弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、被告人A(ただし、同被告人に対する公訴事実中恐喝未遂、
暴力行為等処罰ニ関スル法律違反および恐喝の点につき無罪の言渡をした部分を除
く。)、同B、同Cに対し無罪を言い渡した部分を破棄する。
     本件中右被告人三名に対する破棄にかかる部分を福岡高等裁判所に差し
戻す。
     被告人A、同E、同D、同Fの本件各上告を棄却する。
     当審における訴訟費用(国選弁護人築山重雄に支給した分)は被告人F
の負担とする。
         理    由
 福岡高等検察庁検事長草鹿浅之介の上告趣意について。
 職権により調査すると、原判決は、「被告人Cは、当時未だ現実に熊本県八代地
方事務所農地課長の職務代理者として同課長の一般的権限を行使した事例はなく、
農地及び農業用施設等災害復旧工事に関して現にこれを取扱う職務権限を有しなか
つたのは勿論、該職務権限が農地課所管に属するものとはいいながら、上司の命を
受けてこれ等の職務を処理し得べき地位にあつた者とも認め難いから、ひつきよう、
同被告人は右工事に関する一般的権限、ひいては右工事につき事業主体のなす工事
請負契約締結の方法、予定価格の決定等に関する指導監督権を有しないのは勿論、
かかる職務が同被告人の担当する開拓関係事務と密接な関係を有したものともいわ
れない」旨の説示をして、同被告人に対する加重收賄および被告人A、同Bの右被
告人Cに対する各贈賄の点につき、いずれも無罪の言渡をなしている。
 しかし、記録によると、被告人Cは、昭和二五年三月三一日付熊本県名義をもつ
て熊本県事務吏員に任命され、主事に補せられるとともに熊本県八代地方事務所勤
務を命ぜられ、同日付で八代地方事務所長名義をもつて同事務所農地課勤務を命ぜ
られ、さらに、同年一二月一日付で八代地方事務所長名義をもつて同事務所農地課
長の職務代理者を命ぜられたこと、ならびに本件犯行当時の昭和二四年五月一〇日
熊本県訓令二五四号熊本県地方事務所処務規程一条は「地方事務所に総務課、税務
課、経済課、林務課及び農地課を置く。」と規定し、同六条は、農地課の事務分掌
は左記の通りであるとして「一、水利組合及び土地改良区の指導監督に関する事項、
二、農地等の調整に関する事項、三、開墾事業に関する事項、四、土地改良事業に
関する事項、五、耕地の災害復旧に関する事項、六、耕地整理に関する事項、七、
開拓地の営農指導に関する事項」と規定し、同八条三項は「課長に事故があるとき
又は課長が欠けたときは、地方事務所長があらかじめ指定した吏員がその職務を代
理する。」と定めているから、農地および農業用施設等災害復旧工事に関する事項
は、事業主体がなす工事請負契約締結の方法、競争入札の実施、その際における予
定価格の決定、工事の施行などに関して意見を述べたり、その他の方法で指導監督
することをも含めて右農地課の分掌事務に属するものといわなければならない。
 そして、刑法一九七条にいう「其職務」とは、当該公務員の一般的な職務権限に
属するものであれば足り、本人が現に具体的に担当している事務であることを要し
ないものと解するを相当とするから、熊本県事務吏員で同県八代塘方事務所農地課
勤務の被告人Cは、農地課長の職務代理者を命ぜられたと否とにかかわりなく、た
とえ、日常担当しない事務であつても、同課の分掌事務に属するものであるかぎり、
前記農地および農業用施設等復旧工事に関する事務をも含めてその全般にわたり、
上司の命を受けてこれを処理し得べき一般的権限を有していたものと解するを相当
とする。
 もつとも、昭和三一年四月二一日付八代地方事務所長G作成名義の本件犯行当時
の同事務所の農地課事務分担表の証明書によれば、右農地課の分掌事項は、一、課
内庶務に関する事項、二、農地等の調整に関する事項(開拓地を除く)、
三、農地等の交換分合に関する事項、四、土地改良区及び土地改良区設置指導に関
する事項、五、農地等の調整に関する事項(開拓地)、六、開墾地の営農入植移住
に関する事項、七、開墾事業に関する事項、八、農地農業用施設の災害復旧に関す
る事項、九、土地改良事業に関する事項、一〇、急傾斜事業に関する事項、一一、
湿田単作事業に関する事項、一二、開墾建設に関する事項、一三、農林金融に関す
る事項、一四、文書收発に関する事項と分けて定められ、右一ないし四の主査は、
C主事、副査は、H雇、右五、六の主査は、C主事、副査は、I技師、右七の主査
は、I技師、副査は、C主事、右八、九の主査は、J技師、副査は、K、L両技師
ほか臨時雇三名、右一〇の主査は、K技師、副査は、J、L両技師ほか臨時雇二名、
右一一の主査は、L技師、副査は、J、K両技師ほか臨時雇二名、右一二の主査は、
I技師、副査は、C主事、右一三の主査は、K技師、副査は、H雇、右一四の主査
は、H雇、副査は、M臨時雇と指定されていたこと、また、第一審判決挙示の証人
Nの公判廷における供述、同人の検察官に対する供述調書、被告人Cの検察官に対
する供述調書によると、右農地課には、耕地係、農地係、開拓係の三つの係が設け
られ、被告人Cは開拓関係の事務と庶務一般を担当していたことが認められるけれ
ども、これらは、ただ便宜に従い右農地課内部における事務分配の標準を定めたに
とどまるものであつて、これにより同被告人の前記法令上有する職務権限は何ら左
右されるものではない。
 してみると、昭和二八年一〇月当時八代地方事務所農地課勤務の事務吏員の地位
にあつた被告人Cが、農地および農業用施設等災害復旧工事につき事業主体のなす
工事請負契約締結の方法、競争入札の実施、その際における予定価格の決定などに
関与することは、刑法一九七条にいう公務員の「其職務」といわなければならない。
したがつて、それが職務でないものと判断して、被告人Cの加重收賄および同被告
人に対する被告人A、同Bの各贈賄につき無罪の言渡をした原判決は、判決に影響
を及ぼすべき法令の違反があつて、これを破棄しなけれは著しく正義に反するもの
といわなければならないから、原判決中この点に関係のある右被告人三名に関する
部分は、刑訴四一一条一号により破棄を免れない。
 被告人Aの弁護人長崎祐三の上告趣意は、違憲をいうが、その実質は事実誤認、
単なる訴訟法違反の主張に帰すものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Aの上告趣意(上告趣意補充書を含む)は、違憲をいう点もあるが、実質
は結局事実誤認、単なる訴訟法違反の主張にほかならないものであつて、刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。
 被告人Eの上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。
 被告人Dの弁護人宮井親造の上告趣意第一点について。
 所論は、違憲をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張に帰するものであつ
て、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお、記録によると、原審は、弁護人長
崎祐三、同免出礦、同諸富伴三、同庄司進一郎からそれぞれ控訴趣意書を差し出す
べき最終日である昭和三一年一二月一二日を延期されたいとの申請があつたので、
右四名の弁護人についてのみ本件控訴趣意書を差し出すべき最終日を同年一二月二
七日に延期する旨の決定をなしたこと及び弁護人宮井親造は、原審第一回公判にお
いて、被告人D関係につき免出弁護人提出の控訴趣意書のとおり弁論し、なお、自
己提出分は期限後提出にかかるものであるから陳述しない旨を述べていることが明
らかである。それゆえ、原判決が宮井弁護人の控訴趣意に対し判断を示さなかつた
からといつて、所論のような違法があるということはできない。)
 同第二点について。
 原判決の維持した第一審判決が証拠に採用している所論Oの検察官に対する各供
述調書及びFの検察官に対する各供述調書が強要などにもとづくものと認めるべき
資料は存しないから、所論違憲の主張はその前提を欠き、刑訴四〇五条の上告理由
に当らない。
 同第三点は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張をいでないものであつて、刑訴
四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Dの上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。
 被告人Fの弁護人築山重雄の上告趣意は、量刑不当の主張をいでないものであつ
て、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Fの上告趣意は、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当
らない。
 よつて、被告人A、同B、同Cについては刑訴四一三条により、被告人Aについ
ては同四一四条、三九六条により(主文第三項)、被告人E、同Dについては同四
〇八条により、被告人Fについては同四〇八条、一八一条一項本文により、裁判官
全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 平出禾公判出席
  昭和三七年五月二九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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