弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士富田政儀、三根谷実蔵、松尾菊太郎の上告理由第一点について。
 大平洋戦争の応召者が応召に際し、妻その他留守を担当する者に後事を託した場
合において、その所有財産につきその管理の外、その処分に関する一切の権限を挙
げて留守担当者に付与したものと認めなければならないものとはいうことができな
い。従つて、本件において原判決が「応召した者の財産の管理は、反対の意思表示
のない限り、後に残つた妻に委託されたものと推定すべきであり、この場合妻は夫
が扶養義務を有する自己及び子女の生活維持や夫の営業継続に必要な範囲内におい
てのみ財産を処分する権限を与えられたものと推認すべきである」として、本件家
屋及び物件の売却につき被上告人の妻Dに夫を代理する権限がなかつたものと判断
していても、右判示に所論のような違法があるとはいえないから、論旨は採ること
を得ない。
 同第二点について。
 所論は、戦災による滅失の損害を避ける目的を以て財産を処分するのは保存行為
であるから、被上告人の財産管理の権限を有するその妻Dに本件家屋及び物件を売
却するについて被上告人を代理する権限があるというにあるが、所論の目的のため
に本件売買がなされたことは原判決の認定しないところであるのみならず本件売買
成立当時本件家屋所在の小樽市が空襲必至を予想され、前記家屋物件も何時戦火に
罹るかもしれないという所論のような情勢下にあつたとしても、戦火による滅失を
見越して本件家屋を売却処分することは、たとえそれが前記家屋物件の罹災による
損害を回避し、経済的価値を保存する目的に出でたものであつても、それは財産自
体の性質上の減損を防止する場合と異り、管理財産の現状維持を目的とする行為の
範囲を逸脱するものであつて、本件のような場合において、被上告人の不在中その
妻Dに付与されたと認めうる代理権限の範囲内に属する保存行為には該当しないも
のと解するを相当とする。従つて前記Dに、本件売買につき被上告人を代理する権
限がないものとした原判決は結局相当であつて、所論のような違法は認められない。
 同第三点について。
 被上告人の印章をその妻Dが保管していたことは原判決の認定事実により窺われ
るところではあるが、本件売買当時被上告人が応召不在中であつたことを上告人に
おいて熟知しており、被上告人名義の売渡証書(乙二号証)及び委任状(同第三号
証ノ一、二)は、被上告人の意思に基くことなく前記D等において、右印章を使用
して作成したものであつて、上告人は右Dからこれらの書類の交付を受けたもので
あることは原判決の認定するところである。そしてかかる場合、右Dにおいて夫た
る被上告人の印章を保管しこれを使用していた事実があつたとしても、その一事を
もつて、本件売買契約の締結につき、右Dが被上告人を代理する権限をもつていた
と上告人において信ずべき正当の理由があつたということはできない(昭和二四年
(オ)第一五三号同二七年一月二九日第三小法廷判決、民集六巻四九頁以下参照)。
従つて、右と同趣旨と認められる原判示は相当であり、しかも右の原判示は、上告
人が本件売買について前記Dに被上告人を代理する権限があると信ずるにつき過失
あるを免れないとするに外ならないから、更に進んで、上告人の悪意を確定する必
要のないこと明らかであつて、この点につき原判決の違法を主張する論旨も亦理由
がない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条により、裁判官全員の一致で主文のとおり
判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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