弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     上告人A1に対する請求に関する部分を東京高等裁判所に差し戻す。
     上告人A2、同A3、同A4、同A5に対する請求に関する部分の第一
審判決を取り消し、右部分の被上告人の請求を棄却する。
     上告人A2、同A3、同A4、同A5に関して生じた訴訟の費用および
同人らのための補助参加に関する費用は、被上告人の負担とする。
         理    由
  上告代理人山田重雄、同田中仙吉、同藤田信祐、同中村嘉兵衛の上告理由第一
点について。
 賃貸借契約が賃料不払のために適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の
相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅すべき場合でも、解除の効力に影響
を及ぼさないことは、当裁判所の判例(昭和三〇年(オ)第三三二号、同三二年三
月八日第二小法廷判決、民集一一巻三号五一三頁)とするところである。
 そして、原判決(その訂正、引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の確定し
たところによれば、上告人A1の賃料債務の不履行を理由とする本件宅地の賃貸借
の解除は昭和二九年一二月二七日その効力を生じたところ、上告人らの主張する相
殺の意思表示がなされた時期はその後の同二九年一二月二八日または同三二年五月
一四日であるというのである。したがつて、本件宅地の賃貸借の解除は右の時期以
前に効力を生じているわけであつて、上告人らの主張する相殺の意思表示によりそ
の効力が左右されるものでないことは、前述のところから明らかである。原判決に
所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第三点について。
 原審がその挙示する証拠により適法に認定した事実関係のもとでは、所論権利濫
用の抗弁を排斥した原審の判断は、上告人A1に対する関係においては、正当とし
て是認することができる。それゆえ、同上告人に対する関係では、原判決に所論の
違法はなく、論旨は採用するに足りない。
 同第二点について。
 建物所有を目的とする土地の賃貸借において、賃借人は賃借権を譲渡しまたは賃
借物を転貸することができる旨の特約が成立し、かつ、その賃借権の設定および右
特約の双方について登記がされているときは、賃貸人が、その賃借権を譲り受けた
者またはその賃貸借につき利害関係を有するに至つた者に対し、右賃借権の消滅を
もつて対抗するためには、民法一七七条の規定を類推適用して、その旨の登記を経
ることを要するものと解すべきである。けだし、賃貸借はいわゆる債権契約であつ
て、賃借権は指名債権の一種に属するが、前記のように、建物所有を目的とする土
地の賃貸借で、賃借人が賃借権を譲渡しまたは賃借物を転貸することができる旨の
特約があり、かつ、賃借権の設定および右特約の双方について登記がされている場
合には、その実質においては建物所有を目的とする地上権の設定契約が登記を経て
いる場合と異なるところはないから、その権利の得喪、変更についてはこれに準じ
て取り扱うのが相当だからである。
 ところで、原判決は、本件土地はもとDの所有であつて、上告人A1が昭和二二
年一〇月二八日これを普通建物所有を目的で、賃借人が賃借権を譲渡しまたは賃借
物を転貸することができる旨の特約のもとに賃借したこと、被上告人は昭和二七年
九月五日右Dより本件土地を買い受けてその所有権を取得するとともに賃貸人の地
位を承継し、同年一一月六日その所有権取得登記を経由したこと、本件土地につい
ては賃借権の設定および前記特約について登記がされていること、上告人A1を除
くその余の上告人らは昭和三〇年一二月頃上告人A1から本件賃貸借の賃借権持分
の譲渡を受け、その頃各賃借権持分取得登記を了したこと、本件土地の賃貸借は上
告人A1の賃料不払を理由として昭和二九年一二月二七日被上告人から適法に解除
されたことなどの諸事実を確定したうえ、賃借権が指名債権に属することを理由と
し民法四六七条以下の規定を適用し、賃借権の設定登記の抹消登記手続がされてい
なくても、賃貸人である被上告人は、本件賃借権の譲受人である上告人A1を除く
その余の上告人らに対して、賃借権の消滅をもつて対抗することをうるものと判示
している。
 しかしながら、原審の確定した本件賃貸借においては、被上告人は、上告人A1
を除くその余の上告人らに対しては、賃借権の譲渡に関する登記手続がなされる前
に賃借権設定登記の抹消登記手続を経るのでなければ、その賃借権の消滅をもつて
対抗することができないことは、さきに説示したところから明らかであり、これと
異なる原判決には、法令の解釈、適用をあやまつた違法があり、破棄を免れない。
 次に被上告人の上告人A1に対する請求について考えるに、右判示の事実関係の
もとにおいては、前記賃借権を同上告人はその余の上告人らと準共有の関係におい
て有していたものと解されるから、被上告人は上告人A1に対して同上告人の有し
ていた賃借権の持分についてその移転登記手続を求め得たのであつたのであり、原
審が何らこの点について釈明権を行使しなかつたのは、審理不尽のそしりを免れな
いものというべきである。
 よつて、原判決を破棄し、上告人A1に対する請求の部分は、これを原審に差し
戻すべきものとし、その余の上告人らに対する請求については、第一審判決を取り
消して、被上告人の請求を棄却することとし、民訴法四〇七条、四〇八条、三九六
条、三八六条、九六条、九四条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠

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