の限りではない。
キ また,控訴人は,本件特許発明の特許出願の経過に関して,①本件補正
は,飽くまで,粗骨材である「粒径40~5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」を除外し
たものであり,細骨材として含まれる特定の粒径の酸化鉄系鉄鉱石を除外する意図
はない,②「粒径5.0~0.1mmの酸化鉄系鉄鉱石」という構成は,乙5公報
~乙7公報に記載された先行技術にも見られるものであって,単に,「細骨材とし
ての酸化鉄系鉄鉱石」というのと同義であるから,本件特許発明の本質的部分は,
酸化鉄系鉄鉱石の粒径を限定した点にはなく,本件補正により,モルタルの比重を
「2.1~2.56」に引き下げるとともに,粗骨材から酸化鉄系鉄鉱石を除外し
て「砂利」のみにしたことにあることは明らかであるなどとも主張する。
 しかしながら,本件補正によって,本件明細書の特許請求の範囲に記載
された本件特許発明の構成(構成要件E)が,粗骨材のみならず,細骨材について
も,5.0~0.1mmの粒径を満たすことを意味するものとなったことは,上記
1において引用する原判決の判示(原判決26頁~27頁,第4の1(1))のとおり
であって,このことは,控訴人外1名の主観的意図とは直接関係しないというべき
であるから,控訴人の上記①の主張は失当である。また,上記②の主張についてみ
ると,細骨材に係る酸化鉄系鉄鉱石として,「粒径5.0~0.1mm」のものを
用いること自体が公知技術であるとしても,それと他の構成とを組み合わせること
により,全体としての本件混合構成が進歩性を獲得することがあり得ることは,上
記オにおいて判示したとおりである。
ク さらに,控訴人は,本件特許発明から,酸化鉄系鉄鉱石の粒径に関する
限定を省いた「仮想クレーム」を想定すると,本件特許発明の作用効果には全く変
わりがなく,かつ,乙5公報~乙7公報に記載された先行技術との関係では進歩性
を有するものであることが理解されるから,本件特許発明は,酸化鉄系鉄鉱石の粒
径に関する限定を省いたとしても,発明として十分に成立するものであり,本件特
許発明の「粒径5.0~0.1mmの酸化鉄系鉄鉱石」という構成は,その本質的
部分ではない旨主張する。
 しかしながら,そもそも,控訴人主張に係る「仮想クレーム」が,乙5
公報~乙7公報に記載された先行技術との関係で進歩性を有するものであること
は,本件全証拠によっても,到底,明らかであるとはいうことができない上,仮
に,当該「仮想クレーム」が上記先行技術との関係で進歩性を有するものであった
としても,それは,当該「仮想クレーム」に係る発明も特許を受けることができる
ものであったということを意味するにすぎず(仮に,それが否定されるのであれ
ば,特許出願時において本来認められなかったはずのクレームを,侵害訴訟の時点
で特許権者に新たに付与するのと同じことになってしまうから,均等の成立を認め
ることは相当でない。),当該「仮想クレーム」に係る発明と本件特許発明とが,
当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核を成す特徴的部分
において同一であることを直ちに意味するわけではないから,結局,酸化鉄系鉄鉱
石の粒径に関する限定が本件特許発明の本質的部分でないことの論証とはならない
というべきである。したがって,控訴人の上記主張は,上記エないしオの判断を左
右しないものというほかはなく,採用の限りではない。
ケ 以上のとおり,本件特許発明の本質的部分は,本件混合構成,すなわ
ち,「砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とか
らなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利を一定割合で混合すること」で
あり,本件相違部分に係る,本件特許発明の「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~
0.1mm」との構成(構成要件E)も,本件混合構成の一部として,本件特許発
明の本質的部分を構成するものである。
 そして,各被控訴人製品は,上記(1)のとおり,本件相違部分において,
本件特許発明と構成を異にするものであるから,各被控訴人製品は,均等の第1要
件を満たさないというべきである。
(3) 均等の第5要件について
ア 本件特許発明の特許出願手続における上記(2)イのような経緯に照らせ
ば,出願人である控訴人外1名は,意識的に,粒径40~5.0mmの酸化鉄系鉄
鉱石を特許請求の範囲から除外する本件補正を行って,酸化鉄系鉄鉱石の粒径を
5.0~0.1mmに限定したものというべきである。
 各被控訴人製品は,上記(1)のとおり,本件相違部分において本件特許発
明と構成を異にするところ,本件相違部分に係る本件特許発明の構成は,上記のと
おり,本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外され
たものというべきであるから,各被控訴人製品は,均等の第5要件も満たさない。
イ これに対し,控訴人は,本件補正は,当初明細書の特許請求の範囲に記
載されていた「粗骨材は砂利及び粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸
化鉄系鉄鉱石とからなり」を「粗骨材は砂利からなり」に改めたものにすぎず,本
件補正に当たり,控訴人外1名は,酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0~0.1mmに
限定することを意図して,「粒径40~5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」を除外した
ものではないなどと主張する。
 しかしながら,本件補正によって,本件明細書の特許請求の範囲に記載
された本件特許発明の構成(構成要件E)が,粗骨材のみならず,細骨材について
も,5.0~0.1mmの粒径を満たすことを意味するものとなったことは,上記
判示のとおりであり,控訴人外1名が,本件補正に当たり,そのことを認識してい
なかったとは,にわかに考え難いところである。加えて,均等の第5要件について
は,特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特
許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,
又は外形的にそのように解される行動をとった者について,特許権者が後にこれと
反する主張をすることは禁反言の法理に照らし許されない(平成10年最判参照)
と解されるところ,仮に,控訴人外1名が,主観的には,本件補正の有する上記の
ような意味を正確には理解していなかったとしても,本件補正は,少なくとも,外
形的には,「粒径40~5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」につき,本件特許発明の技
術的範囲に属しないことを承認したものと解されるべき行為であるというほかはな
い。したがって,控訴人の上記主張は,上記アの判断を左右しないものというべき
である。
ウ また,控訴人は,本件補正により除外された酸化鉄系鉄鉱石は,粗骨材
である「粒径40~5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石」であり,細骨材である酸化鉄系
鉄鉱石についても,質量にして15%程度は,粒径5.0~10mmのものが含ま
れていることは技術常識であるから,粗骨材である「粒径40~5.0mmの酸化
鉄系鉄鉱石」を除外したからといって,細骨材である「粒径5.0~8.0mmの
酸化鉄系鉄鉱石」までもが除外されたと解することは,骨材の粒度分布を無視する
ものであり,技術常識に反するなどとも主張する。
 しかしながら,粗骨材や細骨材がどのような粒度分布を有するにせよ,
本件補正によって,本件明細書の特許請求の範囲に記載された本件特許発明の構成
(構成要件E)が,粗骨材のみならず,細骨材についても,5.0~0.1mの粒
径を満たすことを意味するものとなったことは,上記判示のとおりであり,これが
技術常識に反するものとは認められない(なお,本件特許発明の技術的範囲につい
ての特許庁の平成16年6月7日付け判定〔乙8〕,特に6頁第2段落参照)か
ら,控訴人の上記主張は採用の限りではない。
(4) 以上のとおり,各被控訴人製品は,均等の第1要件及び第5要件を満たさな
いから,本件特許発明の構成と均等なものということはできない。
3 以上によれば,各被控訴人製品は,本件特許発明における硬化前の混練物の
備える要件を充足せず,また,これと均等ということもできないから,各被控訴人
製品の硬化体から成るコンクリートブロックが,本件特許発明の技術的範囲に属す
るとは認められない。そうすると,控訴人の被控訴人らに対する請求は,その余の
点について判断するまでもなく理由がないから,いずれも棄却すべきである。
 よって,以上と同旨の原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,
これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所知的財産第2部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 古  城  春  実
    裁判官 早  田  尚  貴

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