弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人本人の上告趣意について。
 所論は、事実誤認、量刑不当の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。
 弁護人富森啓児の上告趣意について。
 論旨第一は、原審が本件事故原因につき合理的客観的究明を行なつていない旨の
審理不尽の主張を前提として原判決の憲法一三条、二五条違反をいうが、原判決に
所論の点につき審理不尽のかどがあるとは認められないから、所論はその前提を欠
くものというべく、論旨は、結局、被告人の本件事故に対する刑事責任とは別個の
右会社の営業方法ないし国の道路政策、交通政策に対する非難に帰し、適法な上告
理由に当らない。
 論旨第二の前段は、単なる法令違反の主張であり、同後段は、憲法一四条違反を
いうが、原判決は、被告人に対し同人が自動車運転者なるが故に特に重い業務上の
注意義務を負わせたものとは認められないから、所論は前提を欠き、すべて適法な
上告理由に当らない。
 論旨第三は、本件の適用法条たる刑法二一一条前段が憲法三六条に違反する旨主
張するが、右刑法の規定をもつて、憲法三六条にいわゆる残虐な刑罰を定めたもの
といえないことは、当裁判所大法廷判例(昭和二三年(れ)第一〇三三号同年一二
月一五日宣告、刑集二巻一三号一七八三頁、同二二年(れ)第三二三号同二三年六
月二三日宣告、刑集二巻七号七七七頁)の趣旨に照らし明らかであるから、論旨は
理由がない。
 論旨第四、第五は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理
由に当らない。
 弁護人銭坂喜雄の上告趣意について。
 所論は、判例違反をいうけれども、引用の各判例はいずれも本件に不適切なもの
と認められるから、所論はその前提を欠くものというべく、論旨の実質は量刑不当、
単なる法令違反若しくは事実誤認の主張に帰し、すべて適法な上告理由に当らない。
 弁護人林百郎の上告趣意について。
 論旨第一は、憲法二五条違反をいうが、本件事故原因に関し原判決の事実誤認の
主張を前提とするもので、被告人に対し過失責任を認めた原審の認定は挙示の証拠
に照らし首肯するに足るから、所論はその前提を欠き、その実質は、被告人の刑事
責任とは別個の国の道路政策ないし交通対策に対する非難に帰し、適法な上告理由
に当らない。
 論旨第二は、憲法三六条違反をいうが、裁判所が普通の刑を法律の範囲内で量定
することが残虐な刑罰に当らないことは、前記昭和二三年六月二三日大法廷判決の
示すところであるから、所論は理由がない。論旨第三は、量刑不当の主張であつて、
刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべ
きものとは認められない。よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文の
とおり判決する。
  昭和三九年四月二八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六

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