弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
○事実
第一当事者の求めた判決
一原告
1被告が原告に対してした次の各処分をいずれも取り消す。
(一)原告の昭和三六年分の所得税について昭和四二年三月九日付けでした更正及び重
加算税賦課決定
(二)原告の昭和三七年分の所得税について昭和四三年三月五日付けでした更正及び重
加算税賦課決定
(三)原告の昭和三八年分ないし昭和四〇年分の各所得税について昭和四三年三月五日
付けでした各更正並びに重加算税及び過少申告加算税の各賦課決定
2訴訟費用は被告の負担とする。
二被告
主文同旨
第二原告の請求原因
一課税処分と不服申立の経過
原告の昭和三六年分ないし昭和四〇年分(以下「本件係争各年分」という)の所得税に。

いて、原告がした各確定申告(昭和三八年分については修正申告を含む、これに対し。)

被告がした各更正(再更正を含む)及び各加算税賦課決定、並びに原告がした各不服申。

(みなす審査請求を含む)に対して国税不服審判所長がした各審査裁決の経緯は、別表。

の1ないし5記載のとおりである。
二青色申告
原告は、昭和三八年分ないし昭和四〇年分の所得税について、被告から青色申告の承認を
受けて青色申告書を提出した。
三不服の範囲
原告は、昭和・三六年分の更正一審査裁決により一部取り消された後のもの)及び昭和三
七年分ないし昭和四〇年分の各再更正(以下本件係争各年分の右更正及び再更正を併せて
「本件各更正」という)について以下のとおり不服であり、したがつて、これらを前提。

してされた別表一の1ないし5記載の各加算税賦課決定(昭和三六年分の重加算税賦課決
定は審査裁決により一部取り消された後のもの。以下本件係争各年分の右各賦課決定を併
せて「本件各賦課決定」という)も不服である。。
1昭和三六年分及び昭和三七年分の本件各更正は、いずれも法定申告期限から三年を経
過した日以後にされている(別表一の1、2。国税通則法七〇条一項参照。)
2原告の昭和三八年分ないし昭和四〇年分の所得税についての更正は、いずれも推計に
よつており、かつ、更正の理由が附記されていない(所得税法一五五条二項、一五六条参
。(「」。)照但し昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法以下旧所得税法という
では四五条二項及び三項。)
3原告は、昭和四〇年四月六日、同年五月一日及び同年六月一六日の三回にわたり密輸
嫌疑(関税法違反被告事件)で起訴され、第一審では有罪となつたが、控訴審で密輸の点
は無罪となり(なお、有罪とされたAとの取引は密輸ではない、同判決は確定してい。)
る。
ところが、本件各更正は、係争各年度に原告が金地金を密輸入して所得を得ているとして
いる。
4原告の総所得金額を過大に認定している。
四よつて、原告は、本件各更正及び本件各賦課決定の取消しを求める。
第三請求原因に対する認否
請求原因一及び二の事実は認める。
同三のうち、1及び2の事実を認め、3の事実は、原告が昭和四〇年四月六日薬事法違反
及び関税法違反で、同年五月一日及び同年六月一六日各関税法違反被告事件で、それぞれ
起訴され、第一審で有罪とされた事実の一部分について控訴審で無罪となり、同判決が確
定した限度で認め、その余は否認する。
第四抗弁
一課税処分の経緯及び推計の必要性について
1原告は、昭和一一年ころ現在地において貴金属の分析及び精錬を始め、昭和二六年こ
ろから貴金属の加工及び販売を行い、昭和四〇年一一月歯科用貴金属の製造及び販売につ
いて厚生省の許可を受けているが、その営業状態は、商品陳列等の店舗設備がなく、電話
による受注及び外交販売を主体としたものである。そして、原告は、右営業による事業所
得として別表一記載のとおり被告に対して申告していた。
2昭和四一年五月、関東信越国税局が合資会社白金を法人税法違反の嫌疑により調査し
た際、同社の取引先であつた原告も同国税局の調査を受け、その結果原告が多数・多額の
仮名預金を設定している事実が明らかとなつた。
東京国税局は、これら多数・多額の仮名預金が存在するところから、原告が所得を過少に
申告して所得税を免れているのではないかとの疑いを抱き、同年六月一〇日、原告に対し
て強制調査を実施したところ、原告の自宅からは隠匿、保管されていた金地金及び現金並
、、、びに仮名の預金通帳及び有価証券等がまた三和銀行上野支店からは多数・多額の仮名
無記名の預金等が、更に、東洋信託銀行日本橋支店において原告が「B」名義で使用して
いた貸金庫からは、仮名、無記名の定期預金証書並びに社債券、株券、電信電話債券及び
約束手形等の有価証券並びに右仮名、無記名の預金に使用されていた木製の印鑑等が、
それぞれ発見された。そのほか、平和相互銀行浅草支店における調査の際、同支店長代理
Cが保管していた新聞紙包みの中から原告所有の社債券、株券、電信電話債券及び約束手
形等の有価証券が発見された。
なお、Cが保管していた右有価証券は、同人が原告の妻の依頼により三井銀行雷門支店に
おいて自己の名義で使用していた貸金庫に保管していたものを、発覚を恐れて原告に返還
しようと勤務先に持ち帰つていたところ発見されたものである。
3右預金及び有価証券は、実名の一部を除いてすべて原告の帳簿及び原告が被告に提出
した昭和三八年分ないし昭和四〇年分の青色申告決算書に計上されていないものであつた
ので、東京国税局は、その資金源の解明調査を行うとともに、それら簿外資産の全容を把
握するべく調査を行つたところ、原告は、右簿外資産の資金源となつた簿外取引について
帳簿書類に一切記帳しておらず、かつ、右取引に関する証拠書類及び証拠物を一切残して
いなかつた。また、原告は、東京国税局の調査に対して、右簿外資産が自己に帰属するも
のであること及び脱税の事実を認めたが、その具体的内容については、わずかに昭和四〇
年二月Aから密輸の金地金五キログラムを買い入れ、Dに売り渡したことを供述したのみ
、、。でありそれ以上の事実を明らかにしようとはせず調査に対して終始非協力的であつた
加えて、東京国税局の広範囲に及ぶ取引関係者等に対する綿密な反面調査においても、一
部の者の協力しか得られなかつた。
かかる状況下で東京国税局が解明し得た簿外取引は次のとおりである。
(一)預金の一部にEからの送金小切手の振込があり、これは、同人が原告から仕入れ
た金地金代金の支払であることが判明した結果、昭和三六年から昭和四〇年までの間に富
士銀行菊井町支店及び住友銀行名古屋支店において取り組まれた送金小切手による右預金
への入金額合計一億八八三五万八四〇〇円は、原告の簿外売上となるものである。
(二)原告は「小林分析所」及び「佐藤分析所」の名称を用いて合資会社白金に金地金
を売り上げていることが判明したが、佐藤分析所名義による原告の簿外売上は、昭和三六
年ないし昭和四〇年の間の合計三億二九八一万八六〇八円にのぼる。
(三)原告は、昭和四〇年二月二日Aから密輸品の金地金五キログラムを仕入れ、
これを熔解・圧延してDに簿外で売り渡していた。
(四)原告は、昭和三九年四月七日から同年八月六日までの間に金地金合計三一キログ
ラムを二八回にわたつて一グラム当たり四九六円ないし五四九円三〇銭でFに簿外で売り
渡していた。
(五)原告は、事業所得に係る簿外取引のみならず、雑所得に係る利息収入も申告しな
かつたばかりか、配当所得として申告すべき株式配当についても申告しなかつた。
4右の事実は、所得税法一五〇条一項三号に該当するから、被告は、後記五のとおり、
原告が青色申告の承認を受けていた昭和三八年分に遡つて右承認を取り消す旨の本件青色
申告承認取消処分をした。
更に、被告は、原告の右簿外取引に係る所得の金額について、前記のとおり実額で確定す
ることが不可能であつたので、やむをえず東京国税局の調査により把握した預金及び有価
証券のうち明らかに簿外と認められる資産を基にして、本件係争各年分ごとの資産増減額
を求め、いわゆる資産増減法によつて、その所得金額を推計した上、原告に対して別表一
記載のとおり課税処分を行つたものである。
二原告の総所得金額の計算根拠
原告の本件係争各年分の総所得金額の計算根拠は、以下に述べるとおりであり、その各金
額は、本件各更正に係る各総所得金額を上回るから、本件各更正は適法である。なお、所
得税の課税標準は所得の種類によつて区分して計算するので、本件係争各年分の純資産増
、、加額のうちその年中に受けた株式又は出資に対する配当に相当する金額は配当所得とし
公社債及び預貯金の利子又は合同運用信託の収益の分配に相当する金額は利子所得とし
(もつとも、利子所得は、非課税又は分離課税の対象となつているので、総所得金額の計
算上は除外している、貸付金に係る利子に相当する金額は雑所得とし、その余は取引。)

等の調査に基づき原告の事業に係る所得からなるものとして事業所得としたものである。
1昭和三六年分
(一)総所得金額(九六〇万三五八九円)の内容
(1)申告所得金額(事業所得)
一〇一万〇〇〇〇円
(2)別途所得金額(配当所得)
二万六五〇〇円
(雑所得)三八万九
一八四円
(事業所得)八一七万七
九〇五円
(二)別途所得金額(計八五九万三五八九円)の内容
原告の簿外資産に基づいて、別表二の1記載のとおり資産増減法により推計した金額であ
る。
(三)各科目(別途所得金額を除く別表二の1)の計算根拠
(1)現金(符号1)
査察調査日現在、別途保管されていた簿外の現金から推計した金額である。
(2)普通預金(符号2)及び定期預金(符号3)
別表三記載のとおりである。
(3)売掛金(符号4)
合資会社白金に対する金地金等の売掛金である。
(4)株式(符号5)
別表四記載のとおりである。
(5)出資(符号6)
別表五記載のとおりである。
(6)商品(符号7)
査察調査日現在、別途保管されていた簿外の商品(金地金)から推計した金額である。
(7)貸付金(符号8)
別表六記載のとおりである。
(8)未収利息(符号9)
原告は、Gに対し、昭和三五年六月ころ二〇〇万円及び同年七月ころ一五〇万円、合計三
五〇万円を貸し付け、表向き月二分の利息約定であつたが、Gは、右借入当時から査察調
査日に至るまでの間、その元本及び利息の支払を全くしておらず、かえつて、右借入の借
用書に代えて、昭和三八年八月ころ、株式会社松村金銀店名義の定期預金証書二通(額面
合計二四〇万円)及び銀座電機株式会社振出の手形(額面二三〇万円)一通の合計四七〇
万円を原告に対して差し入れていた。
ところで、金銭貸借の際には、その元本及び利息の額に見合う手形その他の有価証券が借
主から貸主に対して担保的に供されることが一般的に行われているのが通例であり、右事
実がこれに当たるものと認められることから、右貸付金の実質利息を算定するに当たつて
は、昭和三八年八月現在における元利合計が四七〇万円であり、
右金額から貸付元本三五〇万円を控除した残額一二〇万円が昭和三五年八月から昭和三八
年八月までの利息(三七月分)と認めるのが合理的である。
そうすると、右の月平均額三万二四三二円に本年分の月数一二を乗じた三八万九一八四円
が本年分の期中増加未収利息となる。
(9)事業主貸(符号10)
配当に係る支払済源泉徴収所得税であり、別表七記載のとおりである。
(10)事業主借(符号12)
分離課税の対象となる預金利子であり、別表三記載のとおりである。
(11)元入金(符号13)
昭和三五年末簿外純資産の当期繰越額である。
(四)別途所得金額の計算根拠
別途所得金額の所得の種類別の計算根拠は次のとおりである。
(1)配当所得
配当の収入金額であり、別表七記載のとおりである。
(2)雑所得
前記(三(8)のGに対する貸付金の本年分の利息収入である。)
(3)事業所得
別途所得金額から右(1)及び(2)を差し引いた金額である。
2昭和三七年分
(一)総所得金額(一九三一万〇九九三円)の内容
(1)申告所得金額(事業所得)
二三一万八二七九円
(2)別途所得金額(配当所得)
一六万九一二五円
(雑所得)三八万九
一八四円
(事業所得)一六四三万四
四〇五円
(二)別途所得金額(計一六九九万二七一四円)の内容
原告の簿外資産に基づいて、別表二の2記載のとおり資産増減法により推計した金額であ
る。
(三)各科目(別途所得金額を除く別表二の2)の計算根拠
(1)現金(符号1)
昭和三六年分と同様である。
(2)普通預金(符号2)及び定期預金(符号3)
別表三記載のとおりである。
(3)売掛金(符号4)
合資会社白金に対する金地金等の売掛金である。
(4)株式(符号5)
別表四記載のとおりである。
(5)出資金(符号6)
別表五記載のとおりである。
(6)商品(符号7)
昭和三六年分と同様である。
(7)貸付金(符号8)
別表六記載のとおりである。
(8)預け金(符号9)
大和証券株式会社兜町営業本部に対する株式売買取引に係る預け金の期末残高である。
(9)未収利息(符号10)
Gに対する貸付金の未収利息であり、その計算根拠は昭和三六年分と同様である。
(10)事業主貸(符号11)
配当に係る支払済源泉徴収所得税であり、別表七記載のとおりである。
(11)事業主借(符号13)
一課税又は分離課税の対象となる次の金額の合計額である。
(1)現物取引による株式売買益
四一万七七七六円
別表四記載のとおりである。
(2)信用取引による株式売買益
三六万三一六八円
(3)預金利子
五〇万五〇九五円
(12)元入金(符号14)
昭和三六年度末簿外純資産の当期繰越額である。
(四)別途所得金額の計算根拠
別途所得金額の所得の種類別の計算根拠は、次のとおりである。
(1)配当所得
配当の収入金額であり、別表七記載のとおりである。
(2)雑所得
前記(三(9)のGに対する貸付金の本年分利息収入である。)
(3)事業所得
別途所得金額から右(1)及び(2)を差し引いた金額である。
3昭和三八年分
(一)総所得金額(四〇四七万七四〇六円)の内容
(1)申告所得金額(事業所得)
二三八万八九九三円
(2)別途所得金額(配当所得)
五七万五七一七円
(雑所得)八六万九
七四四円
(事業所得)三六六四万二
九五二円
(二)別途所得金額(計三八〇八万八四一三円)の内容
原告の簿外資産に基づいて、別表二の3記載のとおり資産増減法により推計した金額であ
る。
(三)各科目(別途所得金額を除く別表二の3)の計算根拠
(1)現金(符号1)
昭和三六年分と同様である。
(2)普通預金(符号2)及び定期預金(符号3)
別表三記載のとおりである。
(3)売掛金(符号4)
合資会社白金に対する金地金等の売掛金である。
(4)受取手形(符号5)
別表九記載のとおりである。
(5)株式(符号6)
別表四記載のとおりである。
(6)出資(符号7)
別表五記載のとおりである。
(7)商品(符号8)
昭和三六年分と同様である。
(8)貸付金(符号9)
別表六記載のとおりである。
(9)保証金(符号1〇)
大和証券株式会社兜町営業部に対する株式売買の信用取引に係る保証金の期末残高であ
る。
(10)預け金(符号11)
大和証券株式会社兜町営業部に対する株式売買取引に係る預け金である。
(11)未収利息(符号12)
Gに対する貸付金の未収利息であり、その計算根拠は昭和三六年分と同様である。
(12)青色専従者給与額(符号13)
本件青色申告承認取消処分による青色専従者給与否認額である。
(13)事業主貸(符号14)
次の金額の合計額である。
(1)配当に係る支払済源泉徴収所得税
別表七記載のとおりである。
(2)現物取引による株式売買損
九万三四二〇円
別表明記載のとおりである。
(3)信用取引による株式売買損
一〇三万四九八四円
別表八記載のとおりである。
(4)大船の別荘の建築費
一〇六万〇八一〇円
原告は、昭和三八年八月に新築した鎌倉市<地名略>の別荘の取得に当たり、同年四月二
八日株式会社渡辺建設との間で契約金一〇〇万円の新築工事請負契約を交わし、その工事
代金として同年五月一五日に五〇万円、同年八月一五日に五六万〇八一〇円を原告の簿外
資金から支出した。
(14)事業主借(符号16)
分離課税の対象となる預金利子であり、別表三記載のとおりである。
(15)元入金(符号17)
昭和三七年末簿外純資産の当期繰越額である。
(四)別途所得金額の計算根拠
別途所得金額の所得の種類別の計算根拠は、次のとおりである。
(1)配当所得
配当の収入金額であり、別表七記載のとおりである。
(2)雑所得
次の利息収入の合計額である。
(1)前記(三(1)のGに対する貸付金の未収利息)
三八万九一八四円
(2)共同映画株式会社に対する貸付金の利息
四八万〇五六〇円
(3)事業所得
別途所得金額から右(1)及び(2)を差し引いた金額である。
4昭和三九年分
(一)総所得金額(八四一七万八八五八円)の内容
(1)申告所得金額(事業所得)
二六九万九三一二円
(譲渡所得−損失)一〇万五
七八〇円
(2)別途所得金額(配当所得)
六二万四九二八円
(雑所得)五〇万二一
八四円
(事業所得)八〇四五万八
二一四円
(二)別途所得金額(計八一五万五三二六円)の内容
原告の簿外資産に基づいて、別表二の4記載のとおり資産増減法により推計した金額であ
る。
(三)各科目(別途所得金額を除く別表二の4)の計算根拠
(1)現金(符号1)
昭和三六年分と同様である。
(2)普通預金(符号2)及び定期預金(符号3)
別表三記載のとおりである。
(3)売掛金(符号4)
合資会社白金に対する金地金等の売掛金である。
(4)受取手形(符号5)
別表九記載のとおりである。
(5)不渡手形(符号6)
別表一〇記載のとおりである。
(6)株式(符号7)
別表四記載のとおりである。
(7)出資(符号8)
別表五記載のとおりである。
(8)商品(符号9)
昭和三六年分と同様である。
(9)貸付金(符号1〇)
別表六記載のとおりである。
(10)割引興業債券(符号11)
原告が東和証券株式会社において昭和三九年一二月二五日に取得したものである。
(11)保証金(符号12)
昭和三八年から繰り越された保証金の期首残高であり、本年中に全額払い出されたもので
ある。
(12)預け金(符号13)
東和証券株式会社に対する株式売買取引に係る預け金である。
(13)未収利息(符号14)
Gに対する貸付金の未収利息であり、
その計算根拠は昭和三六年分と同様である。
(14)青色専従者給与額(符号15)
本件青色申告承認取消処分による青色専従者給与否認額である。
(15)事業主貸(符号16)
次の金額の合計額である。
(1)配当に係る支払済源泉徴収所得税
三万四三六五円
別表七記載のとおりである。
(2)現物取引による株式売買損
一四二万八八〇二円
別表四記載のとおりである。
(3)信用取引による株式売買損
四万四六三五円
別表八記載のとおりである。
(16)事業主借(符号18)
分離課税の対象となる預金利子であり、別表三記載のとおりである。
(17)元入金(符号19)
昭和三八年末簿外純資産の当期繰越額である。
(四)別途所得金額の計算根拠
別途所得金額の所得の種類別の計算根拠は、次のとおりである。
(1)配当所得
配当の収入金額であり、別表七記載のとおりである。
(2)雑所得
次の利息収入の合計額である。
(1)前記(三(13)のGに対する貸付金の未収利息三八万九一八四円)
(2)共同映画株式会社に対する貸付金の利息
一一万三〇〇〇円
(3)事業所得
別途所得金額から右(1)及び(2)を差し引いた金額である。
5昭和四〇年分
(一)総所得金額(四〇〇五万五一三九円)の内容
(1)申告所得金額(事業所得)
二七〇万〇〇〇〇円
(2)別途所得金額(配当所得)
四七万四五六二円
(雑所得)三九六万六六
五五四円
(事業所得)三二九一万四
〇二三円
(二)別途所得金額(計三七三五万五一三九円)の内容
原告の簿外資産に基づいて、別表二の5記載のとおり資産増減法により推計した金額であ
る。
(三)各科目(別途所得金額を除く別表二の5)の計算根拠
(1)現金(符号1)
昭和三六年分と同様である。
(2)普通預金(符号2)及び定期預金(符号3)
別表三記載のとおりである。
(3)貸付信託(符号4)
東洋信託銀行日本橋支店においてB名義で設定した貸付信託(証券番号E五−七八)であ
る。
(4)金銭信託(符号5)
右貸付信託の利息の積み立てのためにB名義で設定した金銭信託(証券番号預甲五九八)
である。
(5)売掛金(符号6)
合資会社白金に対する金地金等の売掛金である。
(6)受取手形(符号7)
別表九記載のとおりである。
(7)不渡手形(符号8)
別表一〇記載のとおりである。
(8)株式(符号9)
別表四記載のとおりである。
(9)社債(符号1〇)
別表一一記載のとおりである。
(10)電信電話債券(符号11)
別表一二記載のとおりである。
(11)出資(符号12)
別表五記載のとおりである。
(12)商品(符号13)
昭和三六年分と同様である。
(13)貸付金(符号14)
別表六記載のとおりである。
(14)割引興業債券(符号15)
昭和三九年から繰り越された割引興業債券の期首残高であり、本年中に現金化されたもの
である。
(15)株式払込金(符号16)
日本電気株式会社の増資に伴う新株引き受けのための払込金であり、昭和四一年一月一日
付けで株式に振り替えられている。
(16)預け金(符号17)
昭和三九年から繰り越された預け金の期首残高であり、本年中に全額払い出されたもので
ある。
(17)未収利息(符号18)
Gに対する貸付金の未収利息であり、その計算根拠は昭和三六年分と同様である。
(18)青色専従者給与額(符号19)
本件青色申告承認取消処分による青色専従者給与否認額である。
(19)事業主貸(符号20)
配当に係る支払済源泉徴収所得税であり、別表七記載のとおりである。
(20)借入金(符号22)
次の金額の合計額である。
(1)日本貴金属協同組合からの借入金
四〇万〇〇〇〇円
(2)平和相互銀行浅草支店からの借入金
五〇〇万〇〇〇〇円
(21)未払金(符号23)
東和証券株式会社に対する株式取得代金の未払額である。
(22)事業主借(符号24)
非課税又は分離課税の対象となる次の金額の合計額である。
(1)現物取引による株式売買益
三一万一八三七円
別表四記載のとおりである。
(2)信用取引による株式売買益
三〇万〇二三〇円
別表八記載のとおりである。
(3)社債利子
六六万〇五一五円
(4)非課税小口配当
四三万八八九二円
別表七記載のとおりである。
(5)電信電話債券売買益
三万三九一三円
別表一三記載のとおりである。
(6)預金利子
二一六万三〇一九円
別表三記載のとおりである。
(23)元入金(符号25)
昭和三九年末簿外純資産の当期繰越額である。
(四)別途所得金額の計算根拠
別途所得金額の所得の種類別の計算根拠は、次のとおりである。
(1)配当所得
配当の収入金額であり、別表七記載のとおりである。
(2)雑所得
次の合計額である。
(1)前記(三(17)のGに対する貸付金の未収利息)
三八万九一八四円
(2)共同映画株式会社に対する貸付金の利息
四万一七七〇円
(3)三功紙幣計算機株式会社に対する貸付金の利息
三五三万五六〇〇円
(3)事業所得
別途所得金額から右(1)及び(2)を差し引いた金額である。
三推計の合理性について
第一に、本件は、いわゆる資産増減法によつたものであり、この推計方法は一般的合理性
を有する。第二に、本件は、密輸が絡む特殊な事案であり、右の資産増減法以外に合理的
な推計の基礎となる事実を把握することができない場合であるから、これによつたことは
個別的妥当性を有する。第三に、本件は、東京国税局の調査によつて確実に把握された簿
外資産を基礎にして右の推計を行つているから、確実性の要求をも満たしている。
ちなみに、被告が資産増減法により推計した前記の各別途所得金額には、原告が申告した
所得金額は含まれていないものである。
四請求原因三1に対して(偽りその他不正の行為)
昭和三六年分及び昭和三七年分の本件各更正は、いずれも法定申告期限から三年を経過し
た日以後にされているが、これについては、後記七2のとおり昭和五六年法律第五四号に
よる改正前の国税通則法七〇条二項四号の「偽りその他不正の行為によりその全部若しく
は一部を免れ」たとの要件に該当する事実があるので、本件各更正は適法である。
このことは、昭和三八年分の本件更正についても同様であり、このような場合「偽りそ、

他不正の行為」により免れた税額に相当する部分のみにその適用範囲が限られるものでは
。「」、ない偽りその他不正の行為により脱税した者に対して適正な課税を行わせるために
更正ができる期間を五年に延長したものである。したがつて、昭和三八年分の原告の全て
の所得金額について右条項を適用してなした右更正は適法である。
五請求原因三2に対して(青色申告承認取消処分)
被告は、前記昭和三八年分以降の原告の所得調査の結果に鑑みて、昭和四二年三月八日付
けで、原告に対して、遡つて請求原因二の青色申告承認を取り消す処分(以下「本件青色
申告承認取消処分」という)をした。。
右取消処分の通知書に取消事由として記載したところは「所得税法第一五〇条第一項第、
三号に該当しますから取り消します」というものであつたが、これが理由附記の不備と。

て違法であつても、それは重大な瑕疵に当たらないから、右取消処分は有効である。
したがつて、右年分以降といえども推計により更正することができ、理由附記は要件とな
らない。
六請求原因三3に対して(刑事裁判との関係)
刑事裁判において一部無罪が確定したとしても、本件各更正の効力には全く影響がない。
即ち、被告は、前記のとおり原告の本件係争各年分の別途所得金額を資産増減法により推
計したものであり、この資産の増加が刑事裁判により有罪となつた事実に基づくものか、
無罪となつた事実に基づくものかは右推計の上で始めから問うていないのである。
七本件各賦課決定の適法性について
本件各賦課決定に係る各加算税の計算根拠は、別表一四の1ないし5記載のほか、次に述
べるとおりであり、同決定は適法である。
1各加算税の対象とした総所得金額
重加算税の対象とした総所得金額は、昭和三六年分については、本件更正によつて増加し
た総所得金額の全額であり、
昭和三七年分ないし昭和四〇年分については、本件各更正によつて増加した総所得金額の
うち次の過少申告加算税の対象とした総所得金額以外の金額である。
(一)昭和三七年分
配当所得の金額のうち実名取引に係る次のもの
(1)本田技研工業株式会社配当金
一万〇〇〇〇円
(2)西華産業株式会社配当金
一万一二五〇円
(3)三菱製紙株式会社配当金
六〇〇〇円
(二)昭和三八年分
(1)配当所得の金額のうち実名取引に係る次のもの
(1)本田技研工業株式会社配当金
一万五〇〇〇円
(2)西華産業株式会社配当金
一万五九六〇円
(3)三菱製紙株式会社配当金
六〇〇〇円
(合計二万七二五〇円)
(2)青色専従者給与否認額
一二万三七五〇円
(合計一六万〇七一〇円)
(三)昭和三九年分
(1)配当所得の金額のうち実名取引に係る次のもの
(1)本田技研工業株式会社配当金
一万〇〇〇〇円
(2)西華産業株式会社配当金
二万一〇〇〇円
(3)三菱製紙株式会社配当金
一万〇〇〇〇円
(2)青色専従者給与否認額
一三万二〇〇〇円
(合計一七万三〇〇〇円)
(四)昭和四〇年分
青色専従者給与否認額
一七万二五〇〇円
2重加算税の各賦課決定について
原告は、本件係争各年分において、前記一3のとおり架空名義を用いるなどして簿外取引
を行い、年々多額の簿外資産を増加させ、また、仮名預金、無記名預金等を設定し、運用
しながら、それらを帳簿等に記載しなかつたばかりか、
実名預金等についても、それが課税対象になることを回避するため、その一部しか帳簿に
記載せず、所得税の課税標準の計算の基礎となるべき事実を隠蔽又は仮装し、もつて実際
の総所得金額を殊更過少にした内容虚偽の確定申告書を提出していた。
右の事実は、所得税法五七条一項(昭和三七年法律第六七号による改正前のもの)及び国
税通則法六八条一項に該当するから、原告が確定申告しなかつた部分の総所得金額(前記
過少申告加算税の対象とした部分を除く)に対応する納付すべき税額について、昭和三。

年分は百分の五十(右所得税法五七条一項)を、昭和三七年分ないし昭和四〇年分は百分
の三十(国税通則法六八条一項)を乗じた額の重加算税を課すべきものである。
したがつて、右範囲内である重加算税の本件各賦課決定は適法である。
3過少申告加算税の各賦課決定について
前記昭和三七年分ないし昭和四〇年分に係る過少申告加算税の対象とした総所得金額に対
応する納付すべき税額について、百分の五(国税通則法六五条一項)を乗じた額の過少申
告加算税を課すべきものである。
したがつて、右各年分に係る過少申告加算税の本件賦課決定は適法である(右総所得金額
を原告が確定申告しなかつたことについて、右六五条二項に規定する正当な理由があると
は認められない。。)
第五抗弁に対する認否
一抗弁一1の事実は認める。
同2のうち、昭和四一年五月関東信越国税局が合資会社白金を法人税法違反の嫌疑により
調査した際、同社の取引先であつた原告も同局の調査を受け、その結果、原告が若干の仮
名預金を設定している事実が明らかになつたこと、東京国税局は、原告が所得を過少に申
告して所得税を免れているのではないかとの疑いを抱き、同年六月一〇日原告に対して強
制調査を実施したところ、三和銀行上野支店から若干の仮名預金が、東洋信託銀行日本橋
、、支店において原告が使用していた貸金庫から原告に帰属する仮名無記名の定期預金証書
原告所有の社債券、株券、電信電話債券及び約束手形等の有価証券が発見されたこと、三
井銀行雷門支店において原告が使用していた貸金庫から原告所有の同種の有価証券が発見
されたことは認める。
同3のうち、東京国税局の調査当時、原告は関税法違反被告事件で審理を受けていたこと
は認めるが、調査に非協力的であつたことは否認する。原告は、法定の帳簿を備え付け、
これに金地金の取引を正確に記帳しており、かつ、東京国税局の調査にも協力していたも
のである。被告の主張する簿外売上は争う。
同4のうち、青色申告承認取消処分の存在は認め、原告の所得を実額で確定することが不
可能であつたとの主張は争う。本件において推計の必要性はない。
二抗弁二1ないし5の各(一)は、申告所得金額を認め、別途所得金額を否認し、総所
得金額を争う。
別表二の1(昭和三六年分)のうち、普通預金(符号2)の期首現在額及び差引増減額、
商品(符号7)の期首現在額及び期末現在額、貸付金(符号8)の期首現在額及び差引増
、()、。減額並びに借方合計符号11の期首現在額期末現在額及び差引増減額は否認する
売掛金(符号4)及び株式(符号5)が資産増減法の対象資産となることは否認する。株
式の売買回数は五〇回未満であり、合計二〇万株を超えないから、非課税である。
別表九(昭和三八年分ないし昭和四〇年分)の各受取手形及び別表一〇(昭和三九年分及
び昭和四〇年分)の各不渡手形が資産増減法の対象資産となることは否認する。右各手形
、、、。はいずれもHに帰属するもので原告のものではなく原告が預かつていたに過ぎない
三抗弁三は、資産増減法による推計が一般的合理性を有するものであること、被告が資
産増減法により推計した別途所得金額には原告が申告した所得金額は含まれていないこと
を認め、その推計方法が合理性を有することは後記第六のとおり争う。
四抗弁四は争う。
五同五は、本件青色申告承認取消処分及びその附記理由の記載内容を認め、その余は争
う。右の程度の附記理由の記載では「取消しの基因となつた事由」が附記されていない、

ら、右取消処分には、所得税法一五〇条二項に違反した重大な瑕疵があり、無効である。
したがつて、本件は、青色申告に係る所得の更正に該当し、推計は許されず、かつ、理由
の附記を要する。
六抗弁六は争う。
七同七は、2の事実を否認し、法律上の主張は争う。
第六原告の反論
貸金庫中のいわゆる簿外資産の帰属年度
原告が被告主張の貸金庫に保管していた預金、有価証券等のいわゆる簿外資産は、次に述
べるとおり、いずれも本件係争各年度より前に発生したものである。したがつて、右簿外
資産を基に資産増減法によつて算出された所得金額は、本件係争各年分の所得ではありえ
ない。
即ち、原告は、
昭和一一年から「よなげ行為(無償で回収した廃品中から貴金属を選別・再製する精錬」

為〉により無償で金地金を取得し、昭和二〇年八月には金地金の保有量は一〇〇貫(三七
五キログラム)を超えていた。そして、昭和二八年八月に金管理令が解かれ、金地金の所
持、売買及び輸入が自由になつたので、原告は、同年以降、右保有金を必要に応じて徐々
に換金したが、その額は昭和三二年ころまでに二億数千万円に達していた。これを資金源
として、簿外資産と言われる前記の有価証券等を購入し、あるいは預金を設定したもので
ある。
なお、よなげ行為は所得税法に定める事業ではなく、したがつて、よなげ行為による所得
に対しては課税されない。
二推計の不合理性(金地金の取引量)
原告は金地金の取引を専門に行つているところ、本件係争各年度における金地金の取引の
純益は一グラム当たり一円二〇銭(一グラム当たり小売価格六九〇円)であつたから、被
告の主張する別途所得金額を原告が稼得するためには、昭和三六年に七一六万一三二四グ
、、、ラム昭和三七年に一四一六万〇五九五グラム昭和三八年に三〇八五万六三三六グラム
昭和三九年に六七九八万七七七二グラム、昭和四〇年に三一一二万九二八三グラムの金地
金の簿外取引をしなければならないことになる。ところが、右各年の国内の金地金生産量
は、順次、一一七八万五七八五グラム、一三〇九万一冊三二グラム、一三四五万四四八二
グラム、一四三一万二九三五グラム、一六一四万七七八〇グラムであり、同各年の国内の
金消費量は、それぞれ九五五万八〇〇〇グラム、一〇五一万六〇〇〇グラム、一〇六二万
グラム、一一四三万グラム、一二八八万五〇〇〇グラムであるから、原告が金地金の取引
によつて被告の主張する別途所得金額を稼得することは到底不可能である(なお、原告は
金地金以外の取引はしていない。。)
したがつて、被告の主張する推計方法は合理性がない。
三推計の・不合理性(推計の対象となる資産の遺脱)
原告は、被告の主張する資産のほかに、昭和三五年一二月三一日現在で次の1ないし17
の資産を有し、又昭和三七年中に貸し付けた次の18の資産を有していたが、被告は右資
産を対象資産として考慮しないで、本件推計を行つている。
したがつて、被告の資産増減法による推計には合理性がない。
1Iに対する貸付金
四五〇〇万円
2Jに対する貸付金
五〇〇〇万円
3Kに対する貸付金
二〇〇〇万円
4綱島商店に対する貸付金
二〇〇〇万円
5Lに対する貸付金
四〇〇〇万円
6アポロ商会株式会社に対する貸付金
三五〇〇万円
7独立映画株式会社に対する貸付金
八〇〇万円
8株式会社三栄社に対する貸付金
七〇〇万円
9土田商会に対する貸付金
五〇二万円
10Mに対する貸付金
二〇〇万円
11丸一物産株式会社に対する貸付金
三〇〇万円
12東産業株式会社に対する貸付金
二〇〇万円
13東京勤労者音楽協議会に対する貸付金
二〇〇〇万円
14丸和不動産株式会社に対する貸付金
五〇〇万円
15上野信用金庫(現朝日信用金庫)広小路支店に設定した普通預金
四〇〇〇万円
16所蔵金地金(約三〇貫)
六六〇〇万円
17所蔵宝石(ダイヤモンド約一〇〇カラツト)
二〇〇〇万円
18Nに対する貸付金三
〇〇〇万円
第七原告の反論に対する被告の主張
一原告の反論一に対して
1原告がよなげ行為により昭和二〇年八月には一〇〇貫を越える金地金を保有していた
こと、
原告が右金地金を昭和三二年ころまでに換金して二億数千万円を得て、これを資金源とし
て有価証券の購入及び預金の設定をしたことは否認し、その余の主張は争う。
、()2抗弁一1のとおり原告は所得税法にいう事業卸売事業及び小売業もしくは製造業
を営んでいたことは明らかである。したがつて、無償で回収した廃品中から選別した貴金
属を再製する精錬業(よなげ行為)を原告が営んでいたとすれば、それも原告の右事業の
一部分であるから、右よなげ行為から生じた所得は、原告の事業所得となり、非課税とは
ならない。
二原告の反論二に対して
1本件係争各年度における金地金の取引の純益が一グラム当たり一円二〇銭であつたこ
と及び原告が金地金以外の取引をしていなかつたことは否認する。
2金地金の通常の取引における売上利益は一グラム当たり一七円八八銭(利益率二・八
八パーセント)を超えていたものであり、密輸金の仕入は通常の仕入金額よりかなり安価
であるから、利益率は更に高率となる。
また、被告は、原告の別途所得金額が金地金の取引のみによつて稼得されたものであると
は主張しておらず、現に、金地金の取引のほか、その取引よりも利益率の高い数種の商品
の取引をも行つていた。
三原告の反論三に対して
1原告がその主張する資産を有していたことは否認する。
2原告の供述によつても、第六、三1のうち二〇〇〇万円、同2ないし4及び6ないし
12の各貸付金は、いずれも昭和三五年以前に回収されていて、同年一二月三一〇現在に
おいて存在しないものである。
第八証拠関係(省略)
○理由
一請求原因一及び二の事実は当事者間に争いがなく、抗弁一のうち1の事実(課税処分
の経緯)も当事者間に争いがない。
二そこで、資産増減法による本件推計の必要性(抗弁一の2ないし4)について判断す
る。
成立に争いがない甲第六号証、乙第一ないし第三号証、第六五ないし第六七号証、第一〇
三号証、第一〇七ないし第一〇九号証、第一一一ないし第一一四号証、第一二三号証、第
一三二号証、第一三四号証、第一三七、第一三八号証、第一四二号証、第一六五号証の一
ないし三、第一六六、第一六七号証の各一ないし四及び第二〇〇号証、原本の存在及び成
立に争いがない乙第八号証及び第二〇五号証、証人Oの証言(以下「O証言」という。
)により真正に成立したものと認められる乙第七八号証の一、第一一八号証及び第一三三
号証、同証言により原本の存在及び成立が認められる乙第七八号証の二、三、第七九号証
の一、二、第八五号証、第八九、第九〇号証及び第九四号証、証人Pの証言(以下「P証
言」という)により原本の存在及び成立が認められる乙第九三号証及び第九五号証、証。

Qの証言(以下「Q証言」という)により真正に成立したものと認められる乙第一四三。

証並びにO証言を総合すれば、次の事実が認められる。
1昭和四一年五月、関東信越国税局が合資会社白金を法人税法違反の嫌疑により調査し
た際、同社の取引先であつた原告も同国税局の調査を受け、その結果原告が仮名預金を設
定している事実が明らかになつた。そこで、東京国税局は、原告が金地金等の取引による
所得を過少に申告して所得税を免れているのではないかとの疑いを抱き、同年六月一〇日
から原告に対して強制調査を行つたところ(以上の事実は当事者間に争いがない、次。)

とおり、原告の簿外資産と思料される資産が発見された。
(一)原告宅から、純金地金七・五キログラム(四九八万円相当、現金四三四万一〇)

〇円、別表三の番号45、47、49、51に係る定期預金証書、同13に係る普通預金
通帳、別表四の番号114(西華産業株式会社)の株式のうち一五〇〇株、同138(三
菱製紙株式会社)の株式のうち一〇〇〇株、及び丸一物産株式会社の株式(同表番号17
1)の株券、並びに判表五の番号8の期末残高のうち八〇万円に係る出資証券等
(二)三和銀行上野支店から、別表三の番号5ないし9、17ないし19、21に係る
普通預金元帳、並びに別表三の番号10に係る普通預金通帳等
(三)原告が東洋信託銀行日本橋支店においてB名義で利用していた貸金庫から、別表
三の番号31、35、39、43、73、74に係る定期預金証書、同66ないし70、
78に係る定期預金証書の担保預かり証、別表四の番号11、55、64、69のうち二
万二九〇〇株、79、92、97の期末残高のうち二万一〇〇〇株、103、109、1
19、123、127、142、143、165、172、176に係る株券、別表九の
株式会社ケー・エス商会、大幸商事株式会社、東交易株式会社及び斉藤商店各振出しに係
る約束手形、別表一〇の株式会社土井工作所、斉藤商店、
不二商会、中央不動産業株式会社及び北海道カーポート株式会社各振出しに係る約束手形
及び小切手、別表一二の番号1ないし25に係る電信電話債券、後記三17の貸付信託受
益証券及び指定金銭信託証書、並びに別表三の番号5、28ないし43、66ないし75
に係る預金に使用されていた木製印鑑及びゴム印等
(四)平和相互銀行浅草支店の支店長代理Cが原告から預かり保管していた別表九の共
同映画株式会社及び丸一物産株式会社各振出しに係る約束手形の一部、別表一一の番号1
ないし48、50ないし55、58ないし137に係る社債券、並びに別表一二の番号2
6ないし30に係る電信電話債券等
(五)住友銀行東京支店の原告名義の貸金庫から、別表四の番号35、114のうち三
〇〇〇株、138のうち一〇〇〇株、149、155、161に係る株券、並びに別表五
の番号8の期末残高のうち二〇万円、14、20に係る出資証券等
(六)世田谷信用金庫本店から、別表三の番号66ないし72に係る定期預金証書
()、七東和証券株式会社が原告から保護預かりしていた別表四の番号69のうち五〇株
97の期末残高のうち三三二株に係る株券等
2右預金、有価証券等は、いずれも原告の帳簿及び原告が青色申告の承認を受けて被告
に提出した昭和三八年分ないし昭和四〇年分の青色申告決算書に計上されていないもので
あつた。そこで、東京国税局は、その資金源の解明及び右簿外資産の全容を把握するべく
調査を行つたところ、原告は右簿外資産の資金源となつた簿外取引について備え付け帳簿
等に一切記帳しておらず、かつ、右取引に関する証拠書類及び証拠物一切を残していなか
つた。
そして、原告は、東京国税局の調査に対して、右1の(一)及び(三)ないし(五)の資
産が原告に帰属するものであること及び脱税の事実は認めたが、具体的な簿外取引の事実
については、わずかに昭和四〇年二月二日ころA(通称R)から密輸金地金五キログラム
を約二五〇万円で買い入れ、その後これをDに対して売り渡したことを供述したのみで、
それ以外の事実を明らかにせず、調査に対して非協力的であつた。また、取引関係者に対
する反面調査においても、十分な協力は得られず、右簿外取引の全容を解明することはで
きなかつた。
このような状況下で、東京国税局が把握し得た原告の簿外取引は、次のとおりであつた。
(一)原告は、昭和三六年ころから昭和四〇年ころまでの間、名古屋市の坂金銀店こと
Eに対して売り上げた金地金の代金を、架空名義で富士銀行菊井町支店及び住友銀行名古
屋駅前支店において取り組ませた送金小切手により支払を受け、これを原告の別表三の番
号1ないし3、6、14ないし16、19、20、24の仮名普通預金口座に入金してお
り、その合計金額は一億円を超えていた。
(二)原告は、昭和三五年ころから昭和四〇年までの間、合資会社白金に対して、小林
分析所(昭和三五年一二月まで)及び佐藤分析所(同年一一月から)の名称で金地金を売
り上げたが、その佐藤分析所名義による本件係争各年分の売上合計は約三億三〇〇〇万円
に達していた。
(三)原告は、昭和四〇年二月二日ころ、密輸金の売り捌き人であるAから密輸金地金
五キログラムを代金二四六万六五〇〇円(一グラム当たり四九三円三〇銭)で買い入れ、
これを熔解・圧延した上で、Dに売り渡した。
(四)原告は、昭和三九年四月七日ころから同年八月六日ころまでの間、Fに対して、
仕入先が判明せず、密輸の疑いの極めて濃い金地金合計三一キログラムを一回当たり(な
いし二キログラム前後、金額は一グラム当たり四九六円ないし五四九円三〇銭で二八回に
わたり売り渡した。
(五)原告は、右(一)ないし(四)の事業所得に係る簿外取引のほか、後記三9の配
当所得並びに同16の割引興業債権の償還差益金及び同四1の貸付金に係る科息収入(い
ずれも雑所得に該当する)があつたにもかかわらず、これらの取引に関する資料や記録。

保存せず、かつ、右配当所得及び雑所得について全く申告しなかつた。
3原告は、昭和四〇年四月から同年六月までの間に、大阪地方検察庁から(1)昭和、

八年一月ころから昭和四〇年三月ころまでの間に三回にわたり歯科用金地金(五グラム鈑
約三〇〇〇枚)の無許可製造(2)昭和三九年四月七日ころから同年八月六日ころまで、

間に二八回にわたり無許可輸入金地金合計三一キログラムの保管(3)昭和三九年一二、

中旬ころ無許可輸入金地金一キログラムの保管(4)昭和四〇年二月二日ころAから無、

可輸入金地金五キログラムの有償(二四六万六五〇〇円)取得、の各罪(薬事法、関税法
違反被告事件)で起訴された。
大阪地方裁判所は、昭和四二年四月二六日、右(1、)
(2)及び(4)につき有罪、右(3)につき証拠不十分として無罪の判決を宣告し、そ
、、()()の控訴審の大阪高等裁判所は原判決中有罪部分を破棄しあらためて右1及び4
の事実につき懲役六月(三年間執行猶予、罰金二〇万円、追徴金三三〇万円の刑を宣告)
し、
右(2)については、当該金地金は密輸品であることの疑いが極めて濃厚であるが、その
中に密輸品でない金地金が混入している可能性があり、全てを密輸品とは断定し難いとし
て無罪を宣告し、同判決は確定した。
4被告は、前記1及び2の事実は所得税法一五〇条一項三号に該当するものとして、昭
和四二年三月八日付けをもつて原告に対して、昭和三八年(青色申告承認の時)まで遡つ
て本件青色申告承認取消処分をした。
更に、被告は、原告の簿外取引に係る所得の金額を実額で把握することが不可能だつたと
ころから、東京国税局の調査により把握した簿外と認められる資産を基にして、本件係争
各年分の別途所得金額をいわゆる資産増減法により推計して、原告に対して別表一記載の
とおり課税処分を行つた。
以上認定の事実によれば、右4記載のとおり原告の簿外取引に係る事業所得の金額につい
て実額で確定することは不可能であつたから、本件において推計の必要性があつたことは
明らかである。そして、右所得金額を損益計算原理に基づく比率法等の推計方法により算
出することも不可能であるから、右4記載のとおり簿外と認められる資産を基にして、本
件係争各年分の別途所得金額をいわゆる資産増減法により推計することは合理的である。
三そこで、被告主張の別途所得金額の計算根拠について検討する。
1現金
前掲乙第一〇九号証、第一一一号証、第一二七号証及び第二〇〇号証によれば、原告は、
本件調査がされた昭和四一年六月一〇日現在において備付帳簿に記帳しない簿外の現金と
して四三四万一〇〇〇円を保有していたこと、原告は、本件調査の際に、昭和三七年ない
し昭和四〇年の各年末において概ね五〇〇万円程度の簿外の現金を保有していたことを自
認する供述をしていることが認められるから、簿外の現金については、別表二の1ないし
5の各符号1のとおり推認するのが相当である。
2普通預金及び定期預金並びに預金利子
別表三記載の各番号の預金が原告に帰属すること、
並びに右預金の各年末の残高及び各年中における預金利子の金額が当該欄記載のとおりで
あることが、次の各証拠によつて認められる。
番号1は、前掲乙第一号証、成立に争いがない乙第一二七号証及びO証言
番号2は、前掲乙第三号証及び第一二七号証並びにO証言
番号3は、前掲乙第二号証及び第一二七号証並びにO証言
番号4は、前掲乙第一二七号証、原本の存在及び成立に争いがない乙第六号証並びにO証

番号5は、前掲乙第一二七号証、第一三七号証、成立に争いがない乙第一三一号証、原本
の存在及び成立に争いがない乙第七号証、O証言により真正に成立したものと認められる
乙第一三〇号証、Q証言により真正に成立したものと認められる乙第一四四号証並びにO
証言
番号6は、前掲乙第八号証、第一二七号証、第一三一号証及び第一三七号証並びにO証言
番号7は、前掲乙第一三一号証及び第一三七号証、原本の存在及び成立に争いがない乙第
九号証並びにP証言により真正に成立したものと認められる乙第一一五号証
番号8は、前掲乙第一一五号証、第一三一号証及び第一三七号証並びに原本の存在及び成
立に争いがない乙第一一号証
番号9は、前掲乙第一一五号証、第一三一号証及び第一三七号証並びに原本の存在及び成
立に争いがない乙第一二号証
番号10は、前掲乙第一一五号証、第一三一号証及び第一三八号証並びに成立に争いがな
い乙第一五号証
番号11は、前掲乙第一三一号証並びに原本の存在及び成立に争いがない乙第一〇号証
番号12は、前掲乙第一三一号証並びに原本の存在及び成立に争いがない乙第一六号証
番号13は、前掲乙第一一四号証、第一三一号証及び第一三二号証並びに原本の存在及び
成立に争いがない乙第一三号証
番号14は、前掲乙第八九号証及びO証言
番号15は、前掲乙第九〇号証及びO証言
番号16は、前掲乙第九三号証及びO証言
番号17は、前掲乙第一三一号証及び第一三七号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第八三号証
番号18は、前掲乙第一三一号証及び第一三七号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第八四号証
番号19は、前掲乙第八五号証、第一一五号証、第一三一号証及び第一三七号証並びにO
証言
番号20は、前掲乙第九五号証及び第一三一号証並びにO証言
番号21は、前掲乙第一一五号証、
第一三一号証及び第一三七号証並びにO証言により原本の存在及び成立が認められる乙第
八六号証
番号22は、前掲乙第一三一号証及び第一四四号証並びにQ証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第九六号証
番号23は、前掲乙第一三一号証並びにP証言により原本の存在及び成立が認められる乙
第九七号証
番号24は、前掲乙第九四号証及びO証言
番号25は、前掲乙第一三一号証、O証言により原本の存在及び成立が認められる乙第八
七号証
番号26は、前掲乙第一三一号証、原本の存在及び成立に争いがない乙第一七号証、P証
言により真正に成立したものと認められる乙第一一七号証並びにO証言
番号27は、前掲乙第一三一号証、P証言により真正に成立したものと認められる乙第一
一六号証並びに同号証及び成立に争いがない乙第二一四号証により原本の存在及び成立が
認められる乙第八八号証
番号28ないし35は、
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二七号証及び第一三一号証並びに成立に争いがな
い乙第四号証
番号36ないし43は、
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二七号証及び第一三一号証並びに成立に争いがな
い乙第五号証
番号44及び45は、
前掲乙第一〇七号証、第一一五号証及び第一三一号証、原本の存在及び成立に争いがない
乙第一四号証並びにO証言により真正に成立したものと認められる乙第九八号証
番号46及び47は、
前掲乙第一四号証、第一〇七号証、第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原
本の存在及び成立が認められる乙第九九号証
番号48及び49は、
前掲乙第一四号証、第一〇七号証、第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原
本の存在及び成立が認められる乙第一〇〇号証
番号50及び51は、
前掲乙第一四号証、第一〇七号証、第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原
本の存在及び成立が認められる乙第一〇一号証
番号52は、前掲乙第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第三一号証
番号53は、前掲乙第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第三二号証
番号54は、前掲乙第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第三三号証
番号55は、
前掲乙第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成立が認められ
る乙第三四号証
番号56は、前掲乙第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第三五号証
番号57は、前掲乙第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第三六号証
番号58は、前掲乙第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第三七号証
番号59は、前掲乙第一一五号証及び第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成
立が認められる乙第三八号証
番号60は、前掲乙第一三一号証、原本の存在及び成立に争いがない乙第一八号証並びに
P証言により真正に成立したものと認められる乙第一三五号証
番号61は、前掲乙第一三一号証並びにP証言により原本の存在及び成立が認められる乙
第四二号証
番号62は、前掲乙第一一六号証及び第一三一号証、乙第一一六号証及び第二一四号証に
より原本の存在及び成立が認められる乙第一九号証並びにP証言により真正に成立したも
のと認められる乙第一三九号証
番号63は、前掲乙第一一六号証及び第一三一号証、乙第一一六号証及び第二一四号証に
より原本の存在及び成立が認められる乙第二〇号証並びにP証言により真正に成立したも
のと認められる乙第一四〇号証
番号64は、前掲乙第一一六号証及び第一三一号証、乙第一一六号証及び第二一四号証に
より原本の存在及び成立が認められる乙第二一号証の一、二並びにP証言により真正に成
立したものと認められる乙第一四一号証
番号65及び78は、前掲乙第一一六号証及び第一三一号証並びにP証言により原本の存
在を含めて真正に成立したものと認められる乙第二二号証
番号66は、前掲乙第一一三号証、第一二三号証及び第一三一号証、乙第一一三号証及び
第二一四号証により原本の存在及び成立が認められる乙第二三号証、乙第二一四号証によ
り原本の存在及び成立が認められる乙第三〇号証の一、三並びにO証言により真正に成立
したものと認められる乙第一二四号証
番号67は、前掲乙第三〇号証の一、三、第一一三号証、第一二三、第一二四号証及び第
一三一号証並びに乙第一一三号証及び第二一四号証により原本の存在及び成立が認められ
る乙第二四号証
番号68は、前掲乙第三〇号証の一、三、第六六号証、
第一一三号証、第一二三、第一二四号証及び第一三一号証並びに乙第一一三号証及び第二
一四号証により原本の存在及び成立が認められる乙第二六号証
番号69は、前掲乙第三〇号証の一、三、第六六号証、第一一三号証、第一二三、第一二
四号証及び第一三一号証並びに乙第一一三号証及び第二一四号証により原本の存在及び成
立が認められる乙第二五号証
番号70は、前掲乙第三〇号証の一、三、第六六号証、第一一三号証、第一二三、第一二
四号証及び第一三一号証並びに乙第一一三号証及び第二一四号証により原本の存在及び成
立が認められる乙第二七号証
番号71は、前掲乙第三〇号証の三、第一一三号証、第一二三、第一二四号証及び第一三
一号証、乙第一一三号証及び第二一四号証により原本の存在及び成立が認められる乙第二
八号証並びに乙第二一四号証により原本の存在及び成立が認められる乙第三〇号証の二
番号72は、前掲乙第三〇号証の二、三、第一一三号証、第一二三、第一二四号証及び第
一三一号証並びに乙第一一三号証及び第二一四号証により原本の存在及び成立が認められ
る乙第二九号証
番号73は、前掲乙第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びに原本の存在及び成
立に争いがない乙第三九号証の二ないし五
番号74は、前掲乙第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びに原本の存在及び成
立に争いがない乙第一〇四号証の二
番号75は、前掲乙第一三一号証並びにO証言により原本の存在及び成立が認められる乙
第一〇二号証
番号76は、前掲乙第一一六号証及び第一三一号証、P証言により原本の存在及び成立が
認められる乙第九一号証の一、二並びにP証言
番号77は、前掲乙第一一六号証及び第一三一号証、P証言により原本の存在及び成立が
認められる乙第九二号
原告は、以上認定の預金のほかに、自己に帰属する上野信用金庫(現朝日信用金庫)広小
路支店に設定した普通預金があり、昭和三五年一二月三一日現在で四〇〇〇万円の残高が
あつたと主張し、右主張に沿う証拠として、甲第八号証、第一七号証、第一二号証の一、
、。、、三第一三号証並びに証人Sの証言及び原告本人尋問の結果があるしかし右各証拠は
次に指摘するとおり、矛盾やあいまいな点が多く、いずれも採用することができない。
(一)原告は、漠然と右のとおり主張するだけで、
原告に帰属すると言う普通預金の口座数・設定・解約等の経緯、その源資の取得方法など
の帰属者を認定することのできる具体的事実について何ら明確な主張をしないし、その普
通預金の元帳もしくは元帳の写も証拠として提出しない。また、甲第一二号証の三には、
原告に帰属すると主張するT名義の普通預金については、昭和三五年一二月三一日現在の
元帳は発見できないが、同日付けの伝票によれば最低でも九六〇万円の残高があつたと推
定できるとあるけれども、右伝票類又はその写が証拠として提出されてもいない。
(二)甲第八号証、第一二号証の一及び第一七号証並びに原告本人尋問の結果では、原
告は、Uが上野信用金庫在職中、同人のために同支店に預金を設定したとされているが、
甲第一二号証の一(原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる)によ。

ば、Uが上野信用金庫広小路支店に勤務した時期は、昭和三三年七月ころから昭和三七年
六月ころまでであることが認められる。
本件では、昭和三五年末のみならず、昭和三六年末の預金残高も問題となることは明らか
であり、この昭和三六年末は右Uの在職期間中であるにもかかわらず、原告は、その預金
残高について何ら主張、立証しない。
()(。)三甲第一二号証の三原告本人尋問の結果により原本の存在及び成立が認められる
及び甲第二五号証(成立に争いがない)によれば、審査請求に係る審理の段階でも原告。

帰属するという前記預金の有無が争点となり、朝日信用金庫側の協力でその調査がなされ
た際、同金庫は東京国税局協議団本部長に宛て、T名義の普通預金は原告に帰属するとの
回答をしている事実が認められないではない。
しかし、前掲甲第一二号証の一によれば、右仮名預金が原告に帰属する事実もしくは事情
を知つている者は、右金庫ではUとSに限られるが、両名とも右調査を受けたことは全く
ないことが認められる。また、Sは原告の右預金が問題となつていることを昭和五五年一
。、、一月ころまで知らなかつたことがその証言によつて認められるそして右回答自体には
右預金が原告のものであることを首肯させるような具体的事実は示されておらず、回答の
根拠が全く不明である。
したがつて、右回答もたやすく信じ難い。
(四)甲第一二号証の一には、原告に帰属するものとして、
右預金のほかV名義の仮名預金があるとの記載もあるが、原告自身このV名義の預金につ
いては何ら主張、立証していない。
(五)Sの証言も、単に朝日信用金庫と原告とは預金取引があつたとする程度で、原告
の仮名預金の名義や金額等の具体的事実については納得のいく供述を全くしていない。
以上のとおりであるから、普通預金については別表二の1ないし5の各符号2のとおり、
また、定期預金については同各符号3のとおり認められ、その預金利子の本件係争各年分
の合計額は、別表三の預金利子合計欄記載のとおりとなるが、これは分離課税の対象であ
るから、資産増減法の上では事業主借として計上すべきものとなる。
3売掛金
前記二2(二)のとおり、原告は、合資会社白金に対して小林分析所及び佐藤分析所の各
名義で金地金を売り上げていたところ、前掲乙第七八号証の二、三及び第七九号証の一、
二によれば、その売掛金のうち本件係争各年分の期首・期末現在額は別表二の1ないし4
の各符号4並びに同表の5の符号6のとおりであることが認められ号。
原告は、右売掛金はWが小林分析所及び佐藤分析所の名称で合資会社白金と取引したもの
であると供述するが、Wに関する原告の供述は極めてあいまい、かつ不自然で、合理性が
なく、到底信用できない。かえつて、前掲乙第七八号証の一、第一一八号証及び第一四三
号証、O証言により真正に成立したものと認められる乙第一二八号証並びにO証言によれ
ば、右Wなる人物は実在しないことは殆ど明らかである。したがつて、甲第三五ないし第
三七号証も右各証拠に照らして信用できない。
4株式及び株式売買損益
別表四記載の原告に帰属する各銘柄の株式(ただし、番号115の東京芝浦電機株式会社
の株式を除く。また、番号86、87は投資信託であるが、その売買は所得計算上は株式
の売買と同視できるので、被告の主張に即し、便宜ここで検討する)の取得及び売却の。

緯並びに期末残高については次の各証拠により同表の当該欄記載のとおり認められるた、(
だし、後記[15[24[30[31]及び[41]の各銘柄の株式については、]、]、]、
取得後その全部又は一部が架空名義等に書き替えられている。。)
[1]松下電器産業株式会社
前掲乙第一三一号証、成立に争いがない乙第四四、第四五号証の各一、
原本の存在及び成立に争いがない乙第四四号証の二及び第四五号証の二ないし四並びにO
証言により真正に成立したものと認められる乙第七四号証
[2]オリエント時計株式会社
前掲乙第四四号証の一、二、第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証及び第
一三一号証、成立に争いがない乙第一〇五号証の一、三及び第一二一号証の九並びにO証
言により真正に成立したものと認められる乙第五五号証
[3]呉造船株式会社
前掲乙第四四号証の一、二及び第一三一号証並びに原本の存在及び成立に争いがない乙第
四四号証の三
[4]藤田組株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第一三一号証
[5]日本光学株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第一三一号証
[6]ソニー株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第一三一号証、O証言により真正に成立したものと認
められる乙第五四号証並びにO証言
[7]本田技研工業株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六五号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びに成立
に争いがない乙第七三号証、第一〇六号証の一、二及び第一二〇号証の六
[8]三越株式会社
前掲乙第四四号証の一、二及び第一三一号証
[9]森永製菓株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第一三一号証
[10]鹿島建設株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第一三一号証
[11]ラサ工業株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第十三一号証
[12]東亜燃料株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第一三一号証
[13]株式会社横河電機製作所
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証、成立に争
いがない乙第六八号証、Q証言により真正に成立したものと認められる乙第四六号証の一
及び第一二六号証、同証言により原本の存在及び成立が認められる乙第四六号証の八、一
六並びにO証言
[14]三共株式会社
前掲乙第四四号証の一、二、第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証及び第
一三一号証並びにO証言により真正に成立したものと認められる乙第六三号証
[15]三井化学工業株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証、第一三一号証及び第一四二
号証、
成立に争いがない乙第一二一号証の四並びにO証言により真正に成立したものと認められ
る乙第六四号証
[16]厚木ナイロン工業株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第一三一号証
[17]三井物産株式会社
前掲乙第四四号証の一、二、第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇五号証の一、
第一〇八号証及び第一三一号証、成立に争いがない乙第一〇五号証の二、第一二〇号証の
七及び第一二一号証の一〇並びにO証言により真正に成立したものと認められる乙第五六
号証
[18]本州製紙株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三並びに原本の存在及び成立に争いがない同号証の五
[19]日本瓦斯化学工業株式会社
前掲乙第四五号証の一、第四六号証の一、八、第一二六号証及び第一三一号証、Q証言に
より原本の存在及び成立が認められる乙第四五号証の六、七、一〇並びにO証言により真
正に成立したものと認められる乙第七六号証
[20]株式会社大林組
前掲乙第四五号証の一ないし三、五、第四六号証の一、八、第一二六号証及び第一三一号
証、O証言により真正に成立したものと認められる乙第六二号証並びにQ証言
[21]大和証券第一三五回ユニツト投資信託
前掲乙第四五号証の一、三、第四六号証の一及び第一三一号証並びにQ証言により原本の
存在及び成立が認められる乙第四六号証の二
[22]三菱地所株式会社
前掲乙第四五号証の一、七、一〇、第四六号証の一、八及び第一二六号証並びにQ証言に
より原本の存在及び成立が認められる乙第四五号証の九
[23]三菱重工業株式会社(昭和三九年六月合併前は新三菱重工業株式会社)
前掲乙第四五号証の一ないし四、第四六号証の一、第六六号証、第一〇八号証、第一二六
号証及び第一三一号証、Q証言により原本の存在及び成立が認められる乙第四六号証の一
七、O証言により真正に成立したものと認められる乙第七五号証並びに弁論の全趣旨
[24]旭化成工業株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第四六号証の一、八、第六六号証、第一〇八号証、第一
二六号証、第一三一号証及び第一四二号証、成立に争いがない乙第四七号証並びにO証言
により真正に成立したものと認められる乙第五九号証
[25]株式会社小島鉄工所
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、
第一〇八号証及び第一三一号証並びに成立に争いがない乙第六九号証
[26]光洋精工株式会社
前掲乙第四四、第四五号証の各一、二、第六六号証、第一〇五号証の一、二、第一〇八号
証及び第一三一号証並びに成立に争いがない乙第七〇号証
[27]西華産業株式会社
前掲乙第六五号証、第一〇六号証の一、二、第一〇八号証、第一三一号証及び第一三二号
証、成立に争いがない乙第四三号証の一及び第五二号証並びに原本の存在及び成立に争い
がない乙第四三号証の二
[28]帝国ヒユーム管株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びにO証
言により真正に成立したものと認められる乙第五三号証
[29]帝国通信工業株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇五号証の一、三、第一〇八号証及び
第一三一号証並びに成立に争いがない乙第七一号証
[30]東急不動産株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びにO証
言により真正に成立したものと認められる乙第六一号証
[31]日本電気株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三及び第一三一号証並びにO証言により真正に成立したもの
と認められる乙第六〇号証
[32]三菱製紙株式会社
前掲乙第四三号証の一、二、第六五号証、第一〇六号証の一、二、第一〇八号証、第一三
一号証及び第一三二号証並びに成立に争いがない乙第五一号証
[33]松井建設株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びにO証
言により真正に成立したものと認められる乙第五八号証
[34]ライオン歯磨株式会社
、、、、、、、前掲乙第四六号証の一一六一七第六六号証第一〇五号証の一二第一〇八号証
第一二六号証及び第一三一号証、成立に争いがない乙第七七号証並びにO証言
[35]共同映画株式会社(昭和三八年合併前は株式会社東京映画社)
前掲乙第六五号証、第一〇六号証の一、二及び第一〇八号証、O証言により真正に成立し
たものと認められる乙第八一号証並びに弁論の全趣旨
[36]株式会社光和(商号変更前は株式会社光和商事社)
前掲乙第六五号証、第一〇六号証の一、二及び第一〇八号証並びに成立に争いがない乙第
五〇号証
[37]株式会社台東商工会館
前掲乙第六五号証、
第一〇六号証の一、二、第一〇八号証及び第一三一号証
[38]日立精機株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びに成立
に争いがない乙第七二号証
[39]丸一物産株式会社
前掲乙第一〇七号証及び第一三一号証並びに成立に争いがない乙第四八号証
[40]東和証券株式会社(商号変更前は東和電話証券株式会社)
、、、、、前掲乙第四六号証の一二第六六号証第一〇八号証第一二六号証及び第一三一号証
原本の存在及び成立に争いがない乙第四六号証の一九並びにQ証言により原本の存在及び
成立が認められる同号証の一八
[41]山崎製パン株式会社
前掲乙第四五号証の一ないし三、第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びにO証
言により真正に成立したものと認められる乙第五七号証
被告は、以上の株式等のほかに、昭和四〇年末現在における東京芝浦電気株式会社の株式
一万株(八一万四〇〇〇円。別表四の番号115)を主張するが、前掲乙第四六号証の八
によれば、右株式の取得は昭和四一年一月五日であることが認められるから、右株式を昭
和四〇年分の期末に計上することはできない。
以上によれば、株式(投資信託を含む)については、昭和三六年分ないし昭和三九年分。

別表二の1及び2の各符号5、同3の符号6並びに同4の符号7のとおりとなるが、昭和
四〇年分(同5の符号9)は期首現在額二七一二万五四〇七円、期末現在額二三八二万八
六四五円、差引減少額三二九万六七六二円となる。
そして、右認定の売却に係る各株式の売却金額から売却原価を減算することにより当該株
式に係る売買損益が別表四の当該欄記載のとおり算出され、右現物取引による株式売買損
益の合計額は同表の合計欄記載のとおりとなるが、昭和三七年分及び昭和四〇年の株式売
買益は非課税であるので事業主借として、また、昭和三八年分及び昭和三九年分の株式売
買損は事業主貸として、それぞれ計上すべきものである。
5出資
別表五記載の原告に帰属する各銘柄の出資の取得年月日、金額及び名義並びに期末残高に
ついては、次の各証拠により同表の当該欄記載のとおり認められる。
[1]日本貴金属協同組合
前掲乙第六五号証、第一〇六号証の一、二、第一〇八号証、第一二七号証、
第一三一号証及び第一三二号証並びに成立に争いがない乙第四九号証
[2]上野信用組合
前掲乙第六五号証、第一〇六号証の一、第一〇八号証、第一二七号証及び第一三一号証並
びに成立に争いがない乙第一〇六号証の三
[3]上野信用金庫
前掲乙第六五号証、第一〇六号証の一、二、第一〇八号証、第一二七号証及び第一三一号

以上のとおり、出資については、別表二の1及び2の各符号6、同3の符号7、同4の符
号8並びに同5の符号12のとおりとなる。
6商品
前掲乙第一〇三号証、第一一一、第一一二号証及び第一二七号証によれば、原告は、本件
調査が行われた昭和四一年六月一〇日現在で備付帳簿等に記帳しない簿外の商品として金
地金七・五キログラム(四九八万円相当)を保有していたこと、原告は、本件調査の際、
昭和三五年ころから本件調査までの間ほぼ同量の金地金を簿外の商品として保有していた
旨供述していることが認められる。これに対して、原告は、昭和三五年一二月三一日現在
で金地金六六〇〇万円相当(約三〇貫)及び宝石二〇〇〇万円相当(ダイヤモンド約一〇
〇カラツト)を所蔵していたと主張するが、これに沿う甲第八号証、第一四号証並びに証
人Xの証言及び原告本人尋問の結果はいずれも極めてあいまい、かつ、不自然であり、合
理性がなく、到底採用できない。
したがつて、簿外の商品については、別表二の1及び2の各符号7、同3の符号8、同4
の符号9並びに同5の符号13のとおりと推認するのが相当である。
7貸付金
(一)別表六記載の各貸付先に対して、原告の貸付金の昭和三五年末ないし昭和四〇年
末における現在額が当該欄記載のとおりであつたことは、次の各証拠により認められる。
[1]丸一物産株式会社
前掲甲第二五号証、乙第四八号証、第一二七号証及び第一三一号証
原告は、丸一物産株式会社に対する昭和三五年一二月三一日現在の貸付金額は三〇〇万円
であると主張するが、前掲甲第八号証には、同年に三〇〇万円を貸し付け、同年中に完済
された旨の記載があるのみであつて、他に原告の右主張を裏付けるに足りる証拠はない。
[2]G
前掲乙第一一三号証、第一二七号証及び第一三一号証並びにO証言により真正に成立した
ものと認められる乙第一一〇号証
[3]Y
成立に争いがない乙第一四八、
第一四九号証
[4]共同映画株式会社
前掲乙第八一号証及び第一三一号証
[5]ピジヨン陶歯企業組合
前掲乙第一三一号証、成立に争いがない乙第八二号証及びP証言により真正に成立したも
のと認められる乙第一三六号証
[6]三功紙幣計算機株式会社
前掲乙第一一三号証、第一二四号証及び第一三一号証並びに成立に争いがない乙第八〇号

(二)原告は、以上の貸付金のほかに、昭和三五年一二月三一日現在において原告の反
論三1ないし10及び12ないし14の各貸付金並びに昭和三七年中に貸し付けた同18
の貸付金があつたと主張するが、次に述べるとおり、いずれも失当である。
(1)L
原告は、甲第九号証の二ないし五の各手形及び同号証の六の小切手がLに対する貸付金の
証拠であると言うが、右各手形及び小切手を原告が所持するに至つた経緯について、原告
の供述は変遷を重ね、あいまいである。しかも、成立に争いがない乙第一五三号証の一、
二によれば、甲第九号証の四、五の各手形に貼付されている収入印紙は、昭和三八年九月
一日以降施行に係るものであることが認められ、同各手形記載の振出期日及び支払期日は
これと明らかに矛盾したものである。また、甲第九号証の二ないし五の各手形には受取人
の記載もない。そして、甲第九号証の六の小切手についても右振出期日が収入印紙と矛盾
する点は同様である。
したがつて、右各手形及び小切手をもつて原告がLに対して右主張の年分の貸付金を有し
ていた事実を認めることはできない。また、右貸付金に関する前掲甲第八号証及び第一七
号証ないし原告本人の供述は、いずれもあいまいであり、具体性がなく、前掲乙第一一二
号証及び成立に争いがない乙第一六〇号証と対比して、到底採用することができない。他
に昭和三五年末における右貸付金の存在を肯認できる証拠はない。
(2)独立映画株式会社
昭和三五年末において右会社に対して、原告が貸付金を有していたことを認めるに足りる
証拠はない。却つて、前掲甲第八号証及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認め
られる甲第二六号証の一ないし三によれば、原告の独立映画株式会社に対する貸付金は昭
和三五年以前に完済されていることが認められる。
(3)株式会社三栄社
甲第二二号証の一には、
右会社が昭和三五年にZ所有の自宅(武蔵野市<地名略>所在)を抵当に入れて原告から
金銭の借入をし、借り増し分を含めて、同年末には七ないし八〇〇万円の借入があつた旨
の記載があり、前掲甲第八号証には、右貸付金を昭和三五年暮に全額回収した旨の記載が
ある。
しかし、成立に争いがない乙第一六八、第一六九号証によれば、Zの自宅のある右土地及
び建物について原告のため抵当権設定登記及び所有権移転請求権仮登記がされたのは、昭
和三三年三月一七日(原因同月一五日契約)であり、同年五月二八日には右各登記が同月
二七日弁済及び解約を原因として抹消されていること、右物件について、同年一〇月一日
には日本テレビ放送網株式会社のために根抵当権設定登記(原因同年九月三〇日契約)が
されていることが認められる。この登記の経過に鑑みれば、甲第二二号証の一及び第八号
証の前記の記載もたやすく信用できない。他に昭和三五年末において原告主張の貸付金が
存在したことを認めるに足りる証拠はない。
(4)土田商会
原告は、甲第二一号証の一の小切手及び同号証の二ないし七の各手形をもつて土田商会に
対する貸付金の証拠であるというが、右小切手及び手形の存在だけでは土田商会、土田商
事株式会社又は土田洋一との間に原告主張の金銭消費貸借があつたと認めることはできな
い。まして、右小切手及び手形はいずれも振出期日及び支払期日が昭和三二年又は昭和三
三年のものであるから、これをもつて直ちに昭和三五年末における貸付金存在の証拠と認
めることはできない。
、、、そして右貸付金に関する甲第八号証の記載及び原告本人の供述はいずれもあいまいで
具体性に欠け、たやすく信用できない。かえつて、甲第八号証には、昭和三三年三月三〇
日現在の貸付金額(五〇二万円)は昭和三五年暮までに全額完済された旨の記載があり、
これを信じれば、同年末には右貸付金はなかつたことになる。
(5)東京勤労者音楽協議会
これに関する甲第八号証及び第一七号証並びに原告本人の供述は、その貸付先(東京勤労
、)、、(、者音楽協議会であるのか平石甫であるのか貸付時期貸付額二〇〇〇万円なのか
四〇〇〇万円なのか、貸付の目的、資金源、返済状況等の事実関係全般にわたつて極め)

あいまいであり、具体性に欠け、相互に矛盾する部分が多く、信用できない。また、甲第
一一号証によつては、
原告が右貸付先に対して昭和三五年末において原告主張の貸付金を有していたことを認め
ることはできず、他に同主張を認めるに足りる証拠はない。
(6)N
原告本人は、Nに対して昭和三七年一一月ころ三〇〇〇万円を貸し付けたと供述し、甲第
四五号証にも同趣旨の記載がある。
しかし、成立に争いがない甲第一五号証、乙第一五〇、第一五一号証及び第一五六ないし
第一五九号証並びに証人Xの証言によれば、Xが、原告の仲介により昭和三七年一一月こ
ろNに対して、七五〇万円を逗子市<地名略>ほか二筆の土地(P1名義であるが、N所
有)を担保に貸し付けたこと、この担保(抵当権設定登記及び条件付所有権移転仮登記)
は原告名義としたが、Xは、右土地を昭和四〇年六月に代物弁済により取得したことが認
められる。右認定の事実に照らせば、右原告本人の供述及び甲第四五号証は到底信用でき
ない。他に右貸付金の存在を肯定する証拠はない。
(7)その余のI、J、K、綱島商店、アポロ商会株式会社、M、東産業株式会社及び
丸和不動産株式会社に対する原告の各貸付金に関する前掲甲第八号証及び原告本人の供述
も、その貸付時期、貸付額、資金源、返済状況等の事実関係全般にわたつて極めてあいま
いで、具体性を欠いており、到底信用できないし、甲第四二号証によつては、昭和三五年
末における原告の丸和不動産株式会社に対する貸付金の存在を認めることはできない。
他に、右各貸付金の存在を肯定する証拠はない。
8未収利息
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一一〇号証、第一一三号証及び第一二七号証並びに
原本の存在及び成立に争いがない乙第一二九号証の二によれば、原告は、Gに対して、昭
和三五年六月ころ二〇〇万円及び同年七月ころ一五〇万円の合計三五〇万円を利息月二分
の約定で貸し付けていたところ、Gは、右借入時から本件調査時の昭和四一年六月までこ
の元利金の返済をせず、その間の昭和三八年八月に原告との間で右貸付金の元利合計が四
七〇万円であることを確認し、原告に対して株式会社松村金銀店名義の定期積立預金証書
二通額面合計二四〇万円(同栄信用金庫本店預け入れ)及び株式会社銀座電機振出の約束
手形一通金額二三〇万円(振出期日同年七月二二日、
受取人G)を差し入れたことが認められる。
右認定の事実によれば、原告のGに対する貸付金は、昭和三五年七月の元金三五〇万円が
昭和三八年八月に元利合計四七〇万円になつたものとして、その未収利息を算出するのが
相当であり、これにより未収利息を算出すると、月額三万二四三二円、年額三八万九一八
四円となり、別表二の1の符号9、同2の符号10、同3の符号12、同4の符号14及
び同5の符号18のとおりとなる。
9配当及び配当に係る支払済源泉徴収所得税
別表七記載の各銘柄の株式(番号1ないし28)及び出資(番号29)に対する本件係争
各年分の配当金額及び同金額に係る支払済源泉徴収所得税は、次の各証拠により、同表の
当該欄記載のとおりである(ただし、番号2の株式会社横河電機製作所、同9の三菱重工
業株式会社、同15の東急不動産株式会社、同26の株式会社荏原製作所、同27の本州
製紙株式会社、同28の三菱地所株式会社及び同29の日本貴金属協同組合については、
それぞれ後記[2[9[15[26]ないし[29]のとおりである)ことが認]、]、]、。

られる。
[1]番号1は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、第五九号証及び第一三一号
証並びに原本の存在及び成立に争いがない乙第四六号証の二〇
[2]番号2は、昭和三八年分及び昭和四〇年分については、前掲乙第四五号証の三及
び第六八号証
昭和三九年分については、前掲乙第四六号証の八によれば、同年一二月一五日、横河電機
に係る信用配当金四万六三一二円が原告に対して支払われたことが認められるところ、被
告は、これを配当所得として計上している。しかし、信用配当金は、信用取引に係る株式
について配当が付与された場合に、当該信用取引に係る株式の売買価額の修正として支払
われるものであり、法人から受ける利益の配当ではないから、配当所得とはならないもの
である。そうすると、昭和三九年分の配当金額及び支払済源泉徴収所得税はない(〇円と
なる。。)
[3]番号3は、前掲乙第五七号証及び第一三一号証
[4]番号4は、前掲乙第四五号証の三、第五三号証及び第一三一号証
[5]番号5は、前掲乙第六九号証及び第一三一号証
[6]番号6は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、二〇、第七〇号証及び第一
三一号証並びに成立に争いがない乙第一二〇、
第一二一号証の各五
[7]番号7は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、二〇、第五六号証、第一二
〇号証の七及び第一三一号証
[8]番号8は、前掲乙第七七号証及び第一三一号証
[9]番号9は、昭和三八年分については、前掲乙第四五号証の三によれば、昭和三八
年一二月七日に新三菱重工業株式会社(昭和三九年六月合併後の三菱重工業株式会社)の
株式に係る配当金二万八五〇〇円(所得税源泉徴収後の金額)が原告に対して支払われた
ことが認められる。昭和三八年四月以降支払われる配当に係る源泉徴収税率は五パーセン
トであるから、右配当金額は三万円、支払済源泉徴収所得税は、一五〇〇円となる計算で
ある。
同三九年分については、前掲乙第四六号証の八、二〇及び第七五号証によれば、昭和三九
年一二月九日に三菱重工業株式会社の株式に係る配当金二万八五〇〇円(所得税源泉徴収
後の金額)が原告に対して支払われたことが認められる。昭和三九年支払の配当に係る源
泉徴収税率も五パーセントであるから、右配当金額は三万円、支払済源泉徴収所得税は、
一五〇〇円となる計算である(乙第七五号証のうち、右支払配当金に係る源泉徴収所得税
及び差引支払額についての回答は、誤記と認められる。。)
同四〇年分については、前掲乙第七五号証によれば、配当金額は五万円、支払済源泉徴収
所得税は五〇〇〇円と認められる。
[10]番号10は、前掲乙第四五号証の三、第五八号証及び第一三一号証
[11]番号11は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、二〇、第七一号証及び
第一三一号証並びに成立に争いがない乙第一二一号証の七
[12]番号12は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、二〇、第五五号証、第
一二一号証の九及び第一三一号証
[13]番号13は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、二〇、第六三号証及び
第一三一号証並びに成立に争いがない乙第一二〇号証の四
[14]番号14は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、二〇、第七二号証及び
第十三一号証
[15]番号15は、昭和三八年分及び昭和四〇年分については、前掲乙第四五号証の
三及び第六一号証同昭和三七年分については、前掲乙第四五号証の三によれば、昭和三七
年一二月一五日に東急不動産株式会社の株式に係る配当金一万六八七五円(所得税源泉徴
収後の金額)が原告に対して支払われたことが認められる。
昭和三七年支払の配当に係る源泉徴収税率は一〇パーセントであるから、右配当金額は一
万八七五〇円(これは、成立に争いがない乙第一二一号証の一二によつて認められる昭和
三七年九月期の配当率一五パーセントと原告所有株式数五〇〇株とから計算される金額と
も合致する、その支払済源泉徴収所得税額は一八七五円となる計算である。同三九年。)

については、前掲乙第四六号証の八、二〇及び第六一号証によれば、東急不動産株式会社
の株式に係る配当金として、同年六月に配当金額二万五〇〇〇円(うち支払済源泉徴収所
得税額一二五〇円、差引支払額二万三七五〇円)が、同年一二月九日に配当金額一万八七
五〇円(うち支払済源泉徴収所得税額九三七円、差引支払額一万七八一三円)が、それぞ
れ原告に対して支払われたことが認められる(乙第六一号証のうち、P2名義の株式に対
する昭和三九年一二月支払の配当金に係る源泉徴収所得税及び差引支払額に関する回答
は、
誤記と認める)から、同年分の配当金額は四万三七五〇円、支払済源泉徴収所得税額は。

一八七円となる。
[16]番号16は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、二〇、第六四号証及び
第一三一号証
[17]番号17は、前掲乙第七三号証、第一二〇号証の六及び第一三一号証並びに成
立に争いがない乙第一二一号証の八
[18]番号18は、前掲乙第五二号証及び第一三一号証並びに成立に争いがない乙第
一二〇号証の八及び第一二一号証の一一
[19]番号19は、前掲乙第五一号証及び第一三一号証並びに成立に争いがない乙第
一二〇、第一二一号証の各三
[20]番号20は、前掲乙第四五号証の三、第七四号証及び第一三一号証
[21]番号21は、前掲乙第四五号証の三及び第一三一号証
[22]番号22は、前掲乙第四六号証の八、二〇、第六二号証及び第一三一号証
[23]番号23は、前掲乙第七六号証及び第一三一号証
[24]番号24は、前掲乙第四五号証の三、第四六号証の八、二〇、第六〇号証及び
第一三一号証
[25]番号25は、前掲乙第五四号証及び第一三一号証並びに成立に争いがない乙第
一二一号証の六
[26]番号26は、前掲乙第四五号証の三によれば、昭和三八年一月二一日に株式会
社荏原製作所に係る信用配当金合計七四五〇円が原告に対して支払われたことが認められ
るところ、被告は、
これを配当所得として計上している。しかし、信用配当金は、前記[2]のとおり配当所
得とはならないものである。そうすると、昭和三八年分の配当金額及び支払済源泉徴収所
得税はない(〇円となる。。)
[27]番号27は、前掲乙第四五号証の三によれば、昭和三九年六月に本州製紙株式
会社に係る信用配当金六万八二五〇円が原告に対して支払われたことが認められるが、こ
れも前記[2]のとおり配当所得とはならないものであるから、昭和三九年分の配当金額
及び支払済源泉徴収所得税はない(〇円となる。。)
[28]番号28は、前掲乙第四五号証の七によれば、昭和四〇年六月一六日に三菱地
所株式会社に係る信用配当金二万八二五〇円が原告に対して支払われたことが認められる
が、これも前記[2]のとおり配当所得とはならないものであるから、昭和四〇年分の配
当金額及び支払済源泉徴収所得税はない(〇円となる。。)
[29]番号29は、前掲乙第四九号証によれば、日本貴金属協同組合から原告に対し
て、その出資に係る配当として、昭和三八年六月四日に配当金額一万円(うち支払済源泉
徴収所得税五〇〇円、差引支払金額九五〇〇円)を、昭和三九年六月一日に配当金額一万
二五〇〇円(うち支払済源泉徴収所得税六二五円、差引支払金額一万一八七五円)を、昭
和四〇年六月四日に配当金額二万円(うち支払済源泉徴収所得税二〇〇〇円、差引支払金
額一万八〇〇〇円)を、それぞれ支払つたことが認められる。
そうすると、右組合に係る配当金額及び支払済源泉徴収所得税額は、本件係争各年分中、
昭和三六年及び三七年を除く各年分について右のとおり認められるが、昭和三六、三七年
分はないことになる。
以上のとおりであるから、配当金額の合計額は、昭和三六年分が二万六五〇〇円、同三七
年分が一七万六〇〇〇円、同三八年分が五九万五三七五円、同三九年分が四九万六八三六
円となり、これらは配当所得に該当し、総所得金額に算入される。
しかし、昭和四〇年分は、一銘柄年間五万円以下の配当所得については申告不要とされ、
総所得金額に算入されないこととされており(被告のいわゆる非課税小口配当である。昭
和四〇年法律第三二号によつて追加された租税特別措置法八条の四参照。右配当所得を、
以下「申告不要配当所得」という、別表七の昭和四〇年分の配当金額中、※印の付い。)

いないもの(ただし、
番号29は前記のとおり二万円である)がこれに当たり、その合計額は三八万七五〇四。

となる。これについては、資産増減法上、事業主借として計上すべきものであるから、同
年分の総所得金額に算入される配当所得の合計額は四七万四五六二円である。
また、支払済源泉徴収所得税の合計額は、昭和三六年分が二六五〇円、同三七年分が一万
七六〇〇円、同三八年分が三万四一二五円、同三九年分が二万五〇八五円、同四〇年分が
八万五〇七七円であり、これらはいずれも事業主貸として計上されるべきものである。
10預け金及び未払金前掲乙第四五号証の一、三、七、第四六号証の一、二、八、第一
二六、第一二七号証及び第一三一号証並びにQ証言により原本の存在及び成立が認められ
る乙第四六号証の三ないし七、九ないし一五によれば、原告は大和証券株式会社兜町営業
部との間で、原告名義で昭和三七年六月ころから昭和三九年九月ころまで、P3名義で同
年一一月ころから昭和四〇年七月ころまで、株式等の売買取引をしていたが、右取引に係
る預け金の期末残高は、昭和三七年末が一〇万三三八七円、同三八年末が四三万三〇六九
円、同三九年末が〇円(立替金も〇円)であつたこと、また、原告は、東和証券株式会社
との間でも自己名義及びP4等の架空名義で昭和三九年ころから昭和四一年ころまで株式
の売買取引をしていたが、右取引に関する期末残高は、昭和三九年末が預け金五万三四二
九円、昭和四〇年末が立替金(未払金)一万九七七二円であつたことが認められる。
そうすると、預け金については、別表二の2の符号9、同3の符号11、同4の符号13
及び同5の符号17のとおりとなる。また、昭和四〇年分の未払金(別表二の5の符号2
3)は期首現在額が〇円、期末現在額及び差引増加額が一万九七七二円となる(被告主張
額は、前記4の東京芝浦電機株式会社に係る昭和四一年一月五日の取引後のものであり、
相当でない。。)
11信用取引による株式売買損益
別表八の信用取引による株式売買損益については、同表の番号1ないし26及び28ない
し31が前掲乙第四五号証の三によつて、同番号32ないし39及び41ないし45が前
掲乙第四六号証の八によつて、同番号40が前掲乙第四五号証の七によつて、それぞれそ
の記載のとおりであることが認められるが、同表の番号27については、これを認めるに
足りる証拠はない。
また、
前掲9の[2[26]ないし[28]のとおり信用取引による株式売買に係る信用配]、

金が原告に対して支払われたほか、前掲乙第四五号証の三によれば、日本電気株式会社に
係る信用配当金三万四六二五円が昭和三八年一二月二〇日に原告に対して支払われている
ことが認められる。そうすると、その性質上右信用配当金は信用取引による株式売買益に
加算されるべきものである。
したがつて、信用取引による株式売買損益の合計額は、昭和三七年分が売買益三六万三一
六八円、同三八年分が売買損一四万六五五八円、同三九年分が売買益六万九九二七円、同
四〇年分が売買益三二万八四八〇円となるが、右昭和三七年分、三九年分及び四〇年分の
各益金は非課税であるから資産増減法上は事業主借として、同三八年分の損金は事業主貸
として、それぞれ計上すべきである。
12受取手形及び不渡手形
別表九の受取手形については、次の[1]ないし[7]の各証拠によつて同表記載の各番
号のとおり認められる。
また、別表一〇の不渡手形については、次の[8]ないし[13]の各証拠によつて同表
記載の各番号のとおり認められる。
(受取手形関係)
[1]共同映画株式会社
前掲乙第六七号証、第八一号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びに成立に争いがない
甲第三一号証の一〇のイ及び乙第一二二号証
[2]株式会社ケー・エス商会
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二二号証及び第一三一号証、成立に争いがない甲
第三一号証の
一、二の各イ並びにO証言
[3]協栄時計工業株式会社
前掲乙第一二二号証及び第一三一号証並びに成立に争いがない乙第一一九号証
[4]九一物産株式会社
前掲乙第四八号証、第六七号証、第一〇八号証、第一二二号証及び第一三一号証
[5]大幸商事株式会社
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二二号証及び第一三一号証、成立に争いがない甲
第二七号証の一ないし七、一〇、一一の各イ、ロ並びにO証言
[6]東交易株式会社
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二二号証及び第一三一号証、成立に争いがない甲
第二八号証の一ないし三、五、六の各イ及び同号証の四のイ、ロ並びにO証言
[7]斉藤商店ことP5
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二二号証及び第一三一号証、
成立に争いがない甲第三〇号証の三のイ並びにO証言
(不渡手形関係)
[8]株式会社土井鉄工所
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二二号証及び第一三一号証、成立に争いがない甲
第三一号証の三のイ、ロ並びにO証言
[9]斉藤商店ことP5
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二二号証及び第一三一号証、成立に争いがない甲
第三〇号証の一、二、四の各イ、ロ並びにO証言
[10]不二商会ことP5
前掲乙第六六号証、第一〇八号証、第一二二号証及び第一三一号証、成立に争いがない甲
第三一号証の五のイ、ロ並びにO証言
[11]中央不動産業株式会社
、、、前掲乙第六六号証第一〇八号証及び第一三一号証成立に争いがない甲第二九号証のイ
ロ並びにO証言
[12]北海道カーホート株式会社
前掲乙第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証、成立に争いがない甲第三一号証の四
のイ、ロ並びにO証言
[13]協栄時計工業株式会社
前掲乙第一一九号証、第一二二号証及び第一三一号証並びにO証言
原告は、別表九の各受取手形及び別表一〇の各不渡手形はいずれも原告がHから預つたも
のに過ぎないと主張するが、右各手形が原告に帰属するものであることは右[1]ないし
[]。。13の各証拠に照らして明らかである原告の右主張に沿う供述は到底信用できない
以上のとおり、受取手形については、別表二の3及び4の各符号5及び同表の5の符号7
のとおりとなり、不渡手形については、別表二の4の符号6及び同表の5の符号8のとお
りとなる。
13保証金
、、原告は前記10のとおり大和証券株式会社兜町営業部と株式売買取引をしていたところ
前掲乙第四五号証の四及び第一三一号証並びにQ証言により原本の存在及び成立が認めら
れる乙第四五号証の八によれば、その信用取引に係る委託保証金(現金)の期末残高は、
昭和三七年末が〇円、同三八年末が二〇万七〇〇〇円、同三九年末が〇円であつたことが
認められる。
そうすると、保証金については、別表二の3の符号10及び同表の4の符号12のとおり
となる。
14青色専従者給与額
前掲乙第一三一号証及び第一六五ないし第一六七号証の各一並びに成立に争いがない乙第
一九七号証の一、第二〇七号証及び第二一二号証によれば、原告は、昭和三八年分ないし
昭和四〇年分の事業所得の計算上、
青色専従者給与として昭和三八年分は一二万三七五〇円を、同三九年分は一三万二〇〇〇
円を、同四〇年分は一七万二五〇〇円を、それぞれ必要経費に算入して右各年分の確定申
告をしていることが認められる。
しかし、前記二の4のとおり本件青色申告承認取消処分が遡つてなされたことによつて、
右金額は事業所得の計算上必要経費として認められないことになる。
したがつて、青色専従者給与額については、別表二の3の符号13、同表の4の符号15
及び同表の5の符号19のとおりである。
15大船の別荘の建築費
、、成立に争いがない乙第一四五号証及び第一四六号証並びに弁論の全趣旨によれば原告は
昭和三八年八月に新築した鎌倉市<地名略>所在の別荘の取得に当たり、同年四月二八日
株式会社丸二渡辺建設(同年商号変更前は株式会社渡辺建設)との間で金額一〇〇万円の
建築請負契約を交わしたが、右請負代金として結局一〇六万〇八一〇円(内金五〇万円は
同年五月一五日、残金は同年八月一五日)を簿外資金から支払つたことが認められる。
したがつて、右建築費は昭和三八年分の事業主貸として計上されるべきものである。
16割引興業債券及びその償還差益
前掲乙第四六号証の一、八及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和三九年一二月二五日、
東和証券株式会社において割引興業債券(第二八二回)二七〇口を代金二五万四一七八円
でP4名義を用いて購入したこと、右債券は昭和四〇年一二月二五日に額面の二七万円で
償還され、同月二七日原告は右償還金を取得したことが認められる。
そうすると、割引興業債券については、別表二の4の符号11及び同表の5の符号15の
とおりとなる。また、右割引興業債券の償還差益一万五八二二円は昭和四〇年分の雑所得
となる。
17貸付信託、金銭信託及び貸付信託の前払収益金
前掲乙第六六号証、第一〇八号証及び第一三一号証並びに原本の存在及び成立に争いがな
い乙第四〇号証の一、二によれば、原告はB名義で、東洋信託銀行に信託金二〇〇万円の
貸付信託(期間五年、償還日昭和四五年一〇月二四日、第七一回、契約番号E五−七八)
を昭和四〇年一〇月一四日に設定し、その前払収益金二〇九六円の支払を受け、同時に以
後の収益金受領のために、右前払収益金で金銭信託(信託金二〇九六円、元本支払日昭和
四五年一〇月二〇日、記号五一一、
契約番号五九八)を設定したことが認められる。
そうすると、貸付信託及び金銭信託については、別表二の5の符号4及び5のとおりとな
る。また、右前払収益金二〇九六円は、利子所得として分離課税の対象となるものである
から、昭和四〇年分の事業主借として計上されるべきことになる。
18社債並びに社債の売買益及び償還差損
(一)前掲乙第六七号証、第一〇八号証、第一三一号証、第一三三号証及び第一三四号
、、証並びにQ証言により原本の存在及び成立が認められる乙第一二五号証によれば原告は
別表一一の番号1ないし3記載のとおり各社債を取得し、これを本件調査時(昭和四一年
六月一一日)にも保有していたことが認められる。そうすると、番号1ないし3の昭和四
〇年末における現在高合計は同表記載の金額となる。
(二)前掲乙第四六号証の一、七、第六七号証、第一〇八号証、第一二六号証、第一三
一号証、第一三三号証及び第一三四号証によれば、原告は、別表一一の番号4ないし28
記載のとおり各社債を取得し、これを本件調査がされた昭和四一年六月一一日当時保有し
ていたことが認められる。そうすると、昭和四〇年末における番号4ないし9の現在高及
び同10ないし28の現在高の各合計はそれぞれ右表の当該欄記載のとおりとなる。
(三)右(二)記載の乙号各証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、別表一一の番号2
9ないし137記載のとおり各社債を取得し、そのうち番号29ないし48、50ないし
55及び58ないし137の各社債を本件調査時にも保有していたこと、原告は、昭和四
()、〇年六月二八日に番号49の社債取得金額一万〇一三二円を一万〇三二九円で売却し
同年八月二五日には番号56及び57の各社債(取得金額は四万〇〇四三円)の償還を額
面金額の四万円で受けていることが認められる(乙第四六号証の七には、番号49の社債
についても償還と記載されているが、金額等に鑑みて売却と認められる。。)
そうすると、番号29ないし48、50ないし55及び58ないし137の各社債の昭和
四〇年末における現在高は、番号29ないし137の合計取得金額から番号49、56及
び57の取得金額相当分を差し引いた金額であり、別表一一の差引合計欄記載のとおりと
なる。
以上のとおりで、社債については、別表二の5の符号10のとおりである。
また、右(三)認定の事実によれば、
昭和四〇年分の社債売買益として一九七円が、社債償還差損として四三円が存在するとこ
ろ、社債売買益は非課税であるから事業主借として、社債償還差損は事業主貸として、そ
れぞれ計上すべきものである。
19電信電話債券
原告が別表一二記載のとおり各電信電話債券を取得し、これを本件調査時の昭和四一年六
月一一日当時も保有していた事実は、次の各証拠によつて認めることができる。
[番号1ないし5]前掲乙第四六号証の一、一五、第六六号証、第一〇八号証、第一二
六号証及び第一三一号証
[番号6]前掲乙第四六号証の一、九、第六六号証、第一〇八号証、第一二六
号証及び第一三一号証
[番号7ないし9]前掲乙第四六号証の一、一〇、第六六号証、第一〇八号証、第一二
六号証及び第一三一号証
[番号10及び11]前掲乙第四六号証の一、一一、第六六号証、第一〇八号証、第
一二六号証及び第一三一号証
[番号12及び13]前掲乙第四六号証の一、一二、第六六号証、第一〇八号証、第
一二六号証及び第一三一号証
[番号14及び15]前掲乙第四六号証の一、一三、第六六号証、第一〇八号証、第
一二六号証及び第一三一号証
[番号16ないし20]前掲乙第四六号証の一、一四、第六六号証、第一〇八号証、第
一二六号証及び第一三一号証
[番号21ないし25]前掲乙第四六号証の一、三、第六六号証、第一〇八号証及び第
一三一号証
[番号26ないし30]前掲乙第四六号証の一、七、第六七号証、第一〇八号証、第一
二六号証、第一三三号証及び第一三四号証
以上によれば、電信電話債券については、別表二の5の符号11に記載のとおりとなる。
20株式払込金
前掲乙第六〇号証及び第一三一号証によれば、原告は、日本電気株式会社の株式一万五〇
〇〇株を昭和四〇年末において保有していたところ、同社の昭和四一年一月一日付け増資
(有償六割)に伴う新株九〇〇〇株を引き受け、そのころ四五万円を払い込んだことが認
められる。
したがつて、株式払込金は別表二の5の符号16記載のとおりとなる。
21借入金
前掲乙第四九号証及び第一三一号証によれば、原告は、昭和四〇年一二月二九日に日本貴
金属協同組合から四〇万円を借り入れ、これを昭和四一年一月一四日返済したことが認め
られる。また、前掲乙第一三一号証並びに原本の存在及び成立に争いがない乙第四一号証
によれば、
原告は、昭和四〇年七月二九日から昭和四一年六月七日までの間、平和相互銀行浅草支店
から継続的に借入をしていたが、その昭和四〇年末の借入残高は五〇〇万円であつたこと
が認められる。したがつて、借入金は、別表二の5の符号22記載のとおりである。
22社債利子
前掲乙第八八号証及び第一三一号証によれば、原告は、その所有の別表一一記載の社債に
係る利子を平和相互銀行浅草支店のP6名義の普通預金口座(別表三の番号27)に入金
させていたところ、昭和四〇年中の右社債利子に係る入金は合計六六万〇五一五円であつ
たことが認められる。
右認定の社債利子六六万〇五一五円は分離課税の対象となるので、これを昭和四〇年分の
事業主借として計上すべきである。
23電信電話債券売買益
前掲乙第四六号証の一、四ないし七、第一二六号証及び第一三一号証によれば、別表一三
記載のとおり原告に帰属する電信電話債券の取得及び売却があつたことが認められる。
したがつて、昭和四〇年分の電信電話債券の売買益は三万三九一三円と算出されるが、こ
れは非課税であるから、事業主借として計上すべきである。
24事業主貸
本件係争各年分の事業主貸は、次のとおり算出される。
(一)昭和三六年分
昭和三六年分の配当に係る支払済源泉徴収所得税の合計額(前記9とくに末尾。別表二の
1の符号10の金額と同一)二六五〇円
(二)昭和三七年分
昭和三七年分の配当に係る支払済源泉徴収所得税の合計額(前記9とくに末尾)
一万七六〇〇円
(三)昭和三八年分
合計一三三万四九一三円であり、その内訳は次のとおりである。
(1)現物取引による株式売買損(前記4。別表四関係)
九万三四二〇円
(2)昭和三八年分の配当に係る支払済源泉徴収所得税の合計額(前記9)
三万四一二五円
(3)信用取引による株式売買損(前記11)
一四万六五五八円
(4)大船の別荘の建築費(前記15)

〇六万〇八一〇円
(四)昭和三九年分
合計一四五万三八八七円であり、その内訳は次のとおりである。
(1)現物取引による株式売買損(前記4。
別表四関係)一四二万八八〇二円
(2)昭和三九年分の配当に係る支払済源泉徴収所得税の合計額(前記9)
二万五〇八五円
(三)昭和四〇年分
合計八万五一二〇円であり、その内訳は次のとおりである。
(1)昭和四〇年分の配当に係る支払済源泉徴収所得税の合計額(前記9)
八万五〇七七円
(2)社債償還差損(前記18)
四三円
25事業主借
本件係争各年分の事業主借は、次のとおり算出される。
(一)昭和三六年分
前記2(別表三関係)の昭和三六年分の預金利子(別表二の1の符号12の金額と同一)
三三万一六〇三円
(二)昭和三七年分
()、。合計一二八万六〇三九円であり別表二の2の符号13その内訳は次のとおりである
(1)預金利子(前記2。別表三関係)

〇万五〇九五円
(2)現物取引による株式売買益(前記4。別表四関係)

一万七七七六円
(3)信用取引による株式売買益(前記11)
三六万三一六八円
(三)昭和三八年分
預金利子(別表三。別表二の3の符号16と同額。前記2)

七万一七六六円
(四)昭和三九年分
合計七三万九二八五円であり、その内訳は次のとおりである。
(1)預金利子(別表三。前記2)

六万九三五八円
(2)信用取引による株式売買益(前記11)
六万九九二七円
(五)昭和四〇年分
合計三八八万七五六一円であり、その内訳は次のとおりである。
(1)預金利子(別表三。前記2)

一六万三〇一九円
(2)現物取引による株式等売買益(別表四。
前記4)三一万一八三七円
(3)申告不要配当所得一前記9)
三八万七五〇四円
(4)信用取引による株式売買益(前記11)

二万八四八〇円
(5)貸付信託の前払収益金(前記17)
二〇九六円
(6)社債売買益(前記18)
一九七円
(7)社債利子(前記22)
六六万〇五一五円
(8)電信電話債券売買益(前記23)
三万三九一三円
26借方合計(貸方合計)
、(。)以上により本件係争各年分の借方合計別途所得金額を加えた貸方合計も同額となる
は次のとおり計算される。
27元入金
本件係争各年分の元入金の額は、右26の本件係争各年分の借方の期首現在額の合計と同
額となる。
28以上の計算結果に基づいて算出される別途所得金額(借方合計の期末現在額から別
途所得金額を除く貸方の各期末現在額を差し引いたもの)は、次のとおりとなる。
[1]昭和三六年分
八五九万三五八九円
[2]昭和三七年分一
六九九万三九〇二円
[3]昭和三八年分三
七二〇万〇九七〇円
[4]昭和三九年分八
一四六万一四八四円
[5]昭和四〇年分三
七三七万〇八八九円
四次に総所得金額及び各種所得の金額について検討する。
1所得の種類並びに雑所得
以上の認定事実によれば、原告の本件係争各年分の総所得金額を構成する所得の種類とし
ては、事業所得のほか、前記三9の配当所得並びに雑所得として同16の割引興業債券償
還差益及び同7の貸付金に係る利息収入(これについては以下(一)ないし(五)で検討
するが、いずれも原告の事業として行つたものとは認められないから、雑所得となる)。

あることになる。
なお、
前記三2の預金利子、同17の貸付信託の前払収益金及び同22の社債利子は利子所得で
あるが、これは分離課税の対象となるものである。また、同4の現物取引による株式等売
買益、同11の信用取引による株式売買益、同18の社債売買益及び同23の電信電話債
券売買益は、いずれも有価証券の譲渡による所得として非課税となり、申告を必要としな
い同9の申告不要配当所得と共に総所得金額を構成しないものである。したがつて、右各
所得は事業主借とし、別途所得金額の計算上除外してある。
(一)Gに対する貸付金の未収利息
前記三8のとおり昭和三六年から昭和四〇年まで年額三八万九一八四円である。
(二)Yに対する貸付金の利息
前掲乙第一四八号証によれば、Yは、原告からの借入金の利息として原告に対して、昭和
三六年中に合計三万二〇〇〇円を支払つたことが認められる。
(三)共同映画株式会社に対する貸付金の利息
、、、前掲乙第八一号証及び第一三一号証によれば右会社は原告からの借入金の利息として
昭和三八年中に四八万〇五六〇円、昭和三九年中に一一万三〇〇〇円、昭和四〇年中に四
万一七七〇円を原告に支払つたことが認められる。
(四)三功紙幣計算機株式会社に対する貸付金の利息
前掲乙第八〇号証及び第一三一号証によれば、右会社は、原告からの借入金の利息として
原告に対して、昭和四〇年中に三五三万五六〇〇円を支払つたことが認められる。
(五)なお、丸一物産株式会社及びピジヨン陶歯企業組合に対する各貸付金(前記三7
(一)の[1]及び[5)は、利息の取り決めがなく、本件係争各年中に利息の支払は]

かつたことが、前掲乙第四八号証及び第一三六号証によつて認められる。
したがつて、雑所得は、昭和三六年分が四二万一一八四円、昭和三七年分が三八万九一八
四円、昭和三八年分が八六万九七四四円、昭和三九年分が五〇万二一八四円、昭和四〇年
分が三九八万二三七六円となる。
2別途所得金額の所得の種類別の金額
右1冒頭の事実に基づけば、原告の別途所得金額のうち前記三9の配当所得金額及び右1
の雑所得金額を除いた額は事業所得に相当するものと言うべきである。そうすると、本件
係争各年分の別途所得金額の所得の種類別の金額は、次のとおりとなる。
3総所得金額
本件係争各年分の総所得金額及び各種所得の金額は、
右2の別途所得金額の所得の種類別の金額に当事者間に争いがない原告の申告所得金額
(抗弁ニ1ないし5の各(一(1)を加えることにより、昭和三九年分の譲渡所得損))

額一〇万五七八〇円(申告額)のほかは、次のとおりとなる。
五そこで、原告主張の簿外資産の帰属年度及び金地金取引量について検討する。
1資産増減法によつて前記三で認定した別途所得金額には原告が申告した所得金額は含
まれていないことは原告も自認するところである。そして、前掲乙第六六号証、第一〇六
号証の三、第一一六号証、第一三二号証、第一三八号証、第一六五号証の一ないし三、第
一六六、第一六七号証の各一ないし四、第一九七号証の一及び第二〇〇号証、原本の存在
及び成立に争いがない甲第一号証の一、乙第一七〇号証の一ないし七、第一七二号証の一
ないし三、第二〇一号証の一、二及び第二〇三号証の一ないし三、成立に争いがない乙第
一七三ないし第一九六号証、第一九七号証の二、第二〇二号証の一ないし四及び第二〇四
号証、O証言により原本の存在及び成立が認められる乙第一七一号証の一ないし三、同証
言により真正に成立したものと認められる乙第一九九号証、弁論の全趣旨により真正に成
立したものと認められる乙第一九八号証、O証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告の申
告所得金額に見合う(と言うより、むしろ上回る)だけの公表資産、生活費の消費額並。

に保険料、租税、弁護士費用及び保釈金の各支払額が存在し、右公表資産は、本件におい
て資産増減法による別途所得金額算出のために対象とした簿外資産とは全く重複していな
いことが認められる。
したがつて、前記三で認定したところの資産増減法による原告の別途所得金額は、この点
でも合理的である。甲第七号証も右の認定を動かすには至らない。
右について、原告は、昭和一一年から「よなげ」行為により無償取得した一〇〇貫を超え
る金地金があり、これを昭和三二年ころまでに換金して得た二億数千万円の資金があつた
と主張に、これが本件簿外資産の資金源であるから、同簿外資産を基にして資産増減法に
より推計した別途所得金額は本件係争各年分の所得ではありえないと主張する。
しかし、よなげ行為により原告がそのような大量の金地金を取得し、巨額の換価金を人手
していた旨の前掲甲第八号証及び原告本人尋問の結果は、
極めてあいまいかつ不自然で到底信用できないし、甲第一八、第一九号証も右主張を認め
るには到底足りないものであり、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして、資産増減法は、課税期間中の純資産の増加額から所得を推計するものであり、本
件でその対象とした簿外資産の期中増加額が本件係争各年中に発生したものである以上、
これを基に本件係争各年分の所得を推計することができることは明らかである。なお、原
告が本件係争各年中によなげ行為によつて前記簿外資産を増加させたとしても、それは原
告の事業である貴金属の精錬・製造、加工、販売(抗弁一1。この点は当事者間に争いが
ない)の一部と言えるものであるから、事業所得を構成する所得となることに変わりは。

い。よつて、原告の右主張は失当である。
3原告は、金地金取引の純益を一グラム当たり一円二〇銭と称し、国内の金生産量及び
消費量に照らして、本件別途所得金額を金地金の簿外取引によつて稼得することは有りえ
ないと主張する。
しかし、本件係争各年度における金地金取引の純益が右の程度に過ぎなかつたことを首肯
させる証拠はない。
かえつて、前掲甲第六号証によれば、昭和三九年ころ日本国内市場に流通していた金は、
新産金が年間約一〇数トン、市中金(回収金)が推定約五トンのほかに密輸金等があり、
密輸金の量の詳細は不明であるがおおまかな推定では年間約二トンないし六トンと言われ
ていることが認められる。更に、同号証によれば、同年ころの新産金一グラムの取引価格
は、大手金地金取扱業者から金地金加工業者への卸売で六七〇円ないし六八〇円位、同小
売で六九〇円位であつたのに較べ、市中金の場合は、金地金取扱業者の買受価格で一グラ
ム当たり五四〇円ないし六六〇円位であり、密輸金に至つては更に安価で取引されること
が多かつたことが認められる。そして、原本の存在及び成立に争いがない甲第一六号証に
おいて原告は、昭和三六年分の金地金取引の差益率を二・八九パーセントと主張している
が、この率によつても、純益を一円二〇銭とする原告の前記主張は採用できないと言わざ
るをえない(右差益率によつた場合、右六九〇円の取引の利益は一九円九四銭となる。。)
また、前掲甲第六号証によれば、原告は、換金物の市中金を一グラム当たり四八二円ない
し四九六円で買い入れたこともあることが認められるほか、
前記二2で認定したとおり密輸金を一グラム当たり四九三円三〇銭で買い入れた事実もあ
り、このような安値な金による売買差益率は右差益率よりも遙かに大きいと推認される。
これに加えて、前記甲第一六号証、乙第一六五号証の一及び第一六六、第一六七号証の各
一、二によれば、原告は、白金、パラジウム、銀等の貴金属及び金地金よりも差益率の大
きい釣用金合金、鋳造用金合金、金パラ類等も取引していたことが認められる。
したがつて、原告の右反論は失当である。
4以上のとおり、前記四3で認定した本件係争各年分の総所得金額は、いずれも本件各
更正に係る総所得金額を上回つているから、本件各更正には原告の総所得金額を過大に認
定した違法はない。
六原告は、昭和三六年分及び昭和三七年分の本件各更正の時期が国税通則法七〇条一項
に反し、違法であると主張する。
なるほど、右各更正はその法定申告期限から三年を経過した日以後にされているが、前記
一ないし五に認定した事実によれば、原告は、本件係争各年度において、偽り、その他不
正の行為により所得税の一部の税額を免れたことは明らかであるから、昭和五六年法律第
五四号による改正前の国税通則法七〇条二項四号を適用して昭和三六年分ないし昭和三八
年分に係る本件各更正をしたことに違法はない(同規定は、偽りその他不正の行為により
免れた税額に相当する所得の部分のみに適用が限られるものではなく、当該年分の所得の
全部を更正の対象とすることができるものである。。)
よつて、原告の右主張も失当であり、昭和三八年分に係る本件更正にもこの点の違法はな
い。
七原告は、本件青色申告承認取消処分には取消しの基因となつた事由が附記されていな
いから無効(所得税法一五〇条二項違反)であり、したがつて、青色申告に係る本件係争
各年分の所得の更正を推計によつてすることは許されないし、本件各更正には理由の附記
が法律上必要である(所得税法一五五条二項及び一五六条。旧所得税法四五条二項及び三
項)と主張する。そして、請求原因二の事実(青色申告)は前記一のとおり争いがなく、
本件青色申告承認取消処分の存在とその附記理由(抗弁五)についても当事者間に争いが
ない。そうすると、右の附記理由をもつてしては相手方である原告において本件青色申告
承認を取り消す基因となつた事実を具体的に知ることはできないから、
右取消処分に理由附記の不備という瑕疵があることになり、この点では原告主張のとおり
である。
しかし、右の瑕疵は、文字どおり右取消処分の附記部分に存在するものであるから、本件
取消処分の取消事由となるに止まり、同処分の無効を来すまでの重大な瑕疵には当たらな
いものというべきである。したがつて、本件係争各年分の原告の青色申告書は所得税法一
五〇条一項により青色申告書以外の申告書とみなされることになり、原告の右主張は、そ
の前提において失当である。
八原告は、本件各更正は原告が本件係争各年度に金地金の密輸をして所得を得たものと
してなされたと主張に、右密輸の点は無罪となつたから、この無罪判決の確定と同時に本
件各更正は課税の根拠を失い、違法なものとなつたと争う。
しかし、本件調査の端緒が原告の密輸金地金の保管及び有償取得等の関税法違反等被告事
件にあつたことは前記二の認定事実から窺われるけれども、本件各更正は、被告がその後
に行つた本件調査の結果判明した簿外資産を基にして、既に判断したような推計によつて
なされたものであり、金地金の密輸の事実を対象として所得を認定したものではないこと
。、、は明らかであるしたがつて本件係争各年分において原告の簿外資産に増加がある以上
これを対象として原告の所得を推計した本件各更正は右被告事件の帰趨によつてその効力
が左右されることはない。
なお、右被告事件においても、Aからの密輸金地金の有償取得については有罪となつたこ
とは前記二3で認定したとおりである。
よつて、原告の右主張も失当である。
九そこで、本件各賦課決定について検討する。
前記一ないし五で認定した事実によれば、原告は、本件係争各年分の所得税の課税標準等
及び税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠蔽、仮装し、その隠蔽、仮装したとこ
。、ろに基づき本件係争各年分の納税申告書を提出していたことは明らかであるしたがつて
被告は、昭和三六年分については昭和三七年法律第六七号による改正前の所得税法五七条
一項によつて、昭和三七年分ないし昭和四〇年分については国税通則法六八条一項によつ
て、原告に対して重加算税を賦課することができるものである。
そして、本件各更正が正当であることはすでに判断したとおりであるから、これを前提と
してされた本件各賦課決定はいずれも適法である。
一〇よつて、
原告の本件各請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について
行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官山本和敏太田幸夫杉山正己)
別表三∼一三(省略)
別表一四の注
(一)昭和三八年分ないし昭和四〇年分については、本件青色申告承認取消処分により
原告の配偶者であるP7の青色専従者給与額の必要経費算入を否認した結果、同人が所得
税法に定める控除対象配偶者の要件を満たすことになつたので、本件各更正により新たに
配偶者控除額を所得控除額に加算したが、右配偶者控除額は過少申告加算税の対象となる
総所得金額から控除した。
(二)本件各更正において配当所得の金額の加算に対応して認容した配当控除額(税額
控除)及び源泉徴収税額については、重加算税の対象とした配当所得に対応するものにつ
いては重加算税の対象となる所得税額から控除し、過少申告加算税の対象とした配当所得
に対応するものについては過少申告加算税の対象となる所得税額から控除した。

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