弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人荒井金雄、同河崎光成、同鈴木栄二郎、同飯田孝朗の上告理由は別紙
のとおりである。
 論旨はまず、全文改正された昭和三三年五月法律第一二八号国家公務員共済組合
法のもとにおいても、同法で定める長期給付の事業は、組合の事業であつて連合会
の事業ではなく、従つて、掛金の俸給に対する割合の決定も、連合会ですべきでは
なく、組合ですべきものであるというのである。
 よつて同法の規定を見るに、同法二一条一項一号は、連合会の事業として「長期
給付の決定及び支払」とのみ規定し、また同法二四条一項六号は、連合会の定款の
記載事項として「長期給付の決定及び支払に関する事項」とのみ規定して掛金に関
する事項を規定せず、一方、組合の定款記載事項を定めた同法六条一項では、その
六号で「給付及び掛金に関する事項」と規定してあつて、所論のように、長期給付
の決定及び支払の事務以外の事務は、すべて単位組合の事務に属するようにも見え
る。
 同法施行前の旧国家公務員共済組合法のもとにおいては、事業は組合を中心に行
われたことはいうまでもない。しかし昭和三三年の法律全文改正は、従来の恩給制
度にかわるものとして長期給付の事業を取り入れたのであつて、ことの性質上小規
模の組合では合理的な運営が困難であり、連合会の事業とすることが妥当であるこ
とは明白である。これを法律の規定上から見ても、同法一〇一条三項(昭和三四年
法律第一六三号により同条四項に変更)は、加入組合は長期給付に充てるべき掛金
を連合会に払い込むべき旨を規定し、同法三六条、一八条、十九条は、連合会は長
期給付に充てるべき積立金を積み立て、これを運用すべき旨を規定し、ことに、同
法四一条一項が、長期給付に関する多くの事項について、他の規定中の組合を連合
会と読み替えていることによつても、同法の趣旨が、連合会加入組合に関する長期
給付の事業を連合会の事業とするにあることは明らかである。俸給と掛金との割合
についても、同法四一条一項は、一〇〇条二項の組合を連合会と読み替えているの
であるから、連合会の定款で定めるべきことに帰し、その割合を組合で定めさせる
趣旨とは解することができない。
 論旨は、加入組合の組合員は組合の運営審議会に参加して組合の掛金率の決定、
変更について、組合員の意思を反映することができるにかかわらず、連合会は組合
員が直接に構成していないため、右のように、長期給付の事業を連合会の事業と解
するならば、長期給付の事業については、組合員の意思が反映されないというので
ある。しかしながら、連合会は加入組合によつて構成され、加入組合が組合員の意
思を反映するような組織のもとに運営されている以上、連合会も間接的には組合員
の意思により運営されているものというべく、所論のような理由によつて、長期給
付の掛金率を各組合で決定すべきものということはできない。
 論旨はまた、同法施行後においても昭和三四年一〇月一三日までは、長期給付の
掛金率を連合会定款で定めず各組合定款で定めていたことにより、連合会定款で長
期給付の掛金率を定めることは違法であるという。
 もとより、各組合がその定款で長期給付の掛金率を定めることが違法であるとは
いえない。各組合の定款で短期給付の掛金率を定めている以上、長期給付の掛金率
も組合定款で定めることが望ましいといえるかも知れない。論旨で述べている連合
会定款による長期給付の掛金率決定に至るまでの監督命令並びに通達の経緯も、右
のような趣旨において理解できないことではない。しかし、前述のように、長期給
付の事業を連合会の事業と解すべく、そして事業主体たる連合会が定款を変更して
掛金率を定め、大蔵大臣の認可を得た以上は、各組合の定款においてもこれと異な
つた掛金率を定め得ないのは勿論、組合中に、定款で掛金率を定めないものがあつ
ても、連合会定款の掛金率をもつて、法一〇一条による給与からの控除をすべきは
当然であり、組合及び連合会がその控除された掛金額の払込を受けた点において何
ら違法とすべき理由はない。論旨はすべて理由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠

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