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平成16年(行ケ)第224号 特許取消決定取消請求事件
平成16年10月26日口頭弁論終結
    判決
  原      告日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
訴訟代理人弁理士石島茂男
同     阿部英樹
  被      告  特許庁長官 小川洋
指定代理人      杉野裕幸
 同      福田裕司
 同      高橋泰史
 同      涌井幸一
 同      宮下正之
     主文
1 特許庁が異議2002-71985号事件について平成16年3月
26日にした決定中「特許第3257994号の請求項1ないし10に係る特許を
取り消す。」との部分を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
    事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 原告
(1) 主文1と同旨
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 主文2と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 原告は,発明の名称を「ソケット」とする特許第3257994号の特許
(平成11年8月30日出願,平成13年12月7日設定登録。以下「本件特許」
という。請求項の数は13である。)の特許権者である。
 本件特許に対して特許異議の申立てがされ,特許庁は,これを異議2002
-71985号事件として審理した。その過程で,原告は,特許出願の願書に添付
した明細書の訂正(以下「本件第1訂正」という。なお,この訂正により,請求項
の数は10になる。)を請求した。その結果,特許庁は,平成16年3月26日,
「訂正を認める。特許第3257994号の請求項1ないし10に係る特許を取り
消す。」との決定をし,同年4月19日,その決定の謄本を原告に送達した。
2 決定の理由
 決定の理由は,要するに,本件第1訂正後の請求項1ないし10に係る発明
は,いずれも刊行物記載の発明,周知技術及び慣用技術に基づいて,当業者が容易
に発明をすることができたものである,とするものである。
3 訂正審決の確定
 原告は,本訴係属中,平成16年8月16日付けで,本件第1訂正後の前記
明細書につき,特許請求の範囲の記載の訂正を含む訂正審判を請求した。特許庁
は,これを訂正2004-39193号事件として審理し,その結果,平成16年
9月14日にその請求のとおり訂正をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正
審決」といい,これによって認められた訂正を「本件第2訂正」という。)をし,
これが確定した。
4 本件第1訂正による請求項1ないし10の内容
【請求項1】部品本体の一面に接続端子を所定のパターンで配列してなる電子
部品を着脱自在に装着可能なソケット本体と,上記ソケット本体に固定され,上記
ソケット本体への電子部品の装着に際し,当該電子部品を案内するとともに上記電
子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材と,上記ソケット本体に上記電
子部品の接続端子の配列パターンに対応して配設され,上記電子部品の各接続端子
を挟んだ状態で加圧接触する一対の弾性的に開閉可能なアーム状接点部を有し,当
該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り
曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子と,上記
接触子の一対のアーム状接点部の係合突部とそれぞれ係合する係合部を有し,該係
合部は上記一対のアーム状接点部の間に配され,該係合部の前記アーム状接点部の
開閉方向とほぼ直交する方向への移動によって上記アーム状接点部をそれぞれ対称
的に開閉させるように構成された接点部開閉部材と,上記ソケット本体に対して上
下動可能に設けられ,その上下動により上記接点部開閉部材を上下動させるための
カバー部材とを備え,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部の下方の
第1の位置にあるとき上記一対のアーム状接点部は閉状態にある一方で,上記係合
部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあるとき上記一
対のアーム状接点部は開状態にあり,上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾
性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構
成されていることを特徴とするソケット。
【請求項2】部品本体の一面に接続端子を所定のパターンで配列してなる電子
部品を着脱自在に装着可能なソケット本体と,上記ソケット本体に固定され,上記
ソケット本体への電子部品の装着に際し,当該電子部品を案内するとともに上記電
子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材と,上記ソケット本体に上記電
子部品の接続端子の配列パターンに対応して配設され,上記電子部品の各接続端子
を挟んだ状態で加圧接触する一対の弾性的に開閉可能なアーム状接点部を有し,当
該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り
曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子と,上記
接触子の一対のアーム状接点部の係合突部とそれぞれ係合する係合部を有し,該係
合部は上記一対のアーム状接点部の間に配され,該係合部の前記アーム状接点部の
開閉方向とほぼ直交する方向への移動によって上記アーム状接点部をそれぞれ対称
的に開閉させるように構成された接点部開閉部材と,上記ソケット本体に対して上
下動可能に設けられ,その上下動により上記接点部開閉部材を上下動させるための
カバー部材とを備え,上記一対のアーム状接点部は,上記接触子の長手方向に対し
てほぼ線対称な形状に形成され,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突
部の下方の第1の位置にあるとき上記一対のアーム状接点部は閉状態にある一方
で,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあ
るとき上記一対のアーム状接点部は開状態にあり,上記開状態にある一対のアーム
状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触
するように構成されていることを特徴とするソケット。
【請求項3】上記接点部開閉部材は,上記接触子の一対のアーム状接点部とそ
れぞれ係合する係合部によって隔離された一対の貫通孔を有し,該一対の貫通孔に
それぞれ一対のアーム状接点部が配され,該係合部の上記アーム状接点部の開閉方
向とほぼ直交する方向への移動によって上記一対のアーム状接点部をそれぞれ対称
的に開閉させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか
1項記載のソケット。
【請求項4】上記電子部品は,BGAパッケージであることを特徴とする請求
項1乃至3のいずれか1項記載のソケット。
【請求項5】請求項1乃至4のいずれか1項記載のソケットに電子部品を取り
付けてテストを行う方法であって,電子部品を用意し,上記カバー部材を上記ソケ
ット本体に対して押し下げる向きに駆動して上記係合部を上記一対のアーム状接点
部の係合突部と当接する第2の位置へ移動させることにより上記一対のアーム状接
点部を対称的に開かせ,上記電子部品の接続端子がそれぞれに対応する一対のアー
ム状接点部の間に配置されるように上記電子部品を上記アダプタ部材に載置し,上
記カバー部材を上記ソケット本体から離れる向きに駆動して上記係合部を上記一対
のアーム状接点部の係合突部の下方の第1の位置へ移動させることにより上記各一
対のアーム状接点部によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接
触させることを特徴とする電子部品のテスト方法。
【請求項6】少なくとも一面に複数の接続端子を備えた電子部品を装着するた
めのソケットであって,上下動可能なカバー部材と,上記カバー部材の移動に応じ
て上下動可能なスライド部材と,先端部に開閉可能な一対のアーム状接点部を有
し,当該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状
に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられていする(ママ)複数
の接触子と,上記カバー部材及び上記スライド部材を取り付け,かつ,上記複数の
接触子を保持する本体と,上記本体に固定され,上記本体への電子部品の装着に際
し,当該電子部品を案内するとともに上記電子部品を位置決めして載置するための
アダプタ部材とを備え,上記スライド部材に上記複数の接触子に対応する位置に複
数の孔が形成されるとともに,これら各孔に一対の貫通孔を隔離するための係合部
が形成され,該一対の貫通孔にそれぞれ一対のアーム状接点部が配置され,該係合
部の上下動によって上記アーム状接点部の係合突部と係合して開閉するように構成
され,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部の下方の第1の位置にあ
るとき上記一対のアーム状接点部は閉状態にある一方で,上記係合部が上記一対の
アーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあるとき上記一対のアーム状接
点部は開状態にあり,上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上
記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されているこ
とを特徴とするソケット。
【請求項7】上記カバー部材を押し下げた場合に上記各一対のアーム状接点部
の加圧接触部がその中心部からほぼ均等な距離だけ移動するように構成されている
ことを特徴とする請求項6記載のソケット。
【請求項8】上記電子部品は,BGAパッケージであることを特徴とする請求
項6又は7のいずれか1項記載のソケット。
【請求項9】少なくとも一面に複数の接続端子を備えた電子部品を装着するた
めのソケットであって,上下動可能なカバー部材と,上記カバー部材の移動に応じ
て上下動可能なスライド部材と,上記カバー部材の移動に応じて上記スライド部材
を上下動可能なレバー部材と,先端部に開閉可能な一対のアーム状接点部を有し,
当該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折
り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられていする(ママ)複数の接
触子と,挿入される当該電子部品を所定位置に押さえるためのラッチ部材と,上記
カバー部材及び上記スライド部材を取り付け,かつ,上記複数の接触子を保持する
本体と,上記本体に固定され,上記本体への電子部品の装着に際し,当該電子部品
を案内するとともに上記電子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材とを
備え,上記スライド部材に上記複数の接触子に対応する位置に複数の孔が形成され
るとともに,これら各孔に一対の貫通孔を隔離するための係合部が形成され,該一
対の貫通孔にそれぞれ一対のアーム状接点部が配置され,該係合部の上下動によっ
て上記アーム状接点部の係合突部と係合して開閉するように構成され,上記係合部
が上記一対のアーム状接点部の係合突部の下方の第1の位置にあるとき上記一対の
アーム状接点部は閉状態にある一方で,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の
係合突部と当接する第2の位置にあるとき上記一対のアーム状接点部は開状態にあ
り,上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接
続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されていることを特徴とするソ
ケット。
【請求項10】上記レバー部材は,上記本体に回動可能に取り付けられ,該レ
バー部材の力点部が上記カバー部材に当接する一方で,該レバー部材の作動部が上
記スライド部材の下方においてその下面部に当接可能に構成されていることを特徴
とする請求項9記載のソケット。」
5 本件訂正審決後の本件第2訂正による請求項1ないし10の内容(下線部
は,本件第2訂正による訂正箇所である。)
【請求項1】部品本体の一面に接続端子を所定のパターンで配列してなる電子
部品を着脱自在に装着可能なソケット本体と,上記ソケット本体に固定され,上記
ソケット本体への電子部品の装着に際し,当該電子部品を案内するとともに上記電
子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材と,上記ソケット本体に上記電
子部品の接続端子の配列パターンに対応して配設され,上記電子部品の各接続端子
を挟んだ状態で加圧接触する一対の弾性的に開閉可能なアーム状接点部を有し,当
該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り
曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子と,上記
接触子の一対のアーム状接点部の係合突部とそれぞれ係合する係合部を有し,該係
合部は上記一対のアーム状接点部の間に配され,該係合部の前記アーム状接点部の
開閉方向とほぼ直交する方向への移動によって上記アーム状接点部をそれぞれ対称
的に開閉させるように構成された接点部開閉部材と,上記一対のアーム状接点部に
対して接近又は離間するように構成され,挿入される当該電子部品を所定位置に押
さえるためのラッチ部材と,上記ソケット本体に対して上下動可能に設けられ,そ
の押圧による下方への移動により上記接点部開閉部材を上方へ移動させ,かつ,そ
の押圧解除による上方への移動により上記接点部開閉部材を下方へ移動させるカバ
ー部材とを備え,上記カバー部材が押圧されず上記ソケット本体に対して上方の位
置にあるときは,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方
で離間した第1の位置にあって,上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方
で,上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では,上記係合部が上記一対のア
ーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあって,上記一対のアーム状接点
部が開状態で,かつ,上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避
して,上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め
載置可能であり,さらに,上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該カ
バー部材の押圧を解除することにより,上記ラッチ部材によって上記電子部品を所
定位置に押さえるとともに,上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によ
って上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されて
いることを特徴とするソケット。
【請求項2】部品本体の一面に接続端子を所定のパターンで配列してなる電子
部品を着脱自在に装着可能なソケット本体と,上記ソケット本体に固定され,上記
ソケット本体への電子部品の装着に際し,当該電子部品を案内するとともに上記電
子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材と,上記ソケット本体に上記電
子部品の接続端子の配列パターンに対応して配設され,上記電子部品の各接続端子
を挟んだ状態で加圧接触する一対の弾性的に開閉可能なアーム状接点部を有し,当
該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り
曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子と,上記
接触子の一対のアーム状接点部の係合突部とそれぞれ係合する係合部を有し,該係
合部は上記一対のアーム状接点部の間に配され,該係合部の前記アーム状接点部の
開閉方向とほぼ直交する方向への移動によって上記アーム状接点部をそれぞれ対称
的に開閉させるように構成された接点部開閉部材と,上記一対のアーム状接点部に
対して接近又は離間するように構成され,挿入される当該電子部品を所定位置に押
さえるためのラッチ部材と,上記ソケット本体に対して上下動可能に設けられ,そ
の押圧による下方への移動により上記接点部開閉部材を上方へ移動させ,かつ,そ
の押圧解除による上方への移動により上記接点部開閉部材を下方へ移動させるカバ
ー部材とを備え,上記一対のアーム状接点部は,上記接触子の長手方向に対してほ
ぼ線対称な形状に形成され,上記カバー部材が押圧されず上記ソケット本体に対し
て上方の位置にあるときは,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に
対して下方で離間した第1の位置にあって,上記一対のアーム状接点部が閉状態で
ある一方で,上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では,上記係合部が上記
一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあって,上記一対のアー
ム状接点部が開状態で,かつ,上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍
から退避して,上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に
位置決め載置可能であり,さらに,上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態か
ら当該カバー部材の押圧を解除することにより,上記ラッチ部材によって上記電子
部品を所定位置に押さえるとともに,上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾
性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構
成されていることを特徴とするソケット。
【請求項3】上記接点部開閉部材は,上記接触子の一対のアーム状接点部とそ
れぞれ係合する係合部によって隔離された一対の貫通孔を有し,該一対の貫通孔に
それぞれ一対のアーム状接点部が配され,該係合部の上記アーム状接点部の開閉方
向とほぼ直交する方向への移動によって上記一対のアーム状接点部をそれぞれ対称
的に開閉させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか
1項記載のソケット。
【請求項4】上記電子部品は,BGAパッケージであることを特徴とする請求
項1乃至3のいずれか1項記載のソケット。
【請求項5】請求項1乃至4のいずれか1項記載のソケットに電子部品を取り
付けてテストを行う方法であって,電子部品を用意し,上記カバー部材を上記ソケ
ット本体に対して押し下げる向きに駆動して上記係合部を上記一対のアーム状接点
部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置から上記一対のアーム状接点部の
係合突部と当接する第2の位置へ上方へ移動させることにより上記一対のアーム状
接点部を対称的に開かせるとともに,上記ラッチ部材を上記一対のアーム状接点部
の近傍から退避させて,上記電子部品の接続端子がそれぞれに対応する一対のアー
ム状接点部の間に配置されるように上記電子部品を上記アダプタ部材に位置決め載
置し,上記カバー部材の押圧を解除し,上記カバー部材を上記ソケット本体から離
れる向きに上方へ駆動して上記係合部を上記一対のアーム状接点部の係合突部の下
方の上記第1の位置へ移動させることにより,上記各一対のアーム状接点部によっ
て上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触させるとともに,上記ラ
ッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえることを特徴とする電子部品の
テスト方法。
【請求項6】少なくとも一面に複数の接続端子を備えた電子部品を装着するた
めのソケットであって,上下動可能なカバー部材と,上記カバー部材の押圧による
下方への移動により上方へ移動し,かつ,上記カバー部材の押圧解除による上方へ
の移動により下方へ移動可能なスライド部材と,先端部に開閉可能な一対のアーム
状接点部を有し,当該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に
「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複
数の接触子と,上記一対のアーム状接点部に対して接近又は離間するように構成さ
れ,挿入される当該電子部品を所定位置に押さえるためのラッチ部材と,上記カバ
ー部材及び上記スライド部材を取り付け,かつ,上記複数の接触子を保持する本体
と,上記本体に固定され,上記本体への電子部品の装着に際し,当該電子部品を案
内するとともに上記電子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材とを備
え,上記スライド部材に上記複数の接触子に対応する位置に複数の孔が形成される
とともに,これら各孔に一対の貫通孔を隔離するための係合部が形成され,該一対
の貫通孔にそれぞれ一対のアーム状接点部が配置され,該係合部の上下動によって
上記アーム状接点部の係合突部と係合して開閉するように構成され,上記カバー部
材が押圧されず上記本体に対して上方の位置にあるときは,上記係合部が上記一対
のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置にあって,上記一
対のアーム状接点部が閉状態である一方で,上記カバー部材が下方へ押し下げられ
た状態では,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する下方の
第2の位置にあって,上記一対のアーム状接点部が開状態で,かつ,上記ラッチ部
材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避して,上記電子部品を上記ソケット
本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め載置可能であり,さらに,上記カバ
ー部材が下方へ押し下げられた状態から当該部材の押圧を解除することにより,上
記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえるとともに,上記開状態に
ある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向か
ら挟んで加圧接触するように構成されていることを特徴とするソケット。
【請求項7】上記カバー部材を押し下げた場合に上記各一対のアーム状接点部
の加圧接触部がその中心部からほぼ均等な距離だけ移動するように構成されている
ことを特徴とする請求項6記載のソケット。
【請求項8】上記電子部品は,BGAパッケージであることを特徴とする請求
項6又は7のいずれか1項記載のソケット。
【請求項9】少なくとも一面に複数の接続端子を備えた電子部品を装着するた
めのソケットであって,上下動可能なカバー部材と,上記カバー部材の押圧による
下方への移動により上方へ移動し,かつ,上記カバー部材の押圧解除による上方へ
の移動により下方へ移動可能なスライド部材と,上記カバー部材の移動に応じて上
記スライド部材を上下動可能なレバー部材と,先端部に開閉可能な一対のアーム状
接点部を有し,当該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に
「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複
数の接触子と,上記一対のアーム状接点部に対して接近又は離間するように構成さ
れ,挿入される当該電子部品を所定位置に押さえるためのラッチ部材と,上記カバ
ー部材,上記スライド部材,上記レバー部材及び上記ラッチ部材を取り付け,か
つ,上記複数の接触子を保持する本体と,上記本体に固定され,上記本体への電子
部品の装着に際し,当該電子部品を案内するとともに上記電子部品を位置決めして
載置するためのアダプタ部材とを備え,上記スライド部材に上記複数の接触子に対
応する位置に複数の孔が形成されるとともに,これら各孔に一対の貫通孔を隔離す
るための係合部が形成され,該一対の貫通孔にそれぞれ一対のアーム状接点部が配
置され,該係合部の上下動によって上記アーム状接点部の係合突部と係合して開閉
するように構成され,上記カバー部材が押圧されず上記本体に対して上方の位置に
あるときは,上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離
間した第1の位置にあって,上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方で,上
記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では,上記係合部が上記一対のアーム状
接点部の係合突部と当接する下方の第2の位置にあって,上記一対のアーム状接点
部が開状態で,かつ,上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避
して,上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め
載置可能であり,さらに,上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該カ
バー部材の押圧を解除することにより,上記ラッチ部材によって上記電子部品を所
定位置に押さえるとともに,上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によ
って上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されて
いることを特徴とするソケット。
【請求項10】上記レバー部材は,上記本体に回動可能に取り付けられ,該レ
バー部材の力点部が上記カバー部材に当接する一方で,該レバー部材の作動部が上
記スライド部材の下方においてその下面部に当接可能に構成されていることを特徴
とする請求項9記載のソケット。」
第3 当裁判所の判断
上記当事者間に争いのない事実によれば,本件訂正審決前の特許請求の範囲
(本件第1訂正後の特許請求の範囲)請求項1ないし10の記載に基づいて,その
発明を認定し,これを前提に,これら請求項について,特許法29条2項の規定に
違反して登録された特許であることを理由にこの特許を取り消した決定の取消を求
める訴訟の係属中に特許請求の範囲の減縮を含む訂正審判が請求され,特許庁がこ
れを認める旨の本件訂正審決をし,これが確定したということができる。
そうすると,決定は,これにより,結果として,請求項1ないし10につい
て,判断の対象となるべき発明を特定すべき特許請求の範囲の認定を誤ったことに
なり,この誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本
件特許の特許請求の範囲請求項1ないし10に係る特許を取り消した決定は,取消
を免れない。
 以上によれば,本訴請求は理由があるので,これを認容することとし,訴訟費
用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民
事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所知的財産第3部
     裁判長裁判官    佐  藤  久  夫
     裁判官    設  樂  隆  一
     裁判官    若  林  辰  繁

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