弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
本件補助参加の申出を許可する。
異議によつて生じた費用は申請人ら三名の負担とする。
       理   由
 補助参加申出人(以下参加組合という)の参加の趣旨および理由並びに申請人ら
三名の異議理由はそれぞれ別紙(一)並びに同(二)記載のとおりである。
 まず、一件記録によると、申請人ら三名の本件仮処分申請の趣旨は「(1)被申
請人は、申請人ら三名をその従業員として仮りに取扱え。(2)被申請人は、昭和
四五年四月五日以降毎月末日限り、申請人Aに対し金六四、七〇〇円、同Bに対し
金六三、〇五八円、同Cに対し金六一、四三一円をそれぞれ仮りに支払え。(3)
申請費用は被申請人の負担とする。」との裁判を求めるというのであり、その理由
とする被保全権利の要旨は「申請人らは被申請会社の従業員であつたところ、被申
請会社は昭和四五年四月四日申請人ら三名を解雇した。しかして、右解雇事由は被
申請会社、参加組合間にはいわゆるユニオン・シヨツプ協定が存するところ、申請
人ら三名はそれより前参加組合を脱退したことによるという。しかし、(1)申請
人らは参加組合から脱退を強要されたが、これを拒否したし、仮りに脱退したとし
ても、申請人らの脱退は単なる個別脱退ではなく、全港湾関西地方沿岸南支部四国
高速運輸分会を結成し、これに加入したためであり、この現象は組合の分裂と目す
べきものであつて、かゝる場合には既存組合と使用者間のユニオン・シヨツプ協定
の適用はない。(2)仮りに然らずとしても、本件解雇は、不当労働行為である。
以上いずれにしても、本件解雇は無効であるから、申請人らは依然被申請会社の従
業員たる地位を有する。」というにあることが明らかである。
 そこで、参加組合の本件補助参加要件の存否につき按ずるに、参加組合の提出し
た疏明並びに一件記録に徴すると、被申請会社の従業員である申請人B、同Aは昭
和四五年三月一四日、同Cは同月一八日それぞれ参加組合を脱退したところ、参加
組合は当時被申請会社との間でいわゆるユニオン・シヨツプ協定を締結していたの
で、同月三〇日被申請会社に右脱退受理の通告をなし、よつて被申請会社は申請人
ら三名を解雇したことが疏明せられる。そこで、申請人ら三名は被申請会社を相手
方として前示仮処分訴訟をおこしたのであるが、いまもし右訴訟において被申請会
社が前記ユニオン・シヨツプ協定の効力を否認され敗訴するときは、被申請会社と
しては申請人らの従業員たる地位を容認せねばならず、右被申請会社、申請人ら間
の法律関係は事柄の性質上第三者たる参加組合としても実体上これを承認せざるを
えない立場にあり(いわゆる対世効ないしは反射効)、これはとりもなおさず参加
組合のいわば既得権ともいうべきシヨツプ協定上の権利を否認されたことになり、
参加組合の組織の維持強化に支障を来たすこと必然である。してみると、参加組合
はまさに右訴訟の結果につき利害関係を有するのであり、右利害関係は、参加組合
の団結権に思いをいたすと、到底単なる事実上、感情上のものとはいえず、かえつ
て法律上の利害関係であると解すべきものである。しかして、以上の判断は本件被
参加訴訟が本案訴訟にあたらず、保全訴訟であることの故に何らの消長も来たさな
い。
 申請人らは、本件異議事由として、本件訴訟では、シヨツプ協定無効のほか、不
当労働行為をも理由として地位保全を求めていることの故に、参加組合の補助参加
利益がないかのように述べているが、二次的に他に解雇無効事由が附加されている
の一事をもつて一次的事由にかゝる参加の利益が消滅するわけではないこともちろ
んであるから、右主張は失当である。また、さらに申請人らは、参加組合が有する
利害関係は本件訴訟の訴訟物に関するものでなく、せいぜい被保全権利を理由あら
しめる事実に関するものに過ぎないから参加の利益を欠く旨述べるけれども、参加
組合としては被申請会社敗訴の結果たる申請人らの従業員の地位を承認すること自
体について法律上の利害関係を有すると解すべきこと前説示のとおりであるから、
右主張も採用し難い。参加要件を定めた民訴法六四条にいわゆる「訴訟ノ結果」を
即当該訴訟の判決主文または訴訟物自体と限定して解すべき文理上の必然性は必ら
ずしも見出し難いと言えないわけではなく、むしろ、参加人、被参加人間の後訴に
おける無用の再紛争を封ずるという補助参加制度の実際面における機能に思いをい
たすならば、かえつて、叙上の如く制限的に解することに疑念なしとしないのであ
つて(殊に、本件のように従業員たる地位の確認を本案とする場合の被保全権利は
「解雇無効の確認」と表現される場合もあるように、解雇事由と密接表裏の関係に
おいてその存否が決せられる場合はそうである)、現に前記のように解すると、
(1)保証債務請求訴訟における主債務者の保証人のためにする補助参加の利益す
ら否定せざるを得ず、また(2)ある訴訟の一方当事者につきいわゆる主観的択一
関係にある第三者(例えば、甲が乙を契約当事者本人として契約責任を追求する訴
訟につき、乙は単に丙の代理人であつたかもしれないような場合における本人丙)
を補助参加せしめた場合の実際上の便宜を奪う等の支障も存する((1)の点を理
由に「訴訟ノ結果」とは当該判決の主文のみならず理由中の判断をも含むと解して
いる大阪高裁昭四一・二・二決定高民集一九巻一号五一頁参照)ことが指摘されな
ければならない。
 そうすると、参加組合は本件仮処分訴訟につき被申請会社のための補助参加要件
を具備している(結論同旨・東京高裁昭和四二・五・四決定労民集一八巻六号一〇
八五頁)。
 よつて、参加組合の被申請会社のためにする本件参加申出は適法であるからこれ
を許し、異議によつて生じた費用の負担につき民事訴訟法九四条・八九条を適用し
て主文のとおり決定する。
(裁判官 畑郁夫 葛原忠知 久保田徹)
別紙(一)
参加の趣旨
 右事件につき被申請人を補助するための該訴訟に参加しようとするにある。
参加の理由
 申請人らは被申請人がなした解雇を無効としてなお従業員たる地位があるとして
本申請に及んでいるものであるが、右解雇は補助参加申出人組合が申請人らの同組
合脱退を理由としてユニオン・シヨツプ協定に基き被申請人会社に同人らの解雇要
求をなした結果出されたものである。これに対し申請人らは右ユニオン・シヨツプ
協定は同人らに対しては適用されないと主張して解雇無効を訴えているのである。
従つて本件訴訟の結果は補助参加人にとつて法律上重大な利害関係がある。よつて
ここに利害関係者として被申請人を補助するため本申出に及ぶ次第である。
別紙(二)
異議申立の理由
 四国高速運輸労働組合(執行委員長D)は、昭和四五年七月六日補助参加の申出
をしたが、申請人らはいずれもユニオン・シヨツプ協定適用の誤りのみならず、不
当労働行為をも理由として従業員たるの地位保全をもとめているのであつて、参加
人組合の解雇要求は、せいぜい訴訟物を理由あらしめる事由に過ぎないから、同組
合は本件訴訟物に関しては何ら法律上の利害関係を有しないといわねばならない。
(参照・名古屋高裁昭和四四年六月四日決定)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛