弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴の趣旨
原判決を取り消す。(1)
被控訴人が平成16年12月22日付けで控訴人に対して行った「平成1(2)
3年2月20日付けの千葉県知事による産業廃棄物収集運搬業許可のうち被
控訴人の行った許可とみなされたもの」についての取消処分を取り消す。
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。(3)
2控訴の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第2事案の概要
1本件は,平成13年2月20日付けで千葉県知事から産業廃棄物収集運搬業
の許可(同許可のうち船橋市の区域に係るものは,平成15年4月1日の同市
の中核市移行に伴い,被控訴人の行った許可とみなされた。以下,被控訴人の
「」。),行った許可とみなされたものを本件みなし許可というを受けた控訴人が
平成16年11月1日に埼玉県知事から埼玉県の区域(さいたま市及び川越市
の区域を除くにおける産業廃棄物収集運搬業の許可を取り消された以下別。)(「
件取消処分」という)ところ,同年12月22日被控訴人から,この事実が廃。
棄物の処理及び清掃に関する法律(平成17年法律第42号による改正前のも
の。以下「法」という)14条の3の2第1項1号,14条5項2号イ,7条。
5項4号ニに当たるとして本件みなし許可を取り消す旨の処分(以下「本件取
消処分」という)を受けたことを不服として,被控訴人に対し,その取消を求。
めた事案である。
原判決は,本件取消処分に違法はないとして,控訴人の請求を棄却した。控
訴人は,これを不服として本件控訴を申し立てた。
2法の定め,前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張
次項に控訴人の当審における補充主張を付加するほかは,原判決の「事実及
び理由」中の第2の1,2,3の及び,4の及びに記載のとおりで(1)(2)(1)(2)
あるから,これを引用する。
3控訴人の当審における補充主張
本件取消処分が違法かどうかを検討するに当たっては,まず,その取消事(1)
由となった別件取消処分について,その取消原因となった役員等の犯罪行為
とそれに対する制裁が著しく均衡を欠くことを考えなければならない。すな
わち,控訴人会社の役員が道路交通法違反(飲酒運転)で懲役5月,執行猶
予3年という軽微な刑罰を受けたにすぎず,しかも,その違反行為によって
他人に物損や人身上の損害などを全然与えていないのに,別件取消処分によ
,,,って32年間もの長い間法の違反のない優良な控訴人会社の生命を絶ち
倒産に追い込んで,何十人という従業員や数百人の家族を路頭に迷わせ,経
済生活を困窮に陥れてしまったのであるから,原因行為と制裁とが著しく均
衡を欠くものというべきである。したがって,このような苛酷な制裁を排除
ないし回避するような適切な法の運用・解釈が求められる。特に,平成15
年改正法において許可の必要的取消の制度に改正されたのは,もともと処理
行政の監督不行届,怠慢を改めて,厳正・迅速に許可取消処分をせよという
趣旨であるから,その場合の許可取消処分の対象は,不法投棄や不適正処理
などの処理業務の違反行為に限られるはずであり,決して廃棄物処理業務と
関係のない飲酒運転やスピード違反など一般の犯罪や違反行為ではない。
他の業法においては,法人の役員が禁錮以上の刑に処せられた場合に業の
許可の取消をすることが定められているものが多いが,役員が禁錮以上の刑
に処せられたからといって,業法自体の違反による場合を除いて,許可の取
消処分はほとんどなされていないのが実情であるから,このことも法の解釈
に当たっては考慮されるべきである。
,,,したがって法人の役員等が禁錮以上の刑に処せられその執行を終わり
又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者という許可の
欠格要件の意義については,廃棄物収集運搬業務に関する犯罪行為によって
処罰を受けた場合に限定されるというべきである。
もし,以上のような解釈が採り得ないとすれば,法の上記各規定は,憲法
31条の適正手続の保障の趣旨に反し,また,憲法22条の職業選択の自由
を侵害するものであるから,違憲であって無効といわざるを得ない。
他の許可取消処分がなされたことを取消事由として当該許可を取り消す場(2)
合にも,上記のことはそのまま妥当し,先行許可取消処分の事由となった欠
格要件は廃棄物収集運搬業務に関連するものに限定されなければならず,本
件のように法人の業務を離れた道路交通法違反による役員に対する禁錮刑の
場合には適用されないというべきである。
もし,欠格要件につき上記のとおり限定されないとすると,先行して許可
取消がなされた場合には,他の許可処分も自動的に取り消されることとなる
から,先行の許可取消処分につき取消訴訟が提起されれば,この訴訟だけで
足りるとする定めがなくてはならないはずであるが,このような救済規定は
ないのである。訴訟法は,個々の訴訟を提起して別々に解決することにして
いながら,実体的には先行の許可取消処分があれば「すべて右にならえ「例」
外なく最初の取消によって全部取り消す」とされるのであれば,実体と訴訟
法とが食い違って混乱をもたらすことになる。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,以下
のとおり原審の判断を補正し,控訴人の当審における補充主張に対する判断を
付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第3の1及び2に記載のとお
りであるから,これを引用する。
原判決の補正(1)
ア原判決10頁末行から11頁8行目までを以下のとおり訂正する。
「このように,本件取消処分は,別件取消処分が効力を有することを前提
にしてされたものということができるが,別件取消処分については,控訴
人はその処分の当事者でありその取消を求めて訴えを提起することができ
るし現に別件取消処分の取消を求めて別訴を提起しているものであるな,(
お,同訴訟(さいたま地方裁判所平成●●年行ウ第●号事件)は平成1()
8年3月22日控訴人の請求を棄却する旨の判決が言い渡され,控訴人に
おいて東京高等裁判所に控訴したが,控訴棄却となっている(当裁判所に
顕著な事実。ところで,控訴人において,別件取消処分の無効事由を)。)
本件取消訴訟でも主張できることは明らかであるが,別件取消処分の取消
事由を主張し得るかは疑問がないわけではない。しかし,本件訴訟におい
て控訴人が本件取消処分の違法事由として主張するところは,その要点は
別件取消処分の違憲,無効をいうものであるから,以下,この点につき特
に論ずることなく,控訴人の主張する違法事由に即して判断する(争点2
についても同様である」。)。
イ原判決15頁のの項を以下のとおり訂正する。(5)
「以上によれば,争点1に関する控訴人の主張は採用することができな
い」。
控訴人の当審における補充主張に対する判断(2)
ア控訴人は,別件取消処分の事由となった欠格要件である控訴人会社の役
員の犯罪行為については法人の産業廃棄物収集運搬業務に関するものに限
定しなければ,欠格要件とその存在を事由とする許可取消という制裁の大
きさとの均衡を著しく欠き,憲法31条,22条に反する旨主張する。
アしかしながら,引用にかかる原判決の判示のとおり,法は,14条()
5項2号ニで「法人でその役員のうちに同号イに該当する者(法7条5
項4号ロにいう,禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執
行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者)のあるもの」
を法人の産業廃棄物収集運搬業の許可の欠格要件とすることによって,
遵法精神に欠け人の信頼を裏切る行為を行うおそれのある者を確実にそ
の業務の実質的な運営から排除して,産業廃棄物収集運搬業者の一層の
資質の向上と信頼性の確保を図ったものと解される。そして,15年改
正法によって加えられた法14条の3の2第1項は,従前は欠格要件に
該当するに至った場合であっても,産業廃棄物収集運搬業の許可を取り
消すかどうかは都道府県知事の裁量にゆだねられていたのを,欠格要件
,に該当するに至った場合には許可を取り消さなければならないものとし
もって悪質な廃棄物業者を速やかに排除し,廃棄物の適正な処理体制の
。,,一層の確保を図ろうとしたものであるそしてこのような法の改正は
国会議員の圧倒的多数の賛同によって成立したものである(乙4の1,
2,5の1ないし4。以上のような法の改正は,産業廃棄物処理をめぐ)
る社会情勢の変動に伴う立法府の政策的判断からされたものであり,そ
の各規定の文言及びその趣旨に照らせば,法は,法人の業務遂行におけ
る役員の責任の重要性に鑑み,法人の役員が禁錮以上の刑に処せられた
場合には,対象となる犯罪行為を限定することなく,欠格要件があるも
,,のとして当該法人の産業廃棄物収集運搬業の許可を取り消すこととし
もって,適正な廃棄物収集運搬業務の遂行や適正な処理体制の一層の確
保を図ろうとしたものと解される。したがって,控訴人主張のように他
業種における同種規定における許可等の欠格要件運用の実情との比較に
おいて,欠格要件に当たる法人役員の犯罪行為が法人の廃棄物収集運搬
業務に関連するものに限定されると解釈すべきであるということはでき
ない。
イそして,以上によれば,本件のように法人の役員が法人の廃棄物収()
集運搬業務とは関係なく道路交通法違反の罪により禁錮以上の刑に処せ
られた場合であっても,法人の産業廃棄物収集運搬業の許可は取り消さ
れる結果,法人は,当該許可に係る産業廃棄物収集運搬業を行えなくな
ることになる。控訴人は,この点について,役員の廃棄物収集運搬業務
に関係のない犯罪行為及び刑罰と許可取消によって法人が被る影響との
均衡が欠けていると主張するが,上記のような法人による廃棄物の適正
な業務処理体制を確保するという目的の達成のためには,役員の犯罪行
為を限定しないで全般的に法を遵守させ,社会の信頼に応える必要があ
るものと解され,他方,役員が犯罪に及んだ場合には,その刑が確定す
るまでに役員を解任するか,役員が辞任すれば許可取消を免れることも
できるのであるから,役員の廃棄物収集運搬業務に関係のない犯罪行為
及び刑罰とそれを事由とする許可取消によって法人が被る影響との均衡
が欠けているということはできず,これらの規定は憲法31条に違反す
るものではない。
なお,この役員の辞任又は解任は,もとより,役員が犯罪を認めてい
る場合を前提とするものであるが,役員が禁錮以上の刑に処せられたと
いう欠格要件は,刑が確定していなければならないものであるから,役
員が犯罪の嫌疑を受けているにとどまる場合には,この欠格要件がある
ことにならないし,役員が刑事手続においてこれを争うことに何ら支障
はないものである。
ウ以上のとおりであるから,控訴人の上記主張は採用することができ()
ない。
イ控訴人は,本件のように先行許可取消処分を事由として当該許可の取消
処分をする場合においては,先行許可取消処分の原因となった欠格要件,
すなわち法人役員が禁錮以上の刑に処せられたという事由は,法人の廃棄
物収集運搬業務に関連するものに限定されるべきである旨主張する。
しかしながら,欠格要件について,法人役員の犯罪行為を法人の廃棄物
収集運搬業務に関連するものに限定すべきという解釈が採り得ないことは
上記のとおりであり,このことは,先行許可取消処分を理由とする当該許
可取消処分の場合にも何ら変わらないものというべきである。
なお,先行許可取消処分の取消訴訟が係属した場合に,その許可取消処
分通知を受けてなされる後行の許可取消処分について,他の裁判所におい
て取消訴訟が係属し得ることがあり,廃棄物収集運搬業の許可取消に関し
て,訴訟手続上,併合等について特別の規定が定められているわけではな
く,これらが別途並行的に審理されることになるが,このような事態は,
不適格業者を迅速かつ確実に排除するために,先行許可取消処分の確定を
待つことなく,許可取消処分がなされたことを事由として当該許可の取消
をすることができると定められていることから生じ得るものであり,受訴
裁判所によっては判断が区々になり得ることがあるとしても,そのことか
ら後行許可取消処分が違法であるということはできない。
したがって,控訴人の上記主張も採用することができない。
2よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,こ
れを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第16民事部
裁判長裁判官宗宮英俊
裁判官坂井満
裁判官畠山稔

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