弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 原判決主文第二、三項のうち、本件地位確認等請求にかかる判決確定の日(た
だし、控訴人が本判決に対し上告期間内に上告をしなかったときは、上告期間満了
日)の翌日以降の期間につき賃金、賞与(これらに対する遅延損害金を含む。)の
支払を命じた部分をいずれも取り消す。
二 右取消部分にかかる被控訴人らの訴えを却下する。
三 控訴人のその余の控訴を棄却する。
四 訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
       事   実
第一 控訴の趣旨
一 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
二 右取消部分にかかる被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
第二 事案の概要
一 事案の概要は、原判決摘示の「事案の概要」のとおりであるから、これを引用
する。
二 控訴人の当審における主張
1 解雇事由について
(一) 被控訴人A(以下「被控訴人A」という。)の解雇事由について
 控訴人の第一機械部門中第二工場に設置された本件掲示板は、控訴人の所有であ
るところ、控訴人は、本件掲示板を組合に提供したり、あるいは、その使用を組合
に許諾したことはなく、組合が事実上使用していたにすぎない。したがって、控訴
人は、業務上の必要に基づき、業務命令としてその撤去を求めることができるとい
うべきであり、被控訴人Aが右業務命令に従わなかったことは、控訴人の業務命令
違反に当たる。
(二) 被控訴人B(以下「被控訴人B」という。)の解雇事由について
 組合が控訴人に対し食堂の利用権限を有するのは、場所としての食堂であり、右
利用権限中に組合ニュースを食堂に掲示することまでは含まれていない。それまで
食堂に組合ニュースを掲示したのは、組合ではなく控訴人であることは明らかであ
って、このように食堂に掲示する組合ニュースを選択する権限は控訴人のみにあっ
たものである。また、被控訴人Bが食堂に掲示した組合ニュースは、むしろ標語を
記載したポスターである。したがって、被控訴人Bの右ポスター掲出行為は、組合
ないし被控訴人Bの権限に基づくものではない。また、控訴人社長Cが、すべてオ
ープンにと述べたとしても、被控訴人Bにおいて、右ポスターを掲出する権限があ
ると誤信することはありえない。
2 被控訴人Bの賃金、賞与の支払請求について
 控訴人は、原判決言渡し後の平成五年九月一日以降、被控訴人Bを就労させ、同
年八月二一日以降被控訴人Bが就労しているものとして被控訴人Bに賃金を支給し
ている。その明細は、別紙のとおりである。したがって、被控訴人Bの賃金、賞与
の支払請求のうち、少なくとも同年九月二六日支払分以降の部分は理由がなく(但
し、弁済の主張をするものではない。)、特に、将来給付請求の部分は予めその請
求をする必要がないというべきである。
三 控訴人の主張に対する被控訴人らの認否及び反論
1 控訴人の主張1、2は争う。
2 被控訴人Bの賃金、賞与の将来請求の必要性について
(一) 被控訴人Bは、解雇前の地位や労働条件をそのまま踏まえて就労している
ものではなく、控訴人は、被控訴人Bの従業員としての労務の受領を認めているも
のではない。
 すなわち、被控訴人Bは、原判決言渡しの翌日である平成五年八月三一日、控訴
人から、今日から仕事をするようにとの指示を受けたが、解雇を撤回したうえでの
就労指示なのか、また、どのような労働条件での就労なのか不明であった。そこ
で、控訴人との間で、同日から同年九月二日まで三日間にわたり団体交渉を行った
ところ、控訴人の右指示は、解雇を撤回するものではないこと、被控訴人Bを従前
の班長の地位に復帰させるものではないこと、本件解雇後も控訴人は毎年賃上げを
実施してきたが、被控訴人Bに対する給与の計算にあたってはこれを無視し、本件
解雇当時の金額に固定して計算しようとするものであること、被控訴人Aについて
は就労させる意思がないことが判明した。
 このように、控訴人は、被控訴人Bに解雇前の地位とは別の新たな就労を求め、
この新たな労働に対する対価としての賃金を支払うというにすぎないことが明らか
となったが、被控訴人Bは、かねて就労を要求してきた経緯もあるので、同月三日
以降異議を留めて就労した。被控訴人Bは、控訴人から、同月分の給与について
も、右団体交渉中の三日間を欠勤扱いにするなどの一方的な計算による賃金の支払
を受けている。
(二) 控訴人は、被控訴人らのうち被控訴人Bに対し就労を指示したものの、被
控訴人Aに対しては依然就労を拒否しており、原判決が支払を命じた金員の支払に
ついても、任意に履行しているというものではない。
 控訴人は、本件各解雇後も、原判決言渡し直前に組合員一名を解雇したほか、本
件解雇に関する中央労働委員会の審問でも、控訴人において労働組合の存続や組合
活動を許容する考えのないことを公言している。したがって、被控訴人Bの賃金、
賞与の将来請求の必要性がなお継続しているというべきである。
第三 証拠(省略)
第四 争点に対する判断
一 被控訴人らの地位確認請求について
 控訴人の被控訴人らに対する本件各解雇が無効であり、被控訴人らの地位確認請
求が理由があることは、原判決の理由説示(原判決一九枚目表一〇行目から同三九
枚目裏七行目のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決一九枚目裏四行
目の「事業上の都合」を「業務上の都合」と改め、同行の「勤務成績」の次に「が
著しく」を加え、同二一枚目裏三行目の「検甲一」の前に「七六、」を加え
る。)。
二 被控訴人らの賃金、賞与の支払請求について
1 被控訴人らの賃金、賞与の支払請求中、当審口頭弁論終結日までの分が理由が
あることは、原判決の理由説示(原判決三九枚目裏八行目から同四三枚目裏二行目
までのとおりであるから、これを引用する。
2 被控訴人らの賃金、賞与の支払請求中、当審口頭弁論終結日の翌日以降の将来
請求分について、被控訴人らに予め請求する必要性があるか否かにつき、以下判断
する。
 前記争いのない事実(原判決摘示の事案の概要の一)、証拠(甲五九、六一、六
二、七六、当審証人D)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、被控訴人Aに対し
ては平成二年一〇月一三日、被控訴人Bに対しては同年一二月二八日、それぞれ本
件各解雇の意思表示をしたこと、そこで、大阪地方裁判所に対し、被控訴人Aは同
年一〇月二四日、被控訴人Bは平成三年一月九日、それぞれ地位保全等の仮処分を
申請したこと、被控訴人Aは、平成二年一二月一八日、「被控訴人Aが控訴人に対
し労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。控訴人は被控訴人Aに
対し、同年一一月から本案の第一審判決言渡しに至るまで、毎月二六日限り月額一
七万二九〇〇円の割合による金員を仮に支払え。」との仮処分決定を得たこと、被
控訴人Bは、平成三年二月二二日、「被控訴人Bが控訴人に対し労働契約上の権利
を有する地位にあることを仮に定める。控訴人は被控訴人Bに対し、同年一月から
本案の第一審判決言渡しに至るまで、毎月二六日限り月額二一万六〇八一円の割合
による金員を仮に支払え。」との仮処分決定を得たこと、控訴人は、被控訴人Bに
ついての右仮処分決定に対し保全異議を申し立てたところ、同年六月一七日、右仮
処分決定のうち地位保全の部分を認可し、賃金仮払の部分を「控訴人は被控訴人B
に対し、同年一月から本案の第一審判決言渡しに至るまで、毎月二六日限り月額一
七万七六六〇円の割合による金員、並びに同年七月六日限り二三万〇五二六円、同
月二六日限り三万八四二一円、同年八月二六日限り三万八四二一円、同年九月二六
日限り一万三六八二円、及び同年一二月二八日限り一四万円をそれぞれ仮に支払
え。」と変更する決定がなされたこと、一方、被控訴人らは、同年六月一三日地位
確認と賃金、賞与の支払を求める本件訴訟を提起し、平成五年八月三〇日原判決が
言い渡されたこと、これに対し、控訴人は、同年九月八日本件控訴を提起し原判決
の取消しを求めて争う一方、被控訴人らのうち、被控訴人Aについては就労を引き
続き拒否するものの、被控訴人Bについては仮就労として職場に復帰させることと
し、被控訴人Bもこれに応じて、同月上旬から復職したこと、しかしながら、控訴
人の就労拒否がなければ被控訴人Bが得たであろう賃金として月額一八万八〇四六
円の支払を原判決が控訴人に仮執行宣言付で命じているにもかかわらず、控訴人
は、被控訴人Bに対し、時間外勤務等が現実に少ない以上、原判決が支払を命じた
金員の全額を支払う必要はないとして、一部減額した金員を被控訴人Bに支払って
いること、控訴人は、被控訴人Bとの法律関係についても解雇を撤回したものでは
なく、原判決が未だ確定していない以上、被控訴人Bを控訴人の正社員として扱う
ことはできない旨言明していることが認められる。
 以上認定の事実に基づいて考察するに、被控訴人らの賃金、賞与の支払請求中、
当審口頭弁論終結日の翌日から本件地位確認等請求にかかる紛争が確定する日まで
の分については、前記認定の本件訴訟に至る経緯、控訴人の応訴態度に照らし、被
控訴人らにおいて予め請求する必要があると認められる。しかし、控訴人が本判決
に上告しなかったとき、又は上告しても原判決主文一項が確定したとき以降におい
ても、なお控訴人が右判決に反して被控訴人らに適正な賃金、賞与を支払わない特
段の事情があることを認めるに足りる資料はない。そのうえ、被控訴人らが労働契
約上受けて来た給与等は、定期的な基本給のほか、時間外手当等の個々の具体的事
情によりその支給の有無、金額が変動する性格のものが含まれており(甲六四号証
の一ないし七、六六号証の一ないし一五)、これらの将来の金額は現段階で一義的
に明確に認定することはできない。
 そうすると、右部分の請求は民訴法二二六条に違反し、将来給付の訴えの利益を
欠くものとして却下を免れない。
三 以上によれば、原判決は、被控訴人らの賃金、賞与の支払請求中本件地位確認
等請求にかかる判決確定日(ただし、控訴人が本判決に対し上告期間内に上告をし
なかったときは、上告期間満了日)の翌日以降の分を認容した部分は失当であるか
ら、これを本判決主文第一、二項のとおり取り消して右取消部分にかかる被控訴人
らの訴えを却下し、原判決中その余の部分は相当であって、控訴人のその余の控訴
は理由がないから本判決主文第三項のとおりこれを棄却し、訴訟費用の負担につ
き、民訴法九六条、九二条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 井関正裕 東孝行 岩田眞)
<28265-001>

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